レビュー

写真で見るMini-ITXのIntelZ490マザー「BIOSTAR RACING Z490GTN」

BIOSTAR RACING Z490GTN

 Intelは30日(米国時間)、デスクトップ向けのComet Lake-Sにあたる第10世代Coreプロセッサと、対応チップセットなどを発表。これと同時にBIOSTARから、Intelの第10世代Coreプロセッサに対応したZ490チップセット搭載マザー「Z490GTN」が発表となった。今回、事前に製品を入手できたので、製品写真をメインにお伝えしていく。

 記事執筆時点ではまだ第10世代Coreがなんなのか把握できていないのだが、Skylakeアーキテクチャを踏襲し、改良をした「Comet Lake-S」であると思われる。アーキテクチャこそ変更はないのだが、次世代CPUの搭載を見据えてか、ソケットが従来のLGA1151からLGA1200へと変更されている。

 パッとみた感じでは変更はないように見えるし、従来のLGA115x用CPUクーラーとも互換性が保たれているが、よく見ると中央のコンデンサエリアが1列分横に、そして1列分縦に縮小されており、これだけで39ピン増加している。LGA1151のデータシートで言うところの32列目のN~AH番、およびN行目の9~31番が、増加したピンだ。

LGA1200
こちらはLGA1151

 残る10ピンのうち、変化があるのは、右上端が5ピンの増加(AY行目の32~36番目)、左上端が8ピンの増加(A行目の31~38番目)。これだ3ピンオーバーしてしまうが、LGA1200はソケットの右下に誤挿入防止のノッチがあり、LGA1151データシートで言うところのAY行目の8~10番、つまりちょうど3ピン少ない。これで計算上は1,200ピンとなる。よって、機械的にも電気的にもLGA1151との互換性は完全に失われている。

従来のLGA1151のピン配置のを示したデータシートから抜粋し、LGA1200で増加したピンを黄緑色、減少したピンを紫色で示した。この配置は、上の写真から反時計回りに90度回転したものである点に注意したい

 では増えたピンはなにに使われているのか。執筆時点ではデータシートが公開されていないのだが、Intel CPUの各ピンの機能は基本的にひとまとまりになっているため、ある程度の推測は可能だ。

 たとえば増加したN行およびA行のピンは、その付近がCPUコア電圧(VCC)周りとなっているため、コア電圧供給の強化に使われている可能性が高い。これはComet Lake-Sでより多くのコアを搭載しているためだろう。一方32列目は、その隣の31列目のM~ABがグラフィックスコア電圧(VCCGT)であるため、これも次世代CPUを見据えたグラフィックスコア電流供給のための実装である可能性は高い。

 AYの列の上下は基本的にメモリであるため、その付近のピンは若干移動することになると思うが、大同小異と言っていいレベルだろう。

 ではこの強化された電源周りはどうなっているのか調べようとしたところ、PWMコントローラに使われているON Semiconductorの「PCP81229」の詳細な情報が出てこなくてまったくわからなかった。

 ただ、フェーズには同メーカーのDriverMOSFET「NCP302155」が使われていて、こちらはデータシートで55Aまで出力可能な高性能製品であることがわかる。Mini-ITXでありながら9フェーズの電源構成となっているため、ある程度のオーバークロックにも耐えられそうだ。

 BIOSTARの製品と言えばこれまで、電源周りは台湾メーカーの部品を使うことが多く、そこにコストダウンの要素が垣間見えたのだが、少なくともZ490GTNに関して言えば有名どころの部品となっており、信頼性は高まっているように見える(なお、コンデンサに関しては引き続き台湾のAPAQ TECHNOLOGY製となっている)。

製品パッケージ
パッケージ内容。無線LANカードは同梱しない
PWMコントローラのON Semiconductorの「PCP81229」
DriverMOSFETはON Semiconductorの「NCP302155」
電源は合計9フェーズの構成

 特徴的なのは、RGB LEDライティングに対応し、その制御用のマイクロコントローラを搭載している点。本機では台湾Elan Microelectronics製の「eKTFS832」が2基搭載されており、5V/3ピン、12V/4ピンの両方に対応できる。ただ、端子は1つのみなので、仮に複数のLEDを制御しようとすると、デイジーチェーンで接続するといった工夫が必要となる。

 オーディオコーデックにはRealtekの「ALC892」、ネットワークコントローラにはIntelの「WGI219V」、Super I/OにITEの「IT8613E」が採用されるなど、オーソドックスな印象だ。

 背面インターフェイスはUSB 3.0×4、USB 2.0×2、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、PS/2、音声入出力のみとかなり少なめ。無線LANについては標準では搭載されておらず、バックパネルから引き出すためのブラケットとアンテナ接続用ケーブルのみが添付されている。よって、無線LANを使いたい場合はモジュールやアンテナを別途買う必要がある。

 PCI Expressスロットは1本となっており、金属製カバーで補強されている。M.2については基板背面に装着する仕組み。メモリはDDR4×2、SATAは4基、ファンのピンヘッダは3基(うち1基は水冷ポンプ向け)と、Mini-ITXなりの装備となっている。

背面インターフェイスの実装は控えめだと言っていい。流行りのUSB Type-Cがないのは若干残念ではある
本体底面。M.2スロットはこちら側に実装されている
LEDの制御に使われているとみられる、Elan Microelectronicsの「eKTFS832」
オーディオコーデックはRealtekの「ALC892」
ネットワークコントローラにはIntelの「WGI219V」が採用される
Super I/OはITEの「IT8613E」
DDR4の電源コントローラにはGStek製の「GS9271」が採用されている
BIOSを保存しているのはWinbondの「W25Q256JV」で、3V駆動の256Mbitのシリアルフラッシュメモリだ

 全体的にZ490GTNは、Intel Z490というハイエンドチップセットを搭載しながら、インターフェイスを減らし、過剰な実装を抑えたモデルだと言える。もともと拡張性が少ないMini-ITXマザーボードだが、最近はその拡張性不足を補うためあらかじめ多くの機能を実装した製品も多く、そのため価格が上がってしまって手が届きにくい価格帯となっているものも少なくない。

 そのなかであえて機能を最小限に抑えた本製品は、リーズナブルな価格帯で投入されることが予想され、リーズナブルでコンパクトなComet Lake環境を揃えたいユーザーにとって注目の製品となるだろう。