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数十年分相当の書き込み負荷テストで各社のSSDの信頼性を検証してみた
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- CFD販売株式会社
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- 日本シーゲイト株式会社
2024年6月27日 06:30
SSDを選択するうえで、性能(アクセス速度)は重要な指標の1つである。そして、SSDの性能は、ベンチマークソフトを走らせることで簡単に把握できる。
その一方、SSDはストレージデバイスであり、データを保存するという役割上、書き込みにおける信頼性も重要であり、ユーザーとしては気になる。信頼性に関して、各メーカーはさまざまな指標を定め、検証を行ない、その一部はスペックとして公開している。
たとえば、どのメーカーも、標準化団体である「JEDEC」の規定に基づいた検証を実施し、「TBW」という指標で書き込み耐性を公開している。この検証では、ペタバイトクラスの書き込みを行なうとともに、書き込んだデータが電源を切っても1年間保持されることを確認する必要がある。
そのため、一般ユーザーはもちろん、我々のようなメディアでもこの試験を再現するのは難しい。そこで今回、JEDECが規定するTBWの検証とは異なるが、一般的なユースケースに沿った書き込み負荷試験を行なうことで、各製品の信頼性を検証してみた。具体的検証は後述するが、事前に各メーカーに提示し、一般的な利用方法に際した形で製品の書き込み信頼性を検証する上で、この方法で問題がないことを確認したうえで行なっている。
検証を行なった製品と、実際の検証方法
その検証方法は次の通り。まず、各SSDを検証用PCに装着してWindows 11 Home 64bitをインストールし、データを書き込む前にCrystalDiskMarkで性能をチェック。
次に、SSDに容量約250GBのデータ(画像ファイル1,400ファイル、約3.6GB、および動画ファイル140ファイル、約246GB)をSSD内に保存。その上で、各製品で設定されているTBWに相当する容量のデータを、スマートセキュリティイノベーションのSSD加速寿命テストツール「SSD耐久テストPro.」を利用して書き込む。
そして、TBW分の容量の書き込みが終了した後に、CrystalDiskMarkによる性能チェックと、保存したデータに問題がないか確認する、というものだ。
つまり、各製品が設定しているTBW容量のデータを実際に書き込むことで、SSDの性能が変化していないか、保存したデータが正常に読み出せるかどうかの2点で、製品の書き込み信頼性を確認する形だ。
このテストでは、書き込みデータは基本的にSSDのSLCキャッシュに収まるので、特に負荷がかかるのはSLCキャッシュ部分となる。しかし、個人用PCのブートドライブでは、SLCキャッシュに収まりきらない巨大なデータを長時間書き込み続けることは少ない。とは言え、このテストでも書き込み試験は24時間書き込み続けて数週間かかり、一般的用途を見据えた負荷試験としては十分なものだと考える。
この検証にあたり、今回は下記の4メーカー6製品を利用した。簡単にそれらを紹介する。
CFD販売「CSSD-M2L1KSFT4KG」
「CSSD-M2L1KSFT4KG」は、RealtekのSSDコントローラ「RTS5772DL」と、TLC 3D NANDフラッシュメモリ「BiCS5」を採用。主要部材を明確にすることで、性能と品質に安心してもらえるようにしているという。DRAMキャッシュレス仕様ながら、リード最大4,400MB/s、ライト最大3,800MB/sと、PCIe 4.0x4対応SSDとして申し分ない速度を実現しつつ比較的安価な価格のコストパフォーマンスに優れる製品。
放熱対策にグラフェン銅箔層の極薄ヒートシンクを採用することで、狭小環境でも取り付け可能。専用ツールで動作モードを「GAME MODE」に変更すると、速度を約20%高められる点も特徴。今回検証する容量1TBモデルのCSSD-M2L1KSFT4KGでは、TBWは220TBとなっている。ラインナップ上の最大容量は4TBだ。
キオクシア「EXCERIA PLUS G3 SSD-CK1.0N4PLG3N」、「EXCERIA PLUS G3 SSD-CK2.0N4PLG3N」
「EXCERIA PLUS G3 SSD-CK1.0N4PLG3N」と「EXCERIA PLUS G3 SSD-CK2.0N4PLG3N」は、キオクシア製SSDの中でメインストリームモデルとして位置付けられている製品。キオクシアは、世界初のNAND型フラッシュメモリを発明した日本メーカーで、本製品のNANDフラッシュメモリも国内工場生産による自社製TLC 3D NAND「BiCS」を採用している。リード最大5,000MB/s、ライト最大3,900MB/sと、PCIe 4.0x4対応SSDとして十分な速度を発揮。また、ランダムアクセス性能の高さも売りとしている。
低消費電力のため、デスクトップPCだけでなくノートPCでの利用にも最適。TBWは、容量1TBのSSD-CK1.0N4PLG3で600TB、容量2TBのSSD-CK2.0N4PLG3Nで1,200TBとなっている。
Nextorage「Gシリーズ NE1N2TB」
「Gシリーズ NE1N2TB」は、ゲーミングPCやクリエイター向けPCなどでの利用を想定した、PCIe 4.0x4対応SSD高性能モデル。速度はリード最大7,300MB/s、ライト最大6,900MB/sと、PCIe 4.0x4対応SSDのほぼ上限で、データの読み出しも高速に行なえるため、快適なゲームプレイが可能。
