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富士通「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」

〜防水防塵対応のWindows 8タブレット

富士通「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」
発売中

価格:オープンプライス(直販74,800円〜)

 富士通は、ピュアタブレットスタイルのWindows 8タブレット「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」を発売した。開発コードネーム「Clover Trail」でおなじみのSoC「Atom Z2760」を採用することで、10.1型液晶搭載のAndroidタブレットに匹敵する薄型軽量ボディを実現するとともに、防水、防塵仕様にも対応する、魅力的な製品に仕上がっている。

Androidタブレット顔負けの薄型軽量ボディを実現

 「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」(以下、QH55/J)の特徴は、圧倒的な薄型軽量ボディを実現している点だろう。過去に発売されたWindowsスレートPCでも、省電力CPUのAtomプロセッサを採用することで、ファンレス仕様を実現した製品も一部存在していたが、重量は1kg前後とやや重く、サイズもやや大きいものが少なくなかった。それに対し、ARMベースのプロセッサを採用するAndroidタブレットは、低消費電力かつ低発熱という特徴を活かし、薄型軽量ボディを実現する製品が多い。WindowsスレートPCとAndroidタブレットでは用途が大きく異なるため、直接比較することにあまり意味はないが、単純にハードウェアだけを比較すると、Androidタブレットの方に魅力があると感じる場面も少なくない。

 しかしQH55/Jは、本体サイズが264.4×169.4×9.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は公称で約574g、実測でも554.5gと、圧倒的な薄型軽量ボディを実現している。実際に本体を手に持ってみても、その軽さにかなり驚いてしまう。筆者はMotorolaのAndroidタブレット「XOOM Wi-Fi」を普段利用しているが、フットプリントこそXOOM Wi-Fiの方が小さいものの、高さはQH55/Jが4mmほど薄く、重量は実測で140g以上軽い。双方とも液晶サイズは同じだが、手に持って比べるとQH55/Jの方が魅力を感じる。

 これだけの薄型軽量ボディを実現できたのは、プロセッサとしてIntelの最新SoC「Atom Z2760」を採用しているからだ。Atom Z2760は、Atom Z670の後継プロセッサで、デュアルコアのCPUコアやGPU「PowerVR SGX 545」、各種I/Oコントローラなどを1チップに統合したもの。動作クロックは標準1.5GHz、最大1.8GHzで、Hyper-Threadingテクノロジーもサポートするため4スレッド処理が可能。それでいて、TDPは1.7Wと非常に低い。このため、冷却機構を簡略化でき、薄型軽量化を突き詰めやすい。ちなみに、QH55/Jはファンレス仕様となっており、これも薄型軽量化にとって大きなプラスとなっている。

本体正面。Windows 8 UIを表示した状態ではWindows RT機と区別が付かないが、OSはWindows 8を採用している
フットプリントは264.4×169.4mm(幅×奥行き)。同サイズの液晶を搭載するMotorola製のAndroidタブレット、XOOM Wi-Fiより幅、奥行きとも若干大きい
下部側面。側面はブルーの塗装となっている
左側面。高さは9.9mmと1cmを切る薄さで、前方から後方まで均一の高さとなっている
XOOM Wi-Fi(右)と高さを比較してみると、QH55/Jの薄さがよくわかる
上部側面。こちらも下部側面同様にブルーの塗装が施され、中央部をえぐり取ったような形状となっている
右側面。左右側面のカラーはブラックで、曲面を取り入れた形状となっている
裏面はブラックで、これといった装飾もなくシンプルだ
重量は実測で554.5gと600gを大きく下回っている。実際に手に持つとかなり軽く感じる。

防水、防塵仕様も実現

 QH55/Jは、単なる薄型軽量タブレットというわけではない。これだけの薄型軽量ボディを実現しつつ、日本市場向けスマートフォンなどでおなじみの、防水、防塵仕様も実現している。防水性能はIPX5/IPX7/IPX8相当、防塵性能はIP5X相当。防水性能に関しては、水がかかるだけでなく、水の中に沈めても問題のないレベルとなっており(「外部接続端子キャップをしっかりと閉じた状態で、常温で水道水、かつ静水の水深1.5mのところに静かに沈め、約30分間放置後に取り出してもタブレットとしての機能を有する」とされている)、かなり優れたものだ。実際に、シャワーで水をかけたり、浴槽の水の中に沈めたりしてみたが、もちろんその後もまったく問題なく動作した。もちろん、優れた防水性能を備えているからとはいっても、無闇に水に沈めていいというわけではないが、少なくとも台所や風呂などの水回りはもちろん、野外でも安心して利用できる。

