トピック

4Kゲームも可能なパソコン工房のRTX 3060 Ti搭載高コスパPC。ミドルタワー型でカスタマイズの幅広さが魅力

王道のミドルクラスゲーミングPC

LEVEL-R059-117-SAX

 パソコン工房のユニットコムは、iiyama PCブランド「LEVEL∞」のミドルタワー型ゲーミングPC「LEVEL-R059-117-SAX」が発売した。本機はATXマザーボードを採用したオーソドックスなミドルタワー型PC。GPUは「前世代のハイエンドより速い」と言われるGeForce RTX 3060 Tiを採用している。ゲーミングPCとしてはミドルクラスの位置付けではあるが、性能面でも期待できる。

 昨今は世界的な半導体不足や、マイニング需要、新型コロナウイルスの影響によるテレワーク需要やインドア志向などで、ビデオカードの入手が困難、あるいは非常に高価な状況が続いている。

 現状でゲーミングPCが欲しいなら、自作やパーツ単位のグレードアップに比べて、完成品のPCの方が割安なこともある。本機のようなミドルタワー・ミドルクラスのゲーミングPCは、コストパフォーマンスの点で特に注目したい製品だ。

ストレージも充実し、マルチユースにも対応

 「LEVEL-R059-117-SAX」のスペックは下記の通り。

【表1】LEVEL-R059-117-SAX
CPUCore i7-11700(8コア/16スレッド、2.5~4.9GHz)
チップセットIntel Z590
GPUGeForce RTX 3060 Ti(8GB GDDR6)
メモリ16GB DDR4-3200(8GB×2)
SSD1TB(M.2 NVMe)
光学ドライブDVDスーパーマルチ
電源700W(80PLUS Bronze)
OSWindows 10 Home
汎用ポートUSB 3.2 Type-C、USB 3.0×6、USB 2.0×4
映像出力HDMI、DisplayPort×3
有線LAN2.5Gigabit Ethernet
その他音声入出力、S/PDIFなど
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)約190×477×432mm
重量約9.95kg(試用機の実測値)
直販価格20万4,578円

 CPUは最新で8コアのCore i7-11700、GPUはGeForce RTX 3060 Tiという構成で、SSDは1TBと大容量。HDDは非搭載だがDVDスーパーマルチを搭載している。有線LANは2.5Gigabit Ethernetを採用。

 ATXケースの採用で内部には余裕があるため、拡張性に優れるのも特徴。メモリやM.2スロット、SATAスロットには空きがあるので、カスタマイズの幅も広く取れる。実際にカスタマイズの内容を見てみると、ストレージはM.2 NVMeがもう1基と、最大6TBのHDDを2基追加可能。メインメモリも標準の16GBから、最大128GB(32GB×4)まで選べる。

 カスタマイズではユニークなものも用意されている。光学ドライブをBD-Rドライブに変更、M.2 SSDの放熱版の追加、電源を80PLUS Titaniumの800Wや80PLUS Goldの1,200Wに変更など。さらにOSなしにするなどマイナスのカスタマイズも可能だ。

 製品ページにはマザーボードのレイアウト写真も公開されている。自作PCの知識があれば、後から自分でパーツの追加や交換も想定できる。

GeForce RTX 3060 Tiで4KもVRもいける

 次は実機を使ってベンチマークテストを行なう。利用したのは以下のソフトだ。

  • PCMark 10 v2.1.2523
  • 3DMark v2.20.7250
  • VRMark v1.3.2020
  • PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator
  • ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
  • FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
  • Cinebench R23
  • CrystalDiskMark 8.0.4

 なお今回の試用機に使われているパーツのうち、ビデオカードやストレージなどのようにスペックシートで明確に製品の指定がないものについては、実際の製品では異なるパーツが使用される場合もある。あらかじめご理解の上、ご覧いただきたい。

