パナソニックから、7型カラー液晶を搭載した読書端末「UT-PB1」が登場した。楽天が運営する電子書籍ストア「Raboo」と連携し、PCレスで電子書籍コンテンツを購入できるという製品だ。
Androidベースでありながら読書専用にカスタマイズされた本製品のコンセプトは、先日正式にAndroid端末へとアップデートを果たしたシャープの「GALAPAGOS」の発売当初の姿に通ずるものがある。また同社にとっては、かつて手掛けていた「Σbook」「Words Gear」以来久々の電子書籍端末ということもあり、姿を消していったこれら製品の教訓がどのように生かされているか、気になるところだ。
本稿では、この「UT-PB1」を用いて電子書籍ストア「Raboo」でコンテンツを購入する手順のほか、製品の基本的な使い勝手についてチェックする。ハードウェアとサービスの切り分けがしにくいこともあり、端末そのものの評価だけでなく、Rabooに対するレビューも含まれていることをご了承いただきたい。
なお、今回使用した製品は、楽天市場のRaboo特設サイトから購入した筆者の私物で、8月10日の発売日に到着した。本製品のファーストインプレッション、および本製品と連携する楽天の電子書籍ストア「Raboo」の詳細については、本製品の記者発表会レポートを参照されたい。
●Androidベースの読書端末。PCレスで直接コンテンツを購入可能まずはざっと機能面についておさらいしておこう。本製品の特徴としては、「読書専用の端末である」、「PCレスでコンテンツが購入可能」、「楽天のサービスとシームレスに連携」といったところが挙げられる。
まず1つ目、読書専用の端末である点。本製品はAndroid 2.2をベースとしているが、読書専用端末としてのカスタマイズが施されており、Androidマーケットからのアプリの追加は行なえない(ほかのストアからのアプリの導入は行える場合がある。詳しくは後述)。ただしブラウザやメールなど利用頻度が高いと思われる複数のアプリはプリインストールされており、読書以外の使い方も可能になっている。
端末側で直接コンテンツを購入できる仕組みを採用している点も特筆すべきだろう。PCレスで操作が完結するこの仕組み、海外ではAmazonのKindleやBurns & NobleのNOOK、国内ではGALAPAGOSなどの読書端末がすでに実現しているが、ごく当たり前になってきているからこそ、後発製品としての工夫の有無は否応なしに注目される。
また、本製品というよりも電子書籍ストア「Raboo」の特徴になるが、楽天IDがそのまま使え、貯まった楽天スーパーポイントで電子書籍が買えるのは、すでに同社のサービスを使っているユーザーにはメリットだろう。
ハードウェアの仕様については、7型カラー液晶の採用、デュアルコアCPU(型番不明)を搭載していることが目玉になるだろう。中でも7型という画面サイズは、スマートフォンでは小さすぎる、一方で10型前後のタブレットは大きすぎてハンドリングが大変というユーザーにとって魅力的なはずだ。このクラスで競合となるのはGALAXY Tab、そしてGALAPAGOS A01SHなど数えるほどしかなく、読書専用端末である本製品がどのような強みを出せるのかは気になるところだ。
製品のサイズ比較。左からiPhone 3GS、本製品、GALAXY Tab | 先日AndroidへとアップデートされたシャープのGALAPAGOS(写真左、5.5インチのモバイルモデル)とは、発売当初の製品コンセプトが非常に似通っている | 本体上面。カバー内にはPCとの接続に利用するUSB Aコネクタが隠れている。左隣には電源スイッチ、右にはスピーカー1基を備える |
本体底面。こちらにもスピーカー1基を備える。横向き時に本体上面のスピーカーと合わせてステレオ再生が可能 | 本体左面。電源コネクタを備える |
本体右面。カバー内にmicroSDスロットが隠れている。イヤホンジャックも装備 | 本体裏面。起伏がないフラットなデザイン。リセットスイッチを備える |
