トピック

QD-OLEDがなぜ液晶よりすごいのか教えよう。こだわるユーザーに絶対刺さる理由とは?

~ゲーマーにもクリエイターにも最強な27型4KモニターがPhilipsから登場

 突き抜けた色の表現力を実現する“量子ドット”と、完全な黒を表示できて強烈なコントラスト表現や液晶をはるかに超える応答速度を持つ“有機EL(OLED)”を組み合わせた「量子ドット有機EL(QD-OLED)」が、近年ゲーミングモニターで大注目されている。これまでQD-OLEDは32型クラスが中心だったが、2025年には設置しやすい27型サイズかつ高リフレッシュレートのモデルが登場したからだ。

 Philipsの「27M2N8800/11」もその1つ。27M2N8800/11は、ゲーミングブランド「EVNIA」に属するモニターで、まだ数が少ない27型4K/240Hz QD-OLEDパネルを搭載した製品だ。実売価格は14万円前後。画質や描画速度にこだわるゲーマーに最適なのはもちろん、優れた色の再現性はクリエイティブワークにも向いている。

 今回は、この27M2N8800/11が採用しているQD-OLEDパネルの技術的解説、ゲーミング機能などの説明、プロカメラマンによるインプレッションを通じて、本機の優れたポイントを紹介していきたい。

そもそも有機ELってどういうもの?

 27M2N8800/11でも採用されている「QD-OLED」と呼ばれる方式のパネルは、2022年頃から量産が始まり、最近では普及価格帯に入ってきた感も強い新たな有機ELパネルの1つだ。ここではQD-OLEDパネルの解説をする前に、そもそもの有機ELパネルがどういうものかについて先に説明しておこう。

 2007年に世界初の有機EL TVが発売されて以降、20型以上の中型~大型有機ELパネルの開発競争が勃発した。日本メーカーが競争に参入したこともあったが、2010年代から後の有機ELパネル量産事業は、小/中型サイズではSamsung Displayが、大型サイズではLG Displayがほぼ独占する状況となった。

 2010年当時、液晶パネルが既に実用化されて久しかったのに、なぜ電機メーカー達は有機ELパネルの開発に固執したのか。それは、液晶パネルの表示映像には、その表示方式に起因した課題がいくつもあったからだ。

 液晶パネル上の各画素は、自身で発光する能力を持たないため、画面全体を光らせる光源としてバックライトが必要であった。つまり、液晶パネルでは、各RGB(赤緑青)のサブピクセル単位が「どのくらいの光を通すか」の理屈で各画素を光らせる原理に基づいていた。

 対して、 有機ELパネルは、画素(サブピクセル)単位で、「自らが発光量を決める」ことができる自発光画素で構成されている。ここが両者の大きな違いだ。

有機ELと液晶の表示方式の違い
有機ELパネルは液晶と違ってバックライトがなく、画素単位で発光を制御できるため、暗部の表現が優れている

 液晶パネルの液晶画素は、液晶分子を制御して光の透過量を調整はできるものの、原理的にどうしても「光の完全遮断」が難しい。つまり、どうしても漆黒や暗部階調表現で「余計な光漏れ」(迷光)が残ってしまう。そのため、本来は黒なのに迷光のせいで灰色っぽく少し光が漏れてきてしまう現象、すなわち「黒浮き」が避けられない。

 一方で、 自発光画素の有機ELパネルでは、自身が発光しないことで完全な黒を表現できるため、原理的に黒浮きが起こりえないのだ。これが有機ELパネルが、液晶パネルに対して圧倒的なコントラスト性能を実現できることの「根幹的な理屈」となっている。

 参考までに27M2N8800/11のPQ EOTFの実測値を示そう。今回は、同じくPhilips製で液晶パネル(IPS)搭載の27型ゲーミングモニター「27M2N5501/11」でも計測を行なったので、そちらと比べながら見ていこう。

PQ EOTFの実測値(27M2N8800/11、QD-OLED)
27M2N8800/11の測定結果
PQ EOTFの実測値(27M2N5501/11、IPS)
27M2N5501/11の測定結果
今回比較用に使用した27M2N5501/11

