レビュー

PCでウマ娘が大迫力に遊べる「Google Play Games」を試す!ゲームの拡充やコントローラ対応にも期待

「Google Play Games」のホームページはかなり質素なページ構成だ

 2023年4月19日、GoogleはPCでAndorid用ゲームがプレイできるサービス「Google Play Games」のベータ版を公開した。PC用クライアントは専用サイトからダウンロードが可能で、これにより承認された一部ゲームタイトルがPC上でも利用可能となった。

 本サービスは2022年より香港、韓国、台湾など海外の一部地域で限定的なベータテストを開始しており、2023年3月のGame Developers Summitでは日本国内やヨーロッパなどでも順次サービスを開始していくとアナウンスしていたので、いつ頃から開始するのかと思っていたが、今回無事にサービス開始の運びとなった。

 2023年4月23日の段階でプレイ可能なタイトルは158本。Androidスマートフォン用に公開されているゲームタイトル数を考えると圧倒的に少ないが、これについてはまだPC上でのゲーム公開を許可されていないデベロッパーが圧倒的に多いのだと思われる。というのも、Google Play Consoleのヘルプページを見ると、全てのデベロッパーに対してPC版Google Playのゲームデベロッパープログラムを公開していないからだ。

 おそらくAndroid用ゲームにおいて実績のあるデベロッパーに対して優先的にプログラム参加を許可しているのだと思われるし、公開前の承認プログラムも慎重に行なっている可能性は高そうだ。

 158本のうち、国内タイトルでは「ウマ娘 プリティーダービー」や、「ドラゴンボール レジェンズ」、「ソードアート・オンライン インテグラル・ファクター」、「FFBE幻影戦争 WAR OF THE VISIONS」、「転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国憚」、「三国志 覇道」などのタイトルが確認できる。

 今回は現在公開中の「Google Play Games」ベータ版サービスを実際に導入して、その使い勝手や魅力、今後の課題などについて触れてみたいと思う。

4コア以上のCPUが必須。ハードウェア仮想化設定は「Google Play Games」にお任せ

 「Google Play Games」が動作する環境については、公式サイトによると、以下の要件が提示されている。

  • OS:Windows 10(V2004以降)
  • ストレージ:SSD(空き容量10GB)
  • GPU: Intel UHD 630または同等品
  • CPU:物理4コア以上のCPU(一部ゲームはIntel CPUが必要)
  • メモリ:8GB以上
  • その他:Windowsの管理者アカウント、ハードウェア仮想化が有効になっていること

 今回は筆者宅環境のうち、Core i7-11370Hを搭載したASUSのゲーミングノートPC「ASUS TUF Dash F15 FX516PR」および、Core i7-1160G7搭載の「ThinkPad X1 Nano」、Ryzen 7 6800U搭載のゲーミングUMPC「AYANEO 2」にて動作を確認したほか、インストールについては第8世代Core i7-8750H搭載のゲーミングノートPCでも試した。いずれもOSはWindows 11だ。

 要件については比較的緩めだが、「ハードウェア仮想化」機能の有効化がちょっと分かりにくい。とはいえ、こちらの設定を有効にする必要がある場合、「Google Play Games」インストール後、ゲームなどをインストールしようとした際に、「Google Play Games」からアラートが表示され、自動でこうした設定を有効にしてくれるので、よく分からない場合はとりあえず「Google Play Games」をインストールしてみるのが手っ取り早いだろう。

 なお、筆者環境ではThinkPad X1 NanoとASUS TUF Dash F15 FX516PRについては特に設定を操作しなくても、「Google Play Games」が正常に動作した。一方でCore i7-8750H搭載ゲーミングノートPCとAYANEO 2では設定が必要だったので、どこを見ているのかはよく分からなかった。

 むしろ厄介なのはCPUコア数についてで、上記環境以外にも物理2コアの第7世代Core i5搭載ノートPCで試したところ、コア数が足らないというエラーが表示されインストールできなかった。とはいえ、ここでエラーが出てGoogle Play Gamesのインストールができなかった人は、これを機会にPCを買い替えるいいチャンスとも捉えられるだろう。

