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親指派?人差し指派?3千円台トラックボールとロジクールの定番モデルを比べてみた

今回比較するのは下記の4製品、ロジクール製以外は3,000円台で購入可能

 PCのポインティングデバイスと言えばマウスを使っている人が圧倒的に多い。しかしトラックボールにも熱烈なファンがいる。トラックボールには、省スペース性、手首・腕・肩への負担軽減、精密な作業が可能などというメリットがあるからだ。

 しかし、そのような魅力に惹かれてトラックボールの購入を検討する際、どの製品を購入するか悩んでしまう方も多いはず。そこで今回はロジクールの定番トラックボール「ERGO M575SP」をリファレンスモデルとして設定し、その半額ぐらいで購入可能な製品とスペックだけでなく、サイズ感、ボールやボタンの操作性、接続方式、専用ソフトの使い勝手などを比較してみた。初めてのトラックボールを購入する際の参考にしてほしい。

今回比べる4製品を紹介

 実際に比較をしていく前に、まずは今回取り上げる4製品について手短かに特徴をお伝えしよう。

ロジクール「ERGO M575SP」

ロジクール「ERGO M575SP」。実売価格7,300円前後(6月27日時点、以下同)

 今回リファレンスとして設定したロジクール「ERGO M575SP」は、同社のトラックボールのエントリー機。上位機種よりボタンが少なかったり、角度調整機能が省略されているが、トラックボールとしての基本機能は継承している。従来モデル「ERGO M575」との違いは静音クリック機能を搭載したこと、USBレシーバが「Logi Bolt」に変更されたこと。またカラーがグラファイト、ホワイトに新色ブラックを加えた3色展開となった。

ボタンは、左クリック、右クリック、ホイールボタン、進むボタン、戻るボタンの5個を搭載
底面には電源スイッチと接続ボタンを配置
前面
背面
左側面
右側面
パッケージには本体、Logi Bolt USBレシーバ、単3形乾電池、説明書、保証書が同梱

ケンジントン「オービットオプティカルトラックボール」

ケンジントン「オービットオプティカルトラックボール」。実売価格3,400円前後

 ケンジントン「オービットオプティカルトラックボール」は、USB接続する有線式トラックボール。左右対称ボディを採用しており、利き手を選ばず操作できるのが最大の特徴だ。今回の4機種の中でトラックボールの直径が40mmと最も大きく、細かな操作がしやすい。ただしボタン数が2個と少ないので、好みが分かれるトラックボールだ。

ボタンは、左クリック、右クリックの2個を搭載
底面には認証情報などが記載されている
前面
背面
左側面
右側面
パッケージには本体、説明書が同梱

エレコム「M-DT2URBK」

エレコム「M-DT2URBK」。実売価格3,700円前後

 エレコム「M-DT2URBK」は、人差し指操作タイプのUSB接続トラックボール。有線タイプながら今回取り上げた中で最多の8個のボタンを用意。また、傾けて左右スクロールができるチルトホイールも装備している。ボタンが多い分、操作にはやや慣れが必要だが、機能盛りだくさんのトラックボールと言える。

ボタンは、左クリック、右クリック、進むボタン、戻るボタン、チルトホイール、機能割り当てボタン3個の計8個を搭載
底面のQRコードからはエレコムの製品Q&Aページにアクセスできる
前面
背面
左側面
右側面
パッケージには本体、説明書が同梱

ProtoArc「EM04」

ProtoArc「EM04」。実売価格3,990円前後

 ProtoArc「EM04」は安価ながら2.4GHz、Bluetooth両対応の無線タイプのトラックボール。ボディはブラックとホワイトの2色、ボールはパープル、ブラック、シルバー、ワインレッド、レッド、ゴールドの6色が用意されており、記事執筆時点でAmazonでは8モデルが販売されている。技適も取得されており、安心して日本で利用できるトラックボールだ。

ボタンは、左クリック、右クリック、進むボタン、戻るボタン、スクロールホイール、DPI変更ボタンの6個を搭載
底面には電源スイッチと接続ボタンを配置
前面
背面
左側面
右側面
パッケージには本体、USBレシーバ、充電用USBケーブル、説明書が同梱

重量を比較
~サイズは大小あるが安定して握れる

 サイズ的に最も大きいのは「オービットオプティカルトラックボール」。続いて「ERGO M575SP」、「EM04」、「M-DT2URBK」の順番でコンパクトになっていく。筆者は手の長さ(中指の先から手のひらの根元まで)が20cmと比較的手が大きいが、握り心地という点では大きな違いを感じなかった。

