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2.5~10Gbps時代のLANケーブル選び。カテゴリ6さえ買えば問題ないのか?上位との速度差もチェック

 2.5GBASE-T対応のPCや10Gbps対応NAS、Wi-Fi 7対応ルーターなど、身近な機器で1Gbps以上の有線LANを搭載する機器が増えてきた。これらの機器を接続するには、LANケーブルが必要だが、その種類が豊富でどれを選べばいいのかが分からないという声も多い。 しかも店頭ではこれまで推奨されてきた「カテゴリ6」が姿を消しつつある。そこで本稿では、2.5Gbps以上のネットワークに対応するケーブルの選び方を解説する。

LANの基本は速度を揃えること

 2.5Gbpsや10Gbpsの高速なネットワークを構築するための基本は、接続するすべての機器を使いたい速度に対応した規格で揃えることだ。

カテゴリ6A、カテゴリ7、カテゴリ8のLANケーブルの量販店パッケージ

 たとえば、新しく購入したPCが最大2.5Gbpsの2.5GBASE-Tに対応していたとしても、接続先のルーターのLANポートが最大1Gbpsの1000BASE-Tにしか対応していなければ最大速度は1Gbpsで頭打ちとなってしまう。

 仮にルーターに2.5Gbps対応のポートが用意されていても、PCとの接続に、2.5Gbpsに対応していないケーブルを使うと速度が制限されることもある。

  実際には上位の規格であれば下位の規格にも対応できるため、PC、NAS、スイッチ、ルーター、ケーブルなど、すべての機器を接続したい速度に対応した規格「以上」で揃えることが重要となる。対応する速度が同じでも「カテゴリ」というケーブルならではの分類が存在し、ユーザーにとって分かりにくい状況になっている。

同じ10Gbps対応として販売されているケーブルでも、左のカテゴリ6Aと右のカテゴリ7がある。しかも価格は3倍以上も違う

 ケーブルも、基本的には下位互換があるので、上位のカテゴリを選んでおけば、「接続できない」という最悪のトラブルに見舞われることはないが、カテゴリが上がるほど価格も高くなるため、過剰な出費につながることもある。

 適切な規格のケーブルを適切な価格で購入することが大切なので、LANケーブルの種類や規格について把握しておくことが大切だ。

LANケーブルの種類

 LANケーブルの種類は、用途や仕様によってANSI(TIA-568.2D)やISO(ISO/IEC 11801)、JIS(X 5150)といった規格で定められており、以下の表のようになっている。

【表1】LANケーブルのカテゴリ
通信速度伝送帯域シールドコネクタ通信距離
カテゴリ5e1Gbps
※2.5Gbpsにも対応可能
100MHzUTPRJ-45100m
カテゴリ610Gbps
※10Gbpsは55mまで対応
250MHzUTPRJ-45100m
カテゴリ6A 10Gbps 500MHz UTP/STP RJ-45 100m
カテゴリ710Gbps600MHzSTPARJ45/GC45/TERA100m
カテゴリ7A10Gbps1,000MHzSTPARJ45/GC45/TERA100m
カテゴリ8.140Gbps2,000MHzSTPRJ-4530m
カテゴリ8.240Gbps2,000MHzSTPARJ45/GC45/TERA30m

 「Cat.6」や「CAT8」などと略して表示されることもあるが、「カテゴリ」という分類で各種仕様がまとめられており、対応する通信速度や伝送に利用する周波数帯域幅、コネクタの形状、通信距離などが定められている。

 表を見れば分かる通り、 ややこしいのは同じ10Gbps対応でも、カテゴリ6や6A、カテゴリ7など、複数のカテゴリがあり、どれを選べばいいのかが分かりにくい点だ。

 そこで、対応する規格や通信速度ごとに推奨するカテゴリをまとめ直したのが以下の表となる。

【表2】Ethernet規格ごとの推奨ケーブル
規格通信速度推奨ケーブル用途
1000BASE-T1Gbpsカテゴリ5e以上ほとんどの機器が対応
2.5GBASE-T2.5Gbpsカテゴリ6以上上位モデルのPCやNAS
5GBASE-T5Gbpsカテゴリ6以上NAS
10GBASE-T10Gbpsカテゴリ6A以上NAS、10Gbps回線用ルーター、サーバーPC

