Hothotレビュー
NVIDIA「SHIELDタブレット」
~ゲーミング特化の高性能Androidタブレット
(2014/10/9 10:00)
NVIDIAは、ゲーミング用途に特化したAndroidタブレット「SHIELDタブレット」を発表した。Keplerアーキテクチャベースの高性能GPUを統合した同社最新SoC「Tegra K1」を採用することで、競合SoCを大きく凌駕する3D描画能力や、PCゲーム相当の優れた描画表現を実現する点が大きな特徴だ。10月10日に発売予定で、価格はオープンプライス。税別店頭予想価格は40,000~45,000円前後。
SHIELDタブレットの特徴的な機能については笠原一輝氏のコラムで紹介済みのため、本稿ではそちらで詳しく紹介していない機能や製品の仕様、ベンチマークテストの結果などを中心に紹介する。また、ゲームのプレイ感については、僚誌Game Watchで詳しくレビューしているので、そちらを参照してもらいたい。
本体は一般的なタブレットとほぼ同等
NVIDIAは、ゲームコントローラ一体型の5型液晶搭載ゲーミング端末「SHIELDポータブル」(当初の名称はSHIELDだったが、SHIELDポータブルに名称が変更された)を2013年7月より北米などで発売している。そのSHIELDシリーズの第2世代モデルとして登場したのがSHIELDタブレットだ。とは言ってもSHIELDポータブルの後継ではなく、新モデルとして位置付けられており、北米などではSHIELDポータブルと併売される。
SHIELDポータブルは日本では発売されておらず(今後の発売も未定)、SHIELDタブレットは日本のゲーミングユーザーにとって待望の発売と言える。なお、北米ではWi-FiモデルとLTEモデルの2モデルが販売されているが、日本ではWi-Fiモデルのみが販売され、LTEモデルの投入は検討中とのことだ。
NVIDIAは、タブレット製品として7型液晶搭載の「Tegra Note 7」を2013年に投入しており、日本では2013年12月にパートナー企業である香港ZOTACの製品として販売されていた。それに対しSHIELDタブレットは、パートナー企業を介した販売ではなく、NVIDIAが直接販売することになる。
SHIELDタブレットの形状は、ゲームコントローラ一体型のSHIELDポータブルから大きく変更され、一般的なタブレットとほぼ同等となった。正面からの見た目は、Tegra Note 7にかなり近い。サイズは221×126×9.2mm(幅×奥行き×高さ)と、フットプリントはTegra Note 7よりやや大きいが、8型液晶搭載タブレットとしては標準的なサイズだ。高さは1cmを切っているが、付属のペンを本体に収納できる構造になっているなどの関係もあって、極端な薄型とはなっていない。
極端な薄さやコンパクトなサイズを追求していないのは、そのほかにも理由がある。それは、SHIELDタブレットでは、3D描画のゲームをプレイする場合のSoCの発熱を考慮し、通常のタブレットに比べて2倍程度、熱設計に余裕を持たせているからだ。これによって、3Dゲームを長時間プレイしても、熱がこもってSoCの性能が発揮できなくなることを防いでいる。こういった仕様を考えると、サイズ的に見栄えがしなくても全く気にならない。
重量は公称390g。実測では371g(ペン収納時)と、公称よりも19gほど軽かった。それでもARMベースのプロセッサを搭載した8型タブレットとしてはやや重い部類で、実際に手にするとずっしりと重く感じる。手に持って長時間利用する場合など、この重さはかなり気になるだろう。とは言え、SHIELDタブレットでは、ゲームプレイ時には専用のワイヤレスコントローラの利用が基本となるため、タブレット本体を手に持って長時間利用する機会はそれほど多くないと思われる。そのため、本体重量に関してはそれほど不利とはならないはずだ。
WUXGA表示対応の8型液晶を採用
SHIELDタブレットに採用される液晶は、1,920×1,200ドット(WUXGA)表示に対応する8型液晶だ。パネルの種類はIPS方式で視野角が広く、どの角度から見ても色合いの変化を感じることはない。フルHD超のWUXGA表示に対応していることもあって、表示映像の精細感も非常に優れる。
液晶と表面ガラスは空気層をなくしたダイレクトボンディングとなっているため、視差が少なくタッチ操作やペンを利用した操作も心地よい。また、Tegra Note 7では見る角度などによってタッチパネルのラインが認識でき気になったが、SHIELDタブレットではその点が改善され、タッチパネルのラインは全くといっていいほど気になることはない。パネル表面は光沢仕様となっており、発色も鮮やかに感じるが、外光の映り込みはやや気になった。
