西川和久の不定期コラム
エプソン「PX-S05」
~大きさ、重量にこだわったバッテリ駆動対応A4モバイルプリンタ
(2014/7/31 06:00)
一般的なノートPCと同クラスの重量
「PX-S05」はカラーバリエーションとして、ホワイト(PX-S05W)とブラック(PX-S05B)の2種類用意されている。今回手元に届いたのはブラックだ。
特徴的なのは、そのサイズと電源供給方法。サイズは使用時こそ309×232×217mm(幅×奥行き×高さ)だが、収納時には309×154×61mm(同)までコンパクトになる。このサイズであればオフィスデスクの引き出し(一般に内寸幅が318mm)や、カバンにも収納できる。
重量は約1.6kg。13~14型程度の一般的なモバイルノートPCと同クラスとなる。付属のACアダプタ(実測で196g)を加えても2kg未満で、持ち運ぶのはそれほど苦にならないだろう。
電源は、付属のACアダプタ、本体のUSBポート経由、内蔵バッテリと、3パターン用意されている。バッテリ駆動の場合、フル充電でA4普通紙を、モノクロで約100枚、カラーで約50枚印刷できる。
またバッテリ切れで急遽5分だけ充電した状態からモノクロ約4枚、カラー約2枚の印刷が可能。緊急時に数枚だけでも印刷したい時に役立ちそうだ。そのほか、主な仕様は以下の通り。
エプソン「PX-S05」の仕様 | |
---|---|
印刷方式/最高解像度 | MACH方式/5,760×1,440dpi |
インク | 4色(黒インクカートリッジ、カラー3色一体型インクカートリッジ) |
給紙容量 | 背面MPトレイ/普通紙:最大20枚(64g/平方m普通紙使用時)、ハガキ:最大5枚、写真用紙:最大5枚、封筒:最大1枚 |
両面印刷(自動) | 非対応 |
印字速度(A4) | ACアダプタ使用時カラー約4ipm/モノクロ約7ipm、バッテリ駆動時カラー約2ipm/モノクロ約3.5ipm |
用紙サイズ | 単票紙:A4~A6、リーガル、レター、六切、ハイビジョン、名刺、KG、2L判、L判、ユーザー定義サイズ ハガキ、封筒(洋形封筒1~4号、長形封筒3号/4号) |
液晶ディスプレイ | 1.44型(カラー) |
インターフェイス | USB 2.0、IEEE 802.11b/g/n無線LAN |
バッテリ駆動 | A4普通紙モノクロ:約100枚またはカラー:約50枚 |
対応OS | Windows XP/Vista/7/8/8.1、Windows Server 2003/2003 R2/2008/2008 R2/2012/2012 R2、Mac OS X 10.6.8以上 |
サイズ | 309×232×217mm(使用時、幅×奥行き×高さ)、309×154×61mm(収納時) |
重量 | 約1.6kg |
直販価格 | 27,980円(税別) |
印刷方式は同社のMACH方式。最高解像度は5,760×1,440dpiだ。インクはPX型番なので耐水性に優れた顔料系となる。小型化された新開発の黒インクカートリッジ(ICBK82)とカラー3色一体型インクカートリッジ(ICCL82)の2つを使用する。
給紙容量は、普通紙で最大20枚。ハガキや写真用紙は最大5枚、封筒は最大1枚となる。A4の印字速度は、ACアダプタ使用時カラー約4ipm/モノクロ約7ipm、バッテリ駆動時カラー約2ipm/モノクロ約3.5ipm。
液晶ディスプレイは1.44型。タッチには非対応だ。インターフェイスは、USB 2.0とIEEE 802.11b/g/n無線LAN。Wi-Fi接続時は最大4台の同時接続に対応する。カードリーダはなく、外部メディアは扱えない。対応OSはWindows XP/Vista/7/8/8.1、Windows Server 2003/2003 R2/2008/2008 R2/2012/2012 R2、Mac OS X 10.6.8以上となる。
モバイルプリンタならでの機能としては、傾きセンサーを内蔵することで、45度以上傾いた場合は印刷動作を止めインク漏れなどを防ぐ仕掛けを搭載している。ただ45度はかなり傾いた状態なので、もう少し緩めの角度から反応してもいいのかも知れない。
直販価格は27,980円(税別)。カラーインクジェット複合機を軽く購入できる価格と言え、バッテリ駆動可能なモバイルプリンタという特色ある製品のため割高になっている。
筐体は周囲のプラスチックは断面をリブ形状、フレームにはアルミを採用しているとのことで、結構ガッチリしている。ただ、給紙台は収納時に折りたたんでカバーになるのだが、この部分はわりとカタカタ動いてしまうため、もう少しキッチリ止まって欲しい(試作機のためという可能性はあるが)。傷が付きにくい表面処理や、持ちやすいようシボ加工が施してあり、カバンの中へ入れたり、手で持ち運ぶのも安心だ。
