レビュー

【本日発売】最高4GHzで動作する「Core i7-4790」をテスト

 Intelは5月11日、Haswell Refreshと呼ばれていたLGA1150向けの新CPUを発表した。その最上位モデル「Core i7-4790」を借用する機会を得たので、同CPUのパフォーマンスをベンチマークテストでチェックした。

Haswell Refresh最上位モデル、Core i7-4790

 今回借用したCore i7-4790(以下i7-4790)は、Haswell-Refreshとして新たにラインナップされる製品の最上位にあたる製品だ。CPUソケットは従来のHaswellアーキテクチャ採用CPUと同じくLGA1150をサポートし、新たに用意されたIntel 9 シリーズチップセットと、対応UEFIにアップデートされたIntel 8 シリーズチップセットを搭載したマザーボードで動作する。

 i7-4790は、Hyper-Threading Technologyに対応した4つのCPUコアを備えており、定格時のCPUクロックは3.6GHz、Turbo Boost動作時は4.0GHzで動作する。これは従来のHaswellアーキテクチャ採用のCore i7の最高クロック(3.5GHz/3.9GHz)を100MHz上回る。

 CPUに統合されたGPUコアは「Intel HD Graphics 4600」で、GPUクロックは最大1,200MHzに設定されている。その他、8MBのL3キャッシュを備え、TDPは84W、製造プロセスは22nmを採用している。CPUの動作クロックが向上したことを除き、従来のHaswellアーキテクチャCPUと目立った違いは見られない。

Core i7-4790
Core i7-4770K(左)との比較
【表1】主な仕様
Core i7-4790Core i7-4771Core i7-4770K
製造プロセス22nm22nm22nm
アーキテクチャHaswell RefreshHaswellHaswell
コア数444
スレッド数888
CPUクロック(定格時)3.6GHz3.5GHz3.5GHz
CPUクロック(Turbo Boost時・最大)4.0GHz3.9GHz3.9GHz
L3キャッシュ8MB8MB8MB
内蔵GPUコアIntel HD Graphics 4600Intel HD Graphics 4600Intel HD Graphics 4600
GPUコアクロック(最大)1200MHz1200MHz1250MHz
TDP84W84W84W
倍率アンロック××
対応ソケットLGA1150LGA1150LGA1150

 今回、i7-4790のテストには、Intel 9シリーズチップセットの1つ「Intel Z97 Express チップセット」を搭載した、MSI製マザーボード「Z97 MPOWER MAX AC」を利用した。

 新チップセットを採用したとは言え、CPUソケットの変更が無いこともあって、基本的な機能はIntel Z87 Express チップセット搭載マザーボードを踏襲している。目新しい要素としては、Intel Z97 Express チップセットに直結されたM.2スロットが用意されたことが挙げられる。

 MSIの資料によれば、Z97 MPOWER MAX ACのM.2スロットは、M.2 SATA対応機器接続時は6Gbps、M.2 PCI Express対応機器接続時は10Gbpsの転送速度をサポートしており、42mm、60mm、80mm長のM.2対応機器を取り付けられる。なお、M.2ポートは、Intel Z97 Expressチップセットが提供している6Gbps対応SATAポートのうち、5番および6番と排他利用となっている。

MSI Z97 MPOWER MAX AC
CPUソケットはLGA1150。CPUクーラー固定穴の位置にも変更は無い
M.2スロット。42mm、60mm、80mm長のM.2対応機器を搭載可能
8基のSATA 6Gbpsポートを搭載。チップセット直結の6ポートのうち、5番と6番ポート(写真左から2列目)は、M.2ポートと排他利用

テスト環境

 今回、i7-4790の比較用には、Haswellアーキテクチャ採用のIntel Core i7-4770Kを用意した。両CPUともLGA1150ソケットに対応しているため、CPU以外のパーツ構成はまったく同じものとなっている。

【表2】テスト環境
CPUCore i7-4790Core i7-4770K
マザーボードMSI Z97 MPOWER MAX AC
メモリDDR3-1600 8GB×2(10-10-10-30、1.50V)
ストレージIntel SSD 510 シリーズ 120GB
グラフィックスドライバ10.18.10.3412
電源Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
OSWindows 8.1 Pro Update 64bit

ベンチマーク結果

 それでは、CPUとメモリ回りのベンチマークテスト結果から確認していく。実施したテストは、「SiSoftware Sandra 2014」(グラフ1、2、7、8、9、10)、「CINEBENCH R15」(グラフ4)、「x264 FHD Benchmark 1.01」(グラフ5)、「Super PI」(グラフ6)、PCMark 8(グラフ11)、PCMark7(グラフ12)。

 CPU系のベンチマークテスト結果を見ていくと、Sandra 2014のProcessor Arithmetic/Multi-Mediaをはじめ、CHINEBENCH R15、x264 FHD Benchmarkでも、i7-4790がi7-4770Kを3%弱上回る結果となっている。このスコア差は、両CPUのクロック差とほぼ合致しており、純粋にCPUのクロック差がスコア差に繋がった結果と見てよいだろう。

