Intel、IFAで発表が相次ぐUltrabookの特徴を解説
Intelは9月1日(現地時間)、IFA 2011開催地であるベルリン市内でプレスカンファレンスを行なった。今回のIFAは、Intelが提唱する「Ultrabook」の実際の製品が発表される舞台にもなっており、同社自らが改めてその特徴を説明した。
●「薄型・軽量」+4つのポイントで新しいカテゴリを創造Regis氏はUltrabookの特徴を紹介するにあたって、まず20億人以上がインターネットに接続し、2兆4,700億通のメールが送信され、1日に20億本のビデオが再生され、1カ月に25億本のビデオがFaceBookにアップロードされる、といった数字を挙げ、そうしたインターネットユーザーが増加した現在のPCマーケットに言及した。
「PCが必要ないと考える人はいるが、PCはまだまだ潜在的な市場がある」とRegis氏は述べる。その根拠として、1日に100万台のPCが出荷され、PCクライアントの販売数はまだまだ伸び続けており、、AndroidデバイスやiPadなどと比べても現時点における販売数には絶対的な開きがある点。一方で、自分のPCを持っている人は10億人程度に過ぎず世界にはまだまだ潜在的ニーズがある点。東欧諸国やブラジル、中国、中東、インドなどのPC普及率はおおよそ20%以下である点を挙げている。
また、特に先進国を中心に多くの作業がタブレットやスマートフォン以上にPCで行なわれているという調査結果を紹介し、ユーザー体験に合った製品を提供すれば、PCはまだまだ成長できることをアピールした。
そうしたユーザー体験に即したPCのコンセプトがUltrabookである。Ultrabookは6月に台湾で行なわれたCOMPUTEX TAIPEI 2011において発表されたコンセプトで、薄型・軽量に加え、より高性能、高レスポンスで、堅牢なセキュリティを持ち、優れたバッテリライフの提供を目指すものだ。
パフォーマンスの説明では、従来的な35W TDPのCPUを搭載するノートPCと17W TDPのCPUを持つUltrabookを比べると、パフォーマンスはわずかに劣る程度というデータを示した。そのため、一般的な日々の利用においては十分な性能を持っていながら、消費電力が半分に抑えられていることで、丸1日バッテリで駆動させられることをアピールした。また、Intel Quick Sync VideoやWiDiといった優れたメディア体験を提供できると述べている。
高レスポンス性については3つの機能を紹介した。1つはデスクトップ向けチップセットなどでも搭載されているIntel Smart Response Technologyで、HDD搭載機でもSSDをキャッシュとすることでストレージ性能を高めるもの。2つ目がSmart Connect Technologyで、これはPCがスリープ状態にあってもメールサーバーやソーシャルネットワークへ定期的にアクセスするもので、スリープから復帰後にメールやSNSの最新情報などが取得済みの状態で利用を再開できるというものだ。3つ目はRapid Start Technologyで、フラッシュメモリを活用することでハイバーネーションからの高速復帰を行なう機能である。Regis氏は自身が使っている従来のPCではハイバネーションからの復帰が55秒もかかるがUltrabookは7秒未満で復帰できるとし、スリープのようにバッテリを消費することなく、一方でシャットダウンも行うことなくPCを使い続けることができることをアピールした。
セキュリティ面では、Identity Protection TechnologyとAnti-Theft Technologyを紹介。これらはすでに従来の製品でも盛り込まれてきたもので、前者は特別なハードウェアを必要とせずに安全なワンタイムパスワードを生成できる技術、後者はPC盗難時などに遠隔地からPCを守るための技術だ。
また、同社投資部門のIntel Capitalが8月に台湾において3億ドルのUltrabook基金を設立したことも紹介。今後も、Ultrabook関連の技術強化に向けて注力していく姿勢を見せた。
Regis氏は最後に、半導体とUltrabookの関係についても言及。これまでのノートPCはおおよそ25W以上のTDPをターゲットとしてきた。2年前に10WのTDPを持つCULV版のプロセッサを投入したものの、PC全体としては25W程度がターゲットになっている。一方でSoCを用いた製品は10W未満がターゲットとなっていた。今後はUltrabookの登場もあり、15~20WあたりにもノートPCのターゲットが生まれることになるとする。またSoCはより高いTDPを受け入れ、10W前後までがデザインターゲットになるという。
Ultrabookのプロセッサについては、最初のUltrabookはSandy Bridgeベースの第2世代Coreプロセッサを用いたものとなっているが、来年にはIvy Bridgeベースの第3世代Coreプロセッサへ移行し、Ultrabookのコンセプトをさらに成熟させたプラットフォームになるとする。また2013年登場のHaswellは革新的なノートPCを生むものになるだろうと述べている。このHaswellベースのUltrabookのプラットフォームがShark Bayと呼ばれることも公表された。
●Smart TVの現状と今後について
IntelのカンファレンスではUltrabookのほかにSmart TVについても説明が行なわれた。Intelでは2年前のCESで初めてSmart TVへの取り組みを紹介して以降、ソニーによるGoogle TV、Boxee Boxへのプロセッサ提供など、このジャンルへも注力してきた。
Koenders氏はプレゼンテーションの中で、インターネット接続が可能なTVは増加を続け、Smart TVは2015年に950億ドルの市場になるとの見通しを示した。また、PCやスマートフォン向けサイトのほかに、TVで利用するためのWebコンテンツを提供するWebサイトも増えていることを紹介し、このジャンルが成長を始めていることを強調した。
Intelは現在、Intel CE4100というメディアプロセッサをSmart TV向けに提供しているが、これを利用したFreebox RevolutionやIomega TV with Boxeeといったデバイスを紹介。他社のプロセッサに対して2倍の性能を持つ点や、FlashやHTML5などのリッチコンテンツに対しても積極的に対応を進めることで、Smart TVのユーザー体験を高めていくことをアピールした。
また、同氏のプレゼンではGoogle TVのアップデートについても紹介があった。Google TVの次期アップデートはHoneycombベースとなりより使いやすいUIへと変更されることや、Google TV向けにAndroidマーケットが開設されることを紹介。マーケットで提供されるアプリケーションは、テレビ向けに最適化されたもののほか、スマートフォン向けのアプリも、一部はGoogle TV上で実行可能になるという。このアップデートは間もなく行なわれるとしている。
(2011年 9月 5日)
[Reported by 多和田 新也]