液晶面の左右には、Tegra Note 7でも採用されていた前面ステレオスピーカーが配置されている。このスピーカーはTegra Note 7と同様のバスレフ構造を採用。大音量でも割れることがなく、豊かな低音を含む再生音は、タブレットとして他を圧倒する音質と言える。このこだわりも、SHIELDタブレットがゲーミング用途をメインターゲットとしているからだ。
専用コントローラは同時購入必至の周辺機器
SHIELDタブレットには、純正の周辺機器が2種類用意されている。そのうちの1つが「SHIELDワイヤレスコントローラ」だ。
SHIELDワイヤレスコントローラは、十字ボタンと4個のボタン、4個のトリガーボタン、2本のアナログスティックを備えており、見た目は家庭用ゲーム機のコントローラそのものといった印象。コントローラを手にした印象も、各ボタンやアナログスティックに自然に指が届き、使い勝手も家庭用ゲーム機のコントローラと比べて全く遜色がない。ただ、その中身はSHIELDタブレットに最適化した、非常に高機能なものとなっている。
大きな特徴となるのが利用する無線方式で、一般的なワイヤレスコントローラがBluetoothや独自の無線方式を採用する例がほとんどの中、SHIELDワイヤレスコントローラはWi-Fiを利用しており、SHIELDタブレットとWi-Fi Direct接続される。
Wi-Fiを利用する利点としてNVIDIAは、Bluetooth接続のワイヤレスコントローラと比べて遅延が2分の1と短く、優れたレスポンスが得られるという点を挙げている。ただ、筆者の個人的な印象では、Bluetooth接続の家庭用ゲーム機のコントローラと比べて操作性の大きな違いは感じなかった。遅延を嫌ってゲームプレイ時にケーブル接続タイプのコントローラやキーボード、マウスを利用している上級ゲーマーなら、違いを認識できる可能性も十分あるとは思うが、一般的には遅延を意識することはほぼないだろう。
また、Wi-Fi接続では帯域に余裕があるため、双方向の音声送受信に対応している点も特徴の1つ。コントローラにはヘッドセット用のジャックが備わり、4極ミニプラグ対応のヘッドセットを接続可能。タブレット本体にヘッドセットを接続せずとも、離れた場所でゲームの音を聴き、音声チャットを行ないながらゲームがプレイできる。また、コントローラにはマイクが内蔵されるため、ヘッドセットを用意せずともボイスチャットなどが行なえる。
コントローラ中央上部には、NVIDIAロゴマークがあり、ここを長押しすることでペアリングされたSHIELDタブレットと接続。NVIDIAロゴの周囲には、戻るボタンやホームボタンなど、タブレット操作用のボタンを備える。
また、コントローラ中央下部にはボリューム調節用のボタンに加えて、三角形のクリック可能なタッチパッドを備え、マウス同様のカーソル操作を行なえる。ゲームの操作だけでなく、タブレット自体の遠隔操作を考慮した仕様が盛り込まれている点も、一般的なコントローラにはない大きな特徴だ。
タブレットの操作を常にこのワイヤレスコントローラで行なうのはナンセンスだが、ゲームプレイ時などコントローラから手を離すことなくタブレットを比較的軽快に操作できる点は、かなり大きな利点と感じた。
ただ、1点気になる部分がある。それは、実測で314.5gとワイヤレスコントローラとしてやや重い重量だ。SHIELDワイヤレスコントローラには大容量バッテリを内蔵し、フル充電で40時間以上のゲームプレイが可能とのことだが、それが重量増に繋がっていると考えられる。致命的に重いということはないため、ゲームプレイに集中している間は気にならないとは思うが、長時間プレイしていると、疲れを感じる可能性が高そうだ。
SHIELDタブレットでプレイできるゲームは、SHIELDタブレットに最適化されているものも含め、タブレット単体でプレイできるように考慮されている。ただ、快適なゲームプレイにはやはりコントローラが必須。また、SHIELDタブレットを選択するユーザーもほとんどがゲームプレイを主目的としているはずで、SHIELDタブレットを購入するならSHIELDワイヤレスコントローラも同時に購入すべきだろう。なお、SHIELDタブレット1台に対してSHIELDワイヤレスコントローラは最大4台まで接続可能なので、マルチプレイ対応ゲームも快適に遊べる。
専用周辺機器としては専用カバーの「SHIELDタブレットカバー」も用意される。本体側面にマグネットで固定して利用するカバーで、携帯時に液晶面を保護するだけでなく、背面側で折りたたむことで本体を支えるスタンドとしても活用できる。Tegra Note 7の専用カバーに用意されていた、マグネットを利用した本体の角度調節ギミックにも対応。スタンドとして利用できる点はゲームプレイ時に重宝するため、こちらも可能な限り同時に購入したいアイテムだ。
Tegra K1採用で圧倒的な3D描画能力とPC同等の表現力を実現