  現状、一般的な家庭向けのネットワーク機器は、最大でも10Gbps対応となっているため、基本的にはカテゴリ6、もしくはカテゴリ6Aのケーブルを選んでおけば問題ない。ただし冒頭でも述べた通り、カテゴリ6のケーブルが手に入りにくくなりつつあるようなので注意が必要だ。

 カテゴリ6とカテゴリ6Aの違いは、対応する周波数帯とシールドの有無だ。カテゴリ6は、対応する周波数帯域が250MHzまでとなっているが、55m以内であれば10Gbpsに対応可能となっている。一方、カテゴリ6Aは、500MHzまで対応し、10Gbpsで100mの通信が可能。シールドの有無も選択できる。

 シールドは、ケーブル内を通る信号を干渉(主に隣接するケーブル同士の漏洩)から保護するための保護材(ケーブルを金属膜で囲んだり内部を仕切ったりする)の有無を表している。STP(Shielded Twisted Pair)がシールドありで、UTP(Unshielded Twisted Pair)がシールドなしとなる。

シールドありのSTPケーブル(上)とシールドなしのUTPケーブル(下)では太さが異なり、取り回しに違いが出る

 STPのほうが信頼性は高いが、シールドのおかげでケーブルが太く、曲げにくくなる傾向がある。家庭での利用を考えると、干渉を受ける可能性よりも、取り回しが楽なほうがありがたいので、通常はUTPケーブルで十分と言える(STPケーブルはアースの有無の必要性が議論されることがあるが、検証が困難なため、本稿では議論の対象としない)。

 要するに、普通は「カテゴリ6」のケーブルを買っておけば、大抵の用途には対応できることになる。

シールドありのSTPケーブル。写真はカテゴリ8。シールドの度合いもカテゴリによって異なる。カテゴリ8は、ペアごとにシールドがあり、さらに全体を覆うシールドが二重に配置されている
シールドなしのUTPケーブル。写真はカテゴリ6Aのシールドなし(UTP)仕様

 ちなみに、すでに手元にあるケーブルのカテゴリを確認したい場合は、ケーブルにプリントされている文字を見てみるといい(ない場合もあるが……)。小さな文字で対応するカテゴリが記載されている。

ケーブルに印刷されている文字でカテゴリを確認できる

カテゴリ7やカテゴリ8は過剰品質

 もちろん費用に余裕があれば、より上位のカテゴリ7/7A仕様のケーブルやカテゴリ8のケーブルを購入しても問題ない。

  ただし、カテゴリ7/7Aに関しては、ISO以外のANSIやJISでは規定がない特殊な仕様となっている。具体的には、対応するコネクタが「ARJ45/GC45/TERA」という一般的ではない規格が採用されている。

 このため、正式に規格に準拠したカテゴリ7/7Aのケーブルは、家庭用の機器には接続できない。しかしながら、幸いなことにARJ45/GC45/TERAコネクタのカテゴリ7/7Aケーブルは、店頭でもオンラインショップでも見かけることはほとんどない。間違って買ってしまう心配はまずないだろう。

 家庭用の機器で利用されている一般的なLANケーブルのコネクタの形状は「RJ-45」という形状となっている。メーカーによっては、RJ-45コネクタを採用したカテゴリ7/7A対応を謳うケーブルを販売している場合もあるが、これはケーブル部分の仕様がカテゴリ7/7Aの基準(600MHz/1,000MHz対応やシールド)を満たしているという意味だ。

 もちろん、対応する周波数が高く、シールドも搭載されているため、ケーブルとしての品質は高い。だから価格も数倍ほど高く設定されているのだが、正直家庭向けとしては過剰な品質と言える。

左からカテゴリ6A、カテゴリ7、カテゴリ8のコネクタ。いずれもRJ-45となっている。真ん中のカテゴリ7は、正式な規格に対応したものではなく、ケーブル部分のみカテゴリ7対応でコネクタはRJ-45という特殊なケーブル

 なお、最大40Gbpsに対応するカテゴリ8に関しては、カテゴリ8.1で正式にRJ-45コネクタが採用されている。ただし、カテゴリ8.1/8.2は、想定される用途がデータセンターであり、対応する通信距離も30mと短い。