 メモリ周りの結果では、CPUクロック差と同程度i7-4790のキャッシュ転送速度が向上していることをSandra 2014 Cache Bandwidthで確認できるが、CPUクロックの差を超えるようなスコア差は確認できない。PCMarkのスコア差も1%程度となっており、HaswellとHaswell Refreshの性能差は、純粋にCPUクロックの向上によるものと言える。

【グラフ1】Sandra 2014 20.28(Processor Arithmetic)
【グラフ2】Sandra 2014 20.28(Processor Multi-Media)
【グラフ3】Sandra 2014 20.28(Cryptography)
【グラフ4】CINEBENCH R15
【グラフ5】x264 FHD Benchmark 1.01
【グラフ6】Super PI
【グラフ7】Sandra 2014 20.28(Memory Bandwidth)
【グラフ8】Sandra 2014 20.28(Cache Bandwidth)
【グラフ9】Sandra 2014 20.28(Cache/Memory Latency - Clock)
【グラフ10】Sandra 2014 20.28(Cache/Memory Latency - nsec)
【グラフ11】PCMark8
【グラフ12】PCMark7

 続いて、CPU内蔵GPUを用いて実施した3Dベンチマークテストの結果を確認する。実施したベンチマークテストは、「3DMark」(グラフ13、14、15)、「3DMark11」(グラフ16)、「3DMark Vantage」(グラフ17)、「3DMark06」(グラフ18)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ19)「ファイナルファンタジーXIV」(グラフ20)。

 GPUの性能を問う3Dベンチマークテストでは、CPU系ベンチマークテストの結果とは優劣が逆転しており、3DMarkシリーズのCPUテストを除き、i7-4770Kがi7-4790を3%弱上回っている。

 両CPUが備える内蔵GPUは、ともにIntel HD Graphics 4600だが、i7-4790の最大GPUクロックが1200MHzなのに対し、i7-4770Kは最大1250MHzとなっており、この4%程度のGPUクロック差が、3D系ベンチマークでi7-4790がi7-4770Kの後塵を拝した原因となっているようだ。

 もっとも、i7-4770Kに若干劣るとはいえ、Intel HD Graphics 4600のパフォーマンスを考えれば、この程度の差は、プレイできるゲームタイトルや設定が変わる程ではない。同程度であると考えて差し支えない。

【グラフ13】3DMark - Fire Strike[Default/1,920×1,080ドット]
【グラフ14】3DMark - Cloud Gate[Default/1,280×720ドット]
【グラフ15】3DMark - Ice Storm Extreme[1,280×720ドット]
【グラフ16】3DMark11[Default/1,280×720ドット]
【グラフ17】3DMark Vantage[Default/1,280×1,024ドット]
【グラフ18】3DMark06[Default/1,280×1,024ドット]
【グラフ19】MHFベンチマーク【大討伐】[フルスクリーン]
【グラフ20】ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編[フルスクリーン]

消費電力比較

 最後に、ベンチマークテストを実行した際の消費電力を比較した結果を紹介する。消費電力は、サンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を用いて、アイドル時の消費電力と、各テスト実行中の最大消費電力を測定している。

【グラフ21】 システム全体の消費電力

 アイドル時と、CPU系ベンチマークテストであるCHINEBENCH R15、x264 FHD Benchmark実行中の消費電力については、i7-4790とi7-4770Kの差が1W以下という、ほぼ完全に横並びとなっている。クロック差やパフォーマンス差を考えれば、i7-4790の方が優秀な結果であるとも言える。

 一方、3Dベンチマークテストや、GPUに高負荷を掛けるGPU-ZのRender Test実行中の消費電力については、i7-4790がi7-4770Kを7~12W下回る結果となった。GPUクロック差や3D系ベンチマークテストの結果と合わせれば、i7-4790の方がワットパフォーマンスに優れていると言える結果だ。

Haswellのラインナップを増強するHaswell Refresh

 以上のように、Haswell Refresh最上位モデルi7-4790のパフォーマンスをi7-4770Kと比較してきた。結果から言えば、HaswellからHaswell Refreshのパフォーマンス差は、動作クロック差と合致していた。つまり、動作クロックなどのスペックをそのまま比較することで、HaswellとHaswell Refreshの優劣を判断できる。

 性能面での改善は見られないものの、ワットパフォーマンスに関しては若干の改善が確認できた。ワットパフォーマンスの向上によって生まれた余裕を生かして、CPUクロックを従来モデルより向上させたCPUがHaswell Refreshであると言えるだろう。

 Intel 8シリーズチップセットとの組み合わせる場合、マザーボード側のUEFIがHaswell Refreshに対応していることが必須となるため、マザーボード側のUEFIや対応CPUに注意が必要となる。それを除けば、Haswell Refreshの登場は、Haswellのラインナップに上位製品が追加されたという考えで良さそうだ。

(三門 修太)