SHIELDタブレットが採用するSoCは、NVIDIAが2014年1月に発表した「Tegra K1」だ。CPUコアとして「Cortex-A15」を4コアとコンパニオンコアを1コア内蔵する“4+1コア”構造を採用するとともに、192基のCUDAコアを内蔵するGPUを統合した、NVIDIAの最新SoCだ。
最大の特徴となるのがGPUコアの仕様で、PC用GPUで採用されている「Kepler」アーキテクチャと全く同じという点だ。これにより、OpenGL ES 3.1やOpenGL 4.4、DirectX 12などPCと同じ3D APIをサポートするとともに、これまでPCでしか実現できなかったような高度な3D表現も可能となっている。そして、この仕様による最大の利点となるのが、PC向けとして開発されたゲームの移植が従来より容易に行なえる点だ。
SHIELDタブレットはAndroidベースのため、既存のAndroid向けゲームアプリもプレイ可能だが、それではせっかくのSHIELDタブレットの性能も宝の持ち腐れとなる。かといって、GPUの性能をフルに活用したゲームアプリの開発に大きな手間がかかるようでは、なかなか魅力的なゲームが登場しない。いくらゲーミングに特化したタブレットでも、ゲームアプリが登場しないことにはその魅力も半減してしまう。
しかし、Tegra K1を採用することで、PC向けのゲームを最小限の労力で移植でき、多数の魅力的なゲームが短期間で登場する可能性が大きく高まる。PCゲームで広く利用されているEpic Gamesの3D描画エンジン「Unreal Engine 4」もTegra K1向けにすでに用意されており、PC同等の開発環境が整っている。これこそ、Tegra K1を採用するSHIELDタブレットの最大の強みと言えるだろう。
なお、SHIELDタブレットには、Tegra K1の描画機能をフルに活用するゲームアプリ「Trine 2」がプリインストールされている。実際にTrine 2の画面を見ると、ライティング処理など、PCゲーム相当の高品質なグラフィックスが実現されていることが分かる。しかも、高品質グラフィックスにも関わらず一切ストレスなく動作し、快適にプレイできる。この品質のゲームがAndroidタブレットでプレイできるというのは驚きだ。
SHIELDタブレットのTegra K1に最適化されたゲームタイトルは、現時点ではまだ14タイトルのみとなっている。おそらく、海外タイトルが中心になると思うが、先述した理由により今後続々登場する可能性が高く、早期のゲームタイトル拡充も十分期待できるだろう。SHILEDシリーズに特化したゲームアプリは、専用ランチャアプリ「SHIELD Hub」からアクセスできるショップで購入やダウンロードが可能だ。
PCゲームのストリーミングプレイも可能
SHIELDタブレットのもう1つの特徴となるのが、PCと連携してPCで動作させているゲーム映像をストリーミングで表示し、遠隔からプレイできる「GameStream」をサポートする点だ。SHIELDポータブルでもサポートされていた機能と同じで、KeplerベースのGPUコアに内蔵されているH.264ハードウェアエンコード機能「NVENC」を利用して、PCゲームのプレイ映像をリアルタイムエンコードしつつ、SHIELDタブレットにネットワーク経由でストリーミング配信することで、PCから離れた場所でPCゲームをプレイ可能にしている。ネットワーク配信されるゲーム画像は720pでの配信となる。
ただ、SHIELDタブレットの液晶で見る限りには、サイズが8型ということもあってか、それほど荒い映像とは感じない。ただし、遅延は0.1秒以上とさすがに十分に認識できるほどあり、FPSタイプのリアルタイム対戦ゲームなどわずかな遅延でも不利が大きくなるゲームは少々プレイが厳しいだろう。それでも、シビアな入力が要求されないゲームなら、十分にプレイ可能と感じた。
なお、GameStreamを利用するには、PC側にKepler以降のGeForce GTXを搭載している必要がある。また、PCゲーム側もGameStreamをサポートしていなければならない。このあたりの条件もSHIELDポータブルでの場合と同じだ。GameStream対応のPCゲームはNVIDIAのWebサイトで確認できる。
ところで、SHIELDポータブルが採用しているTegra K1にもKeplerベースのGPUが統合されていることから、NVENCにも対応している。これによって、CPUに負担をかけずH.264形式へのリアルタイムエンコードが行なえる。この機能を利用して実現しているのが、冒頭で案内した笠原氏のコラムで紹介されている、表示画面の動画キャプチャ機能とTwitchへのゲームプレイ映像のリアルタイム配信機能だ。こちらもTegra K1を採用するSHIELDポータブルでなければできない機能で、ほかのタブレットに対する優位点となるはずだ。
裏面カメラ、インカメラとも500万画素
