~クイックテレビやHDMI入力を搭載した21.5型フルHD液晶一体型PC |
富士通の2012年夏モデルとして登場した「ESPRIMO FH56/HD」は、TVチューナを搭載した液晶一体型PCである。春モデルの「ESPRIMO FH56/GD」の後継となる製品だが、ESPRIMO FH56/GDは、1,600×900ドット20型液晶を搭載していたのに対し、ESPRIMO FH56/HDは、一回り大きく解像度も高い1,920×1,080ドット21.5型液晶に変更され、電源オフからでも素早くTV番組の視聴が可能な「クイックテレビ」機能を搭載するなど、大きく進化している。
今回は、ESPRIMO FH56/HD(以下FH56/HD)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機のため、製品版とは細部や性能などが異なる可能性がある。
●クアッドコアの第3世代Core i7を搭載ESPRIMO FHは、富士通のデスクトップPC「ESPRIMO」シリーズの中で、AV機能を重視したエンターテインメントPCとして位置付けられており、23型液晶を搭載した上位モデルと21.5型液晶を搭載した下位モデルに大別できる。21.5型液晶搭載モデルは、FH56/HDとFH54/HTの2モデルがあり、CPUやメモリ、HDDなどのスペックが異なる。今回は、21.5型液晶搭載モデルの中で上位となるFH56/HDを試用した。
FH56/HDは、春モデルのFH56/GDに比べて、液晶が一回り大きくなっているが、基本的なデザインコンセプトは変わっていない。本体を両端の足と中央のスタンドで支えるデザインになっており、中央の大きなスタンドのみで本体を支える23型液晶搭載のFHシリーズとは、デザインが異なる。額縁部分はスリムで、スッキリとしたデザインだ。左右のスイベル機能は用意されていないが、上下のチルト機能は備えており、8度から30度の範囲で調整が可能だ。ボディカラーは、スノーホワイト、シャイニーブラック、ルビーレッドの3色が用意されており、ここでは、ルビーレッドのモデルを試用した。
CPUとして、Intelの第3世代Core i7-3610QMを搭載する。Core i7-3610QMは、クアッドコアのノートPC向けCPUであり、最大8スレッドの同時実行が可能だ。メモリは標準で8GB実装されており、最大16GBまで増設が可能だ。HDDの容量も2TBと大きく、TV番組を録画しても余裕がある。光学ドライブとしては、BDXLドライブを搭載する。
FH56/HDは、最新の第3世代Core i7を搭載するなど、PCとしての基本性能は高い。単体GPUを搭載しているわけではないので、最新ゲームを遊びたいという人には向かないが、それ以外の用途なら十分な性能を誇る。
●視野角が広いIPS液晶を採用
FH56/HDは、春モデルのFH56/GDに比べて液晶が一回り大きくなり、解像度も1,920×1,080ドットに向上していることが魅力だ。視野角が広いIPS方式の液晶パネルを採用しており、複数人でテレビを視聴する場合でも、美しい映像を楽しめる。液晶パネルは、ベゼル部分と一体化したフラットパネルで覆われており、外観も美しい。フラットパネルは光沢タイプで、外光の映り込みがやや気になることがあるが、発色は鮮やかで、コントラストも高い。液晶上部には、有効画素数約92万画素のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できるほか、独自の顔検出技術「Sense YOU Technology」を搭載し、映像や音楽を再生中に離席すると自動的に一時停止し、席に戻ると自動的に再生を開始させることも可能だ。
キーボードとしては、アイソレーションのワイヤレスキーボードが付属している。コンパクトで、使わないときには本体の下に収納できる。マウスは、進む・戻る機能付きのワイヤレスレーザーマウスが付属する。また、赤外線方式のリモコンも付属しており、離れた場所からでもAV機器感覚で操作が可能だ。
●新たにHDMI入力を搭載し、他の機器の映像を表示できる
FH56/HDは、インターフェイスも充実しており、USB 3.0×2、USB 2.0×3、有線LANのほか、春モデルでは搭載していなかったHDMI入力端子も搭載している。他社の一体型PCでは、HDMI入力端子を備えた製品が増えてきており、富士通も23型FHでは搭載していたが、21.5型でも追いついた形だ。HDMI入力端子に、家庭用ゲーム機やBDレコーダーなどを接続することで、FH56/HDを液晶ディスプレイとして利用できる。上部のボタンを押すことで、PCを起動せずに、ディスプレイ部分だけの電源を入れることが可能なことも嬉しい。フルHD対応なので、液晶ディスプレイとしても実用的に利用できる。
左側面には、ダイレクト・メモリースロットとUSB 3.0、USB 2.0(電源オフUSB充電機能対応)が用意されている | 右側面には、光学ドライブとUSB 2.0が用意されている | 背面の端子部分のアップ。USB 2.0やUSB 3.0×2、有線LANなどのほか、HDMI入力も用意されている |
