トピック

資料のイラストに困ったら5分でAI生成!商用利用での疑問もアドビに聞いてきた

アドビ マーケティング本部 マーケティングマネージャーの轟啓介氏(左)と、法務政策渉外本部 取締役・本部長 弁護士の浅井孝夫氏(右)

 クライアント向けの提案資料や社内資料にちょっとした挿絵を入れたい――でも素材サイトを探す時間はないし、生成AIは「商用利用できないのでは」と二の足を踏んでいないだろうか?実は、いろいろある生成AIの中で、「Adobe Firefly」は商用利用を前提に設計されており、ビジネス資料の挿絵作りにこそ向いている。本記事では、ビジネスパーソンが安心してFireflyを使える理由と、資料用イラストを数分で用意する手順について、実際の作成画面とともに解説する。

 今回の記事制作にあたり、アドビ マーケティング本部 マーケティングマネージャーの轟啓介氏と、法務政策渉外本部 取締役・本部長で弁護士でもある浅井孝夫氏に話を伺った(以下、敬称略)。

資料に「あと1枚」の挿絵が欲しい、その手間を生成AIが消す

――ビジネス資料に挿絵を1枚加えたいとき、多くの人は素材サイトでの検索に多くの時間をかけてきました。Fireflyはこの「あと1枚」の手間をどのように変えるのでしょうか?

轟:僕も資料を作るとき、生成AIが出てくるまでは素材サイトで探していて、下手をすると数枚を選ぶのに1時間くらいかかることもあり、非常に大変な思いをしていましたね。しかし、生成AIが使えるようになってからは、その「あと1枚」を用意する手間が数十秒から数分で完結するようになりました。プロンプトを入力して、ほしい画像を生成し、その中からどれがよいか選ぶ時間を含めても、大体5分以内に収まるのではないかと思います。

 この時短効果は非常に大きいです。これまでは素材を「探す」だったのが、いまでは「作る」という感覚に変わっています。そこは大きな変化だと感じています。

――生成AIの強みはどこにあるのでしょうか?

轟:生成AIはプロンプトで細かく指示できるところが強いです。漠然と「こういう画像がほしい」とするのではなく、たとえば「右側に余白を空けて、テキストを入れられる構図で」といった具体的な指示が可能です。これを素材サイトで探すのはかなり困難でしょう。

 ほかにも、自社のブランドカラーに合わせた配色を指定するなど、明確な指示を出すことで、イメージ通りのものにたどり着く最短ルートを作れる点が強みですね

生成AIは商用利用NG? ビジネス利用で本当に気になる点

――生成AIで作った画像の商用利用に対して疑問や不安を感じている方が多い印象です。ビジネスで使う場合はより高い信頼性が必要になりますが、生成AIで商用利用が問題になり得るのはどのようなケースなのでしょうか?

浅井:まず大前提として、生成AIで作ったからといって、それだけで商用利用できないということはありません。商用利用における課題は大きく分けて2つあると考えています。

 第1の段階は、そもそも商用利用が認められていない、あるいはできないツールであるにもかかわらず、それを業務などで使用してしまっているというツール自体の規約に関する問題です。

 そして第2の段階が一番気をつけるべき「著作権との兼ね合い」です。画像ですので、なにか元になっているものや類似しているものがあった際、元の作品へのリスペクトの観点や、そもそも著作権侵害ではないかという点が問題になります。この2つの観点に気をつける必要があります。

 付け加えると文脈や利用シーンとの兼ね合いもあります。商用利用することで、見る人や読者に不快感を与えるような画像を生成していないかという点についても配慮しなければなりません。

――社内資料やクライアント向けの提案書、Webでの公開資料、あるいは成果物としての納品物など、ビジネスにはさまざまな段階のアウトプットがありますが、Fireflyで生成した画像はどのような用途でも商用利用が可能なのでしょうか?

浅井:ユーザーの権利として、そして法的にという文脈において、アドビのFireflyモデルはすべて商用利用が可能です。

 ただし、たとえば受託案件などの納品物において、そもそも委託元から「生成AIを使わない」といった条件がついている場合はもちろん使えません。そうした制限が特になければ、社内利用、クライアント向けのプレゼン、対外的なレポート、Webでの公開、そして成果物としての納品物に対しても使って大丈夫です。

――アドビが提供、連携しているサードパーティのパートナーモデルについても同様でしょうか?また、生成したものを販売するような有償利用は可能ですか?

