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「ElgatoのPrompterって何だ?」っていう人に届けたい。カンペにもなる9型“多芸モニター”の使い方

Elgato「Prompter」

 Elgatoの「Prompter」は2023年末に発売された製品。すでに使っている、あるいは知っているという人も少なくないだろう。一方で、プロンプターという製品ジャンルは知っている、あるいはプロンプター自体を知らない人も多くいるだろう。今回の記事は、どちらかと言うと「ElgatoのPrompterを買おうかな」と思っているというより、「プロンプターにさほど興味がない」、あるいは「自分には不要」と思っている人にこそ読んでもらいたい記事だ。

 なぜか?それはElgatoのPrompterが一般的なプロンプターよりもはるかに機能性が高く、プロンプター用途以外にもさまざまな活用方法があるからだ。なまじ「プロンプターは動画収録用の機材」ということを知っていると、「自分は動画作成はしないからプロンプターはいらない」となってしまう。しかし、Elgato Prompterのことを知ると、「こんな使い方もできるなら使ってみようかな」と思ってくれることだろう。

 また、すでにElgato Prompterについて知っている人も読み続けていただきたい。というのも、直近のソフトウェアアップデートで機能追加がされているからだ。

 まず、簡単にElgato Prompterでどんなことができるのかをまとめた。

  • 一般的なプロンプター(カンペ)として使い、動画制作時に台本をカメラ目線で読むことができる
  • 配信時にコメント表示用モニターとして使い、コメントに対してカメラ目線で返答できる
  • ビデオ会議の画面を表示し、カメラ目線でコミュニケーションを取れる
  • 配信ソフトのカメラプレビューを表示し、大型のカメラモニター的に使える
  • 上記のようなことをしない時も、外部モニターとして使える

 このリストでは最後に書いているが、Prompterのことを一言で表わすと、いろんなことに使える”外部モニター”なのだ。その”いろんなことに”の中に、プロンプターなどただのモニターではできない用途も含まれる、ということになる。

 では、各機能の使い方を解説していく。

プロンプターとして使う

 プロンプターは、カメラのレンズの前に設置して、カメラの前に台本を表示させることで、カメラ目線で原稿を読めるようにするためのデバイスだ。仕組みとしては、カメラの下に仰向けにしたモニターなどの表示デバイスを置いておき、加えてカメラのレンズの前に斜めにハーフミラーを設置することで、カメラのレンズには映らない字幕が映し出されるという具合だ。

 プロンプター自体はElgatoが出す前からいろんな製品が存在していた。ElgatoのPrompterがそれらの製品と一線を画すのは、USB接続の外部モニター機能を内蔵していることだ。

 個人向けのプロンプターだと、製品に含まれるのはハーフミラー部分のみで、表示デバイスは手持ちのスマホやタブレットを組み合わせるパターンが多い。カンペとして使う点だけを見るとそれでもいいのだが、そのスマホなりタブレットなりに台本を転送するのに一手間がかかる。録画してる間に台本を修正したい場合も、転送の手間がかかる。

 たとえば、過去筆者が使っていたプロンプターは、スマホ用のテキスト表示アプリが付属していたのだが、そのアプリにOneNoteからテキストをコピペしていた。しかし、プロンプターにスマホを固定させているので、その操作がやりにくいのだ。PCでOneNoteの台本を修正することもしばしばなのだが、その際もそこそこ手間がかかっていた。

 これに対し、Elgato Prompterでは、テキストを表示させるのは「Camera Hub」というPCアプリなので、コピペが瞬時にできてしまう。筆者はこの点だけで従来のプロンプターからElgato Prompterへの乗り換え価値があると考えている。

Elgatoのカメラやキャプチャ、Prompterに対応するアプリ「Camera Hub」。PCで制作した台本を一発でコピペできるのが便利
台座部分に内蔵されたモニターにテキストが映し出され、それがハーフミラーに反射して映し出される
ユーザーにはこのように見える

 加えて、同じElgatoのStream Deck +を持っている場合、台本のスクロール操作をStream Deck +のダイヤルで実行できる。基本的に台本はソフトで読み上げ速度に合うように調整して自動スクロールさせるのだが、漢字や数字が多い箇所だと読むのに時間がかかったりすることもあり、だんだんと読んでいるところと表示しているところがずれることがある。

 そういった際にStream Deck +があると、カメラに写っていない手元の操作で、表示速度や箇所を即座に調整できるのがすばらしい。Stream Deck +がない人でも、マウス操作でスクロール調節できるので安心していい。