 IPS型液晶機の27M2N5501/11は、本来は左下の原点から始まるべき暗部階調が、だいぶ明るく始まってしまっている。対して、QD-OLED機の27M2N8800/11は、かなり漆黒付近の階調が再現されている。全体的に測定値が持ち上がり気味となっているのは、階調ブーストが働き気味のゲーミングモニター製品特有の画質特性によるもの。それぞれのモデルにおいて、途中から階調が飽和して平坦化するのは、そこがそのモデルの最高輝度性能のためだ。

  液晶パネルに対して優位な点はまだある。それは「応答速度の速さ」だ。液晶パネルの液晶画素の応答速度はミリ秒(ms)のオーダーだが、有機EL画素の応答速度はマイクロ秒(μs)のオーダーであり、液晶と比べてざっくり10倍~100倍は応答速度が速い。

 この応答速度の格差は、液晶分子の駆動が電場を活用しての物理移動をともなうものに対し、有機EL画素の発光(Light Emitting)現象が量子力学的なエネルギー変位によるものだからだ。このEL現象は、我々の生活にとっても身近なLED(Light Emitting Diode)電球でも起きているものだ。有機ELパネルをOLEDパネルと呼ぶのは、画素が「Organic(有機) Light Emitting Diode」からできているからだ。

  この有機EL画素の超高速応答速度性能により、高リフレッシュレート表示が実現可能となっているだけでなく、高リフレッシュレート時にも残像感のないキレのある表示を行なえるのだ。

 今回取り上げている27M2N8800/11は、4K解像度でありながら、最大リフレッシュレート240Hzに対応したモデルとなる。4K/240Hz対応の有機ELモニターは、2025年7月時点では、かなり上位スペックに相当するモデルだ。

 近年は、液晶パネル採用機においても高リフレッシュレートのモデルは増えてきており、スペック表上の最大リフレッシュレートでは、有機ELモニターと液晶モニターで拮抗しているのもまた事実。とはいえ、 画素応答速度(画素応答時間)については、原理的に有機ELが圧倒的に速いため、残像の大小については、有機ELの方が圧倒的に優れている。

【OLEDと液晶の残像の比較】
「27M2N8800/11」(QD-OLED/240Hz、動画左)と「27M2N5501/11」(IPS型液晶/180Hz、動画右)との残像比較。40倍のスーパースローで撮影

 上は、27M2N8800/11と27M2N5501/11において、40倍スーパースロー撮影を行なった残像比較動画だ。上から新しいフレーム情報が書き換わる様子において、前フレームの表示が、上から下に向かって尾を引くような感じになっている液晶機に対して、有機ELでは、画面の上から下に対して一瞬で、新しい表示に描き変わっていることに気が付くだろう。

優れた色再現性が強みのQD-OLED

 こういった有機EL自体の特徴を踏まえた上で、ここからは27M2N8800/11でも採用されているQD-OLEDパネルについて解説していこう。現在、TV製品やモニター製品に採用されている有機ELパネルは、大別すると、LG式有機ELパネルとSamsung式有機ELパネルの2タイプに分かれており、それぞれに特徴がある。

 LG式有機ELパネルは、パネル上のサブピクセル構造が、3原色の赤緑青(RGB)の3つではなく、これに白色(W)を加えた、4つからなるところに最大の特徴がある。LG式有機ELパネルは、この特徴を捉えて「WOLEDパネル」と呼ばれる。WOLEDパネルは、素性としてはただの白黒有機ELパネルそのものなので、サブピクセルがすべて白色となる。フルカラー発色のためには、WOLEDの白黒画素のそれぞれに赤緑青カラーフィルタを適用する必要がある。

 ただ、カラーフィルタは、せっかく発光した光エネルギーの3分2を破棄する仕組みであるため(赤フィルタであれば緑色光や青色光は破棄される)、輝度性能面で不利となる。そこで、輝度を補うために、1画素あたりに白色(W)のサブピクセルを1つずつ補填するようなサブピクセル構造を採用しているのだ。