 どのモデルも手のひらを乗せるスペースを広めに確保しているので、安定して手を預けられ、ボール、ボタンを操作できる。しいて挙げると「M-DT2URBK」はボタンの数が多い分、もう少しボディが大きいと各ボタンを操作しやすかったと思う。

 重量は「M-DT2URBK」が最も軽く約112g、「ERGO M575SP」が最も重く145gだ(ともにカタログスペック)。重いほうが安定しやすいと予想していたが、どの製品も大きめのラバーが貼り付けられており、少なくとも金属、木製、ガラスなどのデスク上であれば意図せずボディがずれることはない。安定性の面で重量差は気にしなくてもよさそうだ。

握ったときのサイズ感
ERGO M575SP
オービットオプティカルトラックボール
M-DT2URBK
EM04
【表1】サイズと重量の比較
製品名ERGO M575SPオービットオプティカルトラックボールM-DT2URBKEM04
サイズ100×134×48mm124×140×43mm(実測)94.7×124.4×47.9mm100.5×136.8×52.3mm
重量145g141.5g(実測)約112g(ケーブル含む)119g

ボールの操作性を比較
~どの指でボールを動かすかが操作性を左右する

 トラックボールの直径/重量は「ERGO M575SP」、「M-DT2URBK」、「EM04」が34mm/25g前後、「オービットオプティカルトラックボール」のみ40mm/40g前後となっている。

 最も回転が滑らかなのは「ERGO M575SP」であり指で強く弾くと約0.8秒回転を続けた。一方、「オービットオプティカルトラックボール」、「M-DT2URBK」、「EM04」は0.6秒前後で回転が止まった。とは言え「ERGO M575SP」以外の3機種も指で弾けば画面の端から端までポインターが移動するだけの回転はするので、実用的には滑らかさという点で大きな違いはないだろう。

 トラックボールを操作していて違いが出るのは、どの指でボールを操作するのかというポイントだ。「ERGO M575SP」、「EM04」は親指、「オービットオプティカルトラックボール」は人差し指または中指、「M-DT2URBK」は人差し指で操作する。個人的には親指のほうが、トラックボールの上面に手のひらを完全に預けたままで操作できるので、微妙なコントロールがしやすかった。

 ただし、どの指が一番器用に動かせるかという点も考慮する必要がある。できれば実際のトラックボールで試すか、それが無理ならトラックボールの形状をイメージしつつ親指、人差し指、中指を動かしてシミュレートしてみることをお勧めする。

ボールを操作する様子
ERGO M575SP
オービットオプティカルトラックボール
M-DT2URBK
EM04
ボールの大きさと重量
ERGO M575SP
オービットオプティカルトラックボール
M-DT2URBK
EM04
【表2】ボールやセンサーの比較
製品名ERGO M575SPオービットオプティカルトラックボールM-DT2URBKEM04
ボールの直径34mm(実測)40mm34mm34mm
ボールの重量(実測)25.5g40.12g24.6g25.29g
操作の利き手右手両方右手右手
ボールの操作親指人差し指、中指人差し指親指
本体部角度27度(実測)0度15度(実測)15度
センサー解像度400(初期値)
2,000dpi(最大)
400dpi750dpi
1,500dpi
200dpi
400dpi
800dpi
1,200dpi
1,600dpi

ボタンを比較
~数が多いと誤タッチしやすいことも

 ボタン数や配置、形状については好みによる部分が多く、正直評価が難しい。まず率直に個人的な好みで言えば、ボタンが多いポインティングデバイスは使いにくいと考えている。急いでいたり、気を抜いたときに、意図せず誤タッチしてしまうからだ。どうしても効率化のために機能を割り当てたいのであれば、別途、補助的な左手デバイスを導入したほうがよいと思う。

 なお、今回取り上げた中で最も独特な形状を採用しているのは、言うまでもなく「オービットオプティカルトラックボール」。左右どちらの手でも操作できるという大きなメリットがある一方、ほかのトラックボールと比べるとどっち付かずという印象を受けた。

 またゴム足が左右と手前の3カ所なので、手の重心が前に寄るとガタつく点も気になった。前方にも適当なゴム足を貼れば解決するが、ほかのトラックボールと同様に4隅にゴム足を装着するべきだと思う。

 ちなみに左右クリックの静音性という点では「ERGO M575SP」、「EM04」の2択。「オービットオプティカルトラックボール」、「M-DT2URBK」には明確なクリック音が発生する。静かな環境でトラックボールを使いたいのであれば、静音性の高い「ERGO M575SP」、「EM04」のいずれかを選ぶべきだ。

