特集
「ゴールデンウィークはPCゲームを満喫!」【後編】
~シンプルながら奥が深い!? インディーズタイトルをGW中に攻略
2018年5月1日 11:00
Windows以前のPC、具体的にいうと筆者はMSXを使っていたが、その頃は、市販ソフトもおもしろかったが、それ以上に魅力的だったのは雑誌に掲載されたソースコードを自分で打ち込んで遊べる読者投稿ソフトが遊べたことだ。市販ソフトではありえないようなアイディアがそこに眠っていて驚かされたり、逆にちょっと出来が粗かったりもしたが、自分で打ち込んだということで、愛着も沸き、色んなソフトを打ち込んで遊んでいたものだ。
2000年になってPCのOSがWindows中心になってしばらくの間は、フリーソフトのゲームで遊ぶということがかなり減ってきた。開発環境が高額になることでハードルが上がってしまったり、ゲーム機の性能が向上し、PCでゲームを遊ぶことの意義が薄れていたのかもしれないし、そもそも入手経路がインターネットとなったことで、積極的に個人開発のゲームを自分から進んで追わなくなっていた。
ところが、ここ数年、開発環境の低価格化、スマートフォン向けゲームの開発といった事情に加えて、PCゲームのプラットフォームとして「Steam」が台頭するなど、カジュアルにPCでゲームを遊ぶ環境が構築され、ユーザーが増えたこともあってか、個人、または個人事業主のような小規模な会社が開発する、インディーズタイトルを目にする機会が非常に増えてきた。
そこで、後編となる今回は、そんなインディーズタイトルのなかからおもしろそうなものをチョイスして紹介していきたい。
まるで昔のカートゥーンアニメのようなゲーム「Cuphead」
Cuphead
パブリッシャー:StudioMDHR Entertainment Inc.ジャンル:アクション
価格:1,980円(Steam)
Steamでの購入ページ:https://store.steampowered.com/app/268910/Cuphead/
デモの動画で見たときに、これ、単に昔のアニメっぽい映像を作っただけでしょ? え、違うの? これがゲームの動きなの? と我が目を疑ったタイトルが「Cuphead」だ。なにしろ1960年代のアメリカのアニメ(カートゥーン)のようなビジュアルだったからだ。いつか購入したらプレイしてみようと思っていたので、今回、Steamにて購入してみた。
オープニングを経て、キャラクターが動くようになって驚いた。自身のコントローラ操作がまさに昔のカートゥーンそのままの挙動で動き出すのである。今までもリアルなタイトルではこういう衝撃を受けることがあったが、それと同じ種類の衝撃だ。
それと同時に難易度の高さにも驚いた。キャラクターには体力が設定されており、3回敵と接触するまではプレイが続けられるが、ちょっとの油断であっという間に敵に当たって死んでしまう。敵の数が多すぎる上に画面内の行動エリアがかなり狭いため、接触率が非常に高くなってしまうのだ。
難易度の高さは好みもあるが、この動きを見るために買っても惜しくないので、ぜひ買って自身の目で試してみてほしい。
いや本当に勘弁してください、と言いたくなるけど、つい紹介してしまう「Getting Over It」
Getting Over It
パブリッシャー:Bennett Foddyジャンル:アクション
価格:820円
Steamでの購入ページ:https://store.steampowered.com/app/240720/Getting_Over_It_with_Bennett_Foddy/
ゲームのレビュー記事を書くために何本もソフトをプレイしているが、ここまで思いどおりにプレイできずに原稿を書く羽目になり、泣きそうな思いで記事を書いたのが「Getting Over It」だ。筆者の魂の叫びはこちら(「Getting Over It」レビュー)からご覧いただきたい。
なにより開発者側がプレーヤーをイライラさせるために、ありとあらゆる苦労を惜しまずに絶妙の調整をしていることがはっきりわかる、いわば「意図した悪意」を感じることができる作りになっている。
一見すると難しさは一切感じないのも恐ろしい。操作はいたってシンプルでマウスを回転、突き出し操作のみで、画面内にいる下半身が壺にすっぽりハマった、ハンマーを持った半裸の男を動かす。たったそれだけのことが実際に自分でやると驚くほどなにも想定どおりに動かない。筆者は昔のファミコンソフト以来の苦痛をここで味わうことになった。