前面右下にステータスLEDがあり、使用時は青色、充電時は橙色に点灯する。また充電が終わると消灯する。左側面には、Micro USBと電源入力。右側面にはロックポート。背面には縦置きもできるようゴム足が2つある。裏は小さいパネルを外すとメンテナンスボックスが収納できるスペースを確保している。
ACアダプタのサイズは約115×50×30mm(同)。重量は196g。ノートPCに付属するACアダプタと似たような大きさだ。
操作パネルは、電源ボタン、1.44型液晶ディスプレイ、十字キー+OKボタンで構成される操作キー、そして「キャンセル」や「戻る」に相当するボタン……とシンプルに作られている。
特筆すべきは1.44型液晶ディスプレイのクオリティだ。このサイズだと数年前なら“とりあえず付けました”程度の見え方の製品も少なくなかったが、写真からも分かるように、非常に明るく、またクッキリと文字や絵が表示され、とても見やすい。
液晶ディスプレイに表示される内容は、
- メニュー
- バッテリー情報、メンテナンス、普通紙濃度調整、カラー調整、プリンターの基本設定、ネットワーク設定、Epson Connect設定、Googleクラウドプリント設定、簡易ドライバインストール、購入時の設定に戻す
- 無線LAN設定
- 手動設定、プッシュボタン自動設定(AOSS/WPS)、PINコード自動設定(WPS)、カンタン自動設定、無線LANを無効にする、Wi-Fi Direct設定
- Epson iPrint接続
- (スマートフォン側のEpson iPrintを起動して[OK]を押す)
と、コンパクトなモバイルプリンタとしては豊富だ。Googleクラウドプリント、「Epson Connect」、「Epson iPrint」(iOS版は9月に提供予定)にも対応しているので、PCだけではなく、いろいろなデバイスから印刷可能となる。
ただ、セキュリティーキーを入力する時、十字キーの「↑」でA~Z、「↓」で~(チルダ)~0がそれぞれループする中から選択していくのだが、今回Wi-Fiの設定を手動で行なったところ、かなり面倒だった。AOSSやWPSを使った方がいいだろう。
実際に動作した時のノイズや振動に関しては動画を掲載したので参考にして欲しい。給紙と排紙の時は機械的な音が少しするものの、印刷中はかなり静かで振動もないに等しい。
印刷速度は、今回試したケース(バッテリ駆動でA4カラー/Wi-Fi接続)だと、スペック上2ipmに対して約53秒だった。バッテリ駆動可能なモバイルプリンタとしては悪くない性能だ。さすがに長年プリンタを作ってきた同社だけあって、初めてのA4モバイルプリンタでも完成度は高い。
便利な簡易ドライバーインストール
プリンタドライバとして対応しているOSは前半に掲載した通り。面白い機能として「簡易ドライバーインストール」が挙げられる。これはPCからUSB接続した時、一時的にプリンタがストレージに見え、その中にセットアップ・プログラムが収録されている仕掛けだ。
手順としては、プリンタのメニューで「簡易ドライバーインストール」を選択、PCとUSBケーブルで接続すると、ドライブが追加(今回のケースではD:ドライブ)され、そのルートにある「SETUP.EXE」を実行すれば、ドライバがインストールできる。
これならどこへプリンタを持って行っても「ドライバーがない!」と焦る必要はなく、安心して運用可能だ。ただしUSB接続のみの対応で、Wi-Fi接続では利用できない。
Wi-Fi接続の場合は、別途付属のドライバディスクからインストールプログラムを実行する。「使用許諾」→「プリンタードライバーパッケージをインストール」までは、先の簡易ドライバインストールと同じだが、その後にネットワーク接続かUSB接続かを選択するパネルを表示するのが一番の違い。USB接続にしてもWi-Fi接続にしても、一度ドライバをインストールしてしまえば、以降の操作方法は同じだ。
プリンタのプロパティは、基本設定/応用設定/ユーティリティーに分かれ、同社お馴染みの内容となっている。「EPSONプリンターウィンドウ! 3」もいつも通りタスクトレイに常駐する。
同社のプリンタで見掛けないものとしては、「EPSONプリンターウィンドウ! 3」の「バッテリー残量」と「メンテナンスボックス空き容量」の項目だ。いずれにしても、特に難しい部分はなく、手慣れた人ならマニュアルを読まずとも、すぐに運用可能だろう。
以上のようにエプソンのN「PX-S05」は、A4に対応し収納時309×154×61mm(同)で重量約1.6kgの、バッテリ駆動可能な同社初のモバイルプリンタだ。全色顔料系のインクを採用しているため耐水性にも優れ、カバンへ入れて持ち運んだ時、傷が付きにくい表面処理や、持ちやすいようシボ加工を施してあるのも技ありのデザインだ。
直販価格で27,980円(税別)と、今時のインクジェットプリンタとしては高価だが、価格以外で気になる点は特になく、持ち運び可能なモバイルプリンタを探しているユーザー全てにお勧めしたい逸品だ。