 同じ富士通製のスマートフォン「ARROWS V F-04E」などでもIPX8相当の防水性能を備えているが、そのスマートフォンでの技術が活かされていると考えていいだろう。どちらにしても、防水、防塵仕様を実現するタブレットは、Androidタブレットを含めてもなり数が少なく、ほかのタブレットに対する大きな優位点と言えるだろう。

QH55/Jは、IPX5/IPX7/IPX8相当の防水性能とIP5X相当の防塵性能を実現。キッチンや風呂など、水回りでの利用も全く問題ない
側面ポートは、パッキンが取り付けられた蓋で覆われている。もちろんこの蓋をしっかり閉じた状態でなければ防水性能は発揮されない
ヘッドフォンジャックは蓋で覆われていないが、しっかり防水防塵対応となっているので安心だ

10.1型IPS液晶を搭載

1,366×768ドット表示対応の10.1型液晶を採用。パネルの種類はIPSで、広い視野角を確保。パネル表面は光沢処理のため、発色は鮮やかだが外光の映り込みは気になる

 液晶パネルには、1,366×768ドット表示対応の10.1型液晶を採用している。Androidタブレットでは、同じ10.1型でもフルHD表示に対応した液晶パネルを採用する製品もあるが、このサイズなら1,366×768ドット表示でも大きな問題はなく、十分精細な映像が表示される。IPSパネルを採用しているため視野角は十分に広く、見る角度が多少変わっても発色や明るさの変化はほとんど感じられない。パネル表面は光沢処理が施されているため、発色は非常に鮮やかだが、外光の映り込みはかなり気になる。

 液晶表面のタッチパネルは静電容量方式で、10点マルチタッチに対応する。また、パネル表面は「スーパーグライドコーティング」と呼ばれる特殊な処理が施されており、非常になめらかなタッチ操作が可能。実際にWindows 8 UIの操作は軽快に行なえ、通常時の操作性の不満はない。ただし、浴室で利用する場合など、液晶面に水滴が付いている状態では、タッチ操作時の誤動作が多くなり、操作性が大きく低下してしまう。この点は少々残念だ。

側面ポートは最低限

 側面に用意されているポートは、Windows 8タブレットとしては少なく、左側面にMicro USB 2.0ポートと64GB microSDXCカードに対応する「ダイレクト・メモリースロット」、上部側面にヘッドフォンジャックが用意されるだけとなっている。USBポートに各種USB機器を接続して利用する場合には、付属のUSB変換ケーブルを利用することになるため、やや面倒だ。ちなみに、これらポートのうちMicro USBとダイレクト・メモリースロットはパッキンの付いた蓋で覆われており、防水性能を保つためにはしっかりとこの蓋を閉じる必要がある。ヘッドフォンジャックには蓋は付いていないが、この状態でも防水性能が確保されているので心配はない。

 カメラ機能は、裏面側のアウトカメラと液晶面のインカメラの2つ搭載する。アウトカメラは約800万画素、インカメラは約200万画素で、アウトカメラの画質はまずまずといったところだ。

 本体には電源コネクタは用意されず、充電は付属の充電用クレードルを利用して行なうことになる。そのため、本体下部側面には充電用の専用端子が用意されている。また、充電台を利用するだけでなく、Micro USBポートを利用した充電にも対応。実際に、2A出力に対応するUSB充電アダプタや携帯型バッテリで試してみたところ、問題なく充電できることを確認した。外出時に充電用クレードルを持ち出さずとも、USB経由で充電できる点は嬉しい。

 基本スペックは、Atom Z2760搭載Windows 8タブレットとして標準的だ。メインメモリはPC2-8500準拠LPDDR2 SDRAMを標準で2GB搭載しており、増設は不可能。Atom Z2760では最大2GBがプロセッサの仕様だ。内蔵ストレージは64GBのSSDを搭載。無線機能はIEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANとBluetooth 4.0を標準搭載。また、センサー類としては、GPS、加速度センサー、電子コンパス、照度センサー、ジャイロセンサーを内蔵する。

