【CES 2011レポート】Sonyカンファレンス編
~3D対応ヘッドマウントディスプレイ、bloggie、新VAIOなどを展示

ハワード・ストリンガー氏

会期:1月6日~9日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center/The Venetian



カンファレンスの開幕では、ソニー・ピクチャーズが1月より配給する映画「グリーン・ホーネット」の主役であるセス・ローゲン氏(左)とジェイ・チョウ氏(中央)とともに、劇中に出てくる車に乗って登場したストリンガー氏

 例年通りSonyは、CES開幕前日となる現地時間の5日に会場の同社ブース内でプレスカンファレンスを開催。最高経営責任者(CEO)のハワード・ストリンガー氏をはじめとした同社幹部が2011年に向けた中核製品/サービスを紹介した。

 同社/グループが掲げる2011年の至上命題の1つは「3D立体視をパーソナルなものにする」ということ。同社に限らず、2010年は3D元年とも言える年で、3D対応TVやPCなどのハード、そしてBlu-ray Discや映画、ゲームなどのコンテンツが立ち上がった。しかし、その数はまだ少数で、価格も割高だ。

 そんな中、自ら「(3D対応製品について)業務用レンズから民生品まで取りそろえる唯一のメーカー」を標榜するSonyは、3Dのハードルを押し下げ、より一般の人が、より簡単/身近に楽しめるよう、ラッシュとも言うべき3D製品攻勢をかける。

 その最たる例が3D撮影に対応する「ハンディカム」と「Bloggie」の投入。前者はレンズ、1,920×1,080ドットのイメージセンサー、そして画像処理エンジンを2基ずつ搭載したカムコーダー。後者も2つのレンズを搭載した、モバイルスナップカメラ。民生の3Dカメラでは他社を後追いする立場の同社だが、Bloggieは250ドル程度という低価格で、誰にでも手の届く価格帯に一気に3Dカメラ製品を拡大する。また、両製品とも、モニターは裸眼立体視に対応するのもおもしろい。

レンズ、イメージセンサー、画像エンジンを全て2基備えた3Dハンディカム気軽に持ち運んで3Dを撮影できるBloggie 3Dモニターは裸眼立体視対応

 3Dを見るという点で、家庭において基本的な主役となるのはTVだが、今回Sonyは、個人が場所を選ばずに視聴できる製品群を披露した。

 1つは、3D対応のVAIO F。同社は9月にドイツで行なわれた展示会IFAにて、3D対応VAIOの参考展示を行ない、同じマシンは10月に日本で行なわれたCEATECにも展示された。当時製品のシリーズ名は明かされてなかったが、今回VAIO Fとなることが発表された。また、展示機の外観もこれまでのものとは変更されていた。

CEATECに展示されていた3D VAIOメガネはこのように固定されていた

 VAIO Fの3Dの特徴は、同社のBraviaシリーズで培われた240Hzの4倍速駆動に対応し、より高品位な映像が楽しめる点。2D映像の3D変換機能/ボタンも搭載する。

 CEATECの展示機は、メガネが本体から1mほど離れた定位置に固定されていたのに対し、今回の展示機はメガネが解放されていたので、デモの映像を近寄ってじっくり鑑賞してみたが、現在3D Vision用として販売されている120Hzの液晶ディスプレイで見られるクロストークは皆無に近かった。もちろん、正確な比較をするには、同じ映像を見る必要があるし、同じパネルでも映像のコントラストなどにより、クロストークの見え方は異なるが、かなり高品位であると感じた。

 もう1つ発見だったのは、ゲームが3Dで動いていた点。VAIO Fのデモ機は5~6台あったが、見た限り、ゲームを動かしていたのは1台のみで、ロストプラネット2が動作していた。VAIO FはGPUにGeForce GT 540Mを搭載するが、前述の通り3Dには3D Visionを使っていない。そのため、どのようにしてゲームの3D化を実現しているのかは不明だ。

