トピック

すごいタブレットPCを見つけた!GeForce RTX 4070搭載で持ち運びも余裕だなんて

~最強モバイルのASUS「ProArt PX13(HN7306)」を徹底検証

ASUS「ProArt PX13(HN7306)」。直販サイトのASUS Storeでの価格は42万9,800円

 13.3型の小型ボディを採用しながら、Ryzen AI 9 HX 370とGeForce RTX 4070 Laptop GPUという超強力なCPU/GPUを搭載する2in1ノートが登場した。しかもこれで質量が約1.38kgだというのだからすごい。

 ASUSの「ProArt PX13(HN7306)」は、ハイエンド&モビリティの両方を満たす意欲的な製品で、クリエイティブワークやAAA級ゲームのプレイを快適にこなせるほか、タブレットとしても使える柔軟性、野外での使用も想定したタフな作りなど、まさに“全部入り”と言えるインパクトを持つ1台だ。

このサイズでハイエンドGPUを搭載
13.3型という一般的なノートPCサイズだが、GeForce RTX 4070 Laptop GPUという強力なパーツが組み込まれている

 なお、今回試用しているGeForce RTX 4070 Laptop GPU搭載モデルの直販価格は42万9,800円と結構なものだが、下位モデルとして同4060を搭載するモデルも用意されており、こちらは同じCPUながら直販価格29万9,800円となっている。

コンパクトだけど高性能という理想的スペック

 ProArt PX13(HN7306)のまず大きな特徴は、クリエイティブワークを快適にこなせる高いスペックを約1.38kgの軽量ボディに詰め込んでいることだろう。

高級感のある天板
最薄部15.8mmで約1.38kgの薄型軽量ボディ。ナノブラックコーティングに活性シラン樹脂とフッ素変性基を配合したという表面は汚れや指紋が付きにくいのが特徴

 さらに、ディスプレイを180度回転できる2in1仕様なので、スタジオや外でのロケではタブレット型にして手に持ちながらのデータチェックを容易にするなど、利用シーンに合わせて柔軟に対応できるのも強みだ。

2in1なのでタブレットとして使うことも
2in1仕様なので完全なタブレット型にも変形できる
動画の視聴に便利なテント型にもできる

 CPUは、AMD最新世代の「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載。12コア(Zen 5コア4基、Zen 5cコア8基)24スレッドで最大5.1GHzという強烈なスペックだ。複数のコアが効く処理も、動作クロックが効く処理のどちらにも強い。さらにAI特化型プロセッサのNPUも内蔵。Microsoftが定めるCopilot+ PCの要件(40TOPS以上)を満たす最大50TOPSの処理性能を持っており、AI性能にも優れている。

12コア(Zen 5コア4基、Zen 5cコア8基)24スレッドのRyzen AI 9 HX 370を搭載

 GPUにはNVIDIA最新世代の「GeForce RTX 4070 Laptop GPU」を採用。ビデオメモリはGDDR6が8GB、メモリバス幅は128bitだ。優れたゲーミング性能を持っているのはもちろん、第8世代のNVENCによって従来からのH.264/265に加えて、AV1のハードウェアエンコードに対応と動画エンコードを高速に行なえるのもポイント。また、最近のクリエイティブ系アプリはGPUによって一部処理を高速化できるものが多く、GPU性能も重要視されている。

GPU-Zによる表示。ブーストクロックは1,655MHzだった

 GeForce RTX 4070 Laptop GPUはノートPCの設計に合わせてブーストクロックは1,230MHzから2,175MHz、カード電力は35Wから115Wの間で調節できるようになっている。本機はブーストクロック1,655MHz、カード電力は標準55W、最大95Wに設定されていた。小型ボディを考えれば十分高い設定だ。

 メモリはLPDDR5X-7500と非常に高速なタイプで容量は32GB。ストレージも高速なPCI Express 4.0 x4接続のNVMe SSDが1TB。どちらも高速かつ十分な容量が確保されている。

