Hothotレビュー

日本HP「HP ProBook 455 G2 Notebook PC」

~国内では希少なKaveri搭載の15.6型ノート

HP ProBook 455 G2 Notebook PC

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)から、AMDの“Kaveri”を搭載したビジネス向けの15.6型ノートPC「HP ProBook 455 G2 Notebook PC」(以下ProBook 455 G2)が発売となった。直販価格は62,640円からだ。今回1台お借りできたので、性能ベンチマークを含めた試用レポートをお届けする。

 ProBook 455 G2は、AMDの最新メインストリームモバイル向けAPU“Kaveri”を搭載したノートPCだ。国内では10月中旬時点でKaveriを採用したノートPCは少なく、競合のレノボが「ThinkPad E455」、「ThinkPad E555」を販売している程度。両者ともにビジネスユーザー向けという位置付けだ。

まずは気になる性能をチェック

 PC Watchとしてモバイル版Kaveriのレビューは今回が初となる。そこでまず気になる性能から見ていくことにしよう。比較用として、同じく日本HPからコンシューマ向けに販売されているKabini最上位のA6-5200を搭載した「HP Pavilion 15-n200(AMDモデル)」(以下Pavilion 15)、Temashの最下位のA4-1200を搭載した「HP Pavilion10 TouchSmart 10-e000」の結果を載せてある。

 使用したベンチマークは「PCMark 7」、「ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3」(FFXIベンチ)、および「SiSoftware Sandra」である。余談だが、筆者のレビューにおいて未だFFXIベンチが用いられるのは、バージョンアップがなくスコアが安定している上、CPUとGPU両方の性能バランスが良くないと、比較的高スコアが出せないベンチマークだからである。

 ただし、FFXI自体は11年前に開発されたもののため、現代的アプリケーションのCPU/GPUの利用法とは異なる。CPU的にはシングルスレッド処理だし、GPUも現代的なものの上で動かすと、2D描画の最低クロックで動作してしまう。とは言え、メインストリーム~エントリー向け価格帯のノートPCでは未だLowでスコア4,000~5,000台、Highで2,000~3,000台に留まっているため、レビューで使わなくなるのはもう少し先になりそうだ。

HP ProBook G455Pavilion 15Pavilion 15(内蔵GPU)Pavilion 10
CPUA10-7300A6-5200A6-5200A4-1200
メモリ4GB4GB4GB2GB
ストレージ500GB HDD1TB HDD1TB HDD320GB HDD
OSWindows 8.1Windows 8.1Windows 8.1Windows 8.1
PCMark 7
Score21251765-767
Lightweight17851358-604
Productivity1325964-328
Entertainment20031883-649
Creative34462762-2003
Computation42023712-1427
System storage17961475-1429
RAW system storage score446313-277
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3
Low6990525851392520
High4657379137571737
Sisoftware Sandra
Dhrystone40.73GIPS38.51GIPS-7.33GIPS
Whetstone19.9GFLOPS22GFLOPS-4.54GFLOPS
Graphics Rendering Float134.12Mpixel/sec262.08Mpixel/sec136.46Mpixel/sec66.7 Mpixel/sec
Graphics Rendering Double29.37pixels/sec39.53Mpixel/sec10.5Mpixel/sec4.34Mpixel/sec

 結果を順に追っていこう。PCMark 7については、本モデルがHDD採用であるため、SSDやeMMC搭載モデルに見劣りするのは致し方ない。とは言え、Temash→Kabini→Kaveri(本製品)と順当にスコアが上がってきていることを見ると、CPUのアーキテクチャや、動作クロックの違いによる性能差があるのは明らかである。ストレージが共通のため、Pavilion 15との総合スコア差は少ないのだが、Productivity、Entertainment、Creative、Computationなど、CPUとGPUの演算能力が問われるテストではきっちり差をつけている。

 これはFFXIベンチでも顕著であり、ProBook G455はPavilion 15とワンランク違う性能を見せた。余談だが、スコアが低かったPavilion 10でも、実際のFFXIプレイに不満を覚えることはなく、FFXIベンチでスコアが高いBay Trailよりも快適である。

