パソコン工房新製品レビュー

これはちょうどいいミニタワーPC。手ごろな価格&設置スペースで、高性能を求めるならもってこい

パソコン工房「SENSE-M37M-137F-ULX」。直販価格は28万7,800円から

 パソコン工房はSENSE∞ブランドから、ミニタワー型のクリエイター向けデスクトップPC「SENSE-M37M-137F-ULX」を発売した。本製品は机の上に無理なく設置できるミニタワー型ながら、ビデオカードを標準搭載し、240mm水冷クーラーを選択可能。比較的動作音を抑えつつクリエイティブワークに集中できるマシンだ。

 今回は本製品の実機を借用したので、詳細スペック、メンテナンス性、拡張性、そしてクリエイター向けPCとして気になるパフォーマンスについてレビューしていこう。

CPUとGPUは決め打ち、そのほかのスペックは変更可能

 「SENSE-M37M-137F-ULX」はOSにWindows 11 Home、CPUに第13世代(Raptor Lake)のCore i7-13700F(16コア[8P+8E])、ビデオカードにGeForce RTX 4070 Tiを採用。メモリは16GB(DDR5-4800)、ストレージは1TB SSDを搭載している。

 インターフェイスはUSB 3.2 Type-C、USB 3.0×4、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、DisplayPort×3、HDMI、音声入出力などを用意。ワイヤレス通信機能はオプションだ。

 本体サイズは約215×401×347mm、重量は実測10.5kg。本製品は容量30Lのコンパクトケースながら、最新CPUや、最長280mmのビデオカードを搭載可能。また底面吸気・上面排気の垂直エアフローレイアウトを採用しており、ミニタワー型としては高い冷却効率を実現している。

 なおここまでは標準構成のスペックだが、CPUクーラーなども含めて多くのカスタマイズ項目を用意している。目的と予算に応じてシステム構成を自由に選択できるわけだ。

【表1】「SENSE-M37M-137F-ULX」のスペック
製品名SENSE-M37M-137F-ULX
OSWindows 11 Home
CPUCore i7-13700F(16コア[8P+8E]、24スレッド、最大5.20GHz、65W)
GPUGeForce RTX 4070 Ti(GDDR6X 12GB)
メモリ16GB(DDR5-4800、DIMM×2、最大64GB)
ストレージ1TB(PCIe 4.0 x4接続SSD)
ワイヤレス通信オプション
インターフェイスUSB 3.2 Type-C、USB 3.0×4、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、DisplayPort×3、HDMI、ライン入力/出力、マイク入力、ヘッドセット端子
本体サイズ約215×401×347mm
同梱品電源ケーブル、マニュアル、保証書、キーボード、マウス
価格28万7,800円~
本体前面。サイズは約215×401×347mm。パネルにはマット塗装が施されており、比較的手脂などは目立ちにくい
本体背面。右下にはセキュリティロックスロットが用意
背面にはUSB 2.0×2、USB 3.2 Type-C、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2、ライン入力、ライン出力、マイク入力、DisplayPort×3、HDMIを用意
左右側面のパネルはプラスネジ1本をはずせば開けられる
右側面にはWindows 11のライセンスシールが貼られている
本体上面はほぼ全体が排気口。効率的に内部の熱気を排出する
上面にはヘッドセット端子、USB 3.0×2、電源スイッチを配置。ひんぱんに抜き差ししないならUSB端子カバーなどを装着しておくといい
本体底面。本製品は底面から吸気し、上面から排気する熱移動に沿ったエアフローを採用している
ダストフィルタは工具なしに簡単に取り外せる。手軽にホコリを掃除可能だ
貸出機のパッケージには本体、キーボード、マウス、電源ケーブルが同梱されていた。製品版にはマニュアル、保証書も含まれる
テンキー付きの日本語有線キーボード。やや簡素だが、ストロークが深いので打鍵感は悪くない
ホイールボタンの付いた有線マウス。使い勝手は標準的。キーボード、マウスはワイヤレスタイプも選択できる

メンテナンスはしやすいが、増設や換装はやや手間がかかる

 「SENSE-M37M-137F-ULX」のケースはユニークな作りだ。左右パネルをはずすために背面のネジを取り外すPCケースが多い中、本製品はネジを側面に用意。ネジをはずせばすぐにパネルも上方から開けられる。メンテナンスしやすい理にかなった作りだ。

 また内部スペースを効率的に利用するため、電源ユニットは本体前面上部に配置されており、電源ユニットの排気は上面のファンで排出する。ケーブル類は基本的に背面にまとめられているので、内部の掃除はしやすいと感じた。

 ただし今回の240mm水冷クーラーを搭載した仕様だと、メモリやM.2 SSDのスロットには少々アクセスしにくい。またSATAの端子に指が届きにくい点も気になった。メモリのDIMMスロットも2基占有されているので、近い将来にストレージやメモリの増量を予定しているのであれば、購入時に済ませておきたいところだ。

