パソコン工房新製品レビュー
ほぼ無音!これはどこにでも置ける静音ミニPCだった
2025年4月14日 10:00
パフォーマンスと効率の両面でスケールアップを実現
インテル® Core™ i5-1235U プロセッサー
パソコン工房の「SENSE-I1MA-i5-UXX-BK」は、いわゆる“ミニPC”と呼ばれるコンパクトなスタイルを採用するデスクトップPCだ。価格は8万4,800円からとリーズナブル。手のひらにのるようなサイズ感のボディに、ノートPC用のCPUやメモリ、ストレージを搭載し、どこに置いてもジャマにならないサイズ感が魅力となる。今回はこのSENSE-I1MA-i5-UXX-BKをさまざまな角度から検証していこう。
状況を問わず非常に静かに使える驚きのミニPC
SENSE-I1MA-i5-UXX-BKの横幅は139.9mm、奥行きは129.9mm、厚みは43.9mmと、手のひらサイズの筐体を採用する。ミニPCに似たスタイルのPCとしては珍しく、ブラックとホワイトという2色のカラーバリエーションを準備している。今回試用したのはブラックモデルで、つや消しブラックの質感も相まってより小さく、引き締まった印象を受ける。
【表】SENSE-I1MA-i5-UXX-BK | |
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製品名 | SENSE-I1MA-i5-UXX-BK |
OS | Windows 11 Home |
CPU(コア/スレッド数) | Core i5-1235U(10コア12スレッド) |
搭載メモリ(空きスロット) | DDR5 SO-DIMM PC5-38400 8GB 2基(0) |
ストレージ | SSD 500GB(PCI Express 4.0) |
拡張ベイ | PCI Express 4.0対応M.2スロット 1基 |
通信機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3 |
主なインターフェイス | 2.5GbE、1GbE、DisplayPort、HDMI、Thunderbolt 4 2基、USB 5Gbps 4基、SDカードスロット |
本体サイズ | 139.9×129.9×43.9mm |
重量(実測値) | 688g |
【お詫びと訂正】初出時に間違っていた表内のストレージ容量を正しいものに修正しました。お詫びして訂正させていただきます。
CPUはIntelのノートPC向け第12世代Coreシリーズ「Core i5-1235U」。高性能コアが2コア4スレッド、高効率コアが8コアで合計10コア12スレッドに対応するミドルレンジのCPUだ。ミニPCやノートPCが搭載する現行世代のCPUと比べるとCPUコアやGPUコアの性能は低めではあり、PCMark 10で4,226、3DMark Time Spyで1,275というスコアを見る限り、ミニPCとしてはミドルロークラスの性能と言ってよいと思う。
「ファイナルファンタジーXIV : 黄金のレガシー ベンチマーク」を実行したところ、フルHD(1,920×1,080ドット)解像度の「標準設定(デスクトップPC)では[設定変更を推奨]と表示される。「標準設定(ノートPC)」では[普通]と表示されるが、平均フレームレートで30FPSなので、あまり快適にプレイできるとは言えない。PCゲームにはあまり向かないモデルだ。
このクラスのCPUを搭載しているノートPCは低価格帯のモデルが中心だが、使い勝手自体は悪くない。実際SENSE-I1MA-i5-UXX-BKを検証していても、Windows 11や各種アプリの操作感はキビキビしており、ウィンドウの移動でもたついたり、描画が遅れるような場面もない。
Webブラウジング、Webブラウザ上の軽いゲーム、音楽/動画配信サイトの視聴や書類作成と言ったエンタテイメントも含む軽作業中心なら、非常に快適に作業できるだろう。YouTubeの4K動画もスムーズに再生された。
またこうした使い勝手のよさもさることながら、特に驚いたのは静音性だ。上述したような軽作業時は本当に無音と言ってよいような状況であり、冷却ファンの風切り音はまったく聞こえない。今まで検証してきたIntel製CPUを搭載するミニPCでは、負荷がかかるとそれなりに動作音が気になるモデルが多かったことを考えると、これはかなり好印象だ。
こうした静音性は、何とベンチマークテストなど負荷の高い状況でも維持される。Cinebench R23や3DMarkなど、CPUや内蔵GPUに高い負荷をかけるテスト中でも、動作音はまったく聞こえてこない状態だ。さすがに筐体に耳をぴったりくっつけると低いファンの音が聞こえてくるが、30cmも離れればもう何も聞こえない。