浅井:Fireflyモデルに限らず、Firefly経由で提供しているパートナーモデルを利用した生成物についても商用利用が可能です。ライセンスには有償の商用利用、つまり自分の利益のために使うことも当然含んでいますので、生成したものを販売したり、画集として販売することも法的に可能です。

 ただし、気をつけるべきなのは「使ってもいいということ」と「使っていいのだから絶対に安全、適切である」とは別であるという点です。これはどのモデルであっても同じですが、最終的にはマーケットに対する感覚や、人の目による判断が必要になります。

――実務的な観点からも質問させてください。たとえば、SNSの投稿などに画像を使う際、法的にはクリアであっても「見る人に手抜き感や違和感を与えて炎上する」という感情的なリスクもあり得ます。生成される画像が少しつまらなくなってもいいから安全性を優先したい場合に、プロンプトで「炎上リスクを低くしてほしい」といった指示を出すことは可能なのでしょうか?

浅井:炎上リスクという概念をAIがどう理解するかという問題があります。もし炎上する要素が明確に言語化できるのであれば、それを直接プロンプトで指示するのが一番ストレートな方法ですが、実際は難しいですよね。画像生成という部分だけでは読み取れない全体の文脈のなかで炎上は起こるものですし、添えられるテキストによっても印象は大きく変わります。

 たとえば、高級な商材のプロモーションなのに雑な画像が使われていると違和感や不快感を生みますが、大衆向け店舗のチラシであれば気にしない、といったように文脈に依存する部分が大きいでしょう。

轟:過去に表現が炎上したケースを振り返ると、ラグジュアリー感を出しているブランドなのに「生成AIを使って手を抜いているな」ということが見えてしまったときにネガティブな反応が起きていた印象があります。そのため、時短目的での利用はよいのですが、一般の人が見たときにどう感じるかという判断においては、人間のチェックが不可欠になります。

 こうした懸念を減らすためには、AIに丸投げするのではなく、自社の中で「こういう条件に当てはまる画像になっていないか」を確認できるAI利用のチェックリストのようなものを用意しておくことが有効です。テクノロジーによる効率化と、人間の目によるダブルチェックの管理体制を敷くことこそが、実務における炎上リスクを回避する確実なアプローチだと思います。

Adobe Fireflyが商用利用に向く理由と学習データの考え方

――生成AIには、ツール自体の規約のリスクと、文脈によるリスクが存在するわけですね。ではそのうえで、アドビ独自の「Fireflyモデル」が商用利用を前提に設計されていると言える確固たる根拠と、学習データの仕組みについて詳しく教えてください。他社の著作物を権利者の許諾なく使っていないと言い切れるのはなぜでしょうか?

浅井:「Fireflyモデル」は元々ビジネスユーザーが実務で安全に商用利用できるようにという設計思想の元に作られています。Web上の画像を無差別に拾ってきて学習させるAIとは根本的に異なり、Fireflyモデルの学習ソースは、アドビが運営し権利関係が適切に処理されている「Adobe Stock」(ストック素材サービス)のコンテンツ、および著作権がすでに消失している「パブリックドメイン」の画像のみに限定されています。

 他者の著作物を権利者の許諾なく無断で使用して学習させていないことが最初から明確なため、あとから著作権侵害を主張されるリスクが排除されている。これが商用利用前提と言える確固たる根拠です。

 なお、先ほど申し上げたパートナーモデルについては、他社のモデルをFirefly経由でつないでいる形ですが、これらについても商用利用が可能なもののみを選定しています。ただ、学習データの選別の厳格さという意味では、アドビ独自のFireflyモデルの方が安全度は高く、安心して使える選択肢であると言えます。

――プロンプトに入力したテキストや、アップロードした自社のロゴ画像などが、AIの再学習データとして取り込まれてしまう可能性はありますか?また、情報漏洩やセキュリティの面における、法人向けプランと個人向けプランの違いについても教えてください。

浅井:アドビでは、パートナーモデルも含めてFireflyで提供しているツールについては、入力されたプロンプトやアップロードされたコンテンツを「再学習には使用しない」という設定になっています。そのため、情報が学習されて、外部に流出する心配はありません。

 そのうえで、法人向け(グループ版やエンタープライズ版)は、サーバー環境を含めてより強固なセキュリティ体制を提供しています。たとえば、ユーザーログイン時の2段階認証などの管理体制、契約における補償対象や金額の上限などがプランによって異なります。

 また、法人向けプランで補償付きのオプションをご契約いただいている場合、アドビは「IP補償」(知的財産補償)を提供しています。万が一、Fireflyが出力した画像が他者から権利侵害で訴えられた場合、その裁判費用や発生した損害をアドビが責任を持って補償するという、いわば知的財産の保険のような仕組みです。

 もちろん、画像生成後にユーザーが大幅に編集、加工し、その加工部分が原因で侵害とされた場合は対象外となりますが、AIの出力そのものにはアドビが責任を持つという姿勢が、最大の安心感につながっています。

 公式規約ドキュメントはWebサイトの「法務」ページに集約(アドビ基本利用条件Adobe生成AI製品固有利用条件)されており、将来的に規約が変更されたとしても、過去に作った画像が利用不可になるような期限付きのものではないため、安心して長くお使いいただけます。

実演: プロンプト入力から資料貼り付けまで3分の流れ

――ではここからは、実際にビジネス資料向けの挿絵をFireflyで作成する際の実演をお願いします。プロンプトの入力からPowerPointなどの資料に貼り付けるまでの流れを見せていただけますか?