●Rabooへの接続にあたっては機器認証が必要
パッケージを開封してから電子書籍コンテンツを読めるようになるまでの流れを見ていこう。本体の電源を入れると、Android 2.xでおなじみのロック画面が表示される。鍵アイコンを右にドラッグして解除すると、オリジナルのホーム画面が表示される。
机の上を模したホーム画面は「マイデスクトップ」と呼ばれる。画面上部にはRabooからの「話題の作品」などが表示されるのだが、この時点ではまだネットに接続していないので、ほぼ空っぽの状態だ。
起動すると表示されるロック画面は、Android 2.x系列でおなじみのデザイン。Androidベースであることが分からないくらいカスタマイズされていたGALAPAGOSに比べると、Androidらしさが随所に残っている | 初回電源投入後のホーム画面。画面上部の「今すぐ設定」というボタンを押し、無線LANの設定を開始する |
というわけで、まずは無線LANの設定を行なう。設定画面はウィザードが用意されているわけではなく、Androidの標準画面そのまま。設定完了後は画面下部のホームボタン、もしくは戻るボタンでホーム画面に戻るのだが、とくに説明もなければ説明書でも明確に言及されておらず、初めてAndroidのインターフェイスに触れるユーザーにとっては操作方法がわかりにくいかもしれない。
無線LANの設定画面はAndroidのインターフェイスそのままで、慣れていないと初心者にはややハードルが高そうだ。説明書も薄く、無線LAN接続完了後にデスクトップに戻る方法も書かれていない | 無線LAN設定が終わってホーム画面に戻り、しばらく待つと、画面上部に「話題の作品」などの情報が自動配信されてくる |
ホーム画面に戻ると、画面上部の領域に「話題の作品」が表示されている。その下にある「ブックストア」というボタンをタップして画面を広げ、「楽天イーブックストアはこちら」というボタンにタップして「Raboo」に接続する。
なお、表記が混在しており、分かりにくいのだが、この画面をはじめ随所に出てくる「楽天イーブックストア」というのはどうやら「Raboo」と同一らしい。本稿ではこのあと原則として「Raboo」という呼称に統一して説明する。
「楽天イーブックストアはこちら」というボタンをタップしてRabooに接続しようとすると、初回のみ機器認証を求められるので、案内に従って設定を行なう。設定には楽天IDが必要になるので、持っていればそのまま入力し、持っていなければ新規登録を併せて行なう。機器認証が完了するといったんホームに戻り、改めてRabooへの接続を行なう。このあたりのフローは、決して分かりづらいわけではないのだが、やや焦らされる感はある。
●画面遷移は一般的だが、UIの挙動は特殊。改善が待たれる
電子書籍ストア「Raboo」は、上部に検索窓とバナー、それ以下には注目商品などが表示されている。各電子書籍コンテンツのサムネイルをタップすると詳細が表示され、カートに入れて決済を行なえばダウンロードして読めるようになる。電子書籍サイトとしては標準的な画面遷移だ。
「Raboo」のトップページ。ジャンル一覧がデフォルトで非表示になっているのは、電子書籍サイトの中でもやや異例だ | ジャンル別ランキングを表示したところ。サムネイルのサイズおよび説明文ともにボリュームがあるためスクロール量が多く、やや見づらく感じる |
左上の「戻る」「進む」および「再読込」ボタン。押した際のインタラクションが不適切であることが操作性を悪くしている |
画面遷移でとくに奇をてらったところはないのだが、実際に使っていて非常に気になるのが、「戻る」、「進む」ボタンの挙動。画面の左上に「戻る」、「進む」の役割を持つ矢印ボタンが表示されているのだが、押した際にボタンがへこんだりといったインタラクションが何もない。つまり、うまく押せたのかどうかが反応がなく分からないのだ。