そしてなにより恐ろしいのは、YouTubeなどで本作のプレイを配信している動画を見ていると、配信者がイライラしているのはよくわかるのだが、イライラする理由がまったく視聴者側には見えてこないのだ。なにしろ画面がシンプルで、操作もシンプル、キャラの挙動もシンプルなため、見てるだけだと簡単そうに見えてしまう。そこに罠があるのだ。
さらには操作に失敗して地面に落ちたときなどは、落ちた瞬間に含みのある格言を読み上げたり、昔の音楽が流れたりする。タイミングがあまりによすぎるため、こちらが一番イラっとするタイミングをきっちり考えて調整しているとしか思えない。また、オートセーブであることを高らかに謳っているのも腹が立つ。本作は勝手に進行状況がセーブされるため、途中でセーブして何度もトライして難所をクリアする、というプレイスタイルが一切通用しないのだ。
それでもこうして本作を紹介するのは、このあまりに個性的すぎる点については評価したいと思うこと、そして筆者も何度かに1度プレイがうまくいったときにこの上なく気持ちいい至福のときが味わえたことを考えると、この難しすぎる操作に万が一慣れて、自在に操作できるようになったとき、そこにはきっと今までと違う自分に出会える気がする。
大袈裟というかもしれないが、そのくらい難しいのである。興味本位で手を出せば5分で投げ出すと思うが、そんな難題にチャレンジして突破したいという人にはぜひおススメしたい。ただし、思わず奇声を発する危険性があるので、周囲への配慮もしっかりしておくことをおススメする。
宇宙を旅する冒険者の気分が堪能できる「No Man's Sky」
No Man's Sky
パブリッシャー:Hello Gamesジャンル:アクション
価格:6,080円
Steamでの購入ページ:https://store.steampowered.com/app/275850/No_Mans_Sky/
宇宙旅行をほんわか楽しむ、そんなテイストが味わえるのんびりした雰囲気のタイトルが「No Man's Sky」だ。スタート地点は宇宙船が故障し、不時着してしまったなにも知らない謎の星。そこで宇宙船を修理するための素材を集めて、修理を終えて謎の星から脱出するのが本作の最初の目的だ。
修理を終えて宇宙に飛び立てるようになると、今度は宇宙に自動生成される色んな星を巡ったり、異星人と交流したりと、まさに宇宙を気楽に旅して楽しむことができるようになっていくため、のんびり宇宙旅行を楽しみたいなら正にドンピシャな1本となっている。
発売当初は後半が単調になりやすいという批判もあったようだが、現在は物語が楽しめるシングルプレイミッションが追加になっていることで、ちょっと変わったSFのストーリーが楽しめるという要素もある。筆者は今回初めて軽くプレイしてみたが、まだほかの宇宙人には出会えていないので、未知との遭遇を楽しみに、続けていきたい1本だ。
不思議な世界観のRPGが日本語に対応!「Undertale」
Undertale
パブリッシャー:tobyfoxジャンル:RPG
価格:980円
Steamでの購入ページ:https://store.steampowered.com/app/391540/Undertale/
インディーズタイトルとして、リリース直後から話題だったRPGが「Undertale」だ。現在は日本語化されているので、従来英語でしか表示されなかったメッセージ類が日本語で読めるのでストーリーをより深く味わえる。
本作の最大の特徴は1980年代のゲームのような粗いドットのキャラデザインだろう。そのストーリーも、単なるシンプルなファンタジーではなく、リアリティは感じない夢のような世界観のなかでの冒険といった趣となっており、ふわふわした感覚でプレイできる。
戦闘シーンもあるが、シンプルなコマンド選択式のものだが、選択次第では敵をいっさい倒さず進めることもできる。戦闘になると、シューティングの弾避けの要素のミニゲームで戦闘が進められていくことになる。
格安のインディーズJRPGタイトル4本セットを発見!「Playism JRPG Bundle」
Playism JRPG Bundle
パブリッシャー:AGM PLAYISMジャンル:RPG
価格:1,389円
Steamでの購入ページ:https://store.steampowered.com/bundle/2504/Playism_JRPG_Bundle/