●クイックテレビ+デジタル3波×2を搭載
TV機能が充実していることも魅力だ。地上/BS/110度CSデジタル放送対応チューナを2系統搭載し、2番組同時録画が可能なことに加え、新たにクイックテレビと呼ばれる機能を搭載。クイックテレビは、上記のチューナとは別の地デジ専用チューナを搭載し、WindowsやTV視聴録画用アプリケーション「DigitalTVbox」を起動せずに、電源オフの状態からでも約5秒で、TV番組の視聴が可能になるという機能だ。クイックテレビでは、地上デジタル放送の視聴しかできないが、いったん電源を落としてしまうと、WindowsをTV視聴用アプリケーションの起動にはかなり時間がかかるので、素早く視聴できるのは嬉しい。クイックテレビ用チューナとデジタル3波×2のチューナは完全に別系統なので、miniB-CASカードスロットも2つあり、両方にminiB-CASカードを装着する必要がある。
付属の赤外線リモコンにも、「アプリ」と「電源」の2つのボタンが用意されており、電源オフの状態で、「電源」を押すと、クイックテレビ機能が起動する。実際に試したところ、ボタンを押してから番組が表示されるまで2秒もかからず、一般的なテレビと比べても遜色のないレスポンスであった。TVを見るためだけに、Windowsとアプリの起動を待つ必要がないので快適だ。また、電源オフの状態で、リモコンの「アプリ」ボタンを押すと、まずクイックテレビ機能が起動し、その裏でWindowsとDigtalTVBoxの起動が行なわれ、DigitalTVboxの起動が完了すると、自動的に切り替わり、同じ番組が表示される。なかなかよく考えられた機能だ。
サウンドについてもこだわっており、音質に定評のあるオンキヨー製スピーカーを搭載。また、電源オフでも外部に繋いだ機器からのサウンドを再生できるパワーオフスピーカー機能も搭載している。電源はACアダプタから供給されるようになっており、ACアダプタも比較的小さい。
●PCとしての基本性能は高い
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。
比較用として、NECパーソナルコンピュータ「VALUESTAR N VN770/FS」、NECパーソナルコンピュータ「LaVie L LL750/HS」、日本HP「HP ENVY14-3000 SPECTRE」の値も掲載した。 VALUESTAR N VN770/FSは、FH56/HDと同じ液晶一体型PCだが、2011年の9月に発売された製品であり、CPUが1世代古い。そのため、PCMark Vantageの総合スコアは、FH56/HDのほうが約40%、PCMark 7の総合スコアは約56%も高くなっている。そのほか、グラフィックス系ベンチマークのスコアも、FH56/HDは優秀である。LaVie L LL750/HSは、FH56/HDと同じCore i7-3610QMを搭載しているため、CPUやグラフィック周りの性能はほぼ互角だが、HDDの性能がFH56/HDの方が高いため(FH56/HDは3.5インチHDDを搭載しているのに対し、ノートPCのLaVie L LL750/HSは2.5インチHDDを搭載)、総合スコアはやはりFH56/HDが上回っている。単体GPUは搭載していないが、クアッドコアということもあり、動画エンコードなどの作業にも向いている。一体型PCとしては十分な性能といえるだろう。
ESPRIMO FH56/HD | VALUESTAR N VN770/FS | LaVie L LL750/HS | HP ENVY14-3000 SPECTRE | |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-3610QM (2.30GHz) | Core i7-2670QM (2.20GHz) | Core i7-3610QM (2.30GHz) | Core i7-2677M (1.80GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 3000 |
PCMark05 | ||||
PCMarks | 12082 | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 11195 | 10075 | 11541 | 8032 |
Memory Score | 8923 | 7590 | 9076 | 5761 |
Graphics Score | 7178 | 4908 | 7112 | 4134 |
HDD Score | 9653 | 6624 | 5910 | 31003 |
PCMark Vantage 64bit | ||||
PCMark Score | 10682 | 7494 | 8953 | 10428 |
Memories Score | 6112 | 4934 | 5432 | 5722 |
TV and Movie Score | 6634 | 5493 | 6275 | 4355 |