物理コアが2個の第7世代Core i5ではインストールの段階でエラーが出て続行できなかった

 インストール完了後、初回起動時のみGoogleアカウント連携が必要になる。Androidスマートフォンを既に利用しており、同じアカウントを使う場合は、PC側でも同じGoogleアカウントでログイン、2段階認証などを経て連携する必要がある。連携に成功すると、「Google Play Games」の規約やプロフィールの設定画面を経てホーム画面が開く。

 ホーム画面はシンプルで、トップニュース的なゲームアプリの紹介のほか、おススメのゲーム紹介など、「すべてのゲーム」の中からプレイしたくなりそうなゲーム紹介が続く。

 左側のツリーにはホーム画面に戻るボタンのほか、インストール済みアプリ一覧が表示される「ライブラリ」や、現段階で利用可能なゲームが全て確認できる「すべてのゲーム」のボタンを配置。下部には現在のダウンロード進行状況や、Googleへのフィードバック送信、現在のアカウントの設定ボタンなどが配置されている。

 また、ホーム画面の右側には、「すべてのゲーム」の中から、現在利用中のアカウントで過去にダウンロード履歴のあるゲームタイトルなど、プレイに繋がりそうと判断されたゲームタイトルが表示されている。

ホーム画面。シンプルな構成の画面となっている
ゲームをインストールすると、その一覧がライブラリから確認できる
現段階で「Google Play Games」上で利用可能なゲーム一覧は「すべてのゲーム」から確認が可能だ

Googleアカウント共用で遊べるPC環境

 ということで、インストールされた環境を使って早速ゲームをプレイしていこう。まず真っ先に試したのは筆者の日々の習慣となっている「ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)」の動作についてだ。こちらについては、残念ながら筆者の環境のThinkPad X1 Nano上では画面が正常に表示されず、寂しい思いをした。対してそれ以外の環境においては、全て正常に動作した。

 なお、ウマ娘の初回起動時はウマ娘自体のデータ連携も必要になる。ウマ娘の場合、「Google Playアカウント連携」と「トレーナーIDとパスワードを使用した連携」の2種類があるので、スマートフォン側で設定する際にどちらを設定したか忘れないようにしておくのが重要だ。連携時にトレーナーIDに自身で設定した名前が表示されればOKだ。

筆者の環境では、ThinkPad X1 Nanoでのみ、正常に動作しなかった。原因は不明だが、大いに残念なポイントだ
インストールに成功すると、Android版と同じような起動画面が表示される
シームレスに利用できればありがたかったが、残念ながらアカウント連携は必要になる。初めての場合やGoogleアカウント連携のみならGoogle Play連携がスムーズだろう。iOS版やDMM GAMES版などとも連携したい場合は、トレーナーIDとパスワードを設定したアカウント連携が必要だ
トレーナーIDとパスワードを設定したアカウント連携を使う場合は、事前にスマートフォン側でIDのチェックやパスワードの設定が必要になるので注意が必要だ。いずれにせよ連携直前の画面で自身のトレーナー名が正しく表示されない場合は、再度スマートフォン側の設定を見直そう

 PC版の「ウマ娘 プリティーダービー」については、DMM GAMES版がかなり早い段階からリリースされており、こちらも動作その物は非常にスムーズだし、トレーナーIDを使った連携を行なうこともできる。そのため、Googleが謳う同じアカウントでゲームプレイを共用できるというメリットはDMM GAMES版でも享受できる。

 これら2つのPC版ウマ娘で比較した際に、Google Play Games版が得られるメリットとしては、まず画面の自由度の違いが挙げられる。DMM GAMES版はウィンドウでしか利用できず、サイズ自体は変更可能だが、全画面表示が利用できないため、小窓でちょっと遊ぶ用途にはいいが、全画面でド迫力のビジュアルを楽しむのがちょっと難しい。

 ところが、Google Play Games版ではウィンドウサイズで遊べるだけでなく、全画面表示も可能となっており、ライブ映像やイベントなどを全画面表示で堪能できるのがありがたい。

 画面サイズの変更については、「Shift+Tab」キーの操作で切り替えが行なえる。この画面ではほかにもコントローラに関する設定が利用できるがこれについては後述する。