SHIELDタブレットは、一般的なタブレット同様に裏面、液晶面それぞれにカメラを搭載している。そして、双方とも500万画素の撮像素子を採用している点が大きな特徴だ。裏面のメインカメラは、500万画素というのはタブレットのカメラとしてほぼ標準的。それに対し、液晶面の前面カメラに500万画素の撮像素子を採用するというのは、ほとんど例がない。最近のスマートフォンでは、写真の自分撮り用途、いわゆる“セルフィー”用途で高解像度の撮像素子を採用する例が増えているが、タブレットとしては異例と言える。
SHIELDタブレットが前面カメラにこれだけの高画質カメラを採用するのは、写真のセルフィー用途というよりも、リアルタイム動画配信時の自撮り用途としての位置付けが大きい。前面カメラはSHIELDタブレットの正面でゲームをプレイしているユーザーがほぼ中心に撮影されるような角度で取り付けられていることからも明かだろう。
ちなみに、付属のカメラアプリを利用して、裏面カメラと前面カメラとで同じ風景を撮影してみたが、画質はほぼ同じ。撮影画角もほぼ同等だった。
付属のカメラアプリは静止画と動画の撮影が可能で、動画はフルHDでの撮影をサポート。高速連写機能やパノラマ撮影機能、HDR撮影などにも対応しており、機能的には標準的と言える。また、内蔵センサーを利用した水準器機能や、黄金比など4種類のパターンでガイドラインを表示できるなど、なかなか便利な機能も搭載している。ただ、逆光の場面や模様の少ない場所ではピントが合いにくい点は少々気になった。
内蔵ストレージ容量16GBはやや弱点か
ここで、SHIELDタブレットのハード面の仕様を改めてまとめておこう。
SoCはTegra K1で、動作クロックは2.2GHz。メモリは2GB、内蔵ストレージは16GB。LTE対応版は内蔵ストレージが32GBだが、Wi-Fi版は半分の16GBしかない。microSDカードスロットを備えるため、microSDカードを利用したストレージ容量の増設は可能だが、SHIELDタブレットが採用するAndroid 4.4では外部ストレージの利用に制限がかかっており、なかなか活用しにくい。そういった意味で、Wi-Fi版でも内蔵ストレージ容量が32GBのモデルを用意してもらいたかったように思う。
無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0 LEを標準搭載する。ところで、筆者宅で試した限りでは、バッファロー製の無線LANルーター「WZR-1750DHP(ファームウェアバージョン2.21)」を利用した場合に、5GHz帯域の無線LANへの接続が行なえなかった。設定メニューで5GHz帯域のアクセスポイントが一切表示されず、SSIDを指定しても接続できなかった。NECアクセステクニカ(現NECプラットフォームズ)製の無線LANルーター「Aterm WG1800HP」では問題なく5GHz帯域の無線LANが利用できたことや、筆者が利用しているほかのタブレットやスマートフォンなどではWZR-1750DHPとの間で問題なく5GHz帯域に接続できていることなどから、SHIELDタブレットとWZR-1750DHPの間には無線LANの相性問題が存在する可能性がある。もちろん、個体の問題という可能性もあるので、この点についての断定は避けておく。
センサー類は、加速度センサー、ジャイロセンサー、電子コンパス、環境光センサー、GPSおよびGLONASを内蔵する。
側面ポートは、左側面にMicro USBポートとMini HDMI出力、ヘッドセットジャック、上部側面に電源ボタンとボリュームボタン、microSDカードスロットをそれぞれ配置。Mini HDMI出力はHDMI 1.4対応で、4K出力(4K/30p)もサポート。もちろんゲーム画像も出力でき、大画面TVなどに接続すれば家庭用ゲーム機感覚でゲームを楽しめる。上部側面には、専用のスタイラスペン「DirectStylus」を収納するスペースも用意される。
【お詫びと訂正】初出時HDMIのバージョンを2.0としておりましたが、1.4の誤りです。お詫びして訂正させて頂きます。
DirectStylusは、Tegra Note 7に搭載されていたものと同等の仕様だ。ペン自体の仕様は、静電容量方式タッチパッド向けのタッチペンそのものだが、ペン先はかなり細い。また、書き味も非常になめらかだ。ペンの動きへの追従性などはデジタイザにやや劣ると感じる部分もあるが、書き味の感覚はデジタイザペンにかなり近く、一般的なタッチペンとは一線を画す使い勝手を実現している。
また、手書きアプリも複数搭載。本体からペンを引き抜くと手書きアプリを起動するランチャーが起動し、目的の手書きアプリをすぐに起動できる。中でも、オリジナルのお絵かきアプリ「NVIDIA Dabbler」は、Tegra K1の性能を活用したさまざまな表現で手書きできる点が大きな特徴。本物のパレットで絵の具を混ぜるような感覚で色を作り、水彩画や油絵調で絵が描ける。また、写真を取り込んでエフェクトをかけ、それをベースにペンで手を加えて絵のように加工する機能も、かなり楽しく活用できる。こういった点もほかのタブレットには真似のできない特徴と言える。
