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1台で2台分以上の働き!選択肢も増えつつある超ワイドモニターのメリット

~BenQ、EIZO、MSIの実機製品も紹介

 コロナ禍によってテレワークが広まるとともに、巣ごもり需要も高まったことによって、以前に比べて自宅でPCを使う機会が増えている。それに伴い、自宅で快適にPCを利用できるよう環境を見直す人も多くなっているが、そういった中で注目されているのが1台で2台分の働きをしてくれるウルトラワイドモニターだ。本稿では、ウルトラワイドモニターのメリットを解説するとともに、おすすめ製品を紹介する。

ウルトラワイド解像度のメリット

写真はベンキュージャパンの「EW3880R

 まず始めに、ウルトラワイドモニターとはどういったものなのか、改めて確認していこう。

 ウルトラワイドモニターとは、一般的なアスペクト比16:9のワイドモニターより横幅の広いモニターのことを指す。ウルトラワイドモニターで最も製品数の多いアスペクト比は21:9で、一般的な16:9のモニターと比べて横幅が約1.3倍で、映画館のスクリーンなどで採用されている「シネマスコープ」と呼ばれるアスペクト比に近いものとなっている。そのほかにも、アスペクト比が32:9や32:10など、さらに横幅の広い製品も存在している。

 横幅が広いということは、当然一度に表示できる情報量がワイドモニターよりも多くなる。ウルトラワイドモニターの表示解像度は、アスペクト比やモニターサイズによって変わってくるが、アスペクト比21:9の製品では、2,560×1,080ドットや3,440×1,440ドット、3,840×1,600ドット、5,120×2,160ドットといった表示解像度となっている。

 例えば、2,560×1,080ドット表示のウルトラワイドモニターの場合、フルHDの領域となる1,920×1,080ドットを使っても、さらに640×1,080ドットの表示領域が残ることになる。つまり、1つのアプリをフルHDサイズで表示しても、ほかのアプリを重ねることなくその横に表示できる。

16:9のモニターに横長と縦長の2画面を並べた場合。どちらも左右が窮屈だ
これが24:10のモニターだとこのように広々と表示できる

 表示領域を画面中央で2分割して2つのアプリを同時表示する場合でも、フルHDモニターでは1つのアプリに対してそれぞれ960×1,080ドットずつの表示となり、横の情報量が足りなくなる場合がある。

 それに対し2,560×1,080ドットのウルトラワイドモニターなら、アプリごとに1,280×1,080ドットずつの表示となる。これは、SXGA表示を2つ並べた形と同等で、2つのアプリを申し分ない実用度で同時表示して利用できる。当然1つのアプリをフル画面で表示する場合も、表示領域を広く確保できる

Windows 11の新スナップ機能との相性抜群

 もう1つ見逃せない点が、Windows 11で拡張された「スナップ」機能との相性の良さだ。

 Windows 11では、ウィンドウの最大化ボタンにマウスカーソルを合わせると「スナップレイアウト」と呼ばれるメニューが表示され、複数のアプリを簡単に整列表示できるようになっている。

Windows 11では、ウィンドウの最大化ボタンにマウスカーソルを合わせると「スナップレイアウト」と呼ばれるメニューが表示され、複数のアプリなどを簡単に整列表示できる

 スナップレイアウトには2分割から4分割まで最大6パターンが用意されているが、フルHD解像度では、左右2分割を除いてはアプリごとの情報量が少なくなり、使い勝手があまりよくないのも事実だ。

 それに対しウルトラワイドモニターは、左右3分割にしても十分な表示領域が得られるほどスナップ機能との相性が良いため、便利に活用できるのだ。

 そのほか、映画などの映像コンテンツを楽しむ場合でも、シネマスコープに近いアスペクト比のウルトラワイドモニターなら上下の黒帯も少なく大迫力で楽しめる。そのため、快適にリモートワークをこなすだけでなく、仕事の合間や休日の息抜きなどにもウルトラワイドモニターは最適というわけだ。

1台で2台を超える利便性を実現

写真はエムエスアイコンピュータージャパンの「Optix MAG301RF

 ウルトラワイドモニターは、画面の横幅が広がっていることで、同じ画面サイズで比較した時、ワイドモニターより横幅が大きくなる。例えば、現在市販されているウルトラワイドモニターでほぼ最小サイズの29型の製品では横幅が70cm前後。それに対し、32型ワイドモニターの横幅が75cm前後。つまり、29型のウルトラワイドモニターを設置するには32型ワイドモニターに近い横幅が必要となる。