 また、課金要素についても、Google Play Games版を利用する方がメリットとなる要素がある。DMM GAMES版の場合、課金システムに独自のDMMポイントを使用するため、DMM GAMES版で課金して得たジュエルはスマートフォン側からは見られなくなってしまう。Google Play Games版であれば、どちらで課金しても共用できるため、お財布に優しい。

 このように「Google Play Games」を利用する最大のメリットは同じGoogleアカウントを使ってAndroidスマートフォンとPCとで共用できるようになる点と言えるだろう。

こちらがDMM GAMES版の縦画面。手動でサイズの変更は行なえるが、ウィンドウサイズでしかプレイできないのが残念ポイント
DMM GAMES版でもライブやレースなどは横画面にすることが可能だが、やはりウィンドウサイズなのでちょっと物足りない
DMM GAMES版での課金はDMMポイントが必要な上、課金で購入したジュエルは同じアカウントで共用できないため、ほかのプラットフォームからは課金ジュエルが見えなくなってしまう
こちらがGoogle Play Games版の縦画面。フルスクリーン表示が可能なほか、好みに応じてウィンドウサイズも利用できるのはありがたい
本領を発揮するのは横画面利用時だろう。フルスクリーンの高解像度でライブ画面やレース画面が堪能できる
しんどい! 推しの動きがフルスクリーンで楽しめるの尊すぎてしんどい!

 なお、AYANEO 2のようにタッチパネル対応のPCであれば、スマートフォンと同じようにタッチ操作でプレイが行なえるが、タッチパネルがない場合はマウス操作でタッチプレイの代わりを行なえる。ゲーミングUMPCの多くは新しいCPUを内蔵し、タッチパネルを備える製品が多いため、「Google Play Games」との親和性が高いというのも今回の気付きの1つと言える。

ゲーミングUMPCのAYANEO 2でも正常に動作。タッチパネルを備えるのでスマートフォンと遜色のない操作感で楽しめるのはありがたい

 次にプレイしたのはシューティングゲームの「1945空軍:飛行機シューティングゲーム」だ。本作は元々タッチパネル前提の作りのため、画面上の自機を直接タッチしたまま移動することで、キャラクターが移動できる仕組みだ。

 スマートフォン用のシューティングゲームとしては比較的オーソドックスな操作方法である反面、指が画面を隠してしまうため、敵の弾などを見失ってしまうなど、視認性に難がある。ところが、「Google Play Games」を使うと同じ操作をマウスで行なえるため、自機を見失うことなくプレイしやすく感じられた。

 そして、ゲームコントローラの対応についてもチェックしてみた。シューティングゲームやアクションゲームにおいて、個人的にはゲームコントローラでの操作がなんだかんだで最適だと考えている。そして、「Google Play Games」にはコントローラのようなアイコンやらマークがあるし、前述のようにメニューにもコントローラに関する物がある。これは期待できる。

 だが、結論から先に言えば、残念ながらゲームコントローラには対応していなかった。全タイトルをチェックしたわけではないが、筆者の観測範囲ではゲームコントローラ対応のタイトルは見つけられなかった。実際に接続して試したXinput対応のコントローラはうんともすんとも言わず、コントローラ設定についても触れることができず、マウス操作でシューティングゲームする羽目になった。

 ところが、途中で気が付いたことなのだが、なんとキーボードのカーソルキーについては対応していることが判明した。そのため、カーソル操作でより快適に自機を操作することが可能なほか、何かしらの方法でキーボードのカーソル操作をゲームコントローラーに割り当てられれば、よりユニークな楽しみ方ができそうだ。

Shift+Tabキーの操作でフルスクリーンからウィンドウモードに切り替えたり、ゲームを終了したりできる
「1945空軍:飛行機シューティングゲーム」をフルスクリーンで試した。マウス操作でのシューティングは視認性も高く意外と操作しやすかった
ウィンドウモードに切り替えてもプレイできる

 続いてはかなり前からAndroid向けにリリースされているレースゲーム「ASPHALT 9:LEGENDS」だ。こちらではオプションメニューのゲームコントロールが使えるようになっていたので、これはついにゲームコントローラー対応か? と期待してメニューを開いてみた。