 ブース担当者は、ミドルレンジのGPU+240HzフルHDパネルでハイレベルな3Dゲームは難しいと説明するが、ここで重要なのは動作するかどうかという点。また、大きな工数をかけてまでGPUドライバに手を入れていることも考えにくいので、ある程度汎用的に多くのポリゴンゲームが3Dで動作するのではないかと思われる。

3D対応となったVAIO F2D/3D変換ボタンを装備3Dは240Hzのアクティブシャッターで、独自のメガネを利用
1台だけロストプラネット2が3Dで動作していた本体左側面。USB 3.0端子が見える右側面に光学ドライブ

 なお、3Dには対応しないが、これ以外にも、2011年に投入する新型の「VAIO Design Concept PC」がブースに展示されていた。2機種あり、1つは幾何学的模様が筐体全体にエンボス加工されたものと、マットなブラックでまとめた、大人向けデザインの13型ノート製品。もう1つは、光沢のある蛍光色が印象的な14型ノートだ。いずれもCPUはSandy Bridge。また、先だってUnveiledの会場でAMDが展示してたFusion APU搭載機はVAIO Yとして展示されていた。

VAIO Design Concept PCと銘打たれた新シリーズとおぼしき製品色使いと表面のテクスチャが印象的マットブラックのモデルもある
こちらもDesign Concept PCの別モデル新型VAIO Pよりもさらにポップな色合いが目立つ天板はこんな感じ
Fusion APU搭載機のシリーズ名はVAIO Y2色が展示されていたVAIO Lの新モデルも展示。24型フルHDタッチ液晶と新Core i7-2630QMを搭載

 もう1つのパーソナル3Dビューワ製品であり、かつ今回の展示品のなかでもひときわ注目を集めたのが、ヘッドマウントディスプレイだ。まだ、製品化の目処の立っていない、コンセプトモデルに近い技術展示だが、複数のデモ機が用意され、来場者が自由に試せるようになっていた。

 ゴーグル状の本体の中には、1,280×720ドットという高解像度表示が可能な有機LEDを2基内蔵している。装着すると、右目には右目用の、左目には左目用の映像が映る。原理的にはアクティブシャッターに近いが、これも裸眼と言えば裸眼なのかもしれない。また、現行の液晶のアクティブシャッターでは、クロストークが見えるが、ヘッドマウントディスプレイでは、逆の目の映像は全く届かないため、原理的にクロストークが発生しない。加えて、映像素子が有機LEDなので、3D映像の画質は格段に高くなる。

 真っ白な筐体に、目の部分と耳の部分にあしらわれた青いLEDが光る姿は、映画のトロンを彷彿とさせるサイバーな雰囲気で、会場での評判も上々だった。

 ただし、重みがあるため、手で持っていないとずれ落ちてしまう。また、映像ソースとは太いケーブルでつながっているなど、製品化に当たって解決しなければならない点も散見される。重量バランスの解決はそれほど困難ではないだろう。しかし、製品版で無線化を図るとなると、帯域やバッテリの問題が出てくる。製品化に当たってはそのあたりの見極めが、行く末を占う要素となりそうだ。

技術展示された3Dヘッドマウントディスプレイ実際に装着したところ
目の部分と耳の部分が青く光る内部はこんな感じ。ヘッドフォンは仮想5.1ch対応

 このほか、注目度の高かった製品としては、Sony EricsonのスマートフォンXperia arcが展示された。製品名が示すとおり、横からみるとアーチを描いたようなデザインとなっており、最薄部は8.7mmとなっている。

 OSはAndroid 2.3で、マルチタッチに対応。Sonyと共同開発した動画エンジンMobile Bravia Engineを搭載し、YouTubeなどストリーミング動画で発生しがちなブロックノイズの除去のほか、色やコントラストなどの自動補正により高画質化を図る。

 CPUは1GHzのSnapdragon。液晶は4.2型で解像度はフルWVGA。800万画素のカメラを搭載し、720pの動画撮影も可能。本体サイズは125×63×8.7mm(幅×奥行き×高さ)。2011年第1四半期に投入予定とされている。

Xperia arc側面は微妙にアーチを描いた形状で、薄さが目立つ
背面シルバーモデルもある

(2011年 1月 7日)

[Reported by 若杉 紀彦]