挙動を注意深く見ると、読み込み中は右隣の再読込ボタンが×マークに変わっているのだが、右手の指で「戻る」、「進む」ボタンを押した際にちょうど隠れる位置にあるため、見た目はまったく無反応に見えてしまう。反応がないのでどうしようか途方に暮れていると、いきなり画面が切り替わって面食らうといった具合だ。画面内のバナーやテキストのリンクはタップ時にきちんと色が反転し、操作が受け付けられたことが一目で理解できるだけに、なおさら際立つ。
また、一般的なブラウザであれば、戻るべき直前のページが存在しない場合「戻る」ボタンの色をグレーアウトして無効化させるのが普通だが、このRabooのインターフェイスではボタンは常に同じ色なので、戻るべき直前のページがないのに戻るボタンを押してしまうといった無駄な操作をしがちだ。Raboo側の問題というより、Rabooに接続するための内蔵アプリの問題ということになりそうだ。UIとしてはかなりクリティカルな問題なので、一日も早い改善を期待したい。
●わかりやすい購入フロー。決済からダウンロード完了までは1分もかからず
インターフェイスに関する苦言を述べたが、ひとまず電子書籍コンテンツを購入してみることにしよう。今回は吉田修一著「悪人」を購入してみた。以前のSONY ReaderとGALAPAGOSのレビューの際にも同じタイトルを購入しているので、購入までのフローやページの見え方などを参考にしてほしい。
コンテンツの詳細ページの「ダウンロード購入」ボタンを押すとカートに追加され、以後は一般的なショッピングサイトと同じフローで購入手続きが行なえる。すでに冒頭で楽天の会員IDを入力しているので、入力するのはパスワードのみ。今回は楽天スーパーポイントを利用して購入したが、クレジットカードや、楽天キャッシュという楽天専用の電子マネーも利用できる。
決済が完了すると即ダウンロードが始まり、すぐさま読めるようになる。今回購入したコンテンツに限って言うと、決済からダウンロード完了、そして表紙が画面に表示されるまでに1分もかからなかった。もちろん全コンテンツがこのスピードでダウンロードできるというわけではないが、この間の操作が「読む」ボタンを押す以外に自分では何もしなくていいこともあり、体感的にもかなり速く感じられる。
今回は試していないが、書名およびリンクをTwitterやmixi、Facebookなどに投稿できる。スクロール位置によってはこの写真のようにポップアップされたウィンドウが隠れてしまうことがある | ポップアップウィンドウを改めて表示したところ。プレビュー表示もあり分かりやすい |
●ページめくりは高速。操作も直感的で分かりやすい
ダウンロード購入した電子書籍コンテンツは、タップもしくはフリックで読み進めることができる。メニューボタンもしくは画面中央付近をタップすると設定画面が表示され、ブックマークを挟んだり、フォントを明朝/ゴシック/丸ゴシックの3種類から変更したり、サイズを変えたりといったことができる。
できる操作の内容も、またその操作方法もとくに奇をてらったところはなく、分かりやすい。すでに電子書籍に慣れているユーザーはすんなり使えるだろうし、そうでないユーザーも、マニュアルを読まなくともあちこちタッチするうちに使い方を覚えてしまうレベルだ。
ダウンロード完了後「読む」を押すと電子書籍コンテンツの表紙が画面に表示される。あとはページをめくって読むだけ | ページめくりはタップもしくはフリックで行なう。物理的なページめくりボタンは用意されていない | メニューボタンもしくは画面中央付近のタップにより設定画面が表示される。アイコンサイズも大きく、ラベルも明確で分かりやすい |
文字サイズは5段階で可変する。ここで設定した文字サイズは別のコンテンツにも引き継がれるようだ | フォントは明朝/ゴシック/丸ゴシックの3種類から選択できる |
アニメーション効果はスライドのみで、紙のようにペラッとめくる効果はない。アニメーションそのものをオフにすることも可能 | ルビの有無を切り替えることもできる |