 最近では、LG式有機ELパネルにおいては、発光層を増やしたり、マイクロレンズアレイ(MLA)と呼ばれる微細な光学系で迷光を表示面に集光させるなどの工夫を加えたMETAパネルシリーズの投入により、この「WOLED=明るい有機ELパネル」の特徴を最大限に訴求するようになっている。

 対して、Samsung式有機ELパネルは、フルカラー発色にカラーフィルタを採用しないアプローチを採択したOLEDパネルになる。

 WOLEDでは、パネル上の有機EL画素のすべてを白色単色の有機EL画素で形成していたが、Samsung式有機ELパネルでは、青色単色の有機EL画素で形成している。この青色光を、そのまま3原色の青として活用するのは当然として、足りない赤や緑については、量子ドット(Quantum Dot: QD)部材を活用し、オリジナルの青色光から赤や緑へ波長を変換して取り出す。

 Samsung式有機ELパネルが「QD-OLEDパネル」と呼ばれるのは、この技術的特性を捉えた名称ということになる。今回の27M2N8800/11で採用されているのもこちらの方式のパネルだ。

 量子ドット技術は、光の波長変換となるので、カラーフィルタのような不要な光を捨ててしまう方法より、光のエネルギー利用効率は良いとされる。青色有機EL画素からの青色光は、緑色への変換を担当する緑量子ドットによって緑色光に変換されるが、その変換精度は高く、極めて純度の高い純色光が得られる。赤色についても同様で、赤量子ドットによって変換される。

 もちろん、変換時の損失はあり、その損失量は入射光と出射光の波長の差異に比例する。QD-OLEDパネルにおいて、青色サブピクセルが小さいのに、赤色サブピクセルが特に大きいのはそうした理由からだ。

画素の拡大写真(27M2N8800/11、QD-OLED)
顕微鏡を使って撮影した27M2N8800/11のQD-OLEDパネル(左が30倍、右が60倍)。赤色サブピクセルが大きいのが分かる

  QD-OLEDでは、赤緑青の純色精度が高いため、同世代のWOLEDと比較すると発色性能が高い。具体的に言えば、色域が広く、さまざまな色空間規格において、総じてそのカバー率が高い特性を発揮する。よって、ゲーミングモニター製品はもちろんのこと、クリエイター向け用途においてもQD-OLEDの引き合いは強い。

 下の図は、27M2N8800/11と27M2N5501/11における白色光の実測スペクトラムグラフだ。RGB 3原色のスペクトラムのピークが鋭ければ鋭いほど色域が広くなり、分離が明瞭であればあるほど混色した場合のフルカラー品質が高くなる。

白色光の実測スペクトラムグラフ(27M2N8800/11、QD-OLED)
27M2N8800/11(SmartImageは標準)
白色光の実測スペクトラムグラフ(27M2N5501/11、IPS)
27M2N5501/11(SmartImageは標準)

  QD-OLEDの27M2N8800/11は、量子ドット技術により、理想的な鋭い立ち上がりと、ほぼ完全に分離した赤緑青のスペクトラムピークが出現しているのが見て取れる。 対して、IPS型液晶の27M2N5501/11も、広色域タイプの白色LEDを採用している恩恵だろうか、一般的な安価クラスのIPS型液晶と比べて、赤緑青のスペクトラムピークは鋭く、分離感もまずまずだ。

 両者ともに、青のスペクトラムピークは鋭く、分離感も美しいのは、どちらも光源としては青色であるためだ。白色LEDも実態光源としては青色LEDなのだ。では、緑と赤のピークの立ち上がりと分離において、QD-OLEDが圧倒的に優れているのはなぜか。

 それは、液晶のバックライトの白色LEDでは、蛍光体によって青色光を緑や赤に変換しているためだ。QD-OLEDの量子ドット技術の方が、波長変換の精度と効率の高さの面で優れている、という解釈でいいだろう。

CIE色度図(27M2N8800/11、QD-OLED)
27M2N8800/11(QD-OLED搭載機、HDRゲーム選択時)
CIE色度図(27M2N5501/11、IPS)
27M2N5501/11(IPS搭載機、HDRゲーム選択時)