最初は「ファンが壊れているのか」と疑ったのだが、ベンチマークテスト実行中のCPU温度や消費電力の状況を「OCCT 13.1.16」のモニター機能で確認すると、どういう制御をしているのかがおぼろげに分かってきた。CPUに連続的な負荷をかけ続けるCinebench R23を実行すると、CPUクロックは4GHzでCPU温度は70℃前後、システム全体の消費電力も60W前後まで上がる。
しかし約20秒テストが続いて負荷が維持されると、CPUのクロックは1.8GHz前後まで下がる。これによりCPU温度は60℃前後で落ち着くようになるほか、システム全体の消費電力も25W前後まで低下していた。安全で静かな動作状況を維持する方向で、CPUクロックやファンの回転数が制御されているということだ。
SENSE-I1MA-i5-UXX-BKでは、なるべく静かに、安定して利用できるように調整をしており、日常的な使用感を重視していることが分かる。性能競争が激しいミニPCの中でもかなりとがったチューニング方向ではあるが、これはこれで正しい選択だと思う。
SDカードスロットを搭載し、内部へのアクセスも容易
主なインターフェイスとしては、Thunderbolt 4を前面と背面に1基ずつ搭載するほか、ディスプレイ出力端子はDisplayPortとHDMIを搭載し、マルチディスプレイ環境を構築しやすい。
またミニPCらしいサイズ感のPCとしては珍しく、本体の前面にSDカードスロットを搭載する。大容量の写真ファイルや動画ファイルをやり取りするなら、やはりSDカードスロット経由で直接やり取りするほうがスムーズであり、便利に感じる人は多いだろう。
電源は出力が65WまでのACアダプタだ。先ほどの検証でも紹介した通り、ベンチマークテストの高負荷状態でも最大で60Wくらいだし、それが長く続くわけでもないので問題はない。また一般的なミニPCに付属するACアダプタと比べると、容積的には大体半分くらいでかなり小さく、本体と合わせて持ち運んでもジャマにはなりにくいだろう。
またパソコン工房のPCとしてはちょっと珍しく、標準ではキーボードやマウスが付属しない。この手のPCを購入したいと考えるユーザーは、自分の好みのキーボードやマウスを使うはず、という判断なのだろう。もちろんマウスやキーボードだけではなく、液晶ディスプレイなども含めて各種周辺機器を直販サイトのBTOメニューから追加することは可能だ。
底面には4つの足を装備しており、足の内部に底面を固定するためのネジがある。このネジを外して足を引っ張ると底面が外れ、内部にアクセスできる。このように底面を外すこと自体は簡単だが、底面パネルにはSDカードスロットやUSBポートなどが取り付けてあり、そうしたポートと基板を接続するリボンケーブルもある。むりやり引っ張ってそうしたケーブルを断線しないよう、慎重に作業したい。
内部を見ると、PCI Express 4.0 x4対応のM.2スロットが2本、DDR5 SO-DIMMスロットが2本がある。標準装備のメモリは16GB、ストレージは500GBという構成だが、ユーザーが簡単に増設してアップグレードできるのはうれしい。またM.2スロット付近には金属製のヒートシンクと熱伝導シートを装備しており、発熱の大きなM.2 SSDを安心して利用できる仕組を備える。
長時間集中して快適に使い続けられるサブPCとしての役割
SENSE-I1MA-i5-UXX-BKは、非常によくまとまった「普段使いのPC」だと感じる。特別性能が高いというわけではないが、だからと言って日常的な作業で不満を感じる場面はない。何より圧倒的な静音性のおかげで、集中して作業できるのは大きい。そして静かに利用できるのに、CPUなど各種パーツの冷却も万全で、長く安心して使える。内部にもアクセスしやすく、メモリやストレージを拡張しやすい。
基本的にはどんなユーザーにもマッチしたPCではあるが、特にサブPCとしてのニーズは大きいだろうなと感じる。PCゲーム用のゲーミングPCや動画編集用のPCは別に用意するので、静かに利用できる軽作業用のPCが欲しい、というユーザーにはベストと言ってよい。用途的にはサブPCとはいえ、最も長い時間を過ごす相棒であり、極めて静かに利用できるメリットは大きいはずだ。
またサイズ感を考えると、リビングやオーディオスペースに置くエンタテイメント用のPCとして使うのもよいだろう。狭い部屋で初めて1人暮らしを始める新大学生なら、液晶TVと組み合わせて使う省スペースPCとして考えるのもおすすめだ。