ページめくりに関して特徴的なのは、フリックでページをめくる際に、フリック操作が完了してからページがめくられることだ。静電容量タッチパネルを採用したタブレットやスマートフォン、電子書籍端末では、フリックする指先のなぞり具合に合わせ、ページが指にくっつくような動きでめくられることが多いが、本製品はフリックが終わって画面から指を離した時点で初めてめくられる。慣れれば問題ないのかもしれないが、多少の違和感がなくはない。
もっとも、これらページめくりやメニュー表示の反応速度は早く、ストレスはまったく感じない。筆者が本製品に触れるのは今年7月の電子書籍EXPO、記者向け説明会に次いで今回が3回目になるが、タッチ画面の反応速度は劇的に向上しており、これまでの試用で感じたもっさり感が嘘のようだ。それだけに先に述べたストアにおける、個々の操作に対するインタラクションは一刻も早く改善してほしいと思う。
【動画】マイデスクトップ上のチラよみコンテンツをピンチアウトで一覧表示したあとそれを閉じ、読みかけのコンテンツを表示。ページをフリック/タップでめくり、設定画面のON/OFFを経て最後にRabooに接続している様子 |
ちなみに画面上にページ番号の表示は一切なく、設定画面上部に表示される進捗バーでおおよその既読の割合が分かる仕組みになっている。そのためブックマークはページに対してではなく、ページの冒頭に表示されるテキストに対してつけられるようだ。そのため文字サイズを変更してページの位置がずれても、ブックマークした箇所を正確に呼び出すことができる利点がある。一方でページ番号がないことから、ページめくりアニメをオフにした場合、ページがめくられているのか戻っているのかわからないという欠点もなくはない。
ブックマークを追加すると、画面の左上に紙を折り返したマークが表示される。SONY Readerの同等機能とよく似ているが、タップしての解除には非対応 | ブックマークにはコメントも入力できる |
●マイシェルフ機能でコンテンツを自分好みに分類できる
マイデスクトップ。さきほど購入した電子書籍コンテンツ「悪人」のサムネイルが、右側の「読みかけ」に表示されている |
本製品のホーム画面である「マイデスクトップ」と、切り替えて表示できる「マイシェルフ」について詳しく見ていこう。
「マイデスクトップ」は、上3分の1がRabooからの注目書籍を表示する領域、下3分の2が「チラよみ」、「読みかけ」、「未読」、「お気に入り」の表示領域となっている。GALAPAGOSでは「未読・おすすめ」、「最近読んだ本」、「お気に入り」、「定期購読」の4つの本棚を回転させて切り替える仕様だったが、本製品では4つのアイコンをホーム画面に配置し、それぞれをピンチアウトして広げる仕組みになっている。ピンチアウトという操作を初心者ユーザーが抵抗なく受け入れるかは若干の不安も残るが、いったん分かってしまえば慣れで解決できるレベルだろう。
このマイデスクトップに表示されている「チラよみ」コンテンツは、Rabooで販売されているコンテンツの冒頭ページをサンプルとして読めるという、いわばお試し版になる。無料で読めるページ数はコンテンツによって異なるが、例えば第10章まである本であれば、冒頭の1章が無料で読めるといった割合が多いようだ。
この「チラよみ」、約600冊という膨大な冊数がプリインストールされていることから、Rabooに接続して電子書籍コンテンツをいちから探す導線以外に、まずこの「チラよみ」コンテンツで内容を確認し、欲しいものがあれば直接Rabooにジャンプして購入するという使い方が可能になるわけだ。もちろん、読んでみて不要と判断したものは削除することもできる。
重なり合っている「チラよみ」コンテンツを広げて表示するには、二本の指でピンチアウトを行なう | サムネイルがばらばらに飛び散って…… | 「チラよみ」コンテンツの一覧が表示される |
さて、これらコンテンツの整理には「マイシェルフ」を用いる。これは本棚に相当する画面で、好きなジャンル分けでコンテンツを保管し、タイトルや著者名といった条件ごとに並び替えられるというものだ。