3D描画能力はAndroidタブレットとして最強
では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。今回利用したベンチマークソフトは、「AnTuTu Benchmark」、「3DMark」、「GFXBench 3.0」、「Basemark X」の4種類だ。また、比較用としてSamsungの8.4型タブレット「GALAXY Tab S SM-T700」(AnTuTu Benchmarkと3DMarkのIce Storm Extremeテストのみ)と、ソニーの10.1型タブレット「Xperia Tablet Z」の結果も加えてある。ただし、ベンチマークテストのバージョンが異なっているので、スコアは参考値として見てもらいたい。
まず、AnTuTu Benchmarkの結果を見ると、メモリ速度の違いが顕著に表れており、これによってCPUコアの演算にも違いが見られる。SamsungのGALAXY Tab Sは今年夏に登場した最新モデルで、搭載SoCのExynos 5420も十分に高性能だが、そちらと比較してもほとんどのスコアが上回っている。そして、注目なのが3D graphicsスコアで、SHIELDタブレットはGALAXY Tab Sの2倍以上のスコアを記録している。このあたりは、さすがKeplerベースのGPUを統合しているだけのことがある。
3DMarkの結果についても同様だ。Ice Storm Extremeテストは、SHIELDタブレットでは、全てのスコアが“Maxed out”となってしまい計測不能だった。各テストのFPSも60fpsに近いスコアで、ほぼ上限に貼り付いている形だ。また、Ice Storm Unlimitedテストでも、Xperia Tablet Zに対して2倍以上のスコアを記録している。さすがにXperia Tablet Zは世代がかなり古いため、比較用として相応しくないかもしれないが、それでもこのスコア差からはSHIELDタブレットが備える3D描画能力を十分に認識できるはずだ。
3D描画能力を計測するGFXBench 3.0とBasemark Xの結果も、3DMarkとほぼ同等の傾向だった。これら結果を見る限り、SHIELDタブレットの3D描画能力は、現在日本で発売されているどのAndroidタブレットよりも優れると言って差し支えないだろう。
SHIELDタブレット | GALAXY Tab S SM-T700 | Xperia Tablet Z | |
---|---|---|---|
バージョン | 5.1 | 4.5.3 | 4.1.1 |
総合 | 52921 | 34173 | 20242 |
UX Multitask | 7121 | 7665 | 3732 |
UX Dalvik | 3066 | 2995 | 1772 |
RAM Operation | 2563 | 1471 | 1024 |
RAM Speed | 3566 | 1610 | 939 |
CPU (Multi thread) integer | 4194 | 3807 | 2185 |
CPU (Multi thread) float-point | 4438 | 3291 | 2072 |
CPU (Single thread) integer | 2087 | ― | ― |
CPU (Single thread) float-point | 2302 | ― | ― |
GPU 2D graphics | 1649 | 1614 | 1484 |
GPU 3D graphics | 19672 | 9494 | 5243 |
IO Storage I/O | 1566 | 1551 | 1158 |
IO Database I/O | 693 | 677 | 633 |
Ice Storm Extreme | SHIELDタブレット | GALAXY Tab S SM-T700 | Xperia Tablet Z |
---|---|---|---|
Ice Storm score | Maxed out | 9135 | 6345 |
Graphics score | Maxed out | 8445 | 5701 |
Physics score | Maxed out | 12801 | 10503 |
Graphics test 1(FPS) | 59.9 | 47.3 | 29 |
Graphics test 2(FPS) | 52.6 | 30 | 21.6 |
Physics test(FPS) | 57.5 | 40.6 | 33.4 |
