イベントレポート

NVIDIA、LTEモデム内蔵Tegra Note 7とTegra 4i搭載スマートフォンを展示

会場:Fira Gran Via

会期:2014年2月24日~27日(現地時間)

 米NVIDIAは、MWCのホール7にブースを設置して同社のモバイル向けSoC「Tegra」シリーズのアピールをしている。2014年1月に行なわれたInternational CESでは「Tegra K1」という次世代SoCを発表しているものの、搭載製品が登場するのはもう少し先という事情もあって、このMWCでは現行製品となる「Tegra 4」および「Tegra 4i」を搭載した製品にフォーカスが当てられている。

 また、今回のMWCでNVIDIAは、自社のAIBパートナー(GPUを搭載したビデオカードをチャネル市場向けに販売するメーカー)経由で販売している「Tegra Note 7」のLTE内蔵版を発表した。Tegra Note 7は2013年の秋に米国などで、日本では2013年の12月に販売が開始され、最初の製品はモデムを内蔵していないWi-Fi版となっていた。また、NVIDIAは2013年のMWCでライブデモを行なったLTEモデム内蔵のTegra 4i搭載製品を、フランスのローカルブランドであるWiko Mobileがヨーロッパ市場向けに発表したことを明らかにした。

「i500」モデムを内蔵したTegra Note 7 LTE版を展示

 Tegra Note 7は、NVIDIAが自社で設計したIPS式7型タッチディスプレイ(1,280×800ドット)を採用したAndroidタブレットとなる。SoCにはもちろん同社のTegra 4が採用され、「DirectStylus」という機能を利用することで、専用のハードウェアを備えずにデジタイザと同じような書き心地をサポートしている点が、大きな特徴となる(詳しくは別記事参照)。

 今回のMWCで発表されたLTEモデム内蔵版は、Tegra Note 7にLTE、3Gなどで通信する機能を追加した製品になる。内蔵されているモデムは、NVIDIAが自社で開発した「i500」で、成熟市場向けの製品でi500を採用した製品が投入されるのは本製品が初めてとなる。

米国向けモデル
LTE:700/850/1,700/1,900/2,600MHz(バンド2/4/5/17/7)
HSPA+(3G):850/900/1,900/2,100(バンド1/2/5/8)
ヨーロッパ向けモデル
LTE:800/1,800/2,600(バンド3/7/20)
HSPA+(3G):850/900/1900/2100(バンド1/2/5/8)

 上記は、Tegra Note 7 LTE版の対応帯域で、米国向け、ヨーロッパ向けとも日本向けに必要となる2,100MHz(バンド1)、1,800MHz(バンド3)、800MHz(バンド18/19)、1,500MHz(バンド21)などには対応していない。仮に技術基準適合証明の認定問題がクリアになっていたとしても、周波数的に日本でLTEで利用するのは難しそうだ。従って、日本に投入する場合には、技術基準適合証明の認定を取得する必要もあるし、無線アンテナの部分を日本のLTEに合わせていく必要がある。

 なお、NVIDIAの発表によれば、Tegra Note 7 LTE版の価格は299ドルで、米国や欧州には第2四半期から投入される予定だ。現時点では、日本に投入されるかは明らかになっていないが、NVIDIAのBlog記事ではTegra Note 7ファミリー(LTE版を含むとも、含まないとも取れる表現)は日本ではZOTACから販売されることが説明されているが、前述のように無線周波数や認定の問題もあるので、実際に販売されるかはZOTACの代理店であるアスクの発表を待ちたいところだ。

NVIDIAが展示したTegra Note 7 LTE版、外形的にはWi-Fi版と違いは見当たらない
キャリアはOrangeで、LTEと表示されていることが見て取れる
Wi-Fi版との違いはSIMカードが入るようになっていること

フランスのWiko MobileがTegra 4iを搭載したスマートフォンを発表

 また、Tegra 4iを搭載した初めての商用向けスマートフォンとなる製品も展示している。フランスのスマートフォンメーカーで、ヨーロッパで端末を販売しているWiko Mobileという会社の製品だ。製品ブランド名は「Wiko WAX」だが、現時点で展示されている製品はエンジニアリングサンプルであるためか、ブランド名などは特に表示されていなかった。

 Tegra 4iは、Tegra 4にLTEモデムのi500を統合した製品で、同社のモバイル向けSoCとしては初めてのモデム統合型になる(なお、Tegra 4iの詳細に関しては別記事を参照)。Tegra 4iは同社が低価格な端末市場に参入する際の武器になると考えられていたのだが、OEMメーカーの獲得に苦戦しており、同社が2013年のMWCで語った「年内にいくつかの製品、第1四半期に多数の製品」という公約は守られず、今年のMWCを迎えていた。そうした中で、小規模なメーカーであるとはいえ、OEMメーカーを獲得したのは同社にとっては良いニュースと言えるだろう。

 Wiko MobileのTegra 4i搭載スマートフォンは、4.7型/720pのタッチディスプレイを搭載し、800万画素の背面カメラ、携帯電話無線としてはLTEとHSPA+に対応する。NVIDIAによれば、同社の製品はフランス、スペイン、ポルトガル、ドイツ、イギリス、イタリア、ベルギーで4月から販売が開始される予定だ。現時点では価格などは未定とのことだった。

Wiko MobileのWiko WAX。Tegra 4iを採用したスマートフォン
Wiko WAXの背面、8万画素のリアカメラを搭載
本体の上側にMicro USB端子とヘッドフォン端子が用意されているシンプルなデザイン
こちらもOrangeの回線を利用して4Gになっていることを確認することができた

(笠原 一輝)