画面下部をタップしてマイデスクトップからマイシェルフに切り替えると、購入済みのコンテンツやチラよみコンテンツが本棚画面で表示される。デフォルトでは自己啓発/教育/ビジネス/文芸など既存のジャンルで分類されている。
ところで「チラよみ」で1つ難があるのが、チェックした履歴を保存してくれないこと。チラよみで面白いコンテンツを見つけても、そのあとうっかり閉じてしまうと、ふたたび大量のサムネイルの中から探し直さなくてはならない羽目になるのだ。お気に入りに手動で登録しておけばよいという考え方なのだろうが、端末側で自動的に覚えていてくれたほうが便利ではないかと感じる。
もう1つ、「お気に入り」という概念が、本製品とRabooのそれぞれに存在しており、両者がまったく別物であることも混乱しやすい。本製品の「お気に入り」は購入済みのコンテンツの中でのお気に入りであり、Rabooの「お気に入り」は今後購入するかもしれないコンテンツを忘れないために登録しておくシステムだったりと、同じ名前でありながら別の機能なのだ。機能自体の統合は難しいだろうが、どちらかの名前を変更するといった工夫を望みたい。
本製品の「お気に入り」機能。すでに購入済みのコンテンツで気に入ったものに印をつける機能。マイデスクトップの左下から呼び出せる | Rabooの「お気に入り」機能。今後購入予定のコンテンツを登録しておくための機能 |
Androidマーケットからのアプリ追加はできないが、試してみた限りでは、ほかのストアからの導入は行なえる場合があるようだ。これはベンチマークアプリ「Quadrant Professional」を動作させているところ | ベンチマーク結果。最上位にある「Your device」が本製品で、Nexus Oneなどの端末に 比べてぶっちぎりで性能が高いことがわかる。とくにCPUやメモリ周りの値が優秀。一概に比較できるものではないが、同じベンチマークアプリによるGALAPAGOS、GALAXY Tabの計測結果は前回のGALAPAGOSのAndroidアップデートの記事を参照されたい |
●楽天ブックスとの連携により、紙の本もシームレスに購入可能
ところでRabooは、同社の書籍通販サイト「楽天ブックス」への導線があちこちに用意されていることが特徴だ。具体的な例として、書名や著者名で検索した際にヒットしなければ、検索ワードが楽天ブックスにシームレスに引き継げるようになっている。
これにより、目的の本がRabooで見つからなくとも、楽天ブックスで紙の本が簡単に買えるというわけだ。また、個々の商品情報ページからも楽天ブックスへリンクが張られており、紙の本の購入が容易になっている。
書名や著者名で検索した際、ヒットするコンテンツがなければ、「楽天ブックスから探す」のリンクが表示される | クリックするとそのまま楽天ブックスに検索語句が引き継がれる。この例では、Rabooで見つからなかった書籍を楽天ブックスで見つけることができた | 検索結果だけではなく、通常の商品詳細ページにも、楽天ブックスで購入するためのリンクが用意されている |
実際のところ「どうしてもこの本が読みたい」という欲求があれば、紙か電子かというのは問われないことも多く、こうしたリンクを用意しておくのは、利用者の欲求を満たすものとして評価できる。電子書籍ストアのあるべき姿としてはよく語られるものの、事業者の違いなどもあってなかなか実装されることがないだけに(紀伊國屋書店の電子書籍ストア「Kinoppy」などの前例はあるが)、意欲的なこの試みとして今後も注目していきたい。
●Adobe Readerをはじめ16種類のアプリをプリインストール本製品では、microSDに保存されているPDFデータをそのまま表示することもできる。これにより、PDF形式で配布されているコンテンツやドキュメントのほか、いわゆる「自炊」データについても、表示が行なえるというわけだ。
本製品に搭載されているPDFビューアがAdobe Readerということで、大きなファイルを縮小表示した時にディザが目立つという難点はあるものの、液晶が7型サイズということもあり、小説や新書、コミックスはほぼ原寸大で快適に読める。右綴じでないのが気になるくらいだ。
