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キーボードを徹底的に綺麗にする方法をまとめてみた

 知らず知らずのうちに、汚れが溜まっていくのがキーボードだ。見た目はそれほど汚れていなくても、内部に入り込んだゴミや髪の毛などが原因、ある日突然、キーが言うことを聞かなくなることもしばしばだ。

 またこれに加えて、白いキーボードでは、ABS樹脂が黄色く変色することにより、見た目が汚らしくなることも多い。化学変化が原因ゆえ、拭いたところで元通りに白くなるわけではなく、漂白剤を使った根本的な対策が必要となる。

 今回は、こうしたPC用のキーボードにつきものの掃除方法をまとめて紹介する。

満足感は絶大、黄変したキーボードの「漂白」

 まずは黄ばんだキーボードの漂白から紹介しよう。漂白剤を使うことで、黄ばんだ樹脂の白さを取り戻せることは、初代のファミリーコンピュータ(ファミコン)を例にネットで紹介されることがよくあるので、知識としては知っている人は多いのではないだろうか。

 ファミコンの筐体はABS樹脂であり、これと同じ素材を使っていれば、キーボードに限らず同じ方法で漂白が行なえる。キーボードの素材としてはほかにPBT樹脂などもあるが、こちらは黄変は起きないので、手持ちの白いキーボードが黄ばんできた場合は、ABS樹脂だと考えてまず間違いない。なおタバコのヤニによる黄ばみはまったく別なので、混同しないようにしたい。

漂白前。キーボード本体の部分が黄色く変色している。キー自体はそれほどではない
キーボード本体のみを漂白した状態。キーよりも白くなったことで、逆にキーの黄ばみが目立つようになった

 漂白作業のポイントとなるのは、漂白剤につけた状態で、紫外線(=直射日光)に当てること。漂白剤につけただけで室内に置いたままにしていても効果はほぼないし、何もつけずに直射日光下に放置していても意味がない。両方が揃うことで初めて黄変が解消され、もとの真っ白な状態へと復元される。

 直射日光に当てる期間は、2~3日で十分な効果が得られる場合もあるが、曇の日があることを見越し、1~2週間ほど放置できると確実。自宅にサンルームなどがあれば活用したいところだが、UVカット効果のあるガラスだと漂白が進みにくいので要注意。ベランダなど屋外での天日干しならば確実だが、こちらは水分の蒸発に気を使わなくてはならず、一長一短だ。

 用いる漂白剤は、成分に「過酸化水素」、「漂白活性化剤」の両方を含んでいる必要がある。過酸化水素水だけでも効果はあるが、ABS樹脂が傷んでしまうので、漂白活性化剤を含んでいるのがベターだ。ネットではなぜか後者を含まない「ワイドハイター EXパワー」が定番とされているが、漂白活性化剤を含む「ワイドハイター PRO」のほうが望ましい。筆者が試した限り、こちらのほうが漂白効果も明らかに高い。

「ワイドハイター PRO」。写真はつめかえ用。ボトルタイプの本体は市価400円前後
成分に「過酸化水素」「漂白活性化剤」の両方を含んでいればOKだ
ネットで定番として知られる「ワイドハイター EXパワー」は漂白活性化剤を含んでおらずいまいちだ

 手順としては、まずキーボードを分解し、必要なパーツ、具体的にはキーボードの筐体もしくはキーキャップを、基板部から取り外す。続いて容器に水を張って漂白剤を投入し、そこにパーツを入れる。浮き上がってくる場合は透明なコップなどを上から載せ、沈めてやるとよい。キーキャップは向きが揃えにくく難儀するが、雑に放り込んでおいて、定期的にかき混ぜるだけでも一定の効果はある。

 ちなみにキーキャップではなくキーボードの筐体の漂白を行なう場合、それをつけておくための容器も相応のサイズが必要になるが、個人的にオススメなのが、プラスチックの衣類ケースの引き出しだ。これならばキーボードを収めるにも十分なサイズがあり、自宅内に最初からあるようならば、新たに購入するコストもかからない。

まずはキーボードを分解。このあたりはキーボードの構造によっても異なるので自己責任で
分解完了。今回の対象であるキーボードはキーキャップがボディにはめ込まれているタイプ
キーキャップごと漬け置きしてもよさそうだが、今回は対象外なので取り外す
キーキャップは汚れ除去のため中性洗剤でつけ置き洗いに。筐体(下)のみ漂白する
今回はもう1つ、RealForceの旧モデルについても漂白を行なう。こちらはキーキャップが基板に取り付けられており、はめ込み式の上部カバーのみ簡単に外せる
プラスチックの衣類ケースの引き出しならば、フルキーボードサイズでも余裕で漬けておける
容器に水を張り、漂白剤を投入する。長期にわたって漬けるので、お湯である必要はない
パーツを漬ける。言うまでもないが紫外線を当てる側を上にする
浮いてくるようであれば透明の皿やコップを乗せるとよい
作業中の様子。ちなみに三脚はタイムラプス動画を撮ろうと試みて失敗した名残だ

 今回実験した結果は以下の通りだが、約1週間の漬け置きで、十分と言っていい白さを取り戻すことができた。ちなみに目に見える変化が起こり始めるまでは1~2日とすぐだが、そこから変化が感じられなくなるまでの数日間は、そのまま放置しておくのが望ましい。今回は行なっていないが、直射日光に対する向きを変えるのも効果的だろう。

