レビュー

AMDの新GPUドライバ「Radeon Software Adrenalin Edition」の機能と性能をチェック

今回のテストで使用するRadeon RX Vega 64。GPUクーラーに金属フレームを用いたLimited Edition仕様だ

 AMDは12月12日、最新のグラフィックスドライバ「Radeon Software Adrenalin Edition」を公開した。約1年ぶりのメジャーアップデートとなる新ドライバで新たに追加された機能と、既存ドライバとの性能差をチェックする。

モバイル連携やオーバーレイ機能を追加、既存機能や性能も改善

 Radeon Software Adrenalin Editionでは、新機能としてモバイル端末(iOS/Android)からGPUの動作の監視や録画機能を利用できる「AMD Link」、ゲーム中にGPUユーティリティをオーバーレイする「Radeon Overlay」が追加されたほか、既存機能が強化/改善されている。

 今回は、AMD最新のハイエンドGPU「Radeon RX Vega 64」と、以下の検証機材でRadeon Software Adrenalin Editionの新要素を確認していく。比較用の旧ドライバには「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.11.4 Optional」を用意した。

Radeon RX Vega 64のGPU-Z実行画面
【表1】テスト機材
CPUCore i7-8700K
マザーボードASUS PRIME Z370-A (UEFI: 0430)
メモリDDR4-2666 8GB×4 (2ch、19-19-19-43、1.20V)
GPURadeon RX Vega 64 (Primary-Balanced)
システム用ストレージPlextor PX-128M8PeG (128GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用ストレージOCZ VTR180-25SAT3-480G (480GB SSD/SATA 6Gbps)
電源玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium)
CPUクーラーサイズ 虎徹 Mark II
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 1709/Build 16299.98)
電源プロファイル高パフォーマンス
グラフィックスドライバRadeon Software Adrenalin Edition 17.12.1Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.11.4 Optional

モバイル端末からPCの監視やキャプチャが可能な「AMD Link」

 AMD Linkはモバイル端末向けのアプリであり、このアプリを介してRadeon Software Adrenalin EditionをインストールしたPCと接続すると、PCのステータスを監視や、画面キャプチャ機能の「Radeon ReLive」がモバイル端末上から操作できるようになる。対応する端末はiOS(10.0以降)とAndroid(5.1.1以降)。

 AMD Linkをインストールしたモバイル端末を用意した状態で、PC側のRadeon 設定のホーム画面の中央右下にあるAMD Linkから「AMD Link サーバー」を有効化し、画面に表示されたQRコードをモバイル端末で読み取ることでPCとモバイル端末の接続が完了する。なんらかの理由でQRコードが読めない場合は手動での接続設定も可能だ。

Radeon 設定のホームからAMD Linkを押すと「AMD Link サーバー」のオンオフスイッチが表示される
AMD Link サーバーをオンにすると、モバイル端末に読み取らせるQRコードが表示される
モバイル端末のAMD LinkアプリでQRコードの読み取りが完了するとPCとモバイル端末の接続が完了する

 PCのステータス監視機能では、GPUの動作クロックやCPU、メモリの使用率、フレームレートを監視できる。PC側のゲーム画面に余計な表示をすることなくハードウェアのステータスが確認できるのが魅力だ。

 Radeon ReLiveについては、モバイル端末側から画面の録画や配信を開始したり、スクリーンショットの撮影ができる。キャプチャした動画やスクリーンショットはPC本体側に保存され、モバイル端末からはファイルの閲覧や共有などが行なえる。

CPUやGPUの使用率やGPUの詳細な動作状況、フレームレートなどがモニタリングできる
モバイル端末側からRadeon ReLiveを操作して、録画やスクリーンショットの取得が可能
Radeon ReLiveのストリーミング機能も利用できる
AMD Linkアプリでは、ドライバの更新情報を受け取ることもできる

 AMD Linkを使えば、PCではゲーム画面の表示に専念しつつ、手元に置いたスマートフォンやタブレットから録画や配信の操作が可能となる。できるだけゲーム画面に余計なものを表示したくないユーザーにとっては面白い機能となりそうだ。

多機能なオーバーレイ表示機能Radeon Overlay

 Radeon Overlayは、その名の通りオーバーレイ表示機能だ。ゲーム中にパフォーマンスモニターの表示やRadeonが備える各種機能の設定や利用ができる。

 Radeon Overlayを呼び出すショートカットキーは標準では「Alt+R」に設定されており、ショートカットキーを押すと画面右側にRadeon Overlayが表示される。ゲーム実行中に呼び出したRadeon Overlayでは、パフォーマンス監視やRadeon ReLiveのほか、Radeon Chill、FRTC、FreeSync、色設定の調整が行なえる。

