Transmeta、Crusoe Seminar 2001を開催
~0.13μmプロセスのTM5800を国内先行発表~

Transmeta創設者/最高技術責任者のDavid R.Ditzel氏
6月14日開催

会場:ラフォーレミュージアム六本木


 米Transmetaは、「企業におけるモバイルの徹底活用」をテーマにした国内初のイベント「Crusoe Seminar 2001」をラフォーレミュージアム六本木で開催した。Transmetaの創設者であり、最高技術責任者のDavid R.Ditzel氏の基調講演では、0.13μmプロセスルールを採用した「Crusoe TM5800/TM5500」が国内先行発表されたほか、今後のロードマップなども明らかにされた。

 David R.Ditzel氏は、日本語で挨拶したあと、Transmetaを創設した理由から述べ始めた。Ditzel氏は、'95年当時、モバイルへのニーズ、通信とコンピュータの融合、1日中使用できるバッテリ、軽量化、ノイズ発生源となりうる冷却ファンの問題など、将来に対する明確なビジョンを持っていたという。しかし、当時のマイクロプロセッサの方向は、見当違いの方向へ進んでいたと述べた。

 マイクロプロセッサは、既に'95年にコーヒー1杯を暖めても余るほどの熱を出しており、将来は原子炉の温度を超えてしまうと語った。また、クロックあたりの命令量は'95年以降向上しておらず、Pentium Pro以降のCPUではいずれもクロックあたりの命令数が4にとどまっていることを指摘し、スーパースカラー技術は行き詰まり、多くの問題をシリコンに頼りすぎていると述べた。

 Crusoeは、VLIW(Very Long Instruction Word)ハードウェアと、CMS(Code Morphing Software)によって実現されている。VLIWとCMSにより、少ないトランジスタで高速なチップを実現可能で、トランジスタが多すぎることが電力問題の原因となり、チップが発熱する原因になると語った。

プロセッサの発熱量はどんどん増え、将来は原子炉の温度を超えてしまうという Intelのプロセッサではクロックあたりの命令量は4のまま向上していない

 Ditzel氏は、プロセッサを自動車に例え、「これまでのプロセッサを車に例えると常に100km/hでしか走れない、時には加速や減速も必要だ」とし、LongRunではアプリケーション実行直後は、100%の能力で起動し、徐々にアプリケーション持続に必要なレベルまで周波数と電圧を下げていくと説明した。また、Crusoeでは既にDDRメモリをサポートしていることも強調した。DDRメモリは、SDRに匹敵する低コスト化が可能で、低消費電力、パフォーマンスの向上が特徴であり、まさにCrusoeの特徴を表わしているとした。

LongRunの動作 DVD再生開始時は消費電力は高い(左)が、だんだん消費電力が少なくなっていく(右)

 さらに、2000年には、日本のメジャーなメーカーの多くがCrusoeを搭載したノートPCを発表したことを挙げ、バッテリ寿命や、システム重量の軽量化、冷却ファンのノイズ低減など、Crusoeの優位性をデータが実証していると述べた。また、数カ月前にIntelは「Crusoeと同じ高速演算処理能力と、Crusoeと同じ低消費電力」を実現したチップを発表すると述べたことを挙げ、「Intelが言い忘れていることは、この2つの機能を1つのチップでは実現できず、それぞれ別のチップで実現していることだ」として、Crusoeの優位性を主張した。

 続いてDitzel氏は、モバイルPentium IIIとCrusoeでDVD再生時におけるCPUの消費電力を比較するビデオを上映し、同じアプリケーション動作時にPentium IIIに比べ、Crusoeの消費電力が少ないことを強調し、2000年はCrusoeが業界をリードしたと語った。

 Crusoeが次に実現するものは、シリコン改良とCMSの改良によりムーアの法則を打破することだと述べた。命令セットが完全にソフトウェアで実現されているCrusoeでは、最大6カ月ごとにソフトウェアが改良され、ムーアの法則より迅速な進歩が可能だという。最新のCMS 4.2.0では同一のチップでWinDVDや、Quakeなどを動作させた場合、CMS 4.1.7に比べ、2~42%の低消費電力化と、パフォーマンスの向上が可能だとした。