 SiSoftware Sandraの結果については、残念ながらPavilion 15に大差を付けられず、GPUの倍精度レンダリングが高速であったぐらいだ。数回測り直してみたが変化は見られず、Sandra側で何かしら非対応だったのかもしれない。

 できれば価格帯が近いHaswell搭載モデルのスコアを載せたかったところではあるのだが、筆者はこれまでHaswell+HDDを搭載したノートをレビューしたことがないので、正当に比較することはできない。とは言え、IntelのCPUを搭載した製品はComputationのスコアがAMDの2倍以上であることが多い。

Pavilion 15の流れを汲む筐体

HP ProBook 455 G2本体

 続いて本体について見ていこう。筐体は旧モデルの「HP ProBook 455 G1」から一新され、以前レビューしたPavilion 15の流れを汲むフォルムとなった。ただし本体サイズや重量に違いがあり、共通の筐体というわけではない。

 例えばPavilion 15の本体サイズは385×260×23~25mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.4kgであるが、ProBook 455 G2は375×263×25.5~28.5mm(同)、重量は2.3kgである。また、Pavilion 15の底面パネルからアクセスできるのはメモリと無線LANカードのみだが、ProBook 455 G2はネジ1本外すだけでメモリ/HDD、無線LANカードに全てアクセスでき、チップセットも見えるようになる。

 大企業の中では内部に技術部門を抱え、現場のPCのハードウェアのトラブルに対応できる所も少なくないだろうが、故障箇所の見当が既に分かっておりハードウェアの交換で対応できる場合、本機のように迅速に内部にアクセスでき、ダウンタイムを少しでも減らせるマシンが求められる。

 開けたついでに確認しておくと、メモリはMicron製のDDR3L(1.35V)対応4GBモジュールが1枚だけ装着されていた。メモリスロットはもう1基空きがある。試しに1.5V駆動のDDR3モジュールをもう片方に増設したところ、BIOSでメモリ規格の不一致と表示され起動できなかった。一方、両方1.5VのDDR3モジュールを装着したところ、これは非対応メモリであり、動作が不安定になると起動時にBIOSで警告され、実際、Windows 8.1起動中にブルースクリーンとなった。

 本製品に採用されているプロセッサは超低電圧版のAPUだが、それに対応して増設メモリも低電圧版を用意する必要があるわけだ。また、先に紹介したベンチマークもメモリモジュール1枚による結果である。本機がデュアルチャネルに対応するかどうか、今回確認できなかったが、Kaveriではメモリの帯域が特にGPUの性能に影響するので、もし対応するのであれば、2枚DDR3Lメモリを用意し、デュアルチャネル駆動で性能を引き出したいところである。

 HDDには、HGSTブランドの「HTS725050A7E630」が採用されていた。容量は500GBと標準的だが、回転数は7,200rpmでSATA 6Gbps転送に対応するなど、モバイル向け2.5インチとしては高性能な部類に入る。無線LANモジュールはLITEON製。チップセットはヒートシンクなしで、低発熱ぶりが伺える。

本体底面。開けるパネルは2ピース構成
ネジを1本外すと、まず下部のパネルが取れ、メモリとHDDにアクセスできる
上部のパネルも取れ、無線LANカードにアクセスできるほか、チップセットも見える
チップセットはヒートシンクレスだ
HDDはHGST製で7,200rpmタイプ
光学ドライブはトレイタイプ

 本体に話を戻すと、Pavilion 15でヘアライン+光沢塗装だった天板は、マットな質感のものとなった。元々Pavilion 15でも指紋が目立ちにくいが、ProBook 455 G2ではさらに目立ちにくくなったと言えるだろう。一方、パームレストもヘアライン加工のアルミ素材で質感は高い。価格帯としては近いのだが、個人的にはProBook 455 G2の方が質感が上だと思った。