Gaming Score | 8068 | 6353 | 7028 | 7614 |
Music Score | 9691 | 7229 | 7884 | 12181 |
Communications Score | 12868 | 9961 | 11311 | 11523 |
Productivity Score | 7911 | 4463 | 5434 | 11867 |
HDD Score | 6080 | 3943 | 4190 | 23829 |
PCMark Vantage 32bit | ||||
PCMark Score | 10112 | 7203 | 8531 | 9625 |
Memories Score | 5638 | 4734 | 5199 | 5404 |
TV and Movie Score | 6590 | 5409 | 6201 | 4348 |
Gaming Score | 6601 | 5727 | 6412 | 6240 |
Music Score | 8296 | 6762 | 7345 | 11849 |
Communications Score | 12341 | 9943 | 11126 | 10924 |
Productivity Score | 7149 | 4170 | 5057 | 10684 |
HDD Score | 6206 | 4056 | 4178 | 23897 |
PCMark 7 | ||||
PCMark score | 4085 | 2619 | 2876 | 3431 |
Lightweight score | 2546 | 1967 | 2013 | 3560 |
Productivity score | 2173 | 1556 | 1633 | 2878 |
Creativity score | 7135 | 4942 | 4843 | 6276 |
Entertainment score | 4027 | 2518 | 3043 | 2500 |
Computation score | 20862 | 10892 | 12435 | 8773 |
System storage score | 2208 | 1738 | 1528 | 4310 |
3DMark03 | ||||
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 14729 | 10682 | 14651 | 7834 |
CPU Score | 2235 | 1828 | 2290 | 1600 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
HIGH | 5478 | 4513 | 5704 | 3910 |
LOW | 7491 | 6648 | 7609 | 6378 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | ||||
DP | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.97 |
HP | 100 | 99.97 | 100 | 100 |
SP/LP | 99.97 | 99.97 | 99.97 | 100 |
LLP | 100 | 100 | 100 | 99.97 |
DP(CPU負荷) | 5 | 6 | 6 | 19 |
HP(CPU負荷) | 2 | 3 | 3 | 9 |
SP/LP(CPU負荷) | 1 | 2 | 2 | 7 |
LLP(CPU負荷) | 1 | 2 | 1 | 5 |
CrystalDiskMark 2.2 | ||||
シーケンシャルリード | 150.8MB/s | 111.0MB/s | 107.6MB/s | 221.3MB/s |
シーケンシャルライト | 143.6MB/s | 118.6MB/s | 108.5MB/s | 193.2MB/s |
512Kランダムリード | 53.90MB/s | 44.70MB/s | 37.03MB/s | 161.8MB/s |
512Kランダムライト | 128.4MB/s | 59.40MB/s | 55.82MB/s | 195.8MB/s |
4Kランダムリード | 0.750MB/s | 0.610MB/s | 0.436MB/s | 11.52MB/s |
4Kランダムライト | 1.007MB/s | 1.217MB/s | 1.360MB/s | 40.50MB/s |
●HDMI入力端子やクイックテレビ機能の搭載により、魅力が向上
FH56/HDは、春モデルのFH56/GDと比較して、CPUが第3世代Core i7に強化され、液晶のサイズと解像度も向上しただけでなく、HDMI入力端子やクイックテレビ機能の搭載により、TVチューナ搭載液晶一体型PCとしての使い勝手が大きく向上した。幅広い用途に対応できる製品であり、液晶ディスプレイとしても利用できるので、部屋に余計なものを増やしたくないという人にも最適だ。
(2012年 5月 31日)
[Text by 石井 英男]