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フリーランスが29万円で買ったVAIO SX12。1年弱使ってみて感じたモバイルノートとしての出来

筆者が使用している「VAIO SX12|ALL BLACK EDITION」。昨年の7月にカスタマイズモデルを購入し、当時の価格は29万6,000円だった

 筆者は、数十年パソコン誌の編集や執筆に携わっているフリーランスの編集者/ライターだ。PC Watchの僚誌「DOS/V POWER REPORT」で主にCPUやマザーボードの記事を、他媒体でノートPCの記事などを執筆している。

 ハードウェアに精通しており、常に最新の情報にも触れているので、PC選びに関してはそれなりの自信を持っている。そんな筆者が今愛用しているのは「VAIO SX12|ALL BLACK EDITION」。購入してからもうすぐ1年が経とうとしているが、性能・使い勝手ともに非常に満足している。

 ここでは、数あるPCの中でもなぜ筆者がVAIO SX12を選んだのか、実際に使ってどういう点がよかったのかをレポートしたい。VAIOのモバイルノートに興味を持っている人や、ノートPC選びで悩んでいる人たちの参考になれば幸いである。

VAIO SX12|ALL BLACK EDITIONを選んだ理由

 筆者がモバイルノートを選ぶ上で重視するのは、主に「デザイン/色」、「携帯性」、「耐久性」、「性能」、「使い勝手」の5つ。VAIO SX12|ALL BLACK EDITIONを選んだのはこれらすべてが高いレベルで実現されているからだ。

 まず、気に入ったデザインや色であれば、気分も上がり、常に持ち歩こうという気になるし、愛着が湧いて大切に使おうともするだろう。実際、VAIO SX12は造形的に美しいし、筆者の購入したALL BLACK EDITIONは特に黒色ベースの配色に惹かれるものがあった。

ALL BLACK EDITIONの統一感がたまらない
デスクトップまで黒で統一したVAIO SX12|ALL BLACK EDITIONは非常にかっこいい。標準のVAIO SX12の黒色モデルはヒンジ背面のオーナメントがシルバーだが、ALL BLACK BLACK EDITIONはガンメタリックで統一感がある

軽量かつコンパクトでいつでも手軽に持ち運べる

 ALL BLACK EDITIONも含めVAIO SX12 のサイズは、約287.8×205×15~17.9mmと非常にコンパクト。A4サイズの書類がギリギリ収納できるような小さめのカバンでも余裕を持って収納できる。

コンパクトなので持ち運びがラク
横幅は約287.8mm、奥行は約205mmでA4よりも小さいサイズ
高さは約15~17.9mm
A4ファイルがギリギリ収納できる小さ目のカバンに収納可能。軽いので出し入れしやすい

 重量も通常カラーのモデルで約899gから、筆者の購入したALL BLACK EDITIONの場合は約929g~950g(5Gやタッチパネルの有無などで異なる)と軽く、さっと取り出すことができる点も便利だ。もちろん、USB PDにも対応しているので、市販品の充電器を使うこともできる。

 バッテリの容量は、1日持ち歩いて使うには十分なもの。普段の使用感からすると、7~8時間くらいは余裕で使える。この点を含め、VAIO SX12の携帯性は非常に満足できるものだ。

重量は900g台と非常に軽量だ
筆者が使用しているVAIO SX12|ALL BLACK EDITIONの重量は実測値で935g
USB PD(Power Delivery)に対応しており、USB Type-Cの充電器が付属している

1年間ラフに使用しても特にトラブルはなし

 普段はなるべく丁寧に扱ってはいるが、時間に追われる撮影現場などに持ち込んで使用していると、どうしても扱いが雑になってしまうことがある。

 実は、1mくらいの高さから落とすという事故も起きているが、幸いなことに故障は一度も発生していない。1年弱使った経験をもとに判断するなら耐久性は高いと言ってよいと思う。

 実際、製品ページで紹介されているように、VAIO SX12は米国国防総省が定めた品質基準「MIL規格(MIL-STD-810H)」に準拠していることに加え、VAIO独自の耐久試験を実施、クリアしている。その耐久性の高さを身をもって体験した感じだ。

品質面で安心の設計
価格重視のノートPCの場合、マザーボードの部品点数を極力減らしていたりするので長期間の使用には不安がある。その点、VAIO SX12は発表会でのハンズオンなどで基板をしっかりと公開しているし、品質面に関しては安心感がある