 こちらは、実測値から作成したCIE色度図で、試験映像を表示して、そのモニター製品の色域性能を実測したものになる。図中の黒枠の三角形が、現実世界に存在しうる色の99%を再現できるBT.2020色空間の限界値となる。実測値がこの三角形に近ければ近いほど(≒実測値の網羅面積が大きいほど)、そのモニター製品の色域性能が優れることを意味している。

  QD-OLEDの27M2N8800/11の結果を見ると、量子ドット技術による高精度な赤緑青の3原色再現によって、かなりの広色域性能を発揮できそうなことが一目瞭然で分かる。これ以上の品質を求めたい場合は、純色RGB LED光源やレーザーを使う必要があるので、民生向け製品としては、現状、上位に属する測定値と言える。

 IPS型液晶の27M2N5501/11も、広色域な白色LEDバックライトを使っているので、IPS型液晶モニターの色域性能としては標準的なものだ。逆に言えば、赤と緑の混色域がQD-OLEDに対してやや弱いのは、広色域な白色LEDバックライトといえど、限界がこのあたりあるということだ。

スマートな外観と高機能なスタンドで使いやすさ◎

 ここからは27M2N8800/11の本体を紹介していこう。デザインはホワイトを基調にしたスマートなもので、ゲーミング用途以外にも使いやすい。オフィスなどに置いても違和感はなさそうだ。

 その一方で背面には複数のLEDが搭載されており、ライティングによる演出も楽しめるハデな一面もある。モニターとPCを付属のUSBケーブルで接続することで、Windows 11に搭載されている動的ライティング機能で発光色やパターンの制御ができ、別途ソフトをインストール不要なのが便利だ。

 さらに付属する電源ケーブル、HDMIケーブル、DisplayPortケーブル、USBケーブルも同系色で統一されており、本体のデザインとマッチするようになっている。部屋に設置したときの見栄えまで気にする人にとってはうれしいポイントだろう。

設置場所を選ばないホワイト基調のデザイン
ホワイトカラーのスマートなデザインを採用
背面には複数のLEDを搭載
明るさ最大時
明るさ最小時。発光パターンや明るさは調整が可能だ
LEDはWindows 11の標準機能で設定可能
Windows 11の動的ライティング機能で制御できるのも便利
付属ケーブルも本体と同系色で統一
実際に設置した際の見栄えもよい

 インターフェイスも充実している。映像入力はHDMI 2.1が2系統、DisplayPort 2.1が1系統と計3系統あるので、PCとPlayStation 5など複数のデバイスを同時に接続しやすい。さらに、HDMI、DisplayPortとも最新規格なので、どちらでも4Kでリフレッシュレート240Hz駆動をサポート。入力端子に関係なくモニターの性能を生かせるようになっている。

 加えて、USB 3.2 Gen 1 2基のUSBハブ機能もあるので、マウスやキーボードの接続にも便利だ。ヘッドフォン出力や5W+5Wのステレオスピーカーも内蔵している。

最新のHDMI 2.1、DisplayPort 2.1のどちらにも対応
映像入力はHDMI 2.1が2系統、DisplayPort 2.1が1系統の計3系統
付属ケーブルもHDMI、DisplayPortともに最新規格をサポート

 スタンドは奥行きが275mmと長めで、ゲームプレイでマウスやキーボードを激しく操作しても揺れない安定感がある。高さや角度調整の幅も広く、好みの位置に向けやすい。専用のプレートと交換することでVESAに対応できるので、モニターアームに取り付けも可能だ。

高さ調整は130mm
最高時
最低時
スイベルは左右30度ずつ
チルトは-5度~20度
スタンドは簡単に取り付け可能
スタンドはモニター背面の突起部に挿し込む形で取り付ける
上部が底面なのでヘッドフォンなどをかけるのにも便利だ
専用のプレートを取り付けることでVESAにも対応が可能だ