microSDは側面のカードスロットに挿入する。読書端末やタブレットの中では、出し入れはかなり容易な部類に入る | Jコミで配布されている赤松健氏「ラブひな」第1巻を表示したところ。7型ということもあって、単ページであれば単行本と同等のサイズで表示できる。ただしAdobe Readerということもあり右綴じの設定はできないほか、縮小時のディザも目立つ |
このAdobe Readerをはじめとして、本製品には16種類のプリインストールアプリが用意されている。なかでもブラウザについては動きも軽快で、筆者が常用しているGALAXY Tab(Android2.3アップデート済み)に比べてもサクサク動く。さすがにスクロール時のヌルヌル感はiPhoneやiPadに及ぶべくもないが、ベースのOSがAndroid 2.2であることを考慮すると、かなり健闘しているのではないかと思う。
Android 2.x系列そのままの設定画面。項目はところどころ非表示になっている | 提供元不明のアプリのインストールをオンにできるのだが、実際にはインストールはできない |
こちらは端末情報画面。ファームウェアバージョンは2.2となっている | IMEについてはオムロンソフトウェアの「Japanese IME」がインストールされている |
Androidマーケットからのアプリ追加はできないが、試してみた限りでは、ほかのストアからの導入は行なえる場合があるようだ。これはベンチマークアプリ「Quadrant Professional」を動作させているところ | ベンチマーク結果。最上位にある「Your device」が本製品で、Nexus Oneなどの端末に 比べてぶっちぎりで性能が高いことがわかる。とくにCPUやメモリ周りの値が優秀。一概に比較できるものではないが、同じベンチマークアプリによるGALAPAGOS、GALAXY Tabの計測結果は前回のGALAPAGOSのAndroidアップデートの記事を参照されたい |
●増えるライバルの中でどのように立ち回るか
以上、Rabooに接続しての購入フローと読書端末としての使い勝手を中心に紹介した。「戻る」「進む」ボタンにまつわる問題など、ごく基本的なところでひっかかる箇所がなくはないが、初回出荷時にチューニングがさっぱりという製品も昨今多くみられる中、十分に合格点が出せる完成度と言っていいだろう。速度もきびきびとしており、操作にストレスが溜まりにくいのも好印象だ。今後ソフトウェアのバージョンが上がり、あわせてコンテンツが充実してくれば、さらに使えるようになるのではないかと感じる。
懸念があるとすれば、少なくとも国内では電子書籍の専用端末よりも、汎用のタブレットPCやスマートフォンにユーザーの目が向きつつあるということ。直接のライバルになるであろうGALAPAGOSは先日Androidアップデートを果たしたほか、新製品も汎用的なAndroid 3.2タブレットだ。Androidマーケットからのアプリの追加インストールができない(ただしほかのストアからのアプリの導入は行える場合がある)本製品は、そうした意味で苦戦を強いられる可能性もある。Rabooではコンテンツの量よりもむしろ質、つまりオリジナルのタイトルを重視することをアピールしており、今後のRabooの運営方針が本製品に及ぼす影響は大きそうだ。
また、本製品は現時点で唯一のRaboo対応製品だが、Rabooは将来的にソニー製の読書端末からも接続可能になることが予告されているほか、PC向けのインターフェイスも準備中であるとされている。こうしたことから、専用端末としての存在意義がますます問われるようになってくることは間違いない。大きなウィークポイントがなく、ハードウェアとしては十分に合格点が与えられるだけに、増えるライバルの中で本製品がどのように立ち回っていくか、半年、1年といったスパンで注視していきたい。
(2011年 8月 26日)
[Reported by 山口 真弘]