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東大、絶縁性磁石の金属転移に成功

~メモリとセンサー研究の新たな指針に

希土類酸化物(Nd2Ir2O7)の磁気抵抗

 東京大学の物性研究所は12月1日、これまで不可能とされてきた磁性絶縁体における金属-絶縁体転移が微少な磁場でも制御可能とする研究結果を発表した。

 金属-絶縁体転移での抵抗変化はメモリやセンサーの機能原理として利用できることから盛んに研究が行なわれてきたが、絶縁体が磁場に対して強力な絶縁性を発揮することから外部磁場による制御は困難とされてきた。

 しかし、同研究所のグループにより、希土類と遷移金属のハイブリッド型磁性体であるパイロクロア構造を持つ希土類酸化物(Nd2Ir2O7)において、磁場の誘起による金属-絶縁体転移の観測に成功。磁場を加える方向を変えることでも転移の出現を制御可能という。

 この化合物は比較的低磁場の環境で金属-絶縁体転移を起こせるため、今後のメモリ開発、磁場報告に敏感なセンサーの開発などの新しい指針を与えることが期待されている。

希土類酸化物(Nd2Ir2O7)の結晶および磁気構造

 本研究は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業さきがけの「新物質科学と元素戦略」研究領域における研究課題「スピンのナノ立体構造制御による革新的電子機能物質の創製」の一環として行なわれた。

(中村 真司)