 10Gbpsの普及もまだ整っていない状況で、40Gbps対応のケーブルを購入するのは、さらに過剰と言えるだろう。

カテゴリが違っても速度はもちろん変わらない

 もちろん、規格で定められた条件(距離や速度)の範囲内であれば、カテゴリの違いによって、通信速度が変わることもない。

 以下は、カテゴリ6、カテゴリ6A、カテゴリ7、カテゴリ8対応として販売されているケーブルの速度を比較したものだ。10Gbps対応のネットワークアダプタを搭載したPCを直結してiperf3による速度を計測している。

 この結果を見ても、カテゴリ6のケーブルで問題ないことが分かるだろう。

SFP+はどう使えばいい?

 なお、近年PCやWi-Fi 7ルーターなどの一部の製品で、SFP+を採用した製品を見かけることがある。

 具体的には、PCではMINISFORUMのMS-01、Wi-Fi 7ルーターではTP-LinkのDeco BE85などがある。

TP-LinkのDeco BE85のLANポート。SFP+が利用可能となっている

 SFP+は、「Small Form-factor Pluggable transceiver Plus」の略で、信号を送受信するための小型モジュールとなる。通常のネットワーク機器では基板上に配置されている送受信用のチップが、SFP+では基板から独立した小型モジュール側に搭載されており、用途によってさまざまな種類のモジュールを脱着して利用できる仕組みとなっている。

 基本的には、データセンターなどのネットワーク機器向けで、光ファイバーを使った通信用に電気信号と光信号を変換する役割を担っている。

 もちろん、家庭での利用となると、光ファイバーを使うのは一般的ではないので、通常のLANケーブルを接続可能にするか、ダイレクトアタッチケーブル(DAC)と呼ばれるモジュールとケーブルが装着済みのケーブルを利用することになる。

DACを利用する方法
RJ-45モジュールを利用する方法

 汎用性を考えると、一般的なRJ-45コネクタを接続できるのが好ましいが、RJ-45用のモジュールは価格が高い。製品にもよるが、10Gbps対応の製品では8,000円~10,000円前後の実売価格となる。

 また、RJ-45用のSFP+モジュールは発熱が高いことで有名(製品パッケージにも注意書きがあるほど)で、実稼働させると触れないほど熱くなる。実用には何らかの熱対策が必要だろう。

RJ-45モジュール。パッケージに記載された「CAUTION Hot in operation」の文字に注目

 スイッチ同士の接続など、機器同士の距離が近ければ(5m前後まで)、価格が安いDACを使うのがおすすめだ。DACであれば2,000円~3,000円前後で購入できる上、発熱も気にならない。

DACが安くてお手軽

カテゴリ6は品薄。今は「迷ったら“カテゴリ6A”」

 以上、2.5/5/10Gbps時代のLANケーブルの選び方を紹介した。今後10Gbpsが当たり前の時代になったとしても、カテゴリ6以上であれば対応できるので、規格上はカテゴリ6を購入しておくのがおすすめと言える。ただし、実際に購入するとなると話は別になる。

 本稿執筆のために実際に店頭で商品ラインナップをチェックしてみたのだが、店頭では必ずしもカテゴリ6のラインナップが豊富とは言えない状況となっている。販売されているケーブルは、カテゴリ6A(UTPが主流)、カテゴリ7(RJ-45の相当品)、カテゴリ8(8.1)となっており、店舗によっては、すでにカテゴリ6が入手できないこともある。

 オンラインショップであれば、カテゴリ6のケーブルを購入することも可能だが、品数はさほど多くない。

 オンラインもおすすめに表示されやすいのはカテゴリ8だ。海外製品であれば価格はさほど高くないが、製品によっては安く見えるのは1mの長さの製品で、3m以上のケーブルはそれなりに価格が上がっていく場合もある。欲しい長さで、しっかり価格を比較して購入することが重要だ。

  つまり、2024年9月時点で購入するのであれば、店頭、オンラインともに「カテゴリ6A」が最有力候補となる。UTPかSTPかを見極めて買う必要があるが、店頭のカテゴリ6Aケーブル、しかも価格が安いケーブルはUTP仕様が一般的なので、家庭での利用ではこれで十分と言える。「迷ったらカテゴリ6A」と覚えておくといいだろう。