 本製品はパネルのケア機能も備えているほか、5年間の長期保証も付いており、寿命の面でもかなり安心できるポイントだ。発砲スチロールを使わない100%リサイクル可能な再生段ボール紙を使った「省資源化パッケージ」も採用している。環境に優しいだけではなく、段ボール素材なのでコンパクトかつ取り出しやすく、スタンドの取り付けから設置までスムーズに行なえるのもありがたいところだ。

5年の長期保証が付いており長期間に渡って安心して使用できる
再生段ボール素材を使った「省資源化パッケージ」を採用。大量導入する場合にもありがたい

4K/240HzにVRR、暗部補正にクロスヘアと充実のゲーミング機能

 ゲーミングモニターとして重要なスペックのリフレッシュレートは最大240Hzと高く、中間色応答速度は0.03msと超高速だ。リフレッシュレートは一般的な60Hzに比べて、4倍も滑らかな描画が行なえることになる。4Kの高解像度と相まって、遠くにいる敵のわずかな動きも捉えやすくなり、近くでの激しい撃ち合いでも画面がブレにくくなるので視認性が圧倒的に向上する。

 もちろん最終的にはプレーヤーの腕前が重要になるが、プレイしやすくなるのは確実だ。高リフレッシュレートはFPS/TPSゲームだけに必要と思われがちだが、レースゲームやオープンワールドRPGにおいても滑らかな描画が没入感を強烈に高めてくれる。

4K/240Hzで高い没入感を実現
4Kの高解像度かつ240Hzの高リフレッシュレート表示も可能

 画面のズレやカクつきを防ぐVRR(可変リフレッシュレート)は、FreeSync Premium Proをサポート。筆者が試したところ、NVIDIAのG-SYNCでもVRRを有効化でき、問題なく動作した。

 また、ゲーミングモニターでは定番と言えるゲーム内の暗部を見やすくする「スタークシャドウブースト」も搭載。明るい部分を明るくしすぎずに、暗いシーンだけを強調してくれるのが強みだ。3段階で強さを調整できる。

背面には操作用のスティックを装備
各種設定が行なえるOSDメニューの呼び出しや操作は背面のスティックが担当
スタークシャドウブーストは3段階で調整可能
暗部を見やすくするスタークシャドウブースト機能

 このほか、画面の中央に照準を表示してFPS/TPSでの精度を高める「スマートクロスヘア」は、画面の表示に合わせて照準の色が変化して狙いやすさを維持するのが便利だ。画面の一部を拡大して敵を狙いやすくする「スマートスナイパー」といった機能も用意している。ゲームや好みに合わせて使い分けるのがよいだろう。また、映像のぼやけ(モーションブラー)を評価するClearMR認証で最上位のClearMR 13000も取得している。

 ゲームジャンルや目的別にプリセットを用意した「SmartImage」という機能も備える。「標準」「Illustrator」「FPS」「レーシング」「RTS」「映画」「ローブルーライト」「EasyRead」「エコ」が用意されており、たとえばFPSなら暗部が持ち上がる設定になる、といった具合だ。自分のカスタマイズ設定を保存できる「ゲーム1」「ゲーム2」というプリセットもある。目を休めたいときはブルーライトをカットするローブルーライトを選ぶとよいだろう。

ゲームジャンルや利用シーンにあわせたプリセットも用意
SmartImageではジャンルや目的別にプリセットが選べる
ブルーライトを抑えるローブルーライトも搭載

 なお、「SmartImage」はHDRを有効化するとメニューが変化する。HDR利用時は画質関係を設定変更できなくなるモニターは多いが、本機は暗部を見やすくする「HDRゲーム」、映像向きの輝度とコントラストに調整する「HDRムービー」、赤、緑、青を強化する「HDR Vivid」をはじめ、「HDR Ture Black」「個人」「HDRピーク」「オフ」といったプリセットを用意。コンテンツや好みで調整できるようになっている。

HDR有効時に選べるプリセットも数多くある

 有機ELパネルは同じ画面が続くと画面が焼き付いてしまう恐れがあるが、それに対するケア機能も充実している。静止画像が一定時間続くと画面を暗くするスクリーンセーバー、画像を一定間隔で数ピクセル移動させるピクセルオービティング、累計使用時間が16時間に達すると画面が自動的に更新されるピクセルリフレッシュといった機能を搭載。