 インターフェイスは、左側面が奥からDC入力、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、HDMI、USB 3.0×2。右側面はケンジントンロックポート、光学ドライブ、USB 2.0×2、音声入出力となっている。過不足なく一通り揃っている感じであり、ビジネス用として考えれば十分だろう。

 好感が持てるのは、キーボード右奥に無線LANのオン/オフ切り替えボタンと、ミュートボタンが独立で備え付けられている点。このボタンはインジケータの役割も果たしており、無線LANオン/音声出力時にアイコンが白、無線LANオフ/ミュート時にアイコンがオレンジ色に変わる。ビジネス利用において、想定外のタイミングでの無線接続や音声の再生は禁物だと思うが、ユーザーが確実に操作/確認できる点は評価したい。

天板はつや消しのブラック。指紋は目立ちにくい
パームレストを含むフレームはヘアライン加工のアルミ製で質感は高い
左側面にはDC入力、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、HDMI出力、USB 3.0を搭載
前面にはSDカードスロットを備える
右側面には光学ドライブとUSB 2.0×2、音声入出力を搭載
電源ボタンはLEDを兼ねる
無線LANのオン/オフ、ミュートボタンは独立している
ボタンの機能が動作している時(無線LANオフ/ミュート時)はオレンジ色に光る

使いやすいタッチパッド

 それでは使い勝手を見ていこう。液晶はラッチレスで開くタイプ。近年この機構が当たり前になっているので、今更特筆すべきものではないのかもしれない。ヒンジもスムーズであり、片手で開閉できる。

 キーボードはHPのノートPCでは定番となりつつあるアイソレーションタイプ。テンキー付きながら、キーピッチは実測約19.25mmと余裕がある。一見Pavilion 15とほぼ同様だが、キーが少し大きい印象だ。キートップのアルファベットの位置も異なっており、別設計であることが伺える。

 個人的にはストロークが浅く、ペタペタした印象を受ける。ビジネス向けであるのならば、このサイズなら無理して薄型化せずもう少しストロークがあるタイプの方が好ましいのかもしれない。ただ、これも慣れの問題であろう。

 タッチパッドは幅が実測約103mm、奥行きが約54mm。Pavilion 15と決定的に異なるのは、パームレストとシームレスに繋がった一体形成型ではなく、フレームにタッチパッド用の穴が開けられ、独立している点である。おそらくこれも故障時にすぐに変えられるようにしたためであろう。

 見た目としてはPavilion 15に劣るわけだが、Pavilion 15は触った時にパームレストと間違えないよう、タッチパッド自体が立体的にドットパターンになっているのだが、本製品はツルツルとしており滑りが良い。これなら長時間使っていてもストレスが溜まることはないだろう。クリックボタンも柔らかくストロークが深めで、しっかりとした操作感がある。

テンキー付きのキーボード
キーピッチは実測で約19.25mmあった
カーソルキーは相変わらず、上下だけが半分の高さになっている
タッチパッドは独立しており操作しやすい
幅は約103mm、奥行き約54mmあり、スペースとしては十分である

 TDPがわずか17WのAPUを採用していることもあり、ベンチマーク中はキーボード上部にやや熱を持つものの、パームレストが熱くなることはなく、快適にであった。加えて騒音もディスクリートGPUを持つPavilion 15と比較すると抑えられており、アイドル時/負荷時ともに比較的静かな印象だ。

 液晶は1,366×768ドット表示対応の15.6型で、非光沢タイプ。一時期は高いコントラストを実現できるとして光沢液晶が流行していた時期もあったのだが、液晶パネルのコントラストの性能改善や、やはり映り込みが気になるというユーザーの声が多かったのか、多くのノートPCメーカーで非光沢液晶採用への回帰が見られる。この機種もそのうちの1つだと言え、蛍光灯が明るいオフィスでも映り込みが気になることはない。