ERGO M575SP
オービットオプティカルトラックボール
M-DT2URBK
EM04
【表3】ボタン関連の比較
製品名ERGO M575SPオービットオプティカルトラックボールM-DT2URBKEM04
ボタン数5個2個8個6個
静音クリック--

接続方式を比較
~PCの設置方法によって検討しよう

 接続方式は「ERGO M575SP」、「EM04」が無線(2.4GHzまたはBluetooth)、「オービットオプティカルトラックボール」、「M-DT2URBK」がUSB接続の有線方式だ。

 利便性という点ではケーブルレスの無線方式がよいが、ほかの無線デバイスの影響を受けたり、金属デスク越しだと動作が不安定になることもある。また定期的に電池を交換したり、充電しなければならないというのもデメリットだ。ちなみに、ERGO M575SPは単3形乾電池1本、EM04は内蔵バッテリでの動作となる。

 一方、USB接続の有線方式はケーブルに縛られてしまうが、トラックボールは通常のマウスと異なり本体を動かすことがないので、有線マウスのようなケーブルに動きを阻害される不快感はない。「オービットオプティカルトラックボール」、「M-DT2URBK」のどちらもケーブル長は約1.5mが確保されているので、机の下のデスクトップにつなぐのにも十分な長さだ。そして当然、電池交換、充電から解放される。

 単純に接続性だけで言えば、外に頻繁に持ち歩くノートPCであれば無線方式、据え置きで使うノートPCやデスクトップPCであればUSB接続の有線方式のほうが使い勝手はいいと言えよう。

ERGO M575SP
オービットオプティカルトラックボール
M-DT2URBK
EM04
【表4】接続や電源の比較
製品名ERGO M575SPオービットオプティカルトラックボールM-DT2URBKEM04
接続方式USBレシーバ(2.4GHz無線)
Bluetooth 5.1
USB有線USB有線USBレシーバ(2.4GHz無線)
Bluetooth
通信可能範囲最長10m--最長10m
ケーブル長-約1.5m約1.5m約1m(実測、充電用)
電源単3形乾電池1本USB給電USB給電450mAh内蔵バッテリ

専用ソフトを比較
~ERGO M575SPの「Logi Options+」が圧倒的に充実

 専用ソフトは「ERGO M575SP」、「オービットオプティカルトラックボール」、「M-DT2URBK」に用意されており、ボタンへの機能割り当てや、ポインター速度を変更できる。「EM04」には専用ソフトは提供されておらず、カスタムを行ないたい場合、Windowsでは「X-Mouse Button Control」、macOSでは「LinearMouse」というサードパーティユーティリティの使用が推奨されている。

 専用ソフトは「ERGO M575SP」の「Logi Options+」が圧倒的に機能は充実しており、トラックボール以外にもマウス、キーボード、カメラなどを統合管理可能だ。それぞれのデバイス自体のファームウェアアップデート機能も実装されている。「ERGO M575SP」はほかのトラックボールに比べて高価だが、それだけの価値がある専用ソフトが提供されていると言える。

専用ソフト
ERGO M575SP「Logi Options+」
オービットオプティカルトラックボール「KensingtonWorks」
M-DT2URBK「エレコム マウスアシスタント6」
EM04は汎用のユーティリティを導入する必要がある。画像は「X-Mouse Button Control」
【表5】専用ソフトの比較
製品名ERGO M575SPオービットオプティカルトラックボールM-DT2URBKEM04
専用アプリLogi Options+
(Windows/macOS)
KensingtonWorks
(Windows/macOS)
エレコム マウスアシスタント6
(Windows/macOS)
なし
(サードパーティソフトを利用)

自分の手に馴染む1台を見つけよう

 まず大前提として、トラックボールとしての基本性能は今回の4機種はどれも満たしている。この中からどれを購入するかについては、ボタンの数やボディの形状、接続方式などから選ぶことになる。

 解像度の差を重要視される方もいるだろうが、個人的には400dpiが一番使いやすく感じたし、だからこそ天板とされるロジクールの「ERGO M575SP」も初期値が400dpiに設定されているのだろう。一方で、高解像度ディスプレイを使用していて、最小限の動きでデスクトップ全体をカバーしたいのであれば、高めのdpi設定もできる「ERGO M575SP」か「EM04」がよいだろう。

 いずれにしても最も重視すべきは、マウスと同じくサイズ感だと言える。ある程度の違和感は使っているうちに解消されるだろうが、第一印象も重視すべきだ。トラックボールは可能な限り実機を握ってから購入を検討することをお勧めしたい。