Stream Deck +
これがあると、ダイヤルで台本スクロールなどの操作がやりやすくなる

 また、GeForce RTXシリーズを使っている場合、読み上げている音声を認識して、台本のスクロールを自動調整する「Voice Sync」機能まで追加された。つまり、途中で読み上げる速度を変えたりしても、スクロールを調整する必要がなくなるのだ。

 ただ、現時点では日本語には対応していない。Camera Hubがバージョン2.0に対応し、Voice Syncが日本語など英語以外にも対応したとされているのだが、うまく動作してくれない。ただ、問題の修正待ちという状況なので、そう遠くない将来、日本語でもこの機能を活用できるようになるだろう。

 また、バージョン2.0では、プロンプター機能に関して、台本が1分おきに自動保存されるようになったほか、ホットキーで台本の再生/停止や頭出しを制御できるようになった。

配信コメントやWeb会議の表示モニターとして使う

 Prompterには、配信のコメントを表示する機能もある。コメントは、OBSなどの配信ソフトや、配信プラットフォームのダッシュボードなどで表示できる。わざわざPrompterに表示するメリットは何か?それは、コメントをカメラ目線で読めるようになるということだ。

 ゲームのプレイ中にちらっと見るコメントに1つ1つカメラ目線で返事をしなくてもいいかもしれないが、たとえば雑談配信など、視聴者とのコミュニケーションがメインの配信では、Prompterにコメントを写しながらカメラ目線で返事をすると、視聴者との一体感が増すだろう。

 設定はとても簡単で、Camera Hubの「コンテンツ」で「チャット」を選び、「+」を押して、Twitchのアカウントを入力するだけだ。当然これだと、Twitch以外のコメントは表示できない。その場合は、たとえばYouTubeなら、そのコメント欄をポップアウトさせて、コンテンツを「ディスプレイ」にしてPrompter上に表示すればいい。

「コンテンツ」で「チャット」を選び、アカウントを入力すると
このようにPrompter上にリアルタイムでコメントが表示される

 ちなみにPrompterのチャット機能でコメントを表示させると、スクロールができない。コメントが多い配信で、古いコメントも拾いながらしゃべりたいという場合は、TwitchであってもPrompterのチャット機能ではなく、コメント欄をポップアウトしたウィンドウを表示させた方がいいかもしれない。

 使っているモニターの枚数や解像度にもよるが、コメント欄の表示も意外とスペースを取る。それをPrompterに表示できるのは表示効率の上でもメリットがあるし、ほかの人の配信との差別化にもなる。

 同様に、Zoomなどのビデオ会議の画面をPrompter上に表示させると、相手の顔を見ながらカメラ目線で話せるようになる。オンラインコミュニケーションで目線を合わせることは必須ではないものの、ビジネスで相手に自分を印象づける上でプラスになるだろう。

 なお、Camera Hubで「オーバーレイ表示」を有効にすると、Prompterの任意の場所に、照準のようなアイコンを表示できる。カメラのセンサー部分に合わせるようにこのアイコンの場所を調整しておくと、確実にカメラ目線を実現できる。

「オーバーレイを表示」を有効にすると、
照準のようなアイコンをPrompterに表示できる。アイコンの位置や大きさ、色は変更可能

大型のカメラ用モニターとして使う

 筆者は配信用にソニーのミラーレスカメラ「α6600」を使っている。このカメラの液晶モニターは180度回転するので、カメラを自分に向けた時でもプレビューできる。しかし、撮影する距離(1m程度)に置かれたカメラの3型のモニターでは、小さすぎて細かい点が確認できない。

 また、筆者の場合、カメラの取り込みは4Kで行ない、その一部をトリミングで切り出して使っている。つまり、カメラのモニターに写っている部分と、実際の配信に写している部分が違うのだ。

 こういった環境で、Prompterにカメラの配信プレビューを写しておけば、9型サイズの画面に、実際に配信に載せる映像が表示されるので、カメラのピントが合っているかや、今どこが写っているかといったことを確実に把握できる。

カメラ内蔵のモニターだと、小さいため細かいところが確認しにくい
これは、OBSでカメラを表示させたシーンをPrompterに表示させたところ

 Prompter機能と直接は関係しないが、カメラ周りの機能改善として、Camera Hubが2.0になり、LUT機能が追加されたのもうれしいトピックだ。LUTとはInstagramなどにあるようなカメラの色合いを変えるフィルタのようなものと考えればいい。

 LUTは、Camera Hubの「エフェクト」タブで、Elgato製のカメラあるいはキャプチャユニットに対して適用できる。そのため、OBSやZoomなど、アプリを選ばずLUTを使えるのが便利だ。

