特集

Windows標準の「付箋」、便利に使ってますか?

OS標準機能の「付箋」。一覧からもサムネイルで内容確認できるので便利に使える

 PCを使っていて、ちょっとしたメモを取りたい時、どんなアプリを使っているだろうか? 筆者はこれまで古来より使われてきたWindowsの伝統アプリ「メモ帳」を使っていた。理由はシンプルで、簡単に起動できるからだ。長年使用していることもあり、アプリ起動も「Win」キー+「R」キーの「ファイル名を指定して実行」から実行ファイル名「notepad」を叩くことで簡単に起動できるのもありがたい。シンプルな仕組みで余計な機能はなく、すぐに起動して動作は軽快、保存が必要な物はテキストで保存できるなど、利便性はかなり高い。

 また、スマートフォンなどWindows以外の環境でメモを取って、その内容を後からWindows上で使いたいような用途の場合、LINEアプリを使ってスマートフォン上でテキストを入力、メインのWindows上で動作しているLINEアプリから内容をコピーするという使い方をしていた。

 ただ、メモ帳は最近の機能アップデートで自動保存に対応したりして、機能強化はされているものの、複数のデバイスをまたぐ使い方はできない。また、LINEのメモは便利だが、テキストを書き出す際に時間や名前などの余計な情報が付随するため、手動での加工が必要だった。

 何か便利なアプリはないものかと調べていたところ、Windows 11標準の「付箋」機能がかなりイケてたので、こちらについて紹介していきたい。Windows 7の頃に新たに標準アプリの1つとして搭載されていた機能で、Windows 11でもかなり便利に使うことができる機能の1つとなっている。

実は最近になってタブ機能などが追加されるなどアップデートされた「メモ帳」機能
LINEに書いたメモをコピペでテキストエディタに張り付けると、時間やアカウント情報もセットでコピーされるため、不要な情報を手動で削除する必要があり、利便性が悪い

シンプルなメモ機能だが、自動同期が便利!

 実行ファイル名についてはちょっと分からなかったが、Windowsのスタートメニューから、アプリ一覧を開くと、「ふ」の場所に「付箋」というアプリが確認できればそれを起動すればOKだ。ここにない場合はアルファベットの「S」の場所に「Sticky Notes」として登録されている場合もあるようだ。どちらにもない場合は、少々手間だが「Microsoft Store」からインストールする必要がある。

 付箋の初回起動時は使用アカウントの確認や、準備処理が行なわれる。つまり付箋はMicrosoftアカウントで紐づけされるため、Microsoftアカウントは必須となる(とはいえWindows 11ではほぼ強要されているので問題はないとは思うが)。起動すると付箋の一覧ウィンドウと付箋の編集ウィンドウが表示される。

付箋はスタートメニューの「すべてのアプリ」から起動できる。1度起動した後は、タスクバーにピン留めしておけばいつでも簡単に起動できるのでおススメだ。ピン留め後は右クリックメニューから新たなメモを作成したり、一覧を表示できる

 新しく付箋を作りたい場合は、一覧画面の「メモを作成する」をクリックするか、一覧画面左上の「+」ボタンをクリックするだけで簡単に新たな付箋の編集ウィンドウが登場する。既に空の編集ウィンドウが開いている場合は、そこにテキストを入力するだけでもOKだ。

 付箋の特徴は、意図的な保存機能は特になく、書いた瞬間から自動で同期が行なわれ、オンライン上への保存も行なわれること。異なる付箋を編集したい場合は、一覧画面の付箋をダブルクリックすることで編集ウィンドウが開き、操作可能な状態になる。付箋編集画面を閉じることで編集が完了となる。閉じずに放っておくと次々と新しい編集ウィンドウが表示される作りのため、編集が一区切りしたメモは閉じておくのがいいだろう。

付箋を起動すると、一覧画面と編集ウィンドウが表示される。編集ウィンドウは一覧のメモをダブルクリックで展開する
右クリックメニューで開いたり削除も行なえる。削除後は復元できないので注意が必要だ