 ところが、コントロールの再マッピングでは、キーボードの各キーをゲーム操作に割り当てる項目しか表示されず、コントローラでボタンを押してもマッピングは変更できなかった。むしろ「ASPHALT 9:LEGENDS」の操作自体がキーボードに対応しているようで、ゲームプレイ中のチュートリアルでも、キーボードのレイアウトが表示されていたのには驚いた。

 キーボード対応もありがたいが、せっかくだからゲームコントローラにも対応してほしいところだ。

カーレースゲーム「ASPHALT 9:LEGENDS」のチュートリアルはハンドル操作不要で楽しめる
チュートリアルではキーボードレイアウトが表示され、キーボード操作について説明される
本作ではゲームコントロールの機能が利用できた! ただし設定を変更できるのはあくまでもキーボード上のアサインのみで、コントローラへの割り当ては行えなかった。む、無念……

今後の課題は対応タイトルの増加とゲームコントローラー対応

 以上、一通り、「Google Play Games」の動作についてチェックしてみた。PC上でAndroidスマートフォンとアカウントを共用してゲームがプレイできるのは環境によっては非常にありがたい存在となるだろう。また「Win+G」キーで動作する「Xbox Game Bar」機能を使うことで、Androidゲームのプレイ映像やスクリーンショットが簡単に撮れる点も魅力の1つと言える。

 とは言うものの、現段階の「Google Play Games」はまだベータ版という位置付けのため、気になる挙動も多い印象だ。ThinkPad X1 Nanoでウマ娘が動作しなかった件は今後も根に持っておこうと思う。

 また、AYANEO 2と「Google Play Games」の想定以上の親和性の高さには素直に驚いた一方で、AYANEO 2上での動作で気になったのは、やや動きがもっさりしていた点だ。映像の切り替えなどの際にわずかなラグのようなテンポの遅れを感じたのだ。原因については不明だが、AMD製CPUを使っているところに関係があるのかもしれないので、Intel製CPU搭載のゲーミングUMPCでどのような挙動になるのかは興味深いところだ。

 そして、現段階でのタイトルの少なさについては早急にどうにかしてほしいポイントの1つだ。たとえばPC上で動作するAndroidエミュレータ「BlueStacks」の場合、かなりの本数のゲームが対応タイトルに含まれているほか、Googleアカウントの共用やフレームレート表示など、“分かっている”機能も多く搭載されているため、BlueStacksと比較してみると「Google Play Games」のメリットはかなり少なくなってしまう。

古くからPC向けにリリースされているAndroidエミュレータ「BlueStacks」。歴史あるアプリだけあって、Googleアカウント連携やフルスクリーン表示の機能はもちろん、対応ゲームの豊富さ、フレームレート表示など充実した機能が搭載されている
ただし、BlueStacksを安定して動作させるのはかなり難しい。また環境として正常に動作しても、謎のフリーズなど、おかしな挙動を見かける事は多い。例えばこの画面、一見正常に動作しているが、このままフリーズしてしまい、ゲームが進行しない状況だ

 それでも筆者は「Google Play Games」のさらなるアップデートに期待したい。Google公式のPC用Androidゲーム環境は、筆者環境のウマ娘のような例外はあったものの、動作するゲームその物の安定性は全体的にかなり高いし、パフォーマンスもAYANEO 2で気になる点があったものの、全体的にはかなり良好だ。このパフォーマンスでさらに動作するゲームが多くなれば、手軽にインストールでき、シンプルな使いやすさの「Google Play Games」の魅力はさらに増すことになるだろう。

 そしてもう1点、個人的にはゲームコントローラ対応の拡充にも期待したい。この辺りはゲームデベロッパー側の問題もあるのかもしれないが、逆に「Google Play Games」側がうまくタッチ操作やキーボード操作をゲームコントローラに割り当てるような機能を持ってくれれば、「Google Play Games」の魅力は更に増すことになる。特にアクションやシューティングにおいては、ゲームコントローラの優位性は揺るがないので、その辺りをGoogleには理解していただくとともに、さらなる対応に期待したい。

余談だが、Google Play Gamesの実際のパフォーマンスはどのくらいか、fps計測を試みたのだがうまくいかなかったため、今回パフォーマンスについての測定は見送った。ゲーム自体の実行ファイルが「crosvm.exe」であるところまではチェックできたのだが、そこから測定する手段が確立できなかった