 それでも、ワイドモニターを2台設置するよりは遙かに省スペースだ。PCの表示環境を向上させたいものの、モニターを2台設置するスペースまではないという場合に、ウルトラワイドモニターは非常に有効な選択肢となる。

 オフィスではデスク上のスペースに余裕がある場合も多いかもしれないが、自宅ではマルチモニターを設置するスペースの確保が難しい場合が多い。つまり、設置スペースを極力節約しつつ、表示環境を改善できるということが、ウルトラワイドモニターの大きなメリットであり、注目度が高まっている大きな要因となっている。

 むしろ、モニター2台を並べたマルチモニター環境に対するメリットもある。2台のモニターを並べて利用する場合、どうしても表示領域の切れ目ができてしまう。それぞれの表示領域を別々のアプリで占有して利用するなら大きな問題はないが、画面全体を1つのアプリで利用したい場合や、3つのアプリを均等に並べて表示したい場合などに、どうしても表示の切れ目が邪魔になってしまう。しかし、ウルトラワイドモニターなら表示の切れ目がない。

2台構成だと中央に切れ目ができるだけでなく、製品を揃えないとチグハグになる

 表示部が湾曲している製品が多く存在している点も、ウルトラワイドモニターの特長の1つだ。特にサイズの大きな製品で湾曲モデルが多くなる傾向で、画面を湾曲させることで中央部と両端付近とで、目からの画面距離の差が少なくなるので、見やすくなるメリットがある。

ウルトラワイドモニターはインチサイズよりも小さく感じる

写真はEIZOの「FlexScan EV3895

 ウルトラワイドモニターはアスペクト比が横長となっていることや、我々がアスペクト比16:9のワイドモニターをほぼ標準で使ってきたことから、モニターサイズから実際の見え方の判断が付きづらい。例えば、29型のウルトラワイドモニターの場合、29型というサイズをワイドモニターで思い浮かべてかなり大きいと感じるかもしれない。しかし、実際に製品を見ると、思ったより小さく、文字が読みにくいと感じる場合があるかもしれない。

 これは、ウルトラワイドモニターではアスペクト比が横長のため、高さが低くなり、その分文字が小さくなるためだ。ウルトラワイドモニターを選ぶ場合には、モニターサイズではなく表示領域の高さをチェックして選択することをお勧めする。

 具体的に見ていこう。ある29型のウルトラワイドモニターの表示領域のサイズは、高さが約284mm。それに対し、ある23.8型のワイドモニターの高さは約296mm。つまり、29型ウルトラワイドモニターは、23.8型ワイドモニターに近いサイズ感になると考えていい。

 同様に、37.5型ウルトラワイドモニターの表示領域のサイズは、高さが約367mm。これは、高さが約336mmの27型ワイドモニターと、高さが約398mmの32型ワイドモニターの中間ほどとなる。

 このように表示領域の高さを指標としてウルトラワイドモニターを選択すれば、モニターサイズより小さく感じることはなくなると思うので参考にしてもらいたい。

 以上のポイントを踏まえたうえで、EIZO、エムエスアイコンピュータージャパン、ベンキュージャパンのお勧め3製品を紹介していく。

EIZO初のウルトラワイドモニターは湾曲液晶採用の意欲作! 「FlexScan EV3895」

 EIZOのモニターといえば質実剛健でプロが好む製品という印象が強く、製品ラインナップも保守的イメージがあるかもしれない。しかし実際には他にはない特長で攻めた製品も多く手がけている。そのEIZOから初めて登場したウルトラワイドモニターが「FlexScan EV3895」だ。

FlexScan EV3895。最大85Wの給電が可能なUSB Type-Cポートにより、USB Type-Cケーブル1本で接続するだけで、ノートPCに映像入力と電力供給、有線LAN接続が1度に行なえる

 初のウルトラワイドモニター製品ながら、いきなり37.5型の大型サイズを投入するだけでなく、湾曲液晶を採用。しかも、それをビジネス向け主力ブランドであるFlexScanとして投入するという点からは、かなり攻めているという印象を強く受ける。