 編集ウィンドウにテキストを入力していくと、一覧内に表示されたメモにも同時に文字が入力されていくのが分かる。ローカル作業時の動作はかなり軽快で、テキスト入力の取りこぼしなどもなく、快適にメモが入力できる。メモを保存する必要がなく、入力した瞬間からほぼリアルタイムで自動保存されるため、長文を打っていたらアプリが原因で内容が吹っ飛んだ……といった悲劇から解放されるのはありがたい。

 当然、同じMicrosoftアカウントを使用しているほかのPCとも内容が同期される。しかもこの同期がほぼリアルタイムで行なわれるため、複数のPCを使っているユーザーは、付箋1つでテキストなどのメモが簡単に同時利用できるのだ。試しにローカルエリア内の別のPCの付箋画面を見ながら、別のPC上でテキストを入力してみたが、“ちょっともっさりした環境でテキストを入力している”くらいの頻度でこまめに同期が行なわれていたことが確認できた。

 一方、付箋の編集画面は、数多くあるテキストエディタやWindows標準のメモ帳と比較するとやや物足りなく感じるだろう。文字数のカウントや行数表示などは特になく、装飾機能もB(太字)、I(斜体)、U(下線)、取り消し線、行頭文字の表示/非表示、さらには画像の追加も行なえるが、アプリ上でのフォントサイズの変更は行なえない。フォントサイズなどはシステム設定のフォントサイズの変更などから行なう形となる。

 この辺りはメモと割り切って使う分には必要十分な機能と言えるだろう。個人的には文字数のカウントやアプリ上での文字フォントの設定くらいはあるとありがたいと感じた。不要なメモは一覧画面から右クリックすることで簡単に削除も行なえる。

テキストの装飾は必要最小限のみで、フォントサイズの変更などはシステム側での変更が必要となる

手書きも画像も同期できる! Outlookの同期も可能

 テキストばかり対応と思われがちな付箋だが、実はペンに対応したデバイスでは、手書き入力にも対応している。ペン入力に対応したタブレットではさらに便利に使えると思うので、ぜひ試してみてほしい。

付箋にペン入力しているところ

 また、画像の追加についてはコピーペーストでも追加できるので、とっさのスクリーンショットを貼るような用途には便利そうだ。貼り付けた画像も含めて同期されるので、作業用PCで保存したスクリーンショットを、同じネットワークにはいないメインのPCで使用するといった用途などにも活用できる。当然、どちらも同じMicrosoftアカウントを利用しており、インターネットに接続していることが条件だ。

 画像貼り付けについては、サイズの変更は行なえず、付箋サイズを変更した際に自動で調整されるのみとなる。また、レイアウトは最上段固定になってしまうほか、複数の画像を追加した場合、順番に均等に並べるしかできないなどかなり制限があり、メモの一環として写真などのファイルをとりあえず共有するために添付するような使い方になりそうだ。

画像を追加することもできる。追加した画像は常に画面上部にのみ表示され、サイズなどの調整は全て自動調整となる
編集ウィンドウ上では、右クリックで画像を拡大表示したり、ローカルに保存することも可能だ

 ちなみに、付箋の設定項目は「インサイトを有効にする」と「削除する前に確認する」の2つのみ。「インサイトを有効にする」ことで、Microsoft Cortanaと連携し、付箋の内容をCortanaが自動で読み取り、予定を自動的にリマインダーに登録するなどの便利機能が利用できるとのことだが、日本語版は対応していないようだ。とはいえ今はCopilotに移行している段階なので、今後のアップデートに期待したい。

 そのほか、付箋の色設定と「今すぐ同期」ボタン、バージョン情報には「メモのエクスポート」の項目があるが、これは同社のメール、スケジュールなどの統合ソフト「Outlook」と付箋が同期することを説明するページのようなものとなっている。

 実際にWebアプリのOutlookを開き、ツリーの「メモ」の項目をチェックすると、付箋で作成したメモがすべて同期されているのが確認できた。また、付箋から新たにメモを作成してテキストを書き込むと、ほかのPCと同様、ほぼリアルタイムで内容が同期されており、機能面はPC版の付箋と遜色はなさそうだ。