 そのほかにも、複数の動かないロゴが表示されたときに画面を暗くするマルチロゴ保護、タスクバー領域の明るさを調整するタスクバーディマー、モニターの温度が60℃を超えると画面の明るさを暗くする熱制御システムも備えている。前述の長期間保証とあわせて、長く安心して使っていけるだろう。

パネルのケア機能も充実
パネルのケア機能も充実。ユーザーが利用する機能のオン、オフを選ぶことも可能だ

 本機はDisplayHDR True Black 400認証も取得しており、実際にHDRを有効にしたときの明暗の効き具合は格別だ。今回はIPS型液晶で色域はsRGBカバー率125%という十分ハイレベルな色の表現力を持つ同社のゲーミングモニターである27M2N5501/11と比較した。

 HDRを有効にした同じサイバーパンク2077の画面を見比べると、27M2N5501/11は液晶特有のバックライトによる“白っぽい黒”が出てしまう。一方の27M2N8800/11は、量子ドット有機ELによって高度な黒の表現が可能であるため、明暗のコントラストが際立つ。

QD-OLEDならではの黒表現で没入感もアップ
サイバーパンク2077の同じシーンでも27M2N5501/11(左)よりも27M2N8800/11(右)のほうが明暗が際立っているのが分かる

プロカメラマンも納得の階調表現

 PC系媒体のほか、野外フェスやMVの撮影でも活躍している若手フォトグラファーの井上勝也氏に試用してもらった。普段はM1搭載の14型MacBook Proや外付けの液晶モニターを使って画像の管理や処理を行なっているという。

写真家: 井上勝也
新進気鋭の若手写真家。撮影対象はロックフェスからマイクロチップまで。スチル撮影以外にもレビューや照明での仕事もしている。東京を拠点に活動。釣りがマイブーム。
Instagram: @katsuya9328

 まずは、細かな階調表現が確認できるカラーチャートも確認してもらった。色空間の設定がネイティブだと赤がちょっと強みだが、Adobe RGBに変更するとフラットに見えるという。その上で、黒や白のわずかな階調もしっかりと確認でき、コントラストが高いので写真がよく見えるのがよいとのこと。

 このコントラストの高さは、真っ黒の背景で撮影した商品などのレタッチで有効と語った。普段の環境では真っ黒にしか見えない部分も、本機ならわずかに入った光による色の違いを確認できたので、より細かなレタッチが行なえるという。また、真っ白の紙を背景にしたプラモデルやフィギュアの写真でも紙のわずかな質感を確認できるので、補正しやすいとのこと。ハイライトとシャドウのグラデーションがはっきり出るのが作業のしやすさにつながるという。

ゲームもクリエイティブも、オールラウンドに活躍する1台

 27M2N8800/11は、QD-OLED採用機としてはまだ数の少ない27型4K/240Hz対応のゲーミングモニターだ。設置しやすいサイズと高解像度、高リフレッシュレートだけでなく、QD-OLEDならではの超ハイレベルな色の再現性と高速応答も相まって、ゲーミングはもちろん、クリエイティブワークでも活躍できる充実のスペックを備えている。

 DisplayHDR True Black 400認証も取得しており、映像コンテンツも快適に楽しめる。それに加えて、ホワイトでスマートなデザインは部屋のインテリアともマッチしやすく、設置場所を選ばない。5年保証と長期間使う上での安心感も高く、全方位スキなしな1台と言えるだろう。


 あわせて、今回比較用に用意した27M2N5501/11についても簡単に紹介しておこう。27型サイズで鮮やかな色の表現力を持つIPS型液晶を採用した製品で、WQHD(2,560×1,440ドット)解像度、180Hzの高リフレッシュレートと高性能ながら、実売価格は2万7,800円前後とコストパフォーマンスに優れた1台だ。手頃な価格で充実した機能のゲーミングモニターを求めているなら、こちらにも注目しておきたい。

27M2N8800/11(左)と27M2N5501/11(右)