Radeon 設定ではホームの「環境設定」タブでRadeon Overlayのショートカットキーを設定できる
ゲーム中に表示したRadeon Overlay。Radeon ReLive、パフォーマンス監視、Radeon Chill、FRTC、FreeSync、色設定の項目が表示されている。
Radeon ReLiveの表示項目。インスタントリプレイの保存や録画、配信、スクリーンショットなどの取得が可能なほか、設定の変更が可能
Radeon ReLiveの設定。ストリーミング先のサービスなどを選択できる
パフォーマンス監視の項目。サンプリング間隔やログの取得が可能
監視項目(メトリック)には、GPUやCPUなどの使用率やフレームレートなどが用意されている
Radeon Chillの表示項目。Radeon Chill自体のオンオフや、実行中のゲームにおけるRadeon Chillの上限と下限の設定が可能
FRTC(Frame Rate Target Control)の表示項目。フレームレートの上限値を制限できる
FreeSyncの表示項目。FreeSyncのオンオフが可能
色設定の項目。色温度、明るさ、色相、コントラスト、彩度が設定できる

 フルスクリーンでゲームを実行している最中にRadeon Chillやカラーバランスの調整が可能なのは実際便利だ。表示項目や更新間隔の変更が可能でログ記録機能まで備えた高機能なパフォーマンスモニターは、新たに自作したり購入したPCが正常に動作しているのかを確認するのに活用できるだろう。

動的省電力技術のRadeon Chillがほとんどのゲームで利用可能に

 ゲームのプレイ状況に応じて動的にGPUの消費電力を抑制するRadeon Chillは、これまで対応ゲームでのみ利用可能な機能であったが、Radeon Software Adrenalin Editionでは「数えきれないタイトルに対応した」とされ、事実上ほとんどのゲームで利用可能となった。

 これまでRadeon Chill非対応であったVRMarkなどにも設定項目が表示されるようになり、実際同ベンチマークのEXPERIENCEモードで操作を止めるとフレームレートを設定した下限まで引き下げる動作が確認できた。

旧ドライバ(17.11.4)では、非対応タイトルであるVRMarkにはRadeon Chillの項目が表示されない
Radeon Software Adrenalin Editionでは、VRMarkにもRadeon Chillの設定が表示される
VRMark Orange RoomのEXPERIENCEモード。Radeon Chillを実行しなければ250fps前後で動作しており、この時の消費電力は390W前後
Radeon Chillを有効化すると、無操作時にフレームレートは設定した下限値の60fps前後となり、消費電力も110W前後まで低下した。

より低負荷になった録画配信機能Radeon ReLive

 ゲーム画面の録画や配信を行なう「Radeon ReLive」は、グラフィックスAPIのVulkanや、AMDのマルチディスプレイ技術である「Eyefinity」環境でのキャプチャに対応。特定のウインドウを指定してのキャプチャが可能となったほか、キャプチャによるゲーム描画への影響が軽減された。

VulkanでもRadeon ReLiveが利用可能となった
マルチディスプレイ技術Eyefinity環境下でのキャプチャが可能となった
ウインドウを指定してキャプチャすることが可能となった
キャプチャ機能を利用したことによる性能への影響が減少

 今回はキャプチャによる性能への影響について、ReLive無効時とインスタントリプレイ機能による常時録画状態の2パターンでベンチマークテストを実行し、平均フレームレートを比較するという検証を行なった。

キャプチャの有無によるフレームレートの違い

 旧ドライバではReLive無効時の108.642fpsだった平均フレームレートが、キャプチャ時は104.682fpsとなっており、キャプチャを行なうことでゲーム描画性能は96.4%に低下している。

 これに対し、Radeon Software Adrenalin Editionでは、ReLive無効時の108.857fpsに対し、キャプチャ時は106.291fpsと約97.6%の数値となっている。もともと低負荷であるため極端な差はつかなかったが、確かにRadeon Software Adrenalin EditionでRadeon ReLiveの負荷は低くなっているようだ。

新旧ドライバの性能をチェック

 ベンチマークテストでRadeon Software Adrenalin Editionと旧ドライバの性能を比較する。実行したテストは「3DMark」、「Ashes of the Singularity: Escalation」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「オーバーウォッチ」。

 結論から言えば、今回テストしたタイトルではRadeon Software Adrenalin Editionで大きく性能が向上するという結果は見られなかった。比較対象のドライバが公開されたのが11月29日とかなり最近であるため順当な結果ではある。

3DMark - Time Spy v1.1
3DMark - Time Spy Extreme v1.1
3DMark - Fire Strike v1.1
3DMark - Fire Strike Ultra v1.1
Ashes of the Singularity: Escalation (v2.60.29524)
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
オーバーウォッチ (v1.17.0.3)

新機能とReLiveの機能強化が大きなポイントとなるRadeon Software Adrenalin Edition

 Radeon Software Adrenalin Editionでは、モバイル端末との連携や高機能なオーバーレイ機能が追加され、Radeon ReLiveの性能と機能が強化された。これらの機能は、より手軽にゲームの録画や実況配信を楽しみたいユーザーにとって魅力ある機能となり得るものだろう。

 また、オーバーレイ機能のRadeon OverlayはRadeon ChillやFRTCの使い勝手を改善しており、Radeon ReLiveを必要としないユーザーにとっても利便性向上というメリットがある。Radeonユーザーならぜひともアップデートすべきドライバであると言えるだろう。