【ISSCC 2011前日レポート】
CPUとGPU、周辺回路が融合する大規模プロセッサに注目

カンファレンス会期:2月21日~23日(現地時間)
会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコ Marriott Hotel



 大規模半導体集積回路(LSI)の開発成果を披露する世界最大の国際会議、ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)が、2010年2月20日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで始まる。プロセッサやメモリ、ロジック、アナログなどの最先端半導体チップが一堂に会する場として、ISSCCは半導体業界にすっかり定着している。そのISSCCは例年、2月上旬に開催されるのが慣行となっていた。

参加者登録所への案内看板

 しかし今年は2月下旬に開催されることになった。これはアジア地域、特に台湾と中国の影響力が半導体業界で強まってきたことと関係している。台湾と中国の多数を占める漢民族の旧正月(春節)が2月上旬であり、ISSCCの開催時期と重なっていたのだ。この点に配慮してISSCCの開催時期は今年以降、2月下旬に移されることとなった。

 今年のISSCC(ISSCC 2011)では、669件の投稿の中から選ばれた211件の開発成果が講演と論文で発表される。地域別では北米が最も多く80件、次いで日本を含めたアジアが69件、そして欧州が62件となっている。国(地域)別ではトップの米国が77件で全体の3分の1強を占めており、半導体回路技術の開発を主導していることが分かる。2位は日本で24件、3位は韓国で22件、4位はオランダで17件、5位は台湾で14件が採択された。

 ISSCCは例年、初日と最終日がサブイベントであるセミナーやフォーラムなどの開催日となっている。メインイベントであるカンファレンスは初日と最終日を除く3日間に開催される。今年は2月21日~23日の3日間でテーマ別に28の講演セッションが予定されている。本レポートでは、カンファレンスで発表予定の注目講演を紹介しよう。

●2月21日:PoulsonとBulldozer

 カンファレンスは例年と同様に、プレナリセッションで始まる。今年は3件の基調講演と1件のパネルディスカッションが予定されている。最初の基調講演は、人体にエレクトロニクスを埋め込む技術とその応用がテーマである。次の基調講演は、個人の健康管理に無線通信を応用する技術に関するもの。最後の基調講演は、ヘルスケア向け半導体技術を展望する。パネルディスカッションでは、ヘルスケア向けエレクトロニクスを議論する。今回のISSCCはヘルスケア向けエレクトロニクスをテーマに掲げており、プレナリセッションはバイオメディカル応用やヘルスケア応用を強く意識したものになっている。

 21日の午後からは、一般講演が始まる。この時間帯は、プロセッサの講演セッションに注目したい。IntelやAMD、IBMなどが最新のプロセッサ技術を発表する。

 Intelは3件の講演を予定している。1件は次世代Itaniumプロセッサ「Poulson」(ポールソン、開発コード名)に関する講演だ(講演番号4.8)。31億個ものトランジスタをワンチップに集積した超大規模プロセッサである。もう1件は32nm世代のマイクロプロセッサ「Westmere-EX Xeon」(開発コード名)の講演である(講演番号4.3)。最後の1件は32nm世代のプロセッサ用クロック技術に関するもの(講演番号4.7)。

 AMDは2件の講演を予定している。いずれも、32nm世代に主流となる同社のマイクロプロセッサ「Bulldozer」(ブルドーザー、開発コード名)の技術講演である。最初の講演(講演番号4.5)でプロセッサ全体の設計技術を公表し、続く講演(講演番号4.6)でプロセッサコア技術の概要を発表する。

 IBMは、同社のzEnterprise 196サーバーに向けたプロセッサの技術概要を発表する(講演番号4.1)。動作周波数は5.2GHzときわめて高い。4個のプロセッサコアと24MBの大容量3次キャッシュDRAM(共有キャッシュ)を内蔵する。

 このほか中国の科学アカデミーが高性能プロセッサ「Godson-3B」を発表する(講演番号4.4)。中国の機関がISSCCで高性能プロセッサを発表するのは、これが初めてだ。

●2月22日:抵抗変化メモリとSandyBridge

 2月22日の午前は、不揮発性メモリの講演セッションが興味深い。大容量NANDフラッシュメモリと抵抗変化メモリ(ReRAM)の発表が相次ぐ。

 大容量NANDフラッシュメモリを発表するのは、東芝とSanDiskの共同開発チーム、およびSamsung Electronics、Hynix Semiconductorである。いずれも20nm世代の製造技術によるチップだ。東芝とSanDiskの共同開発チームは、24nmプロセスによる64GbitのMLC NANDフラッシュメモリを発表する(講演番号11.1)。Samsung Electronicsは、20nmプロセスと3bit/セル技術による64GbitのNANDフラッシュメモリ技術を公表する(講演番号11.8)。Hynix Semiconductorは、26nmプロセスによる32Gbit MLC NANDフラッシュメモリ技術を発表する(講演番号11.3)。

 抵抗変化メモリでは、ソニーが4Mbitのメモリチップを試作した結果を述べる(講演番号11.7)。台湾のITRIグループも、4Mbitのメモリマクロの開発成果を報告する(講演番号11.2)。

 2月22日の午後は、高性能SoCの講演セッションが目を引く。Intelが32nm世代のPC用プロセッサ「Sandy Bridge」(サンディブリッジ、開発コード名)の技術概要を発表する(講演番号15.1)。AMDはGPU統合CPUの最初の製品である「Zacate」(ザカーテ、開発コード名)の設計技術を報告する(講演番号15.4)。それからルネサス エレクトロニクスが、80Gbpsの高速通信プロセッサを発表する(講演番号15.2)。

●2月23日:Samsungの最先端メモリ技術

 2月23日の午前は、低消費電力プロセッサの講演セッションに注目したい。Texas Instrumentsが、1MHz当たり82μAと消費電流のきわめて低い16bitマイクロコントローラの開発成果を披露する(講演番号19.2)。NXP SemiconductorsとIMECは、0.4Vの電源電圧で動く心電図計測用信号処理チップを共同で発表する(講演番号19.1)。

 2月23日の午後は、DRAMのセッションが興味深い。Samsung Electronicsが3件の開発成果を発表する。1件はシリコン貫通電極(TSV)技術で製造したモバイルDRAMの試作結果である(講演番号28.5)。もう1件はピン当たりのデータ転送速度が7Gbpsと高いGDDR5 SDRAMの技術内容だ(講演番号28.6)。最後はDRAMではなく、相変化メモリ(PRAM)の開発成果である。LPDDR2規格に準拠した1Gbitの相変化メモリを発表する(講演番号28.7)。

 このほかにも注目すべき講演が少なくない。PC Watchでは順次、現地レポートをお届けする予定なので期待されたい。

(2011年 2月 21日)

[Reported by 福田 昭]