【表2】ベンチマークスコア
「PCMark 10 v2.1.2523」
PCMark 107,220
Essentials10,149
Apps Start-up score13,797
Video Conferencing Score7,722
Web Browsing Score9,812
Productivity9,523
Spreadsheets Score11,328
Writing Score8,007
Digital Content Creation10,568
Photo Editing Score13,745
Rendering and Visualization Score13,173
Video Editing Score6,519
「3DMark v2.20.7250 - Time Spy」
Score10,537
Graphics score11,113
CPU score8,148
「3DMark v2.20.7250 - Port Royal」
Score6,704
「3DMark v2.20.7250 - Fire Strike」
Score22,374
Graphics score27,762
Physics score22,821
Combined score9,005
「3DMark v2.17.7137 - Wild Life」
Score61,234
「3DMark v2.20.7250 - Night Raid」
Score53,238
Graphics score114,546
CPU score13,201
「3DMark v2.20.7250 - CPU Profile」
Max threads6,585
16 threads5,837
8 threads4,992
4 threads3,263
2 threads1,928
1-thread980
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score12,914
Average frame rate281.53fps
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score11,147
Average frame rate242.99fps
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score3,363
Average frame rate73.32fps
「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」(簡易設定6)
3,840×2,160ドット4,614
1,920×1,080ドット23,154
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
3,840×2,160ドット4,647
1,920×1,080ドット10.222
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(最高品質)
3,840×2,160ドット8,987
1,920×1,080ドット20,596
「Cinebench R23」
CPU(Multi Core)9,407pts
CPU(Single Core)1,534pts

 グラフィックス系のテスト結果では、「3DMark」で最も重い「Time Spy」で1万オーバーのスコアを出している。「VRMark」で最も重い「Blue Room」でも70FPSを超えており、VRでの利用にも十分。GeForce RTX 3060 Tiの性能の高さが見て取れる。

 ゲーム系のベンチマークテストを見ると、フルHDではかなり余裕のある高評価。4Kだと「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」では「快適」の評価で、平均フレームレートも約61fpsと十分な値になった。しかし「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」では、最高画質からは画質を落とすように指示が出る。軽めのゲームなら4Kもそこそこ、といった印象だ。

 ストレージは、今回の試用機ではIntel製SSD「SSDPEKNW010T8」が使われていた。QLCの3D NANDを採用したモデルながら、シーケンシャルリードは2GB/sに迫り、ランダムアクセスも十分高速な値が出ている。DVDスーパーマルチには、日立LGデータストレージ製「GH24NSD5」が使われていた。

Intel製SSD「SSDPEKNW010T8」

 また実際のゲームプレイのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周を試した。計測にはNVIDIA FrameViewを使用し、フレームレートをチェックする。画質はいずれも最高設定。

【表3】ゲームのフレームレート
「Fortnite」
解像度3,840×2,1601,920×1,080
平均50.741167.792
下位90%46.756139.375
下位95%45.413128.525
下位99%40.922104.867
「Apex Legends」
解像度3,840×2,1601,920×1,080
平均92.682143.688
下位90%76.859124.282
下位95%73.28120.897
下位99%66.827115.153

 「Fortnite」では、4Kで平均で約50fpsという値になった。下位99%でも40fpsを超えているので普通に遊べはするが、60fpsに届かず滑らかさに欠けるのは分かる。とは言え最高画質での話なので、画質を落とせば4Kでのプレイも十分こなせるだろう。

 「Apex Legends」では、4Kで平均90fpsを超え、下位99%でも60fpsを超えた。またフルHDではフレームレート上限の144fpsに当たっており、GPU使用率は約61%と余裕がある。4Kなら60fps、それ未満の解像度ならハイリフレッシュレートで快適に遊べそうだ。

ゲームプレイ中も低騒音

正面はロゴがいくつかある以外はブラックで、光学ドライブ付近に少しへこみがある

 続いて実機を見ていこう。ケースは「LEVEL∞」シリーズではお馴染みとなったもの。フロントパネルはフラットなブラックパネルで、DVDドライブ部分のみ右側に切り欠きがある。また側面前方のみメタリックレッドを配しており、ちょっとしたワンポイントが目を引く。

 全体としてほぼ直方体のソリッドな形状ながら、安っぽさを感じさせない。背面もビデオカード部分以外はブラックで統一され、ケース内部もパネルからドライブベイまで一面ブラックで塗られている。普段見えない部分にまで妥協がないところにこだわりを感じる。

 電源ボタンは右側面の前方上部にある。USB端子やヘッドフォン端子などは天面の前方に並んでいる。左サイドパネルにはメッシュ状の穴が開けられているため、騒音が漏れやすい。電源ボタンが右側にあることも考慮すると、基本的には使用者の左側に置いて使うのがいいだろう。

