パソコン工房新製品レビュー

コスパ重視でも性能や使い勝手は十分。17.3型ゲーミングノートPC「LEVEL-17FX162-i7-RASX」

17.3型の大型ゲーミングノートPC

LEVEL-17FX162-i7-RASX

 パソコン工房を展開するユニットコムより、ゲーミングPCブランド「LEVEL∞」の17.3型ノートPC「LEVEL-17FX162-i7-RASX」が発売された。17.3型というサイズは、ゲーミングノートPCとしても大型な部類。画面が大きくなるメリットに加えて、ゲーミングノートPCで最大の課題となる排熱処理でも大型筐体は有利に働く。ただし本体サイズや重量ではデメリットになるので、持ち運ぶ頻度が少ない人に向いた製品と言える。

 その上で本機がどの程度の性能で、使い心地がどうなのか。実機でしっかりと検証していく。

GeForce RTX 3060搭載のミドルスペック

 「LEVEL-17FX162-i7-RASX」のスペックは下記の通り。

【表1】LEVEL-17FX162-i7-RASX
CPUCore i7-12700H(6-Pコア+8-Eコア/20スレッド、Pコア4.7GHz+Eコア3.5GHz)
GPUGeForce RTX 3060(6GB GDDR6)
メモリ16GB DDR4-3200(8GB×2)
SSD500GB(NVMe、PCIe 3.0×4)
光学ドライブなし
ディスプレイ17.3型非光沢液晶(1,920×1,080ドット/144Hz)
OSWindows 11 Home
汎用ポートThunderbolt 4、USB 3.1 Type-C、USB 3.0、USB 2.0
カードスロットmicroSD
映像出力HDMI、Mini DisplayPort、Thunderbolt 4
無線機能Wi-Fi 6、Blunetooth 5
有線LANGigabit Ethernet
その他前面100万画素カメラ、内蔵マイク、ヘッドフォン端子、マイク端子
本体サイズ約399×263×30.5mm
重量約2.62kg
価格19万2,800円

 CPUは14コア20スレッドのCore i7-12700Hで、GPUはGeForce RTX 3060というミドルクラスの構成。ディスプレイが17.3型と大きめで、最大144Hzのハイリフレッシュレートにも対応する。

 Thunderbolt 4とUSB 3.1 Type-Cがそれぞれ1基で、Type-C形状の端子を計2基搭載。映像出力はほかにHDMIとMini DisplayPortを1基ずつ搭載する。音声入出力端子はヘッドフォンとマイクで別になっている。

 サイズ感は17.3型としては標準的ながら、重量は約2.62kgとそれほど重量級ではない。ミドルクラスの構成なので、冷却もそれほど大がかりなものは必要ないのだろう。

 カスタマイズにも対応しており、メインメモリは最大64GBにできるほか、国産高耐久メモリへの変更もできる。ストレージはSSDを最大2TBに増量できるのに加え、同様のM.2 NVMe SSDをもう1基追加し、合計4TBの構成にできる。SSDのメーカーは、Intel、CFD、Crucial、Kingston、Micron、Samsung、WDのいずれかになるとしており、メーカーや型式は指定できない。

フルHDならハイリフレッシュレートの3Dゲームにも対応可能

 次に実機のパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは以下の通りだ。

  • PCMark 10 v2.1.2574
  • 3DMark v2.25.8056
  • VRMark v1.3.2020
  • PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator
  • ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
  • FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
  • Cinebench R23
  • CrystalDiskMark 8.0.4」。

 本機にはカスタマイズツール「Control Center 3.0」がプリインストールされており、「Power Modes」で動作モードの切り替えができる。設定は標準の「エンターテイメント」のほか、「パフォーマンス」、「静音」、「省電力」の計4つが選べる。今回は「PCMark 10 v2.1.2574」と「3DMark v2.25.8056」で4つのモードを切り替えてテストを実施した。