【表】試用機のスペック
CPURyzen AI 9 HX 370(12コア24スレッド)
メモリLPDDR5X-7500 32GB
ストレージ1TB NVMe SSD
GPUGeForce RTX 4070/4060 Laptop GPU
ディスプレイ13.3型OLED(2,880×1,800ドット)
OSWindows 11 Home
インターフェイスUSB4(DisplayPort+USB PD) 2基、USB 3.2 Gen 2、HDMI、microSDカードスロット、Webカメラ(顔認証対応)、ステレオスピーカー、音声入出力端子
ネットワーク機能Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4
本体サイズ298.2×209.9×15.8~17.7mm
質量約1.38kg

高解像度のOLED(有機EL)で高い色の表現力

OLEDなので発色はすばらしい
13.3型のOLED(有機EL)ディスプレイを採用。DCI-P3カバー率100%という高い色の再現度を持つ

 ディスプレイには13.3型のOLED(有機EL)パネルを採用しているのも大きな特徴だ。2,880×1,800ドットと高解像度なのに加えて、幅広い色の表現力が求められるデジタルシネマ向けの「DCI-P3」の色域を100%カバー。色精度もDelta E < 1と非常に高く、クリエイティブワークで重要となる色の再現力にも優れている。

色域を簡単に設定できる
色域の設定はMyASUSアプリでデフォルト、sRGB、DCI-P3、Display P3を用意。仕事で必要な色域を選べるようになっている

 2in1なのでタッチ入力に対応しているのはもちろん、別売りのペン(ASUS Pen 2.0)なら4,096段階の筆圧検知に対応と、本格的なイラスト制作も行なえる。

デジタルスタイラスペンに対応している
別売りの「ASUS Pen 2.0」(直販価格1万1,980円)を利用すれば、4,096段階の筆圧検知が可能だ

必要十分なインターフェイスとタフなボディ

 インターフェイスは左側面にHDMI出力、USB4、ヘッドセット端子、右側面にUSB4、USB 3.2 Gen 2、microSDカードスロットが用意されている。有線LANは非搭載だ。無線LANはWi-Fi 7(最大2.88Gbps)に対応し、Bluetooth 5.4もサポート。

左右にType-C(USB4)を装備
左側面にHDMI、USB4、ヘッドセット端子
右側面にUSB4、USB 3.2 Gen 2、microSDカードスロット

 付属のACアダプタは200Wと大出力なのでそれなりに大きい。ここはハイスペックなので仕方のないところ。とは言え、USB4を使ったType-C経由の充電も可能だ。

大出力のACアダプタ
ACアダプタは200W出力でサイズは大きめ

 持ち運べるクリエイター向け2in1という位置付けだけに、野外での利用も想定しているようで、衝撃/振動/砂塵/湿度/高度/低温/高温/日射など過酷な条件のテストをクリア。米国軍事規格であるMIL-STD-810Hに適合しており、場所を選ばず安心して使える。

顔認証対応のWebカメラを装備
ディスプレイ上部には207万画素のWebカメラとマイクを内蔵。Windows Helloにも対応し、顔認証でのサインインも可能だ

 バッテリ駆動時間に関しては、筆者が動作モードを「スタンダード」、輝度を50%に設定した状態でPCMark 10のBatteryテスト(Modern Office)を実行したところ、バッテリ残量100%から2%で3時間42分となった。高負荷な作業をバッテリで行なう場合は、残量を気にしておきたいが、バッテリだけでもそこそこ動作する。

キーボードはLEDバックライト付き
キーボードは日本語配列。矢印キー以外はしっかりとしたサイズが確保されており、入力は快適だった。白色LEDのバックライトも内蔵

優秀な冷却力で高負荷時も安定性良好

 Ryzen AI 9 HX 370とGeForce RTX 4070 Laptop GPUというハイスペック構成でコンパクトなボディだと、冷却面で不安を感じるかもしれない。クリエイティブ系の高い負荷が続く作業を想定しているならなおさらだ。

 実際にどうなのか、動作モードをもっとも性能が出る「パフォーマンス」に設定して、冷却力をチェックしてみよう。

 まずは、CPUに強烈な負荷をかける「Cinebench 2024」を10分間動作させたときの温度の推移を確かめる。モニタリングアプリの「HWiNFO Pro」を使用し、CPU温度は「CPU (Tctl/Tdie)」、GPU温度は「GPU Temperature」の値を集計している。