CMS 4.2での消費電力 CMS 4.2で28%高速化するという

 同社では、6月26日からニューヨークで開催される「PC Expo in NYC」で発表が予定されているTM5800/TM5500を先行公開した。TM5800/TM5500は0.13μmプロセスで製造され、ダイサイズは55平方mmと大幅に縮小した。また、128bit VLIWと新たなCMS 4.2で動作する。TM5800は512KB、TM5500は256KBのL2キャッシュを搭載し、動作周波数は600MHz~1GHzが用意される。0.13μmテクノロジの採用により、周波数の高速化、生産コストの低下が可能になると述べ、TM5800はIntelを大きく超えると自信のほどを語った。

0.13μmプロセスで製造されるTM5800(左)と、低電圧版Pentium IIIと比較したTM5800のパフォーマンス(左)

 また、今後のロードマップについても明らかにされた。2002年には、次世代の256bit VLIWが登場し、2~3倍のパフォーマンス向上が可能になるという。そのほか、50%の小型化と、消費電力を半分に低減した高統合性“システム・オン・チップ”も登場するという。

 また、Crusoeを使ったサーバーも紹介された。データセンターでは、限られた場所と電力で、できるだけ多くの処理パワーを引き出す必要があると述べ、前Compaqサーバー部門のエンジニアが創設したRLX Techonologiesが開発した、Crusoe搭載ラックマウントSuper Dense Server(超高密サーバー)を紹介した。Crusoeの搭載により、光熱費が従来の1/5~1/10に低減できたほか、1ラックあたりのCPUの実装密度が8倍になったという。

 Crusoeは、ブレードと呼ばれるボードにメモリ/HDDと共に実装され、3Uのボックスに24ブレード実装できる。このボックスを1ラックに装着することで、ラックあたり336CPUのサーバーが実現できるという。最大消費電力5kWの42Uラックで比較した場合、1ラックあたりのWebページ/secは、Pentium IIIを採用した場合に比べ6倍以上になるという。

2002年に登場するという256bit VLIWと、50%の小型化と低消費電力化を実現する統合型“システム・オン・チップ” RLX Technologiesが開発したCrusoe搭載超高密サーバー
 最後に、将来のモバイルコンピュータについて語られた。同社は、Microsoftが試作し、Windows XPを搭載したTablet PCの開発で、Microsoftと協力している。Ditzel氏によれば、次世代ハンドヘルドPCは、Windows XPの後継バージョンがベースになるという。構成要素は、1GHz以上のCrusoe“システム・オン・チップ”で、2つの1GbitDRAMチップで256MB、硬貨大の10GB HDD、2,048×1,600ドットの有機ELディスプレイ、3G/802.11ワイヤレスネットワーク対応で、OSにWindows XPを搭載し、Tablet PC v3.0ソフトウェアが搭載されると語り、「これらは不可能ではない、すべての要素が手の届く範囲にある。Crusoeがこの構想を現実のものにする」と締めくくった。

 なお、会場では14日に発表されたカシオのCASSIOPEIA FIVA「MPC-206VL」など、各社のCrusoe搭載機の展示も行なわれた。

カシオ、CASSIOPEIA FIVA「MPC-206VL NEC米沢の小型サーバー「CS56 NEC米沢のペンコンピュータ「CW56

シャープのMebius 「PC-SX1-H1 東芝 Libretto「L1/060TNMM 日立製作所のIA端末「FLORA-ie 55mi

富士通「FMV-BIBLO LOOX ソニー VAIO C1「PCG-C1VS」と、VAIO GT「PCG-GT1 NECの「LaVie MX

□Transmetaのホームページ(英文)
http://www.transmeta.com/
□Crusoe Seminar 2001のホームページ
http://info.nikkeibp.co.jp/crusoe/
□関連記事
【6月12日】Transmeta、国内初のイベント「Crusoe Seminar 2001」開催
~セミナーをインターネットでライブ中継~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010612/transmeta.htm

(2001年5月14日)

[Reported by taira@impress.co.jp]

I
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】

【Watch記事検索】


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp

Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.