瀬文茶のヒートシンクグラフィック
CRYORIG「C1」
~CRYORIGのCPUクーラー第3弾はローハイト・トップフロー
(2014/5/29 06:00)
Mini-ITX向けのトップフロー型CPUクーラー
CRYORIGブランドのCPUクーラー第3弾となるCRYORIG C1は、140mm径の大口径ファンを搭載しつつ、ファンを含めた全高を74mmに抑えた、ローハイト仕様のトップフロー型CPUクーラーだ。Mini-ITXマザーボード向けに設計されているが、ソケットはIntelがLGA2011/115x/1366/775、AMDがSocket AM2/AM3/FM1/FM2と幅広くサポートする。
ヒートシンク本体は、CPUとの接触面に純銅(C1100)製のプレートを採用したベースユニットと、56枚+35枚の放熱フィンを備える放熱ユニット、両ユニット間の熱輸送を担う6本の6mm径ヒートパイプによって構成されている。
0.4mm厚の放熱フィンを綺麗に並べた、精緻な作りが印象的なヒートシンクで、放熱フィンやベースユニットと、ヒートパイプの接続部には、ろう付けが施されている。また、CRYORIGブランドの独自技術として、R1シリーズで採用された、ヒートパイプをピッチの異なるフィンブロックで挟み込む「Jet Fin Acceleration System」も、部分的に採用している。
標準搭載の冷却ファンには、CRYORIGブランドの140mm径13mm厚ファン「XT140」を搭載。PWM制御により、700~1,300rpmの範囲で回転数を制御できる。
ヒートシンクへの冷却ファンの取り付けは、ヒートシンクに設けられたファンマウンタにネジ止めすることで行なう。ファンマウンタのネジ穴位置は、120mm角ファンのネジ穴と互換性があり、C1の付属品にはXT140取り付け用のネジのほか、25mm厚ファン固定用のネジも用意されているので、市販のファンへの交換も可能。
周辺パーツとのクリアランスについては、ベースユニットを放熱ユニットの重心からずらして配置してある関係で、取り付け方向次第となる。今回は、メモリスロット上空にヒートシンクが被る方向で取り付けたが、この場合拡張スロットとは干渉が発生しない一方、メモリモジュールは全高42mmまでに制限される。
リテンションキットについては、先に発売されたR1シリーズと同じものを採用しており、Intel、AMDとも、バックプレートを用いて固定する仕様となっている。リテンションキット自体の完成度の高さに加え、ヒートシンク本体にネジ止め用の穴を設けることで、プラスドライバー1本で簡単に取り付けが行なえる。
ただ、C1がターゲットとしているMini-ITXマザーボードの場合、ATXマザーボードなどに比べパーツの実装スペースが限られる関係で、CPUソケット裏面の周辺にもパーツが配置されている製品がある。そのようなマザーボードでは、バックプレートが実装部品に乗り上げてしまい、取り付けられないことがある。リテンションキットのクオリティは高いのだが、Mini-ITX向けCPUクーラーとしては、バックプレートを使用しない取り付け方法も欲しかったところだ。
冷却性能テスト
それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。
冷却性能については、3.4GHz動作時に54~60℃を記録して、CPU付属クーラーより25~31℃低い結果となった。また、オーバークロック時については、PWM制御20%設定時、4.6GHz動作でCPU温度が94℃を超えてしまっているが、それを除けば4.4GHz動作時に69~79℃、4.6GHz動作時は81~88℃となっている。さすがに優秀な結果だ。
動作音については、PWM制御20%設定(約740rpm)から50%設定(約980rpm)までは、風切り音も軸音も目立たたない。1,000rpmを超えるあたりから、風切り音が目立ち始める。フル回転(約1,450rpm)での風切り音はそれなり大きいが、軸音やヒートシンクの共振は、特に気にならなかった。
ハイレベルかつハイコストなCPUクーラー
冷却性能は優秀。ヒートシンクの作りも良く、リテンションキットの完成度も高い。リテンションキットについては、より多くのMini-ITXマザーボードに固定できるよう、バックプレートを用いない固定方法が用意されていると、なお良かったが、クオリティ面で注文を付けるところのほとんど無い出来栄えだ。
CPUクーラーとして高いレベルで完成されているC1だが、約1万円という販売価格が、実用品としての魅力を削いでいる。C1の競合製品となるThermalright「AXP-200」は、8,000円程度で販売されており、6,000円台で購入できる廉価版も発売されている。CPUクーラーとしての総合的な完成度ではAXP-200に勝るとも劣らないC1だが、コストパフォーマンスでは分が悪い。実用性を重視するユーザーにとっては、ベストな選択肢にはならないだろう。
CRYORIGの製品は価格が高過ぎるきらいがあるのは確かだが、これまでにCRYORIGが発売した3つのCPUクーラーは、いずれも高価である代わりに、妥協の無いクオリティで作られている。決して万人向けの製品では無いが、趣味の世界でもある自作PCには、こういう製品づくりのできるメーカーも必要だろう。CRYORIGには、今後も是非この方向性での製品開発を期待したい。
【表】CRYORIG「C1」製品スペック | |
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メーカー | CRYORIG |
フロータイプ | トップフロー |
ヒートパイプ | 6mm径6本 |
放熱フィン | 56+35枚 |
サイズ(ファン搭載時) | 140×144.5×74mm (幅×奥行き×高さ) |
重量 | 628g(ヒートシンクのみ:539g) |
付属ファン | 140mm径13mm厚ファン XT140 電源:4ピン (PWM制御対応) 回転数:700~1,300rpm ±10% 風量(最大): 65CFM ノイズ:20~24dBA サイズ:140×140×13mm |
対応ソケット | Intel:LGA 775/1150/1155/1156/2011 AMD:Socket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2 |