本製品は4本のRPGが入ったバンドル製品だ。なおSteam上で検索してもヒットせず、URLから直接飛ばないと購入できなかったのでセットでの購入を検討している人は注意してほしい。なお、単体で購入する場合はそれぞれのタイトルを検索すればヒットするので問題ない。
・1本目:『One Way Heroics』(片道勇者)
タイトル画面は割と普通の日本のRPGっぽいところからスタートしたのだが、いざゲームが開始すると動くごとに画面が横にスクロールする。本作は横スクロールの要素を加えたローグライクとのことなので、本来はあまりきびきびと動かずに周囲の状況などを見ながら慎重に進めるべきだったが、1歩進むたびにフィールド全体が左にズレる感覚はこちらの動きをついつい焦らせる効果を持つようで、つい慌てて進めてしまったらあっさり死んでしまった。
ローグライクながら、クラス解放や装備の持越しなどのRPGっぽい要素もあるようなので、じっくり腰を据えて遊んでみたい。
・2本目:『LiEat』
見た目がとにかく華やかでかわいい。動きがスムーズすぎて逆にコントロールしにくい面もあるが、アドベンチャー要素が強めで、話を聞いて進めていくのが主流のRPGだ。一応戦闘シーンもあるが、サクサク進められる上に軽くプレイした感触だとイベントの敵しか発生しなかった。
しかもそこで出てきた敵はタイトルのとおり「嘘」だ。NPCとの会話のなかで嘘をつくと、その嘘が具現化し、魔物となって襲ってくる。つまり今後も、会話のなかで嘘が出るたびに敵が出現するという展開になるのだろう。
登場キャラクターもかわいらしく、個性的なので、のんびり進めてストーリーを楽しんでみたい。
・3本目:『Artifact Adventure』
これはもうどうみても完全にドラクエライク。昔から根強い人気のファミコン版ドラゴンクエストを模した形の見た目からして懐かしいRPGとなっている。軽く遊んだ感じでは、もうシンプルにドラクエ的なシステムを使ったRPGなので、この手のコマンド式RPGが好きな人はそれだけで購入動機になりそうだ。
ちなみにレトロなビジュアルだが、フリーシナリオRPGとのことで、多数の分岐があり、ストーリーがその都度変わる、とのことなので、何度かプレイして選択肢を変えて楽しんでみるのもおもしろそうだ。
・4本目:『Helen's Mysterious Castle』(ふしぎの城のヘレン)
第1印象は主人公のキャラクターがかわいい、だった。実際に遊んでみると、ドット絵デザインのシンプルなRPGという印象だ。
まずはなにも考えずにいきなり村を飛び出して進めてみたら、敵がいたので戦闘しようと接触したが無視された。なぜかと思い、村に戻って宝箱を漁ると、そこにはロングボウが。それを回収して再度敵に接触したらようやく戦闘が開始になった。武器を持たずに敵と接触しても戦闘が発生しないということかと、その細かい気配りに感心させられた。
戦闘シーンは、タイムカウント制バトルを採用し、攻撃後は一定時間、再度攻撃ができない。本作はボリュームが少なめとのことなので、空いた時間に一気に集中してプレイしてみたい。
王女の治療物語「Princess Remedy in a World of Hurt」
Princess Remedy in a World of Hurt
パブリッシャー:Ludosityジャンル:アクション
価格:無料(2は298円)
Steamでの購入ページ:https://store.steampowered.com/app/407900/Princess_Remedy_in_a_World_of_Hurt/
こちらもかなり粗いドットデザインが特徴のシンプルなRPG。テキストが英語だったため、ざっくりとしたストーリーしかわからないが、主人公の王女、Remedyが病で悩む町の人たちの元にいき、病を治すことで、人々からの愛を獲得するアクションRPGだ。
ゲームとしてはシンプルで、街に行って病に苦しむ人に声をかけるだけ。会話が終わると、画面が切り替わってバトル開始。戦闘シーンはアクションバトルで、Remedyが自動発射で弾を撃ち続けるので、これを病原菌(?)に当てつつこちらは敵の攻撃を喰らわないようにかわして、敵を全滅すればクリアとなり、病で苦しむ人が回復する。これを繰り返すことでハートが貯まり、一定量以上たまると、道を塞いでいた障害物が破壊できるようになり、先に進めることが可能となる。