Ice Storm Unlimited | SHIELDタブレット | Xperia Tablet Z |
---|---|---|
Ice Storm score | 30644 | 9259 |
Graphics score | 35917 | 8935 |
Physics score | 20261 | 10605 |
Graphics test 1(FPS) | 208.5 | 43.8 |
Graphics test 2(FPS) | 124.8 | 34.9 |
Physics test(FPS) | 64.3 | 33.7 |
High-Level Tests | SHIELDタブレット | Xperia Tablet Z |
---|---|---|
Manhattan | 1831 | N/A |
1080p Manhattan Offscreen | 1924 | N/A |
T-Rex | 3108 | 713 |
1080p T-Rex Offscreen | 3590 | 713 |
Low-Level Tests | ||
ALU | 1796 | 1486 |
1080p ALU Offscreen | 15517 | 2926 |
Alpha Blending | 3717 | 3677 |
1080p Alpha Blending Offscreen | 4256 | 3541 |
Driver Overhead | 1462 | 494 |
1080p Driver Overhead Offscreen | 3134 | 1015 |
Fill | 4360 | 2456 |
1080p Fill Offscreen | 5850 | 2477 |
Low-Level Tests | ||
Renderr Quality | 4467 | 2378 |
Renderr Quality (high precision) | 4467 | 3506 |
SHIELDタブレット | Xperia Tablet Z | |
---|---|---|
Midium Quality | 36238 | 11699 |
High Quality | 27872 | 4417 |
次にバッテリ駆動時間だ。SHIELDタブレットの公称のバッテリ駆動時間は、720p動画の連続再生時で約10時間とされている。それに対し、バックライト輝度を50%に設定し、「MX動画プレーヤー」を利用して、デジタルカメラで撮影した約30分の1080p(1,440×1,080ドット)H.264動画をループ再生させた場合で約8時間21分の駆動時間を記録した。バックライト輝度が最弱ではなかったことを考慮すると、公称の駆動時間と比べても十分に満足できる数値と言えるだろう。
ゲーム重視なら即買い、ゲーム二の次でも十分魅力あり
SHIELDタブレットは、優れた3D描画能力を誇るNVIDIAの最新SoC、Tgra K1を採用することで、ゲーミング用途のタブレットという、新しいカテゴリを確立する製品と言える。そして、その名に恥じない優れた3D描画能力や、PC同等の描画表現による、PC用ゲームに匹敵する品質のゲームが楽しめる点はもちろん、扱いやすく遅延も少ない専用ワイヤレスコントローラで快適なゲームプレイができるなど、ゲームファンにとって注目の存在なのは間違いない。
また、PCゲームファンにとっても、GameStreamによって好きな場所でPCゲームを楽しめる点は大きな魅力となるはずだ。Tegra K1に最適化されたゲームタイトルが今後どの程度充実するかによっても魅力は変わってくると思うが、その点を考慮してもゲーム重視でタブレットを探しているなら、これ以外に選択肢はないと言っても過言ではない。
では、ゲームを重視しないユーザーにとってはどうか。確かにSHIELDタブレットはゲームに特化した仕様ではある。ただ、搭載される機能の多くはゲーム以外のアプリを利用する場合でも十分に役立つものが多く、高性能SoCの能力も、ゲーム以外のアプリを快適に動作させるという点で有利となる。
また、付属のDirectStylusを利用した軽快な書き心地のペン入力や、付属の高機能手書きソフト「NVIDIA Dabbler」なども十分に魅力的な存在だ。2万円前後と安価に購入できるAndroidタブレットが多数存在する現在、SHIELDタブレット本体のみで4万円台という価格には、やや否定的な印象を受けるかもしれないが、この点に納得できるなら、ゲーム二の次のユーザーでも十分に満足できるだろう。
それだけに、やはりLTE対応モデルが発売されない点は残念だ。内蔵ストレージがWi-Fiモデルの2倍の容量になる点もあるが、やはりLTE内蔵によって場所を問わずネットワーク接続を行ないゲームを楽しめるという点は、大きな魅力となる。認証作業にかかるコストなど難しい部分もあるかもしれないが、できれば早い時期に日本でもLTEモデルを投入してもらいたい。