イベントレポート

Intel SoFIAが20社27製品に採用され、4月中旬より出荷開始

Atom x7 Z8700シリーズ(Cherry Trail)を搭載したタブレットを紹介するIntel CEOのブライアン・クルザニッチ氏

 Intelは、3月2日(現地時間)からスペイン・バルセロナで開催されているMWC(Mobile World Congress) 2015で、同社初のモデム統合型IA SoC「Atom x3 C3000」シリーズ(開発コードネームSoFIA、別記事参照)、Bay Trailの後継となるタブレット向けのSoC「Atom x7 Z8700」および「Atom x5 Z8500/8300」シリーズ(Cherry Trail、別記事参照)を発表し、それらを搭載した製品を展示している。

 初日となる3月2日には、記者会見を開催し、同社CEOのブライアン・クルザニッチ氏が登壇し、前出のモバイル製品向けSoCなどを発表した。クルザニッチ氏は、Atom x3 C3000シリーズに関して「20社27製品が開発中で、4型~8型までのバラエティに富んだ製品が既に動作している。製品は6~8週間の間に市場に登場する見通しだ」と述べ、搭載製品の早期投入をアピールした。

 また、通信インフラメーカーのEricssonが導入する新しいクラウドシステムに、Intelが推進する新しいサーバーラックの技術「Intel Rackscale Architecture」を導入し、5Gの新しいセルラー通信技術の策定に向けた提案を行なうなど、モバイル業界のインフラへの貢献を行なっていることもアピールした。

4~8型で20社27製品のデザインウインを獲得したAtom x3 C3000シリーズ

 記者会見でクルザニッチ氏は「Intelは一昨年(2013年)まではモバイルの世界では存在感が小さかった。しかし、既にIAベースのスマートフォンは数百万台規模になっており、昨年は4,000万台のIAベースのタブレット出荷という目標を達成できた。我々はモバイルの分野でも大きく進化をした」と述べ、2014年にはスマートフォンでも台数が増え、タブレットではAppleに次ぐポジションになったことをアピールした。

 その上で、Atom x7 Z8700およびAtom x5 Z8500/8300、Atom x3 C3000を発表し、それらの製品の紹介を行なった。

 それらの製品に関しては別記事が詳しいのでここでは繰り返さないが、クルザニッチはAtom x3 C3000シリーズに関して「20社27製品が既にデザインされており、4型~8型までのバラエティに富んだ製品が既に動作している。製品は6~8週間の間に市場に登場する見通しだ」と述べ、2015年前半だとされてきたこれまでの出荷予定から具体的な時期を明らかにした。

 今から6~8週間ということは、4月の中旬には市場に製品が登場する計算になる。クルザニッチ氏はCherry TrailおよびSoFIAを搭載したデバイスをステージ上で紹介し、両製品とも出荷に向けて開発が順調に進んでいるとアピールした。

Atom x5とx7は最初の14nmのSoC製品となる、最大の特徴は2D/3Dパフォーマンスが倍になること
Atom x3 C3000シリーズの特徴
Atom x3 C3000シリーズは20社27デザインが既に実現されており、MWCで展示される。6~8週間で市場に製品が投入される見通し
Atom x3 C3000シリーズを搭載したスマートフォン、タブレットのサンプル
右2つはAtom x7/x5(Cherry Trail)を搭載したタブレット、左の4つはAtom x3 C3000シリーズを搭載したスマートフォン、タブレット

カテゴリ10に対応した新しい単体LTEモデム

 続いて、同社のデバイス向けのシリコンだけでなく、モバイル産業のインフラ構築にも力を入れているとし、さまざまなソリューションを紹介した。

 Intelは、LTE-Advancedのカテゴリ6(CAにより下り300Mbps)に対応したLTEモデム「XMM7260」を出荷しているが、今年(2015年)はその後継となりLTE-Advancedのカテゴリ10(下り450Mbps)を実現した「XMM7360」を発表したこと。

 このほかにも、Intelブースではそれ以外の無線向けのソリューションを展示されており、28nmプロセスルールで製造されるWi-Fiコントローラ「WCS8270」(IEEE 802.11ac対応、2x2 MIMO、Bluetooth 4.1+LE、開発コードネーム:Lightning Peak)、NFCのコントローラ「WCS 4000」(開発コードネーム:Field Peak)、GPSのコントローラ「WCS2100/WCS2000/WCS1960」などを展示。これらはSoFIA LTEことAtom x3-C3440などと組み合わせて利用できる。特にWi-Fi/BluetoothコンボチップのWCS8270は、他社に先駆けて28nmプロセスルールで製造されており、消費電力が非常に少ないのが特徴となっている。

 また、クルザニッチ氏は、モバイルの世界でさらに重要になりつつあるクラウドやバックボーンなどインフラに対しても、Intelが大きく貢献していることをアピールした。具体例として、Alcatel Lucent、Ericsson、Huaweiとの協業について紹介した。

 Alcatel Lucentは同社が導入するvRAN(Virtualized Radio Access Network)ソリューションに、IntelのXeonを利用して性能向上とコスト削減を実現するなどしている。Huaweiとの提携では、通信キャリアなどに提供するデータセンターに、IAが活用されるという。

 また、Ericssonとの提携では、Ericssonが導入する新しいクラウドシステムに、Intelが提唱しているラックマウントサーバーの新しい仕組み、Intel Rack Scale Architectureを導入する。同日(3月2日、現地時間)朝に行なわれたEricssonの記者会見にクルザニッチ氏がゲストとして登場したほどで、今後とも両者はモバイルのインフラ事業でも関係を深めていくことになりそうだ。

今年の後半に新しいLTEモデムXMM7360をリリースする
本来のMWCは端末よりもこうしたインフラ系の技術を紹介する場。Alcatel Lucent、Ericsson、Huaweiなどとの提携を発表
SoFIA LTEのデモボード
SoFIA LTEのセルラー部分のRF
5Gに向けたIntelの提案を紹介するコーナー
3GPPに向けて今後提案される予定のLTEとWi-Fiのアグリゲーション技術。Wi-FiとLTEを1つの回線のように使うという仕組みで、例えば、キャリアのWi-Fiとセルラー回線をまとめて1つの回線として扱うなどの使い道が考えられる
こちらも5Gに向けた提案で、自己干渉を最小限にしてセルラー回線を全二重として利用するための技術
WCS8270は、28nmプロセスルールで製造されるWi-Fi(802.11ac、2x2)とBT4.1のコンボチップ
WCS4000は、NFCコントローラ
IntelのGPSソリューション。WCS2100、WCS2000、WCS1960などがラインナップされている

(笠原 一輝)