轟:はい、それでは画面を共有しながら実演しますね。こちらがFireflyのWeb版の画面です。トップ画面にあるプロンプト入力欄に直接言葉を打ち込んでもいいですし、左側にある「画像生成」のメニューから詳細な設定画面に入ることもできます。

FireflyのWeb版のトップ画面

轟:今回はモデルの選択欄から「Firefly Image 4」を使用します。最新モデルとしては「Image 5」もリリースされていますが、Image 4はプロンプト以外にカメラアングルやカラートーンといった詳細な生成コントロールをサイドバーから直感的に設定できるという特徴があります。

轟:アスペクト比は一般的なスライド資料に合わせやすい「4:3」の横長に指定し、プロンプト入力欄に「多様なビジネスパーソンがテーブルを囲んでアイデアを出し合う、フラットデザインのイラスト」と日本語で入力してみます。これで生成ボタンを押すと……大体10秒くらいで、異なる構図の画像が4パターン出力されました。

今回は直感的に操作可能な「Firefly Image 4」を使用
プロンプトは「多様なビジネスパーソンがテーブルを囲んでアイデアを出し合う、フラットデザインのイラスト。明るく親しみやすい配色、青を基調とした3~4色構成、余白多め、ビジネス資料向け、日本のオフィス」と入力
約10秒で画像が4パターン生成された。なお所要時間はネットワークの速度に依存する

――本当に早いですね。わずか10秒でこれほどクオリティの高いイラストが4つも作成されるとは予想以上でした。ここから資料へ配置するまでの手順も教えていただけますか?

轟:右上のボタンからローカル環境にダウンロードして保存することもできますが、もっと手軽な方法としては、Webページ上で生成された画像の上で右クリックをして「画像をコピー」と選択することもできます。

 するとクリップボードに画像がコピーされるので、そのまま作成中のPowerPointなどの編集画面を開いて「貼り付け(Ctrl+V)」を実行すれば、スライド上に直接イラストが配置されます。ダウンロードフォルダを開いてドラッグ&ドロップする手間が省けるので、スムーズに作業が進みますよ。

ダウンロードするよりも、クリップボード経由で貼り付けた方が手っ取り早い

――貼り付けたあとに、資料のレイアウトに合わせてサイズや縦横比を変えたくなった場合はどうすればいいですか?

轟:その場合も最初から作り直す必要はありません。Fireflyの画面で画像をクリックして編集モードに入り、「拡張」という機能を選択します。そこでアスペクト比を縦長の「3:4」などに指定すると、AIが画像の雰囲気を自動的に読み解き、上下に自然な床や天井、オフィスの背景を描き足してくれます。画像のタッチをそのままにサイズだけ変えたいという場合に非常に有効な機能です。

画像自体はそのままに、アスペクト比のみを変更できる

轟:さらに、スライドの背景に色がついている場合、PowerPoint上でイラストの背景が四角く浮いて不自然になりますよね。そのときは、同じく編集モードにある「背景を削除」ボタンをワンクリックするだけで、一瞬で周囲の白背景が透過された画像になります。これを資料に貼り付ければ、スライドの背景が何色であってもきれいになじみます。ちなみに、この背景削除機能は生成クレジットを消費せずに利用できるため、気軽に試せますよ。

「背景を削除」を実行すれば、透過画像に変更される

実演: 理想の出力を得るためのプロンプト作成のノウハウ

――生成AIの操作に慣れていないと、思ったとおりのテイストの画像を出せなかったり、プロンプトの書き方に迷ってしまうことが多いと思います。具体的なプロンプトの書き方のコツを教えていただけますか?

轟:初めての方が理想の出力を得るためには、プロンプトの構成にいくつかのノウハウがあります。たとえば画像をダイナミックに見せる裏技としては、プロンプトに「アイソメトリック」を追加するというものがあります。最後にキーワードを足すだけでいいです。

プロンプトに「アイソメトリック」を追加すると、対象物を斜め上から見下ろした俯瞰図が生成される

轟:また、アイコン画像が必要になったとします。「クラウドにデータをアップロードする様子を表す、シンプルな線画アイコン風のイラスト」と指示して作ってみたら、ちょっとシンプルすぎるアイコンができてしまいました。ここでさらにブラッシュアップしたいときには、サムネイル左上の編集アイコンをクリックし、「色をコーポレートブルー基調に変えて、もう少しモダンな印象に」などとプロンプトを追加してみてください。