左側面内部
マザーボードはチップセットに「Intel B760 (Raptor Lake-S PCH)」を採用した「MouseComputer B760M」(ASRock製)を搭載
CPUは「Core i7-13700F」を搭載。カスタマイズ購入では変更できない
今回の貸出機には240mm水冷クーラーが搭載されていた。空冷クーラーのほうがメンテナンスしやすい
DIMMスロットは2基。貸出機にはSK Hynix製「HMCG78MEBUA081N」が2枚装着されていた
システムストレージにはPCIe 4.0 x4接続SSD「SOLIDIGM SSDPFKNU010TZ」(リード4125MB/s、ライト2950MB/s)が搭載。M.2 SSD用スロットがもうひとつ用意されているが、アクセスするにはビデオカードをはずす必要がある
右側面内部
3.5インチ/2.5インチ兼用と、2.5インチ専用のシャドウベイを用意
ビデオカードは「PNY GeForce RTX 4070 Ti 12GB VERTO LED 3FAN」を搭載。重量を支えるためのサポートステイが使われている
拡張スロットは、PCI Express4.0 [x16]、PCI Express4.0 [x1]、PCI Express4.0 [x16] (※x4動作)。ビデオカードで占有されているため、使用できるのは最後の1基だけだ
700W ATX電源(80PLUS Bronze認証)を前面上部に搭載。電源ユニットの吸気ファンはパソコン内部に向いており、排気は本体上面から行なわれるわけだ

ベンチマーク

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は下記のベンチマークを実施している。

  • CPUベンチマーク「Cinebench R23」
  • 3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」
  • ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4」
  • 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2662」
  • 「Adobe Lightroom Classic」で100枚のRAW画像を現像
  • 「Adobe Premiere Pro 2023」で実時間5分の4K動画を書き出し
「HWiNFO64 Pro」で取得したシステムの概要
【表2】検証機の仕様
SENSE-M37M-137F-ULX
CPUCore i7-13700F(16コア、24スレッド、最大5.2GHz)
GPUGeForce RTX 4070 Ti
メモリDDR5-4800 SDRAM 16GB
ストレ-ジ1TB PCIe 4.0 x4接続SSD
TDP65W
OSWindows 11 Home
サイズ約215×401×347mm
【表3】ベンチマ-ク結果
Cinebench R23
CPU(Multi Core)19,859
CPU(Single Core)1,960
FINAL FANTASY XV BENCHMARK
1,920×1,080ドット、軽量品質、フルスクリ-ン22,590
1,920×1,080ドット、標準品質、フルスクリ-ン22,292
1,920×1,080ドット、高品質、フルスクリ-ン19,074
CrystalDiskMark 8.0.4
1M Q8T1 シーケンシャルリード3,979.248MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト2,946.554MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード2,697.609MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト2,875.461MB/s
4K Q32T1 ランダムリ-ド684.857MB/s
4K Q32T1 ランダムライト511.351MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド81.852MB/s
4K Q1T1 ランダムライト322.665MB/s
PCMark 10 v2.1.2662
PCMark 10 Score8,827
Essentials11,472
Productivity10098
Digital Content Creation16114
Adobe Lightroom Classicで100枚のRAW画像を現像
7,952☓5,304ドット、カラ- - 自然1分17秒67
Adobe Premiere Pro 2023で実時間5分の4K動画を書き出し
3,840×2,160ドット、30fps1分17秒29

 まずCPUスコアだが、Core i7-13700F搭載機としては少し低めに出た。Cinebench R23実行中のCPU温度とクロック周波数の推移を見てみると、CPU温度は平均51.09℃、最大58℃、クロック周波数は平均3,044.64MHz、最大3,959.8MHzに留まっている。今回はBIOSはデフォルト、電源モードを「パフォーマンス」に設定してベンチマークを実施したが、本製品は低発熱、静音性を重視したセッティングになっているようだ。

Cinebench R23実行中のCPU温度は平均51.09℃、最大58℃、クロック周波数は平均3,044.64MHz、最大3,959.8MHz

 一方3Dグラフィックス性能については、GeForce RTX 4070 Ti搭載機としては順当な結果。推定ゲームパフォーマンス(Estimated game performance)を見てみると、「Apex Legends」(1080p Ultra)は140fps以上と表示されている。「FINAL FANTASY XV」ベンチマークの判定も「非常に快適」だ。本製品は4K解像度でも快適に3Dゲームをプレイできる性能を備えている。

 ストレージ速度はPCIe 4.0 x4接続SSD搭載機としてはやや低め。とは言っても、1M Q8T1 シーケンシャルリードで3,979.248MB/s、1M Q8T1 シーケンシャルライトで2,946.554MB/sに達している。実用上十二分な速度だ。

 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2662」のPCMark 10 Scoreは8,827、Essentialsは11,472、Productivityは10,098、Digital Content Creationは16,114。本製品のPCMark 10 Scoreは、PCMark 10の指標「Gaming PC(2023)」の約93%に相当している。ゲーミングPCとしても高い性能を備えているわけだ。

 そして実アプリの所要時間は、「Adobe Lightroom Classic」で100枚のRAW画像を現像するのに1分17秒67、「Adobe Premiere Pro 2023」で実時間5分の4K動画を書き出すのに1分17秒29となった。高負荷な処理をこれだけ短時間に完了させられるということは、クリエイティブワーク本来の編集作業に多くの時間を費やせることになる。

手ごろな価格&設置スペースなハイパフォーマンスマシンを求める方にもってこい

 本製品は机の上に無理なく設置可能なミニタワー型ながら、最長280mmのビデオカードと240mm水冷クーラーを搭載可能。低発熱、静音性を重視したセッティングになっているようだが、GeForce RTX 4070 Tiを搭載しているだけに、クリエイティブアプリや3Dゲームを快適に動作させられるパフォーマンスを備えている。

 システム構成的にはミドルレンジクラスだが、そのぶん手が届きやすい価格が設定されている。手ごろな価格&設置スペースだけでなく、高いパフォーマンスを発揮するマシンを求めている方に「SENSE-M37M-137F-ULX」は魅力的な選択肢だ。