CPU高負荷状態の温度
サーモグラフィーによる表示。表面は温度が高めの中央部でも44.7℃と触ってもほんのり温かい程度

 Cinebench 2024はGPUにはまったく負荷がかからないテストなので温度は低いままだ。CPUはベンチマーク中、Zen 5コアはすべて約4.4GHzと高いクロックで動作し、最初こそ94.5℃まで上がるが、その後は冷却ファンが回って86℃前後で推移。全コアがフルに動作するこのテストでしっかり冷えており、負荷の高い作業でも不安はないと言ってよいだろう。

 続いて、CPUとGPUの両方に負荷がかかるテストとして、サイバーパンク2077を10分間プレイしたときの温度とクロックをチェックする。値の取得方法はCinebench 2024と同様だ。

CPU+GPU高負荷状態の温度
同じくサーモグラフィーによる表示。CPUとGPUの両方に負荷がかかる処理だが、温度の高い中央部でも45℃。周囲は熱くなっておらず、高負荷な状況でも快適に操作できる

 ゲーム中はCPUは3.3GHz前後、GPUは2.1GHz前後で動作する。CPU/GPUとも負荷がかかる状態だが、CPUは69℃前後、GPUは66℃前後とキッチリと冷えている。GPU性能の高さから、持ち運びできるゲーミングノートPCとしても十分過ぎるほど活躍が可能だ。

 これだけ冷却力が高いと動作音も気になるところだ。Cinebench 2024実行時、サイバーパンク2077プレイ時の両方で正面と右側面のそれぞれ10cmの位置に騒音計を設置して測定した。暗騒音は33.4dBだ。

 高いスペックと高い冷却力の組み合わせなので、動作音はやや大きめ。特に排気口にある左右は動作音が大きくなる。サイズと性能から考えると十分健闘している。筆者が使っていてやかましいと感じるほどではなかった。

クリエイティブワークを快適にする優れたCPU/GPU性能

 ここからは、クリエイティブ系アプリを中心に性能をチェックしていこう。動作モードは冷却テストと同じく「パフォーマンス」に設定した。まずはCGレンダリングでCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」、PCの基本性能を測定する「PCMark 10」をチェックしよう。

CPUの性能

 Cinebench 2024のMulti Coreで1,133ptsというスコアは、Ryzen AI 9 HX 370として十分高いもの。本機は性能をしっかり引き出せている。

システム全体の性能

 PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の“Essentials”で4,100以上、表計算/文書作成の“Productivity”で4,500以上、写真や映像編集“Digital Content Creation”で3,450以上が快適度の目安となっているが、すべて2倍以上のスコアを達成。特にDigital Content Creationのスコアは高く、CPU/GPUの両方が高性能であるためだろう。

 次は、Adobeの画像編集アプリPhotoshopとLightroom Classicを実際に動作させてさまざまな処理を行なう「UL Procyon Photo Editing Benchmark」と動画編集アプリのPremiere Proで編集やエンコードを行なう「UL Procyon Video Editing Benchmark」を試そう。

写真編集での性能

 比較対象がないのでちょっと分かりにくいが、CPUで処理されるBatch Processing、CPU/GPUの両方で処理されるImage Retouchingとも高いスコアだ。Photoshop、Lightroom Classicとも快適に動作すると言ってよい。

ビデオ編集の性能

 そして、UL Procyon Video Editing Benchmarkは非常に高いスコアを出している。GeForce RTX 4070 Laptop GPUによる高速なエンコード処理が効いており、動画エンコードにおけるGPU性能の重要性が見える部分だ。

重いゲームももちろん遊べる

 せっかく高性能なGPUを搭載しているので、ゲーム性能も確かめたおこう。ゲームは軽めのFPSとして「Apex Legends」、描画負荷の高い重量級として「サイバーパンク2077」を用意した。