 TNパネルを採用している関係上、視野角が上下/左右ともに狭いのが気になった。とは言えプライバシーが必要なオフィスにおいては、こちらの方が逆に好都合かも知れない。

TN液晶を搭載。正面から見ると気にならないものの、上下/左右ともに視野角が狭い
液晶上部にはWebカメラを搭載する
右側のパームレストには指紋センサーを内蔵する

ACは小型の45W、気になるバッテリ駆動時間は……

 ACアダプタは45Wタイプで、Pavilion 15の実に半分だ。Pavilion 15はディスクリートGPUも備えているため余裕を見越して大容量となっているが、本製品は内蔵グラフィックスのみのため、45Wで十分であろう。

 ただ本機で評価したいのは、このACアダプタのACコードが“ついに”2ピンのメガネタイプになった点である。日本HPのノートPCはこれまで多くで3ピンのACコードまたはプラグを採用していたのだが、実は5月出荷分より2ピンに順次切り替えているという。本製品もその流れの一環だ。

 BYOD(Bring your own device)=オフィスに自分が購入した機器をオフィスに持ち込んで利用する環境が進む中、オフィスでも家でもこれ1台といった時に、家に3ピンのコンセントが用意されておらず、あったとしても実際アースに繋がれていないことは、日本では決して珍しくない。また、ACアダプタをPCと一緒に持ち運ぶ時に、3ピンのケーブルはどうしてもかさばってしまう。そういう意味では、2ピンの採用は歓迎すべき変更点だ。

【10月21日訂正】記事初出時、「HP ElitePad 1000 G2」も3ピンプラグを採用しているとしておりましたが、顧客出荷分に関しては2ピンに変更されておりました。お詫びして訂正します。

 さて、Hothotレビューに初登場するKaveri搭載ノートとして、バッテリ駆動時間が気になるユーザーも多いと思われるが、いつも通りにBBenchでWeb巡回オン、キーストロークオンに設定し、液晶の輝度をオフィス内でも見やすい50%に設定して計測したところ、約5時間駆動した。

 15.6型というサイズがあるので、モバイルはあまりないと思われるのだが、企業内でピークシフトなどの活動を行なっているのであれば、十分に余裕を持って対応できる範囲である。

ACアダプタとケーブル。ついにACケーブルが2ピンのメガネタイプとなった
ACアダプタは45Wタイプで比較的小型だ

性能的にBYODには最適な1台

ヒンジ後部のHewlett-Packardの刻印。なお、米HPでは、コンシューマのHP Incと法人向けのHP Enterpriseに分社化することが発表されているので、今後この刻印がどうなるのか、気になるところではある

 約1週間強の試用期間であったが、「これなら自宅でも会社でも1台で済む」と思う製品であった。まず、Kaveri内蔵GPUは比較的強力で、FFXIのみならず、MMORPGなどミドルレンジをターゲットにした現代的な3Dゲームは楽しめる。そしてCPUもそこそこのパワーがあるため、ビジネスの日常的な作業には十分な性能が得られる。将来的にHSAに対応したアプリケーションが登場すれば、Kaveriの性能はさらに引き出せる。とても魅力的だ。

 それだけに、まず15.6型というほぼ据え置きを前提にしたサイズと重量が残念である。これが13.3型以下であれば、本気で毎日の通勤で持ち運ぼうと思うからだ。Kaveri搭載のノートPCはまだ少ないものの、日本HPとレノボという2大世界大手からリリースされたということは、今後いろんなメーカーからさまざまなサイズの製品の登場に期待したいところである。

 加えて、BTOでは4GB×2枚が選択できるものの、標準構成ではメモリが1枚になっており、ストレージも500GB HDDの選択肢しかないなど、Kaveriの全性能を引き出せていないのも気になった。とは言え本製品を自ら進んで購入する“パワーユーザー”であれば、ネジ1本外すだけでアップグレードできる道は残されているので、それほど大きな弱点ではない。唯一、現時点では基本的に法人向けに販売されているモデルである、というのがネックかも知れないが、本機をきっかけに今後は個人向けにも積極的に展開してもらいたいものだ。

(劉 尭)