11世代Coreから性能が爆上がり、クリエイティブアプリも超快適

 高性能なCPUを搭載する点も筆者がVAIO SX12|ALL BLACK EDITIONを選択した理由だ。

 CPUは第12世代のモバイルノート向けPシリーズの最上位「Core i7-1280P」を搭載。14コア/20スレッド(Pコア: 6、Eコア: 8)の構成で、性能重視のPコアと電力効率重視のEコアから成るハイブリッドアーキテクチャが採用されている。

 基本的にはフォアグラウンドで動作しているアプリの処理をPコアが行ない、バックグラウンドで動作しているアプリの処理をEコアが担当するようになっている。

 そのため、たとえば、フォアグラウンドで写真編集アプリなどを動かしている(Pコアが担当)時に、ウイルス対策アプリなどがバックグラウンドで動作してもEコアが担当するため、メインの作業に影響をおよぼしにくい。

 実際、第11世代のCore i7-1165G7(4コア/8スレッド)を搭載したノートPCを使用していた時は、Adobeのクリエイティブ系アプリを使用している際に裏でWindowsのタスクなどが発生すると、作業に影響が出ることが多々あったが、VAIO SX12ではそういったことが少なくなった。

14コア/20スレッドのCore i7-1280Pを搭載
VAIO SX12|ALL BLACK EDITIONが搭載するCPUはCore i7-1280P。第12世代までと違い、性能重視のPコアと電力効率重視のEコアという性質の違う2種類のコアを搭載するハーブリッドアーキテクチャが採用されている点が特徴。Core i7-1280PはPコアを6基、Eコアを8基搭載する。Pコアは1つのコアで2つのスレッドの同時処理を可能とするHyper-Threadingをサポートしているため、最大20スレッドの同時処理に対応している

 第12世代Coreは、コア数が増えた上、コア自体の性能が向上していることもあり、下に掲載しているPCMark 10 Extendedのテスト結果の通り、第11世代Coreと比較すると性能が格段に向上している。

 また、VAIO SX12はCPUの能力を最大限引き出す独自技術「VAIO TruePerformance」をサポート。「VAIOの設定」というアプリから、「パフォーマンス優先」、「標準」、「静かさ優先」のいずれかの動作モードを選んで、状況に応じた性能を得ることができる。

 ちなみに、パフォーマンスを落として静音性を高める「静かさ優先」モードでもCore i7-1165G7搭載ノートPCを上回るぐらいの性能が出ていた。

状況に応じて性能または静音優先を選択可能
VAIO SX12|ALL BLACK EDITIONは、「VAIOの設定」アプリでCPUと動作ファンを「パフォーマンス優先」、「標準」、「静かさ優先」の3つに設定できる。筆者は普段、電源接続時は主に「標準」に設定、動画編集などパワーを要する作業の場合は「パフォーマンス優先」に設定。バッテリ動作時でCPUパワーを要さない作業が中心の場合はCPU性能が低くなるものの消費電力が小さくなる「静かさ優先」に設定して使っている
VAIO SX12|ALL BLACK EDITIONの性能を、PCMark 10 ExtendedでCore i7-1165G7搭載ノートPC(メモリとSSDの仕様はほぼ同等)と比較したもの。「Essentials」はアプリの起動速度やWebブラウジング関連の処理性能を計測したスコア。「Productivity」は表計算アプリやワープロアプリの処理性能を計測したスコア。「Digital Contents Creation」は写真や動画編集、3Dレンダリングなどデジタルコンテンツ制作に関わる作業の処理性能を計測したスコア。「Gaming」はゲーミング性能を計測したスコアだ。総合スコア(PCMark 10 Extended)を比較すると、パフォーマンス優先モードでは格段の差、CPU性能が落ちる静かさ優先モードでもCore i7-1165G7搭載ノートの性能を上回っている

 筆者は雑誌の編集や執筆などを生業としているため、雑誌の誌面データを作成するAdobe「InDesign」やイラストや図版を作成する「Illustrator」、写真を編集、現像する「Lightroom」、動画の編集を行なう「Premire Pro」などのAdobeのクリエイティブ系アプリを外出先でも使用しなければならないことが多々あるのだが、それらの比較的重い作業もVAIO SX12|ALL BLACK EDITIONは難なく行なえる。その点にも大変満足している。

クリエイティブな作業も快適にこなす
筆者が普段から使用しているAdobeの「InDesign」や「Illustrator」、「Lightroom」、「Premire Pro」などのクリエイティブ系アプリも快適に動作する。写真はInDesignでDTP作業を行なっているところ