 標準では、暖色系、モノクロ、映画調など5つのLUTが用意されている。これも使い方は簡単で、使いたいLUTをクリックするだけ。適用する強さは0~100までで選べる。

LUTを適用していない標準状態
暖色系の「Coffee Warmth」LUTを適用したところ
映画調の「Hollywood」LUTを適用したところ

 また、「Add」→「Elgato Marketplaceを開く」を選ぶと、Elgato Marketplaceで追加のLUTをダウンロードすることもできる。2025年5月中旬時点で、有償、無償、合わせて数十のLUTが用意されている。

 中には配信機材のレビュワーとして有名で、配信者でもあるHarris Heller氏が提供しているものもある。カメラや照明が違うので、全く同じ色味にはならないが、簡単に自分が好きなクリエイターと似た色味にできるというのはとてもおもしろい。今後、このMarketplaceに参加するクリエイターが増えることに期待がかかる。

 すでにLUTファイルを持っているなら、「Add」→「自分のLUTファイル」を選ぶこともできる。先にも書いた通り、同じLUTを使っても、カメラや照明が異なると、仕上がりは変わってくる。そのため、自分が持っているのと同じカメラ用に作られたLUTの方が使いやすい。あるいは、やり方を知っているなら、LUTは自分の環境に合わせて個人でも作れる。その点で、既存、あるいはオリジナルのLUTも使えるというのは柔軟性が高い。

 LUTを適用したカメラ映像は、元々の映像デバイスではなく、「Elgato Virtual Camera」というソフトカメラとして出力されるので、外部アプリ/サービスで利用する時は、これを選ぶ形となる。

既存のLUTファイルも利用できる

外部モニターとして使う

 使い方として最後の紹介となるが、本製品の最大のウリの1つとなるのが外部モニターとして使えるという点だ。日常的にYouTube動画を制作している人でも、プロンプターに向かってしゃべっている時間は制作時間全体のほんの一部に過ぎない。既存のプロンプターだと、しゃべり終わったらいったんお役御免となる。

 それに対してElgato Prompterは、Camera Hubのコンテンツとしてディスプレイを選択すると、通常のモニターとなる。そのため、動画編集でプレビュー用にしたり、一部のツールバーの表示用にしたりと、収録時以外も活用できる。

 もちろん、動画編集に限らず、PCを使うあらゆる局面で外部モニターとして使えるので、応用範囲は無限大と言っていい。

普段は9型の外部モニターとしても使える

 加えてStream Deckに、1ボタンで任意のウィンドウをPrompterにフルスクリーン表示する機能も追加された。先に挙げた、ポップアウトしたコメントウィンドウをPrompterに表示させる時などに重宝する。

設置、接続も楽

 順番が逆転するようだが、最後に設置、接続についても紹介する。Prompterは基本的に三脚などに取り付けて使う。カメラを載せるための台座も付属するが、付属のステップアップリングをカメラに装着すると、カメラのレンズにPrompterを取り付けられる。また、カメラはミラーレスや一眼レフだけでなく、Webカメラやスマホを使ってもいい。

 PrompterとPCの接続はUSB Type-Cケーブル1本ですむ。利用にあたってはCamera Hubのインストールが必要となる。なお、Camera HubをインストールしてもPrompterが見つからない場合がある。こういう時は、いったんOSのモニター設定でPrompterを「複製」ではなく「拡張」にすると解決する。

背面
側面
底面
ステップアップリング。49~82mmまで9種類のものが付属
レンズにステップアップリングをつけたところ
ステップアップリングを付けて、カメラと組み合わせたところ。ステップアップリングを使わなくてもカメラは設置できる
PCとはUSB Type-Cケーブル1本でつながる

多くのクリエイターに手放しでオススメの製品

 以上の通り、Elgato Prompterは、プロンプター機能の充実はもちろん、それ以外でもさまざまな用途に活用できる優れもののPC周辺機器だ。そのため、動画制作者だけでなく、配信者にも便利だし、ビジネスでビデオ会議をする時にも役に立つという万能ぶり。

 Elgatoはソフトのアップデートで各種製品にどんどん機能を追加していくメーカーなので、Prompterは今でも唯一無二の存在だが、今後もさらに便利になっていくはず。そのあたりの期待も含めて、多くの人にオススメしたい。2025年5月下旬時点の販売価格は発売当初から6千円ほど安い4万円と、買いやすくなっているのもポイントだ。

1年前に公開したこちらの動画も参考にしてほしい