左側面の蓋を開けると、Micro USB 2.0ポート(左)と、microSDXCカード対応のダイレクト・メモリースロット(中央のスロット)が現れる。ダイレクト・メモリースロットの右にはSIMカードスロットと思われるスロットもあるが、3G/LTE非対応のため利用できない
Micro USBポートに付属のUSB変換ケーブルを接続することで、通常のUSB機器が利用可能
上部側面にはヘッドフォンジャックを備える
右側面には物理ボタンを配置。左から画面回転ロックボタン、ボリュームボタン、電源ボタンだ
液晶面下部のWindowsボタンはタッチセンサー式
液晶面には約200万画素のカメラを搭載。右には照度センサーも見える
裏面には約800万画素のカメラを搭載。画質はまずまずだ
底面には、付属の充電用クレードル経由で充電を行なうための端子が用意されている
付属の充電用クレードル。内蔵バッテリの充電は基本的にこのクレードルに本体を置いて行なう
付属のACアダプタ。サイズはかなりコンパクトだ
本体に電源コネクタはなく、ACアダプタは付属の充電用クレードルの電源コネクタに接続して利用する
ACアダプタと電源ケーブルを合わせた重量は実測で189g(タグが付いているため、実際には数g軽い)。ただ、本体に電源コネクタがないため、基本的に持ち歩くことはない
バッテリの充電は、本体のMicro USB経由でも可能。実際に、USB充電アダプタやモバイルバッテリなどを利用した充電が可能だった

Windows 8スタイルUIでの動作は十分に快適

 QH55/Jは、プロセッサにAtom Z2760を採用していることからもわかるように、Windows 8がそのまま動作するタブレットPCだ。ARMプロセッサで動作するWindows RTと違い、通常のWindows用ソフトもそのまま動作する。そのため今回は、通常通りのベンチマークテストを行なった。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.0.4」、「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」の4種類。比較用として、日本エイサーの「Aspire S7-391-F74Q」、東芝の「dynabook R822」、パナソニックの「Let'snote AX2」の結果も加えてある。また、PCMark Vantageは一部テストが正常に計測できなかったため、計測できたスコアのみを掲載している。

  ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J Aspire S7 dynabook R822 Let'snote AX2
CPU Atom Z2760 (1.50/1.80GHz) Core i7-3517U (1.90/3.00GHz) Core i5-3317U (1.70/2.60GHz) Core i5-3427U (1.80/2.80GHz)
チップセット Inte HM77 Express Inte HM76 Express Inte QM77 Express
ビデオチップ Intel GMA Intel HD Graphics 4000 Intel HD Graphics 4000 Intel HD Graphics 4000
メモリ PC2-8500 LPDDR2 SDRAM 2GB PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB
ストレージ 64GB SSD 128GB SSD 256GB SSD 128GB SSD
OS Windows 8 Windows 8 Windows 8 Windows 8 Pro
PCMark 7 v1.0.4
PCMark score 1414 4879 4421 4915
Lightweight score 921 3048 2823 3216
Productivity score 574 2177 2034 2326
Creativity score 2963 9609 8612 9362
Entertainment score 1016 3445 2983 3526
Computation score 3787 18061 14451 17982
System storage score 2980 4955 5214 5158
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite N/A N/A N/A N/A
Memories Suite 1051 7147 7025 7707
TV and Movies Suite N/A N/A N/A N/A
Gaming Suite 1759 9352 7786 10130
Music Suite 3065 12664 13577 15823
Communications Suite N/A N/A N/A N/A
Productivity Suite N/A N/A N/A N/A
HDD Test Suite 6059 40386 41122 38270
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score N/A N/A N/A N/A
CPU Score 2126 9150 7809 8389
Memory Score 2062 7802 6367 7323
Graphics Score 527 2793 2416 2752
HDD Score 6563 47585 49568 44636
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score 457 5102 4511 5159
SM2.0 Score 174 1665 1435 1776
HDR/SM3.0 Score 146 2142 1931 2095
CPU Score 960 3451 3051 3298
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ 3.4 7.1 6.9 7.0
メモリ 4.7 5.9 5.9 5.9
グラフィックス 3.7 5.4 4.8 5.5
ゲーム用グラフィックス 3.2 6.4 6.2 6.4
プライマリハードディスク 5.8 8.1 8.1 8.1
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット 2392 1869 2280
ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版
横1,280ドットフルスクリーン 283 451 571

 結果を見ると、さすがにCore i5やCore i7を搭載する比較機種よりも大幅にスコアが低くなっていることがわかる。CPU処理能力の低さ、統合GPUの描画能力の低さ、eMMC接続NANDフラッシュメモリの遅さなど、全てが影響していると考えられる。また、実際にQH55/JをWindows 8のデスクトップモードで利用してみても、動作はかなり重く感じる。ソフトの起動はかなり遅いし、動作も重い。Officeなどのビジネス系ソフトでも動作の重さがはっきりと体感できるほどだ。