 VAIO SX12|ALL BLACK EDITIONが搭載するCore i7-1280P[14コア(Pコア : 6、Eコア : 8)/20スレッド]は、最新のモバイルノートの多くが採用する第13世代のCore i7-1360P[12コア(Pコア : 4、Eコア : 8)/16スレッド]よりもコア数とスレッド数が多いため、シングルスレッド性能では劣るもののマルチコア性能はほぼ同等の性能を出すこともある。

 現在はOSも含めマルチスレッドに対応したアプリが多いため、マルチコア性能のほうが重要視される。

 そういう意味で、VAIO SX12|ALL BLACK EDITIONは発売から1年近く経った今でも最新世代の高性能PCに劣らない性能を持っていると言っても過言ではない。この点は少々高価でもCore i7-1280Pを搭載するALL BLACK EDITIONを選んでよかったと思うところだ。

VAIO SX12|ALL BLACK EDITIONが搭載するCore i7-1280P[14コア(Pコア: 6、Eコア: 8)/20スレッド]と、最新モバイルノートに搭載されているCore i7-1360P[12コア(Pコア: 4、Eコア: 8)/16スレッド]の性能をCinebench R23で比較した。Pコアの性能が強化されているため、シングルコア性能はCore i7-1360Pのほうが勝るが、マルチコア性能はコア数/スレッド数が多いCore i7-1280Pのほうが勝っている

使い勝手に関しても文句なし

 使い勝手が良い点にも大変満足している。ポイントごとに説明していこう。

 VAIO SX12の液晶ディスプレイは12.5型ながらフルHD(1,920×1,080ドット)の解像度で各種アプリを使った作業を快適に行なえる。クリエイター向けPCほどではないが色の再現性も十分。さっと写真や動画を確認するのにも使えるので満足している。

ビジネス向けノートとして十分な色再現性
発色は自然で色の再現性は十分。タッチ操作非対応のモデルは非光沢パネルなので映り込みも少ない

 コンパクトサイズということで、キーボードの使い勝手に関しては不安を持っていた。しかし、それはまったくの杞憂であった。キーボードは標準的なキー配列で、Shift、Spaceなどのコントロールキーが若干小さ目だが特に操作しづらいといったことはない。

 キーピッチは約19mmと標準でストロークも約1.5mmと十分。なかなか快適に文字入力を行なえる。キーボードに傾斜がつく構造となっている点も文字入力の快適性を向上させている。

 タッチパッドは確実に右クリック、左クリックが行なえる物理ボタン付き。感度も良好で使いやすい。筆者は物理ボタンのないタッチパッドが苦手なので、この点も非常に気に入っている。

小型だがキーボードはゆとりがある
ShiftやSpaceなどのコントロールキーが若干小さいものの標準的なキー配列。キーピッチは19mmと標準でストロークも1.5mmと十分。小型サイズのPCとは言え快適に文字入力を行なえる
モニターを開くと、キーボードにほどよい角度で傾斜が付くため文字入力が行ないやすく、疲れにくい。長時間にわたって原稿を書くことが多い筆者にはまさにうれしいポイントだ
物理ボタン付きのタッチパッドは感度も良好で使いやすい。中央よりに配置されている点も使い勝手を向上させている

 コンパクトサイズながらインターフェイスが充実している点もVAIO SX12の魅力だ。最大転送速度が40GbpsでUSB PDやディスプレイ出力などにも対応したUSB Type-C端子としても使用できるThunderbolt 4/USB4端子を2基搭載。そのほか、ディスプレイ出力として標準的なHDMI端子や、Gigabit Ethernet対応の有線LAN端子も装備する。

 Web会議の際に、無線LANの接続性が悪い時には、有線LANで安定した通信ができるので、いざという時にありがたい。

USB PD/DisplaPort対応のType-Cを搭載
右側面にThunderbolt 4×2、USB 3.0、HDMI、Gigabit Ethernetポートを装備
左側面にはUSB 3.0とヘッドフォン出力を装備する
2基のThunderbolt 4はUSB PDとDisplayPort Alt Modeをサポート。これらに対応するモニターを用意すれば、USB Type-Cケーブル1本で映像出力と充電が行なえる。筆者自身、自宅でも写真のように、USB Type-Cケーブルで液晶モニターに接続して利用している