 分解および組み立て時に壊すリスク、キーボードに貼られたシール類が剥がれるリスク、キートップの文字が剥げるリスクなどは自己責任だが(そもそも漂白剤の使い方からして本来の目的とは異なっている)、漂白によって得られる心理的な満足度は非常に高いので、機会があればチャレンジしてみることをおすすめする。

実験結果。上がbefore、下がafter。黄変が解消されていることが分かる
こちらはRealForce。手前および右側に発生していた黄変がほぼ完全になくなった
アップにするとその違いが一目瞭然。左がbefore、右がafter

キーボードに入り込む異物、種類ごとの攻略法は

 続いてキーボードに入り込む異物の除去方法について見ていこう。キーボードの隙間に入り込む異物は大きく2つに分類され、それぞれ攻略法が異なる。

 まずは消しゴムのカスや、キーボードの上で食べていたお菓子のかけらなどの粉や粒子類。これらは掃除機などで吸い取ることによって除去できる。キーを取り外しての作業がベターだが、キーボードをひっくり返したり、傾けたりと工夫をすれば、キーを付けたままでも一定の効果は得られる。

 掃除機については、家庭用の掃除機がそのまま使える。キーボードの掃除用と謳われた市販の専用品も存在するが、吸引力はあればあるほどよいので、家庭用の掃除機があればそちらを試してみたい。

 もっとも、吸引力が強すぎて、キーごと吸い取られるリスクはあるので、先端にノズルなどのアタッチメントを取り付けるなどの工夫は必要だ。掃除機に付属しているもので構わないが、キーボードは手指が触れるだけに、衛生面を考慮して、キーボード掃除のために別途調達したほうがよいだろう。

 ちなみに避けたほうが良いのは「吸う」ではなく「吹く」だ。PC掃除につきもののエアーダスターは、表面のホコリを吹き飛ばすには重宝するが、ことキーボードの場合、ゴミがキーボードの内部を移動するだけで、まったく役に立たない。まず吹き飛ばし、次に吸うという使い方ならまだありだが、キーの隙間に押し込められて取れなくなってしまうリスクも考慮すべきだろう。

キーの隙間に入り込んだゴミを取り除くのは掃除機を使うのが手っ取り早い
ただしそのままだとキーを吸い込んでしまいかねないので、口径が絞られたアタッチメントを先端につけての作業がベターだ
ホコリを吹き飛ばすのに便利なエアーダスターだが、キーボード掃除ではあまり役に立たない

 異物のもう1つの例として挙げられるのは髪の毛だ。キーの内部でこれらが絡まることによって、打鍵にあたって支障をきたすことになる。

 こちらの除去は前述の粉や粒子類より厄介で、内部でキーに絡みついたり、隙間にひっかかることから、掃除機による吸引では完全な除去は難しい。見えなくなったので除去できたと安心していると、内部にビッシリと残っていることもある。キーボードの種類にもよるが、キーを取り外した上で、綿棒やピンセットなどを使いつつ、慎重に除去していくのがベターだ。

 ちなみにこうしたキーボードの隙間に入り込んだ異物を取り除くためのスライム状のジェルも存在するが、近年は低品質の製品が多く出回っており、ゴミをくっつけて取るはずがジェル自体が奥に入り込んだまま取れなくなる危険もある。特に気温が高い夏場はジェル自体が分離しやすく、こうしたトラブルが起こりやすい。

 ほかにもキー表面にベタつきが残ってしまったり、香料がいつまでも取れなかったりと、筆者はここ10年ほど、ジェルタイプで合格点を出せる製品に出会ったことがない。うまく使えばキーキャップを取り外さずに浅いところにある髪の毛を除去できるほか、キーが取り外せないアイソレーションタイプのキーボードには有効なのだが、品質の低さゆえいまいちおすすめしにくいのが正直なところだ。

やや強引に分解したパンタグラフ式のキーボード。髪の毛やホコリが大量に付着している
これらは掃除機で吸い取るのでもよいが、隙間に入り込んでいて除去できない場合もあるので、綿棒などでこまめに収集するのも1つの手だ
除去完了。キーボードの構造によってはこうした方法も有効だ
ジェルタイプのクリーナー。残念ながら昨今の製品は品質があまり高くない
キーボードの上から押し当てることで隙間に入り込んだゴミをくっつけて取り除く
キーの隙間に入り込んでホコリをびっしりと取り除いてくれることもしばしばだが、ベタつきや匂いが残ることもあるので要注意

 なお話がやや前後するが、これらはキーボードが採用する構造や種類によっても大きく異なる。キーがそれぞれ独立したアイソレーションタイプのキーボードでは、キーの隙間に異物が入り込むこと自体はほぼないし、ノートPCのように本体と一体化していると、分解によって保証が受けられなくなるリスクもある。

 また前述の例では、パンタグラフ式キーボードのキーキャップを強引に取り外しているが、慣れていないと破損のリスクも高い(筆者も過去に幾度となくパンタグラフを構成するパーツを壊した経験がある)。一方で前述のRealForceのように、キートップ引き抜き工具などを使って、容易にキーを抜き取れる場合もある。

 手持ちのキーボードがどの方式か、また掃除するにもどこまで徹底して行なうかによって、やり方はおのずと変わってくる。掃除機による吸引、あるいはジェルクリーナーを用いて除去できる範囲にとどめておくケースもあれば、ネジを外して徹底清掃するケースなど、ケースバイケースの判断は必要と言えそうだ。

パンタグラフ式キーの構造と、キートップが外れた場合の直し方をまとめたレノボのサイト。サポート事例が多いことを伺わせる
キーキャップが取り外せるようであれば、中性洗剤でのつけ置き洗いも、汚れの除去には有効だ