 パネルには、アスペクト比が24:10、表示解像度が3,840×1,600ドットのIPS湾曲液晶を採用。モニター前に座ると、モニターに囲まれているかのような没入感がありつつ、中央でも周辺部でも映像や文字が非常に見やすい印象だ。発色性能も、sRGBカバー率100%、DCI-P3カバー率94%と申し分ない。ビジネスシーンでも、プレゼンアプリなどで写真や映像データを扱う場面が少なくないが、そういった用途にも問題なく対応可能だ。

パネルは湾曲式

 ウルトラワイドモニターの広大な画面を有効活用する豊富な機能を搭載する点も特長だ。その1つが、最大3系統の入力映像を並べて表示するPbyP機能。3台のPCの情報を同時表示するのはもちろん、表示領域もワンタッチで切り替えられる。

 しかも、EV3895と各PCをUSB接続し、EV3895のUSBポートにマウスとキーボードを接続しておけば、表示を切り替えるだけでキーボード、マウス接続も切り替えられる「PC切替機能(KVMスイッチ)」も搭載。複数のPCを使い分けている人にとって、このうえなく便利な機能だ。

2台のノートPCをつなげてPbP表示したところ。USBキーボード/マウスのKVM機能も搭載する

 最大85Wの給電が可能なUSB Type-Cポートや、USB LANアダプタとして利用できるLANポートを備える点も、利便性を高める特長の1つ。USB Type-Cケーブル1本で接続するだけで、映像入力と電力供給、有線LAN接続が1度に行なえるようになっているため、対応ノートPCを内外で利用する人にとって、ありがたい仕様と言える。

背面にモニターインターフェイスやUSB、LANポートなどを装備
側面に周辺機器をつなぐUSBとヘッドフォン端子
付属の各種ケーブルも本体と色を統一している点にはこだわりを感じる

 どちらかというとコンシューマ向けと捉えられがちなウルトラワイドモニターではあっても、ビジネスシーンで便利に活用できる仕様を多く搭載している点は、EIZOの製品らしい特長だ。

 サイズは、893.9×240×411~603.7mm(幅×奥行き×高さ)だが、奥行きが比較的短く、設置しやすくなっている。スタンド部は、192.7mmの範囲での高さ調節、下5度、上35度の範囲でのチルト角度調節、左右35度ずつのスイベル調節が可能となっており、利用環境に合わせて最適な視認性を確保できる。

 実売価格は20万円前後とやや高価だが、豊富な機能面を考えると納得の価格だ。リモートワークの快適性を第一にウルトラワイドモニターを導入したい場合にお勧めだ。

正面
一番上まで上げたところ
一番下まで下げたところ
右側面
左側面
一番上まで傾けたところ
一番下まで傾けたところ
モニター前面にあるスイッチで表示設定を行なう

200Hzの高リフレッシュレート対応でゲームにも最適なMSI「Optix MAG301RF」

Optix MAG301RF。最大200Hzの高リフレッシュレートに対応するゲーミング向け製品

 エムエスアイコンピュータージャパンの「Optix MAG301RF」は、アスペクト比21:9、表示解像度2,560×1,080ドット表示に対応する29.5型ウルトラワイドモニターだ。製品名に「MAG」と付いていることからピンと来る人もいるかもしれないが、この製品はゲーミング用途をターゲットとしたモニターだ。

 その最たる部分が液晶パネルの仕様で、最大200Hzの高リフレッシュレート、応答速度1ms(GTG)の「RAPID IPS」液晶を採用している。これによって、ゲームなどの高速な映像でも残像がまったく気にならない。また、HDR表示にも対応しているため、ゲームはもちろん映像コンテンツや写真なども高品質かつメリハリのある発色で表示可能。背面にLEDイルミネーション「Mystic Light」を配置している点も、ゲーミングモデルらしい特長だ。

ゲーマー向けらしく背面のLEDを光らせられる

 デザイン自体は落ち着いた印象で、書斎でも浮くことはない。スタンドには130mmの範囲の高さ調節、下5度から上20度の範囲でのチルト角度調節、左右45度ずつのスイベル調節が可能と、申し分ない機能を備えており、常に最適な視認性を確保できる。

 アンチフリッカーおよびブルーライトカット機能で、長時間の使用でも目の疲れを低減。こういった部分は、文字を見続けるリモートワーク用途でも、ありがたいポイントだ。このほか、PCとUSBケーブルで接続し、PCに専用アプリ「GamingOSD」をインストールすることで、設定作業をPCのキーボードとマウスで行なえる点も非常に便利だ。