 背面端子はUSB端子や音声入出力端子が並ぶオーソドックスなもの。ビデオカードの出力端子は、今回の試用機ではDisplayPort×3、HDMI×1となっている。

電源ボタンは右側面の上部にある。端子類は上部に並ぶ
左側面は広く空気穴が空けられている
右側面は少し出っ張りはあるが穴などはない
背面端子もオーソドックス。電源は下部にある
天面はフラットだが、前方端子部だけ少しくぼんでいる
底面は電源部分から吸気。メッシュフィルタが付いている

 サイドパネルを開けてみると、ケースファンは背面の排気ファンが1つのみ。電源は底面吸気で背面排気。吸気は前方側面と左サイドパネルに広く取られた空気穴から自然に入れる形だ。ケース内はかなり余裕があり、ビデオカードもハイエンドというわけではないので、冷却面で問題は感じられない。

 ビデオカードは徐々に音が大きくなるのは感じられるものの、ゲームの音をスピーカーから出してしまえば気にならない。左サイドパネルは大きく空いており、特別に静音を謳う設計ではないが、ビデオカードの冷却が十分なおかげで、高負荷でも騒音の増え幅が少ないのだろう。ゲームプレイ時などの高負荷時にも騒音のストレスが少ないのは嬉しい。

 排熱もそれほど激しくはなく、後方に熱を気にするものがない限りは問題ない。ゲーミングPCとしては、騒音・排熱ともかなり優秀な部類と言っていい。ケースなどには特に目立った騒音対策が施されているわけではないので、パーツ1つ1つの品質が良いのだろう。

 内部配線は、裏面配線を積極的に使いつつ、表側もエアフローの邪魔にならないよう、ケーブル類は結束バンドでしっかり固定してある。汎用品のケーブルを使っており、長さが余るものも多い中では、可能な限り整理してある。

 ドライブベイは、5インチベイが3つ(1つはDVDスーパーマルチを搭載済み)、3.5インチベイ(2.5インチ兼用)が4つある。今回は使われていないが、3.5インチベイには引き出し式のトレイがあり、HDDの装着や交換が簡単にできる。

左サイドパネルを開けたところ。内部のパーツも極力ブラックで統一されており、一体感がある
CPUクーラーはCooler Master製、マザーボードはMSI製
ビデオカードはZOTAC製でシングルファンのものが使われていた
電源はFSP製
背面にケースファンが1基
5インチベイは2つ空いている
3.5インチベイ(2.5インチ兼用)は4つ空きがあり、全てトレイ付き
右サイドパネルを開けると、裏面配線が使われているのが見える

カスタマイズ幅が広く、長く使いたい人向けの1台

オーソドックスだからこその拡張性の高さが魅力

 本機はとにかくオーソドックスなマシンで、とりたてて特徴を挙げるのは難しい。となれば、製品自体の完成度と価格を問うことになる。

 使われている1つ1つのパーツの品質は高く、ケースの完成度を含めて安心感がある。内部配線も必要なことはやってあり、エアフローの問題もない。騒音レベルや排熱も控え目で、総じてよくできていると思う。外見は好みもあるだろうが、レッドのワンポイントが入ったシックなデザインは大人の所有欲も満たしてくれる。

 内部に余裕があるミドルタワーケースのおかげで、購入時や購入後のカスタマイズにも対応しやすい。ある程度のPCに関する知識があり、この先長く使うためのベース構成として考えるのにも最適だ。「自作はもう面倒だけれど、後からストレージやGPUくらいは交換するかもしれない」という人には、やはり本機のようなATXミドルタワーのPCをおすすめしておきたい。

 価格の面では、ミドルクラスのデスクトップPCで20万円台というと、ちょっと高いような気もする。ただ最初に述べたように、昨今は半導体不足などの影響でパーツが入手困難な状態で、GeForce RTX 3060 Ti搭載のビデオカードは単体で8万円程度。性能面でもGPUは1世代前のハイエンド並であり、CPUやストレージもきっちり積んでいることを考えれば、妥当な価格ではある。

 本機は決して高級機ではないので、性能も設計も究極を目指したものではなく、どちらかと言えばコストパフォーマンスを追求したものだ。とは言え、必要な部分には手間をかけている。筆者が自分でPCを組むと、余った配線は空いたドライブベイにグチャグチャに突っ込んだりするので(笑)、それを思えば十分に綺麗。買って間違いのない安心感を与えてくれることが、王道マシンである本機に最も大事なことだと思う。