 Apex Legendsは、射撃訓練場の一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。

 Apex Legendsは最高画質かつ2,880×1,800ドットでも平均136.8fpsと余裕で快適なプレイが可能。

 サイバーパンク2077もアップスケーラーとフレーム生成でフレームレートを向上させるNVIDIA独自の「DLSS 3」に対応していることもあり、レイトレーシングをゴリゴリに効かせた描画負荷が強烈に高いレイトレーシング : ウルトラ設定でも2,880×1,800ドットで平均57fpsとプレイ可能な数値を出した。1,920×1,200ドットにすれば、平均99.5fpsまでアップが可能だ。ほとんどのゲームを快適に遊べる性能があると言ってよい結果だ。

Adobeのアプリをより快適にする「ASUS DialPad」など独自アプリも

 ASUS独自のアプリや機能も多数用意されている。特徴的なのはタッチパッドの左上にある「ASUS DialPad」だ。これはダイヤル操作を実現するもので、音量の調整を始め、Premiere Proなら映像をコマ単位で操作できる「時間軸の調整」が行なえるなど、Adobeのアプリと連携も可能。自分がよく使う機能を割り当てて、作業の効率化を狙える。

タッチパッドの左上に備わっている「ASUS DialPad」。タッチパッドの右上から左下にスワイプすることで有効化する
標準でAdobeのPhotoshopやLightroom Classic、Premiere Proの機能が割り当てられている。自分で設定を作ることも可能だ

 ユニークなのは「MuseTree」アプリだ。AIによる画像生成が行なえるが、アイデアマップでは入力したキーワードに対して、新たな選択肢を用意して作り出す画像のインスピレーションを高めてくれる。さらにキーワードを追加してみたり、画像生成の幅を広げやすいのがおもしろい。アイデアキャンパスでは、ざっくりとした手書きの絵からイラストを生成が可能だ。

AIによる画像生成が可能な「MuseTree」。ツリー形式で生成する画像のアイディアを広げていけるのが楽しい
アイデアキャンパスでは、ざっくりした手書きからイラストを生成できる

 このほか、読み込んだ画像をAIで自動的に分類してくれる「StoryCube」アプリも用意。画像の編集、管理機能も充実しており、よく撮影する人は便利に使えるはずだ。

画像をAIで自動的に分類してくれる「StoryCube」

フォトグラファーが納得する処理性能と表示品質

 ここまでの検証でクリエイティブワークに十分対応できるスペックを持っているのは分かったが、実際にプロの現場ではどうなのか。若手フォトグラファーの井上勝也氏に普段やっている作業を試してもらった。

若手フォトグラファーの井上勝也氏。PC系媒体のほか、野外フェスやMVの撮影でも活躍している

 普段はM1搭載の14型MacBook Pro(メモリ64GB)で画像の管理や処理を行なっているという。Lightroom Classicで200枚ほどのRAW画像をプレビュー表示したが、MacBook Proでたまに発生する表示まで時間がかかる現象も見られず、快適に使えるとのこと。

 Photoshopについても画像処理の際にレイヤーを重ねると動作が重くなりやすいが、ProArt PX13ならあまり重くならず使いやすいという。普段の撮影の処理なら、全然問題ないといった評価だった。

カラーチャートも確認してもらったが、階調もよく、細かな部分の視認性も高いとのことだ

 画像処理中の動作音についてもハイエンドのゲーミングPCに比べれば小さく、井上氏としては十分許容範囲とのこと。範囲選択やブラシの処理は効率のよさからタブレットを使うカメラマンは多いため、ペンに対応しているのはありがたいという。これなら、外出先でも普段通りの画像処理を快適にこなせると太鼓判を押していた。

タブレットを別途用意しなくてもペンでブラシの処理や範囲指定ができるのは便利という

プロにも勧めたい小型クリエイター2in1

 コンパクトなボディと高い性能の両立は冷却面からなかなか難しいが、ProArt PX13(HN7306)では、さらに2in1というタブレットとして使える機構も盛り込んだ。最薄部15.8mmで約1.38kgの軽さながら、Ryzen AI 9 HX 370とGeForce RTX 4070 Laptop GPUの性能をキッチリ引き出す冷却力を実現している。

 ディスプレイもOLEDで美しく、ペン操作も可能と幅広いクリエイティブワークに対応できる。ゲーミング性能も高く、クリエイターはもちろん持ち運びできる高性能2in1を求めているなら、ぜひ注目してほしい。価格は高いが、それだけの満足度がある1台だ。