 現状だと付箋上のメモをそれぞれ開いてコピー&ペーストするくらいしかテキストに書き出す機能がないため、この辺りはやや不便。個人的にはメモの内容をそれぞれファイル単位で出力するエクスポートの機能があればさらに便利に使えると感じた。

設定項目はほとんどなく、シンプルな内容となっている
Webアプリ版Outlookとも正常に同期し、メモが確認できた

スマートフォンは「OneNote」アプリで同期可能

 付箋はスマートフォンからでも利用が可能だ。スマートフォンで利用する場合は、同社が提供する「OneNote」アプリをインストールして起動、付箋で使用しているMicrosoftアカウントでログインすることで、アプリのホーム画面に付箋で作成したメモの内容を確認したり、を編集することができる。

 新たな付箋を追加する方法は、iPhone用アプリの場合は、新規追加の「+」ボタンを長押しすることで、OneNoteのメモ以外に付箋の追加などが選択できる。またAndroid用アプリでは、右下のメニュー(…)ボタンから「付箋を作成する」を選べばOKだ。もちろん、これらスマートフォン上でもPC版と同様に作成した付箋メモは同期されるほか、画像も追加できる。

iPhone版OneNoteのホーム画面に付箋が表示されるようになる。この場合、OneNoteのメモも一緒に一覧表示される
iPhone版OneNoteのホーム画面に付箋が表示されるようになる。この場合、OneNoteのメモも一緒に一覧表示されるため、付箋のみソートして表示するといった使い方も可能だ
新規追加は右下の「+」ボタン長押しでメニューが表示される
Android版アプリのホーム画面もiPhone版と同じようなレイアウトだ
新規追加は右下の「…」アイコンから「付箋を作成する」を選べばOK
スマートフォン用の編集画面。画像が上部に表示されるレイアウトは変わらない

 個人的には、スマートフォンのアプリにも付箋専用のアプリを用意してほしかったところだ。OneNoteアプリで従来のOneNoteと付箋のメモを同時に扱う仕組みも悪くはないが、同時に異なるリソースのデータを取り扱うことで、正常に付箋が読み込まれないなど、動作が不安定になる場合があったからだ。今後改善してほしいポイントである。

 また、非常に使い勝手の良い付箋だが、同期機能の優秀さが、ある意味弱点にもなりうる。いわゆるバックアップ機能がなく、編集したものが即時に反映されるため、ミスがあった時の巻き戻しの機能が編集操作しているPCのアンドゥ(元に戻す)しかないからだ。また削除後のメモはどうやっても復活できない点にも注意が必要だ。

 ちなみに付箋の情報は、特殊なファイルで保存されており、保存場所は「C:Users(Microsoftアカウントのユーザー名)AppDataLocalPackagesMicrosoft.MicrosoftStickyNotes_8wekyb3d8bbweLocalState」で、このフォルダ単位で保存しておくことでバックアップを取ったり復元することは可能だ。また、付箋に張り付けた画像は同フォルダ内の「media」に保存されている。

デバイスを数多く使いこなすユーザーにこそ使ってほしい付箋

 筆者の環境では、複数のPCで起動して使って試していると、一部環境でのみ画像が読み込めないエラーが発生する場合があった。原因については不明で、手動での再同期などを試みたり、アプリやOS再起動などを行なっても結果は変わらず。また、優秀なはずの同期が手動同期しないとほかのPCと同期できなくなる事象が発生する場合もあった。

なぜか一部画像が表示されない不思議な事象が1台のPCでのみ発生していた
すべて、ではなく一部なので、原因がよく分からなかった

 若干の不安定な要素はあるものの、付箋は、オーソドックスな個人のメモ共有や、異なるネットワーク間でのメモ共有、さらには画像も共有できることから、スクリーンショットなどの共有でも役に立つだろう。また、筆者が以前はLINEで行なっていたようなスマートフォンとのテキストの共有も、付箋ならさらに利便性が高く利用できるだろう。次の取材からは早速この機能を使っていきたい。

 ここまで同期が便利に使えるなら、利用者全員が使える伝言板のような用途に利用したいぐらいだ。将来的な機能アップデートにも期待したいアプリの1つである。