「Control Center 3.0」で動作モードを選べる
【表2】ベンチマークスコア
動作モードエンターテイメントパフォーマンス静音省電力
「PCMark 10 v2.1.2574」
PCMark 107,3217,4996,3406,094
Essentials10,35510,49010,00110,033
Apps Start-up score13,25614,06613,91013,627
Video Conferencing Score8,3018,2667.9628,191
Web Browsing Score10,0919,9289,0329,050
Productivity10,32010,50210,2499,864
Spreadsheets Score13,23213,54012,79011,834
Writing Score8,0508,1468,2138,222
Digital Content Creation9,96310,3876,7476,206
Photo Editing Score11,10211,4097,5667,532
Rendering and Visualization Score13,03513,9767,8666,172
Video Editing Score6,8907,0305,1635,143
Idle Battery Life4時間56分---
Modern Office Battery Life3時間26分---
Gaming Battery Life1時間4分---
「3DMark v2.25.8056 - Speed Way」
Score1,8302,1721,8241,281
「3DMark v2.25.8056 - Port Royal」
Score4,2834,9844,2722,781
「3DMark v2.25.8056 - Time Spy」
Score7,7198,8486,4624,737
Graphics score7,3288,5057,2434,891
CPU score11,07311,4714,0124,022
「3DMark v2.25.8056 - Fire Strike」
Score18,18119,87012,4399,926
Graphics score19,45121,96819,19312,502
Physics score24,78425,54010,09710,313
Combined score9,6259,6973,7803,816
「3DMark v2.25.8056 - Wild Life」
Score43,49149,47138,75427,892
「3DMark v2.25.8056 - Night Raid」
Score43,85446,27223,53922,990
Graphics score80,58085,46157,03553,266
CPU score12,24112,8595,4395,447
「3DMark v2.25.8056 - CPU Profile」
Max threads6,2867,3182,1502,167
16-threads5,9786,9422,2262,207
8-threads4,8835,5122,0342,037
4-threads3,3233,5521,6411,642
2-threads1,8671,9351,1321,137
1-thread9871,003730736
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score9,773
Average frame rate213.05FPS
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score6,521
Average frame rate88.90FPS
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score2,181
Average frame rate47.55FPS
「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット14,675
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(最高品質)
1,920×1,080ドット16,558
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
3,840×2,1603,267
1,920×1,080ドット8,023
「Cinebench R23」
CPU(Multi Core)12,247pts
CPU(Single Core)1,783pts

 CPUはノートPCとしてはシングルスレッドの値がかなり高い。マルチスレッドになると若干落ち、「3DMark」の「CPU Profile」ではシングルスレッド時にCPUクロックが約4.7GHzなのに対し、最大スレッド時にはCPUクロックが3GHz弱となる。それでも「Cinebench R23」のMP Ratioは6.87で、Pコアの数は超えている。

 ゲーム系ベンチマークテストでは、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」の4Kで「普通」、フルHDで「快適」の評価。その他のテストでは問題なく最高評価となっている。フルHDで60Hz環境ならば全く問題なく、144Hzの想定でも概ね快適に動作しそうだ。

 動作モードについては、「パフォーマンス」を選ぶとグラフィックス系のスコアが1割程度上がる。CPUについてもマルチスレッド時には差が大きい。標準の「エンターテイメント」より冷却系を強めれば、まだ性能向上の余地があるということだ。

 「静音」にするとCPUの性能が大きく低下。「省電力」だとGPUも大幅に性能低下する。いずれもファンの騒音が大幅に減るので、3Dゲームをなるべく静かにプレイしたいなら「静音」を選ぶ、というのはあり得る選択肢だ。

 バッテリ駆動時間は、オフィスユースでは約3時間半、アイドル時では5時間弱。ちょっと持ち出す程度ならバッテリなしでも何とかなるが、サイズ的にもモバイル用途には向かない。またゲーミングだと1時間程度と短いため、ACアダプタは必須だ。

 SSDはIntel製の「SSDPEKNU512GZ」が使われていた。3D QLC NAND採用の「670p」シリーズの製品で、シーケンシャルリードは3GB/sを超える。M.2 NVMeのSSDとしてはエントリークラスながら、実使用でも気になることはなく十分に高速だ。

CrystalDiskMark 8.0.4

 実際のゲームプレイのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はディスプレイと同じフルHD。

【表3】ゲームのフレームレート
「Fortnite」
平均40.226
下位90%31.845
下位95%29.253
下位99%24.241
「Apex Legends」
平均135.021
下位90%117.036
下位95%111.603
下位99%100.433

 「Fortnite」では、DirectX 12でクオリティプリセットを最高、レイトレーシングは不使用とした。平均で約40fpsだが、下位99%でも約24fpsで、プレイに支障はない。本機は144Hzのディスプレイを搭載しているので、ある程度は画質を下げてフレームレートを稼ぐのもいいだろう。

 「Apex Legends」では平均約135fpsで、リミットの144Hzに当たる場面も多かった。下位99%でも100fpsを超えており、ハイリフレッシュレート環境でも十分なパフォーマンスがある。

ディスプレイやサウンドにこだわり

天面に「LEVEL∞」のロゴがあるほかはシンプルな外見

 続いて実機を見ていく。筐体は全面ブラックで、天面の「LEVEL∞」のロゴのほかに目立つデザインはない。形状もフラットな天面などシンプルで、ビジネスにも問題なく使用できる。本体は堅牢で、畳んで持った時に歪みやたわみを感じる部分はない。

