2024年3月28日 11:15
京セラ株式会社(代表取締役社長:谷本 秀夫、以下 京セラ)は、宇宙航空研究開発機構(以下 JAXA)と共に、当社の超高真空用気密端子技術をベースとした液体水素用のハーメチックシール(気密端子)を開発しましたのでお知らせします。
本製品は世界で初めて※1、JAXAの液体水素環境試験※2 においてハーメチックシールに求められる高気密性の実証に成功しました。
※1 ハーメチックシールの気密性としての実証値確認において(京セラ調べ 2024年3月28日現在)
※2 試験体を液体水素に浸漬する試験。液体水素の圧力がかかる配管ラインに取り付けて耐圧性能を確認する試験。
試験後はさらにヘリウムガスを使ったわずかな漏れを検出する分析方法でも確認する
京セラ製液体水素用ハーメチックシール(10pin ターミナル)(左)と、
液体水素の運搬タンカーでの活用イメージ図(右)
■開発の背景
国際社会において気候変動対策は喫緊の課題であり、二酸化炭素を発生させない水素エネルギーの活用に大きな期待が寄せられています。日本でも、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指す中、2017年に「水素基本戦略」が策定され、水素の安定供給体制の構築、水素利用技術の革新、国内外での水素社会の形成などの方針が示されるとともに、世界に先駆けて、国際的な水素供給網の構築にも力を入れています。
水素を大量に運搬、保管をするためには、ガスの1/800の体積となる液体水素が有望とされています。液化した水素は非常に低い温度(約-253℃)になり、運搬・貯蔵の過程で長期間安定して保冷する必要があります。ハーメチックシールは、その過酷な極低温という環境下において、タンクの外部から内部へ、またタンクの内部から外部へ信号や電源供給を行うコネクタの役割を担う部品であるため、より高い気密性(耐久性)が求められます。
「常圧水素環境下での耐久性試験」
液体水素を-253℃(約20K)まで急速冷却し、大気中では加熱を行い-40℃~-70℃まで復温させ、再度液体水素温度で 急冷する過酷な温度サイクルを約35分間で13サイクル繰り返し、リークが発生しない試験結果を得て、耐久性を確認した(JAXA能代ロケット実験場にて)。
■京セラとJAXAの共同開発による液体水素用ハーメチックシールの開発
京セラは、金属とセラミックスの接合技術を保有しています。
また、JAXAは液体水素に関する豊富な経験と評価技術を保有していることから、当社は2016年からJAXA宇宙科学研究所 小林弘明教授と「液体水素用ハーメチックコネクタの研究開発」に関する共同研究を進めてまいりました。
その結果、日本で最大の液体水素実験設備を有するJAXA能代ロケット実験場での過酷な液体水素環境試験※2 において、当社の液体水素用ハーメチックシールは、世界で初めて、5MPa(5メガパスカル_およそ50気圧)を超える圧力の液化水素流通環境下での高い気密性が実証されました※1。
JAXA 能代ロケット実験場
提供:(C)宇宙航空研究開発機構(JAXA)
当社はさまざまな分野で必要とされる液体水素用機器や容器向け製品の開発を推進し、水素社会の実現に貢献してまいります。
■ハーメチックシールに関して:
https://www.kyocera.co.jp/prdct/fc/industries/products/055.html