 無線LANは6GHz帯を使用できる最新のWi-Fi 6Eをサポートしている。5GHz帯を使用する従来方式では2本のチャンネルしか選択できなかったが、6GHz帯を使用した場合は3本のチャンネルの選択が可能となる。

 そのため、Wi-Fi 6Eではより快適な通信が期待できる。Wi-Fi 6Eに対応したルーターはまだ少ないが、いずれ対応製品が標準となることは間違いないので、長く使うことを考えると対応しているのは心強い。

 なお、VAIOストアでカスタマイズ購入する場合は、5G対応のワイヤレスWANモデルも選べる。どこにいても即座にネットにつなぎたいという人には欠かせないオプションだろう。

最新のWi-Fi 6Eをサポート
Wi-Fi 6EアダプタはIntel製のものが搭載されている
Wi-Fi 6EおよびワイヤレスWANのアンテナはディスプレイの上部に搭載されている

 購入する前にはあまり重視していなかったのだが、思ってた以上に快適だったのが、指紋認証と顔認証の両方に対応している点だ。

 指紋リーダは電源ボタン一体型なので、指紋を登録した指で電源ボタンを押せば、Windows 11にサインインするのにピンやパスワードを入力する必要がない。

 これだけでも便利なのだが、VAIO SX12にはPCの前から離れると人感センサーが検知してPCを自動でロック状態にする「離席オートロック」機能が搭載されている。PCの前に戻った場合は顔認証機能で何もせずにロックが解除される。

 オフィスなどでちょっと席を離れる際にセキュリティが確保される上、面倒もないので、この機能は重宝している。

顔認証と指紋認証に両対応
生体認証は顔認証と指紋認証に対応。指紋リーダは電源ボタンに装備されている

 最近は会議や打ち合わせはもっぱらオンラインという人は多いのではないだろうか。筆者も打ち合わせはほぼ「Teams」か「Zoom」で行なっている。そういう現状に合わせ、VAIO SX12はWeb会議向け機能も強化されている。

 Webカメラは207万画素のフルHD対応でそのままでも画質がよいが、AIでカメラ映りを最適化する機能が搭載されており、顔が最適な大きさで中心になるように自動でフレーミングしたり、顔の明るさが最適になるよう露出を制御したり、背景をぼかしたりすることが可能。

Web会議に強いカメラのカスタマイズ設定
Webカメラは207万画素のフルHD対応。使用しない時はプライバシーシャッターで写真のように物理的にレンズを塞ぐこともできる
顔が最適な大きさで中心になる「自動でフレーミング」機能や顔の明るさが最適になるよう露出を制御する「顔優先AE」や自分の声や空いての声をクリアにするAIノイズキャンセリング機能などが搭載されているので快適にWeb会議が行なえる
「背景ぼかし」や「自動フレーミング」、「顔優先AE」、「逆光補正」などの設定はプリインストールアプリの「VAIOの設定」で行なう

 マイクやスピーカーは、PC正面の自分の声だけをクリアにキャッチするビームフォーミング技術やAIノイズキャンセリング機能に対応しており、自分の声を相手にきれいに届けるとともに、相手の声もクリアに聞き取ることができる。

 外出先でもオンラインでちょっとした打ち合わせを行なうことにある筆者にとってこれらの機能はとても重宝している。

自宅のプライベートを保護する機能も
背景ぼかし機能を利用すると背景をぼかして相手に見えなくすることができる。左が背景ぼかし有り、右が背景ぼかしなしの状態。部屋の中などを見られたくない時に便利だ
AIノイズキャンセリングの設定などは「VAIOの設定」のサウンド項目で行なえる

 以上、筆者がVAIO SX12 BLACK EDITIONを選択した理由と実際に1年間ほど使った上で満足している点などを紹介してきたが、自分のニーズにぴったり合っていることもあり、使えば使うほど買ってよかったと満足感が増している。

 筆者はPCに関しては飽きっぽく、特に不満はなくともつい最新の製品に目移りしてしまうのだが、この機種に限っては長く使うことになりそうである。

 なお、14.0型ワイドサイズのVAIO SX14も、SX12と画面以外はほぼ同等の仕様である。筆者の場合は携帯性を最重視しているので12.5型ワイドのVAIO SX12を選択したが、画面の大きさを重視するのであれば、VAIO SX14も一考の価値ありだ。

今回紹介したのは12.5型のVAIO SX12(左)だが、14型のVAIO SX14(右)も画面サイズやキーボード以外はほぼ変わらない。文字の見やすさなどを重視するなら、VAIO SX14も注目したい