 重量は約2.62kgで、畳んで片手で持つのに苦労することはない。持ち出して使いたいサイズではないものの、屋内での移動くらいなら気にならない。

 ディスプレイはフルHDの非光沢液晶で、パネル種別は非公開。発色はなかなかよく、コントラストが高くメリハリのある映像が出ている。上下左右から角度をつけても色相変化は感じられず、視野角も十分広い。明るさは標準的で、最低にすると見えづらい程度まで暗くできる。

ディスプレイは発色が良好で見やすい
視野角は良好。角度をつけても色相変化はない

 144Hzのリフレッシュレートは、Webブラウザのスクロール表示などでも滑らかさを実感できる。リフレッシュレートが特別に高いわけではないようで、動きが速い時には残像感もあるが、ゲームプレイで支障が出るほどの違和感はなく、一般的なディスプレイと同程度と思っていいだろう。

 キーボードはアイソレーションタイプで、テンキー付きのフルキーボードを採用。テンキーなど一部のキーが少しだけ横方向に圧縮されているが、それ以外はスクエアな形状を確保している。カーソルキーはテンキー部分にねじ込む形ながら、スクエア形状を保って配置されている。その他のキー配置はオーソドックスで、使い勝手がいい。

 キーストロークは浅いものの、軽いクリック感があって打鍵感は良い。打鍵音もかなり静かで、オフィスワークでの利用にも向いている。キーボードバックライトも搭載し、全キー一律で色と明るさを調整できる。タッチパッドは非常に大きく横に広い形状で、17.3型でスペースに余裕があるとは言え、さすがに大きすぎるのではないかと思う。

キーボードはアイソレーションタイプでバックライト付き
タッチパッドはボタン内蔵型。筐体サイズに合わせてか、相当に広い
キーボードバックライトの色や明るさを調整するツールも搭載

 端子類は、左側に2基のUSB端子とヘッドフォン端子があり、右側にGigabit EthernetとThunderbolt 4、microSDカードスロットがある。さらに背面にはUSB Type-CとMini DisplayPort、HDMIが並ぶ。背面のUSB Type-CにはDisplayPortのマークがなく、ディスプレイ出力には使えないように見える。

左側面はUSB端子×2、ヘッドフォン端子、マイク端子
右側面はmicroSDカードスロット、Thunderbolt 4、Gigabit Ethernet
背面は電源端子、Mini DisplayPort、HDMI、USB Type-C
前面右側には電源、バッテリ、アクセスランプのLEDインジケータがある
背面は奥側にスリットが広く取られ、左右にファンが見える

 スピーカーは底面の手前左右に内蔵されている。音質は全体としてはややこもり気味で、低音もあまり出ていない。小型スピーカーにありがちな高音の耳触りな感触も少ないが、ノートPCにありがちな小型スピーカーの音、という印象。筐体のサイズから考えれば、もう少ししっかりした音が出てほしい。

 エアフローは底面吸気、背面と側面後方からの排気。低負荷時はほぼ無音だが、高負荷では高めのファンノイズが出る。3Dゲームでは常にファンがフル回転する状態で、ゲームの音をかなり大きく出さないと聞こえないくらいの騒音になる。基本的にヘッドフォンを使うのがいいだろう。

 キートップへの熱伝導はかなり抑えられており、高負荷時でも中央上部付近がやや温かい程度。ゲームでよく使われるW/A/S/Dキー付近は低負荷時とほぼ変わらない温度で、快適に利用できる。

 ACアダプタは最大180W出力。サイズも大きいものの、本体よりやや薄くなるような形で、持ち運びに邪魔にならない配慮は感じる。ただしコンセントからACアダプタまでのケーブルはデスクトップPCと同等の太いものになっており、取り回しに難がある。

ACアダプタは180W出力。やや大型ながら薄型の形状になっている

ゲームだけでなく何にでも使える大型で高コスパなノートPC

 ゲーミングノートPCとしては、性能や使い勝手に配慮しつつ、デザインや独自機能にこだわった部分はない。良くも悪くもスタンダードで、コストパフォーマンスを重視したゲーミングノートPCと言える。

 性能についてはスペック通りのものは引き出せており、不満はない。特に「Control Center 3.0」を使えば、ヘッドフォンを装着して「パフォーマンス」モードで性能を引き出したり、静かな環境でも「静音」モードで何とかゲームを動かしたりと融通が利く。

 リフレッシュレートは144Hz対応で、キーボードは静かで品質も十分、マウスを接続するUSB端子が筐体左側にあり邪魔にならないなど、ゲームに対する一定の配慮もある(左利きの方には申し訳ないが)。ゲームを遊べる性能で、仕事や勉強にも活用しつつ、なるべく安価に収めたいというニーズをきっちり満たす製品だ。

 欲を言えば、筐体サイズが大きい分、サウンドの質やファンの騒音はもう少し改善できるのではないかと思う。もっとも、この2点はどちらもヘッドフォンを使ってしまえば解決する。その点は頭に入れた上で選んでいただければいいと思う。