背面のインターフェイス部
通常のOSD操作は背面のスティックコントローラで行なうが
「GamingOSD」をインストールすると、PCのキーボードとマウスでOSD操作できるようになる

 サイズは、29.5型ということもあって709.4×234×269.2~399.2mm(幅×奥行き×高さ)と比較的コンパクトで、置き場所にも困らないだろう。

 しかも、一般的に高価なイメージのあるゲーミングモニターながら、Optix MAG301RFは実売5万2,000円前後と比較的安価な点もうれしい部分。快適なリモートワークをこなすだけでなく、空いた時間や休日には本格的にゲームも楽しみたいと考えている人にお勧めの製品だ。

正面
一番上まで上げたところ
一番下まで下げたところ
右側面
左側面
一番上まで傾けたところ
一番下まで傾けたところ

目に優しい独自の映像調節機能や内蔵スピーカーの迫力サウンドが魅力。BenQ「EW3880R」

EW3880R。最大60Wの給電が可能なUSB Type-Cポートにより、USB Type-Cケーブル1本で接続するだけで、ノートPCに映像入力と電力供給ができる

 ベンキュージャパンの「EW3880R」は、アスペクト比24:10、表示解像度3,840×1,600ドット表示に対応する37.5型ウルトラワイドモニターだ。この製品の特長は、高解像度の37.5型の大型IPS液晶を採用した2300Rの湾曲式となっている点だ。

 湾曲していることで、モニター前に座って映像を見る場合でも、視点から中央部と周辺部までの距離の違いが緩和され、画面全体を見渡す場合でも見やすくなっている。湾曲していると、直線が曲がって見えるのではと心配するかもしれないが、実際に表示映像を見ると直線が曲がって見えることはない。

パネルは2300Rの湾曲式

 エンターテインメント用途をターゲットとしており、色温度と輝度を自動調節する独自の「HDRi技術」の搭載で、コンテンツに最適化したメリハリのある発色を実現。また、3W+3Wステレオスピーカーと8Wウーファという構成の高音質2.1chスピーカー搭載で、モニター内蔵とは思えないほど高音質かつ迫力のあるサウンドを再生できる。外部スピーカーを用意することなく、ゲームや映像コンテンツを楽しめるのはうれしい。

色温度と輝度を自動調節する独自の「HDRi技術」を搭載

 映像入力は、HDMIやDisplayPortに加えて、USB Type-Cも用意。しかもUSB Type-Cは最大60Wの給電機能も備えており、映像出力対応のUSB Type-Cを備えるノートPCを接続した場合、映像出力とノートPCへの給電をUSB Type-Cケーブルのみでまかなえる。

 また、2系統の入力映像を同時に表示する「PIP/PBP表示」機能も用意。特に2系統の映像を、表示領域を2分割して並べて表示するPBP表示では、双方に1,920×1,600ドットとフルHD超の広大な解像度が割り当てられる。これこそウルトラワイドモニターならではの特長で、実用度の高い機能と言える。

2台のノートPCをつなげてPbP表示したところ

 ベンキュー独自のアイケア技術として、周囲の明るさや色温度に合わせて輝度や色温度を自動調節するブライトネスインテリジェンスプラス、電子書籍や書類を見やすく表示する電子ペーパーモードなどによって、目に優しい表示が可能な点は、リモートワークで長時間利用するユーザーにはうれしい。

 サイズは、液晶パネルが37.5型と大きいため、896.3×294.4×460.2~580(幅×奥行き×高さ)と存在感のある大きさとなっている。それでも23.8型フルHDモニターを2台並べるよりも幅は短く、マルチモニター構成よりも省スペースに設置可能だ。

 スタンドには、約120mmの高さ調節、下5度から上15度のチルト角度調節、左右それぞれ15度ずつのスイベル調節が可能と十分な機能性が備わっている。また、標準で入力切り替えや、各種設定が行なえるリモコンが付属しており、優れた操作性も実現している点も評価が高い。

OSD操作などができるリモコンが付属

 実売価格は13万円前後と、同等クラスのウルトラワイドモニターとしても比較的手ごろ。リモートワークからホビーまで幅広く活躍してくれる製品としてお勧めだ。

正面
一番上まで上げたところ
一番下まで下げたところ
右側面
左側面
一番上まで傾けたところ
一番下まで傾けたところ
背面のカバーを取ると……
その内側にインターフェイス
OSD操作のボタンは本体背面