 ただ、これはAtom Z2760を採用しているということから、ある程度予想できることでもある。今回は、Atom Z2760の従来モデルであるAtom Z670搭載機との比較はできなかったが、過去にAtom Z670搭載タブレットを利用した時に感じた重さに比べると、かなり軽々と動作しているという印象を受けた。このあたりは、デュアルコア化などプロセッサ自体の進化による処理能力の向上と、Windows 8の動作の軽さによるものと考えられる。

 従来のWindowsソフトが動作するデスクトップモードでは、やや動作が重いという印象があったのに対し、Windows 8 UIやWindowsストアアプリの動作は、特に不満を感じることなく軽快だった。ストアアプリ版のIE 10はもちろんのこと、そのほかのアプリも快適に動作し、これなら十分に常用できると感じる。また、H.264形式やWMV形式のフルHD動画を再生させてみたところ、コマ落ちを感じずスムーズに再生できたし、YouTubeやニコニコ動画などのWeb動画も同様だった。Windows 8 UIで利用している限りでは、動作の重さに不満を感じる場面は非常に少ない。QH55/Jはピュアタブレットスタイルのデバイスであり、Windows 8 UIでの利用が中心となる。そういった意味では、デスクトップモードでのベンチマークテストの結果はそれほど重視する必要はないだろう。

【動画】Windows 8 UIは快適に動作する

 次にバッテリ駆動時間だ。QH55/Jには容量29Whのリチウムポリマーバッテリが内蔵され、公称で約10.5時間(動画再生時)の連続駆動が可能とされている。そして、Windowsの省電力設定を「バランス」に設定(省電力設定はバランスのみが用意されている)し、バックライト輝度を40%、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測してみたところ、約9時間51分の駆動を確認した。また、H.264形式のフルHD動画を本体内に保存し、Windowsストアアプリの「ビデオ」で連続再生した場合では、約9時間30分だった。公称には1時間ほど届かなかったが、どちらも9時間を大きく超える駆動時間となっており、タブレットデバイスとして十分に満足できる結果だ。

バッテリ駆動時間
(電力設定「バランス」、バックライト輝度40%、無線LANを有効にした状態で計測)
BBench 約9時間51分
H.264フルHD動画連続再生 約9時間30分

 QH55/Jは、プロセッサにAtom Z2760を採用することで、Windows 8タブレットながら非常に薄く軽いボディを実現。しかも、防水防塵で場所を問わず利用できる。上位CPUを搭載する製品に比べるとパフォーマンスが劣るのは事実だが、Windows 8 UIは快適に動作し、連続駆動時間も9時間以上を十分に狙える。その上で、動作がやや重いとはいえ、通常のWindows用ソフトもそのまま動作する。

 QH55/Jがターゲットとするのは、Windows 8マシンとしてメインで活用するというのではなく、WindowsストアアプリでWebの閲覧やメール送受信、SNSを活用したり、動画や音楽を再生しつつ、必要な時には仕事などで利用する文書ファイルなどを閲覧、修正するといったものだ。そういった用途は、本来はWindows RTがターゲットとしている部分。とはいえ、QH55/Jのように軽量で防水防塵にも対応し、10時間近くのバッテリ駆動を実現し、通常のWindowsソフトも動作するWindows 8タブレットが登場した今となっては、Windows RT機の存在意義が大きく失われたと言っても過言ではない。そういった意味でも、QH55/Jは現在販売されているWindows 8タブレットやWindows RTタブレットの中で、最も注目すべき存在であり、大いにおすすめしたい製品だ。

 ただ、QH55/Jにも弱点がないわけではない。それは価格だ。実売価格は比較的こなれてきたとはいえ、市販モデルの約10万円前後という実売価格はやや高く感じる。市販モデルではOffice Home and Business 2010が付属しているため、その価格が上乗せされていると考えると納得できる範囲内ではあるが、Officeが不要なユーザーにとっては、さすがに高く感じてしまうはず。その場合には、富士通の直販サイト「富士通WEB MART」の直販モデルを選択すればいいだろう。そちらなら、直販価格は74,800円からとなっており、常に何らかの割引クーポンが用意されているため、さらに安価に購入できる可能性が高い。直販サイトでは、登場直後は一時納期が1〜2カ月となっていたが、現在は解消されているようなので、購入を考えている人はチェックしてみることをおすすめする。

(平澤 寿康)