また、大容量のDRAMキャッシュ搭載により耐久性を高めており、今回検証する容量2TBのNE1N2TBでは、TBWは2,400TBと大容量となっている。ラインナップに8TBモデルがあるのも特徴だ。
日本シーゲイト「FireCuda 530」、「FireCuda 540」
「FireCuda 530」は、リード最大7,300MB/s、書き込み最大6,900MB/sと、PCIe 4.0x4対応SSDとしてトップクラスの性能を謳うハイエンド製品。その圧倒的な速度を生かし、高性能なゲーミングPCやクリエイター向けPCなどでの利用が最適とされている。
今回検証する容量2TBのZP2000GM3A023では、TBWは2,550TBと、今回検証した製品の中で最も多い容量に設定されているなど、高耐久性も特徴の1つ。5年保証が付属し、3年に1回まで無償でRescueデータ復旧サービスを利用できる。2TBまでは、同仕様のPlayStation 5公式ライセンスモデルもある。
「FireCuda 540」は、同社製SSD製品として初めてPCIe 5.0x4に対応した製品。速度はリード最大10,000MB/sと、PCIe 4.0x4対応SSDを大きく凌駕する。
また、FireCuda 530シリーズ同様の高耐久性の特徴も受け継いでおり、今回検証する容量2TBのZP2000GM3A004では、TBWは2,000TBに設定されている。こちらも5年保証が付属し、3年に1回まで無償でRescueデータ復旧サービスを利用できる。なお、検証時の発熱を考慮し、本製品ではファン付きの大型ヒートシンクを装着して検証を行なった。
検証には以下に示す仕様のPCを利用した。SSDは、製品によってヒートシンク装着、未装着という違いがあるが、PCがやや小さめの筐体ということを考慮して、ヒートシンク未装着の製品については、別途ヒートシンクを用意して装着したり、空冷ファンを取り付けることでエアフローが届くようにしている。
テストに利用したPCの仕様 | |
---|---|
ベアボーン | ASRock DeskMini B660 |
プロセッサ | Core i3-12100 |
メモリ | DDR4-3200 8GB×2 |
OS | Windows 11 Home 64bit |
検証結果
では、検証結果を製品ごとに紹介していこう。
CFD販売「CSSD-M2L1KSFT4KG」
CrystalDiskMarkの結果を見ると、シーケンシャルリード、シーケンシャルライト速度は検証前後でほぼ速度に変化がなかったが、ランダム4K/Q32T16のライト結果のみ、検証後に大きく落ち込んだ。ただ、ランダム4K/Q1T1では大きな落ち込みは見られないため、Windows環境での実利用時には、体感できるレベルで速度が低下することはほぼないと考えて良さそうだ。
保存したデータはすべて正常に読み出せた。
キオクシア「EXCERIA PLUS G3 SSD-CK1.0N4PLG3N」
CrystalDiskMarkの結果は、検証後でわずかに速度が落ちている部分もあるが、ほぼ誤差の範囲内。またランダム4K/Q32T16ライトのように書き込み後に大きく向上している部分もある。とはいえ基本的には検証前後でほぼ同等と言える。保存したデータもすべて正常に読み出せた。
キオクシア「EXCERIA PLUS G3 SSD-CK2.0N4PLG3N」
CrystalDiskMarkの結果は、項目ごとに多少の上下が見られるものの、すべて誤差の範囲内で、検証前後でほぼ同等の速度と言える。また、保存したデータもすべて正常に読み出せた。
Nextorage「Gシリーズ NE1N2TB」
CrystalDiskMarkの結果は、多少の変化はあるものの、どれも誤差の範囲内で、検証前後でほぼ同等の速度と言える。また、保存したデータもすべて正常に読み出せた。
日本シーゲイト「FireCuda 530 ZP2000GM3A023」
CrystalDiskMarkの結果は、わずかに速度が低下している項目も見られるが、ほぼ誤差の範囲内であり、速度は検証前後でほぼ同等と言える。また、保存したデータもすべて正常に読み出せた。
どの製品も、TBWで設定されている容量を書き込んでも安心して利用可能
今回の検証は、冒頭に説明した通り、各製品のTBWそのものを検証しているわけではない。あくまでも、各製品が設定している公称のTBW容量分のデータを書き込んだ場合に、そのSSDの性能がどう変化するのかをチェックするとともに、保存したデータが正常に読み出せるかどうかを検証している。
結果は、どの製品も基本的にはTBW分の容量を書き込んでも検証前とほぼ同等の性能が発揮されるとともに、保存したデータも全く問題なく読み出せた。このことから、今回検証した製品に関しては、TBW分の容量を書き込んだとしても、大きく性能が落ち込んだり、保存データに問題が発生することはないと結論付けていいだろう。
ところで、各製品に設定されているTBWの容量は、通常利用の範囲内であれば、そう簡単に到達するものではない。たとえば、今回検証した中で最もTBW容量が少ないのは、CFD販売のCSSD-M2L1KSFT4KGの220TBだ。他の製品と比べるとかなり少なく見えるかもしれないが、1日あたり約60GBの容量を書き込んだとしても、220TBに到達するのに10年かかる。一般的に、Windows PCの1日あたりの書き込み容量は10~40GB程度と言われることを考えても、TBWが220TBもあれば全く問題のない耐久性が備わっていると言える。
以上のことから、今回検証したSSDについては、よほど極端な使い方を行なわない限り、PCの寿命を通して安心して利用できると考えていい。そのうえで、自分の目的や予算に合った製品を選択してもらいたい。今回の検証がその一助になると幸いだ。