病原菌というと小さくなってウイルスと戦うような系統のアニメや漫画を思い浮かべるが、個人的に気になっているのは、Remedy王女が王宮から出発するときのカットシーン。これは見るとわかるが明らかに上から落下してくるのである。どうみても天界から下界に降りるシーンにしか見えない……はっ!?つまり本作のRemedyは王女は王女でも天の王女なのかもしれない。天の王女だとすると相手は普通の病原菌ではなく、むしろ現代人の心の病が敵で、それを倒して愛を獲得する、そんな裏テーマもあるのかもなぁ、などと勝手に妄想してみた。
なお難易度についても序盤はあっけなさすぎるほど簡単で、リズムよく楽しめるので、無料の1作目を遊んでみて、もし気に入ったら2作目を購入するのがいいだろう。粗すぎるドットが逆にいい味になっているので、こういうのが好きな人には無条件でおススメだ。
目指すは人類滅亡! ウイルスを進化させて感染拡大を狙う「Plague Inc: Evolved」
Plague Inc: Evolved
パブリッシャー:Ndemic Creationsジャンル:ストラテジー
価格:1,680円
Steamでの購入ページ:https://store.steampowered.com/app/246620/Plague_Inc_Evolved/
原則として、大手パブリッシャーは公序良俗に反する作品を嫌う傾向にあるように思う(それが売りのメーカーももちろん存在する)。そういった本来なら不謹慎と言われるような題材をテーマに、個人がゲームを作るという文化はかなり昔から存在していたが、今回紹介する「Plague Inc: Evolved」も正にその部類のタイトルだ。なにしろゲームの目的が伝染病の病原菌を効率よくばら撒いて、人類を滅亡させることなのだから、不謹慎なことこの上ない。
システム的にはシンプルで、プレーヤーは効率よく病原菌をばら撒ける地域を選んで菌を発生させたり、たまに画面に浮かぶバルーンアイコンをクリックしてポイントを貯めて、より凶悪な効果を発揮する病原菌へと進化させることくらいしかできないのだが、これが不思議とおもしろい。
とくに感染経路の見せ方がうまく、世界地図で分布状況を見せたり、都市ごとの詳細な情報が表示できたりするなど、妙な生々しさがある。さらに画面の作りも実際のこうした病原菌の研究室で使っているソフトっぽい雰囲気を演出しており、妙なリアル感を生み出している。そもそも本作はスマートフォンで売れたタイトルのPC移植作でもあるので、その演出がうまいのも頷ける。
言語もデフォルトは英語だが、オプション設定で日本語にも変更できるので、状況が理解しやすい。ちょっと不謹慎なタイトルが好きな人、感染拡大の映像とかが趣味の人にはこっそり買うことをおススメしたい。
実体験をゲーム化したドキュメンタリーゲーム「Path Out」
Path Out
パブリッシャー:Causa Creationsジャンル:RPG
価格:無料
Steamでの購入ページ:https://store.steampowered.com/app/725980/Path_Out/
映画や小説ではよく聞くドキュメンタリーという映画手法。少なくとも筆者はゲームでこれを実現した人を知らない。しかも今回紹介する「Path Out」は、実際のシリア内戦から避難してきたという作者が自身の体験を元に開発したRPGなのだ。
ゲームとしては現代を舞台にした見下ろし視点のRPGだ。ただそこで語られるセリフなどは、多少の演出はあるかもしれないが、原則として本人や周囲の友達、家族などが実際に体験したことがベースになっているのだという。
そんなドキュメンタリーゲームというだけでも衝撃だが、本作にはまさかの驚くべき独自の演出が盛り込まれている。それが驚異の作者コメント演出だ。ゲームプレイ中にとつぜん進行がストップし、画面左上にワイプが現われる。そしてリアルな作者の映像が表示され、しばらくの間、作者がその当時の状況を解説してくれるのである。最近はゲーム開発者が表に出る機会も増えてきたが、まさかゲーム内でこのような形で登場するとは想像もしていなかった。
本作はゲームとしては、標準的なお使いタイプのRPGのため、操作に癖があるようなこともなくスムーズに遊べるが、やはりこうなると作者コメント含めた日本語化を期待したい。本作に倣って、今後ゲームでドキュメンタリーを作る流れが普及してブームになったらおもしろくなりそうなんだが……。