Fireflyのサムネイル左上の編集アイコンをクリックすると、さらにプロンプトを追加できる
プロンプトを追加することで、より自分のイメージに寄せた画像を生成できる

轟:なお、Fireflyがプロンプトに日本語を入力しても理解するのは、内部で「Microsoft Translator」(翻訳エンジン)を使って、英語に直しているからです。ただ翻訳ミスを起こして、想定していない画像が生成されてしまうことがあります。たとえば「業務プロセスの流れを表す、シンプルなフラットデザインのインフォグラフィック風イラスト」とプロンプトを入力したところ、「流れ」を「川の流れ」と解釈して、川の画像が生成されてしまうことがありました。

プロンプトが日本語から英語に翻訳される際に、誤って解釈されてしまうことがある

轟:とはいえ毎回そういったクセまで意識してプロンプトを入力するのは大変なので、まずは気楽に日本語でトライしてみて、うまくいかないときに言葉をかみ砕いたり、英語で試すというアプローチを試してみてください。AIはまだ画像内の文字の生成や編集は得意ではないため、背景の図だけを作って、文字はPowerPoint上で打つというのも、現時点では実践的なテクニックです。

より具体的なプロンプトで背景の図を作成し、文字はPowerPointで入力すれば、効率的にイメージへ近づけられる

轟:過去に自分が作った画像をもう一度使いたいなと思ったときは、メニューの「生成の履歴」を開くと、サーバーに過去の履歴がすべて保存されています。以前はブラウザのキャッシュに保存されていましたが、現在はアカウントに紐付けて管理されているため、プロンプトや設定を読み込んで復活させられます。

 また、Fireflyで「探索」を開くと、世界中のクリエイターが作った作品がプロンプト入りで掲載されています。ここで「表示」をクリックすると、プロンプトがロードされて自分でもそのまま試すことができます。生成してもまったく同じものが出ることはないのですが、プロンプトには参考になるキーワードがたくさん書かれているので、ぜひ参考にしてください。

「探索」では世界中のクリエイターのプロンプトを閲覧、ロードできる

Adobe Stockとの使い分け 本格素材と即席挿絵の境界線

――アドビにはストック素材サービス「Adobe Stock」がありますが、「Fireflyでさくっと作る」のが向く場面と、「Adobe Stockの本格素材」を使うべき場面の線引きは、どのように考えればよろしいでしょうか?

轟:それは成果物のクオリティと信頼性を担保するうえで、非常に重要な線引きですね。Fireflyによる画像生成が向いているのは、社内資料や企画書、提案書の挿絵など、とにかくスピードが最優先される場面です。「右側にテキスト用の余白を空けた配置のイラストがほしい」というように、頭の中で具体的な構図が決まっている場合、既存の素材サイトからイメージどおりのものを探し回るのは不毛なので、Fireflyで作るほうが圧倒的に効率的です。

一方で、Adobe Stockなどの本格的なストック素材を使用すべきなのは、企業の顔となる対外的なWebサイトのキービジュアルや、大規模な広告キャンペーンの画像です。これらはAdobe Stockから入手するか、ちゃんと撮影した方がよいと思います。また当然ですが、製品写真は絶対に写真で撮るべきです。実在する場所も写真の方がいいですね。

 あと、Fireflyで図表とかグラフもスマートなものを作れますが、それが実際の数値に基づいた正しい高さ(比率)になっているのかという保証はないです。そのグラフが正しいかどうかをあとから検証する手間を考えれば、最初からExcelやPowerPointの機能で作成した方が確実ですね。

――最後に、これからFireflyを日々の業務に取り入れたいと考えている読者に向けて、どのようなプランや手順で始めるのがお勧めなのか教えてください。

轟:すでに「Adobe Creative Cloud」を契約されているユーザーの皆様であれば、そのプラン内で毎月補充される「生成クレジット」を利用できます。特にコンプリートプラン(Creative Cloud Pro)などであれば、Fireflyモデルの静止画生成は実質無制限に近いぐらい利用できるので、ぜひお試しください。もし月内での利用量が突発的に増えてクレジットを使い切ってしまった場合でも、プラン自体のアップグレードを行なわずとも、クレジットのみを単体で追加購入できます。

 これから新しく始める方であれば、まずはアカウント登録をするだけで利用できる「無料のプラン」から開始するといいと思います。現時点の仕様では、無料ユーザーは1日あたり画像生成を複数回生成できます。この上限は毎日リセットされて、翌日には復活します。まずは無料プランで、自分の作りたい画像、用途に対してどれくらいのクレジットを消費するのかを把握してから、有料プランを検討いただければと思います。

――Fireflyの法的安心感の根拠から、実務での具体的なプロンプトのテクニック、そしてAdobe Stockとの使い分けまで参考になりました。貴重なお話をありがとうございます。