Appleの開発者会議「WWDC10」が7日に開幕
iPhone OS、Mac OS Xをプラットホームとする開発者が世界中から集い、米Appleが主催する「WWDC」(Worldwide Developers Conference:世界開発者会議)が、現地時間の6月7日から11日まで5日間の会期で米国サンフランシスコにおいて開催される。
日曜日午前9時、レジストレーション開始直後の様子。明日のカンファレンス開始を前にして、入場パスの受け取りにこれだけの開発者が列を作っていた。名称はWWDC10となっている。これは10回目という意味ではなく、2010年の下2桁を示す10である。 |
2009年は健康上の理由から基調講演には姿を見せなかった同社のスティーブ・ジョブズCEOも、昨年末から業務へと復帰。2010年になってからもiPadの発表やiPhone OS 4のプレビューイベントなどの表舞台でプレゼンテーションを披露して変わらぬ存在感を示すとともに、米国株式市場において時価総額では米Microsoftを上回った同社の躍進を牽引している。そして同社は5月24日付けでニュースリリースを発表し、WWDC10はスティーブ・ジョブズCEOによる基調講演が幕開けとなることを明らかにした。基調講演は7日午前10時(日本時間8日午前2時)から始まる予定である。
ここ数年のWWDCを振り返ると、2007年はLeopardにフォーカスするとともに発売間近の初代iPhoneを紹介。2008年はiPhone 3GとiPhone OS 2.0を発表した。このとき現行のMac OS Xとなる10.6 Snow Leopardはコードネームのみを公開。2009年にはiPhone OS 3.0とSnow Leopardの概要が紹介されている。また2009年にはWWDCに先んじてiPhone OSについてのプレビューイベントがあった点が今年と酷似している。この流れから推測するに、2010年は4月9日にプレビューイベントが行なわれたiPhone OS 4に大きくフォーカスされることは間違いない。もちろん、少々漏れすぎではないかと思えるほどにさまざまな情報や画像が流出し続けている新iPhoneも晴れてお披露目の機会となることだろう。
一方、iPhoneの爆発的な普及やiPadの登場など大きな動きが続いたことでずいぶん以前のことのように感じられるが、現行のMac OS Xである10.6 Snow Leopardが出荷されたのは昨年8月28日のこと。まだ出荷以来1年すら経過していない。そのため、にわかに現実化するというわけではないにせよ、HTML5への注力やSafariの進化に代表されるWeb関連の取り組みに加えて次期Mac OS Xについてもコードネームや開発方針などが示されるものと推測される。
エンドユーザーからは製品がしばらく更新されていないMac Pro、Mac mini、MacBook Airなどのラインナップで新モデル発表を期待する向きもあるようだが、開発者会議というイベントの性格からハードウェアにおける大きな仕掛けは考えにくい。昨年はMacBook Proが発表されているのでまったく無いとは断言できないものの、可能性としては低いだろう。ただGoogle TVの発表も背景にあって、プラットホームという点でやや中途半端な位置づけになっているApple TVについてはなんらかの方針転換を示す可能性はゼロではない。ただしこれは秋口にiPod関連の発表イベントが定例化していることを考えると、そちらのほうがより可能性の高いタイミングとも考えられる。
●あっと言う間のチケット完売。日本からの開発者の参加状況は2010年のWWDCに参加するためのカンファレンスチケットは、会期の発表から10日間を経ずに完売する事態となった。世界中から5,000人余りの開発者が集まる。事前段階でチケットが完売するのは2008年から3年連続となり、期間的にも最短記録を更新している。例年より開催概要の発表が遅かったうえに、実際の会期は例年より早いというタイトなスケジュールの中で、驚異的なニーズがうかがえる結果だ。先日開催されたGoogleの開発者向けイベント「Google I/O 2010」も早期割引期間の段階でチケットが完売する人気の高さをみせていたが、そちらは1月に正式に会期を発表したうえでの5月開催。一方のAppleは4月末のアナウンスで6月上旬の開催と言うのだから恐れ入る。
ただ、このタイトさは日本国内の開発者についてはかなり厳しい内容だったのも事実で、開催発表は4月28日の夜遅くのことだった。まさにゴールデンウィーク前夜にあたり、サイト上でチケットの売り切れが確認されたのは5月6日午前のこと。大規模な企業や学術系機関など相応の手続きを必要とする団体では、出張申請の稟議書すら回すことができなかったところもあるのではないかと想像する。ゴールデンウィークのない米国においても今回のWWDCチケットはプラチナペーパー化していて、eBayなどのオークションサイトで高値がついていたらしい。ちなみに登録済みの開発者間であれば、権利の譲渡は正式な手続きを踏んだうえで行なうことは可能である。国内のYahoo!オークションにも出品を見かけたが、こちらは即決価格が定価の148,000円に設定されている内容だった。こうしたハードルの高さも手伝って、果たして例年に比べて日本からの参加者がどの程度増減しているのかも興味深いWWDC10である。
開幕を控えて、会場となるMoscone Center Westでは着々と準備が進んでいた。入場パスの配布は日曜日から始まっており、事前登録を終えている参加者が、断続的にパスの受け取りに訪れていた。パスポートなどの身分証明書の提示で、入場パスとカンファレンスバッグなどを受け取ることができる。現時点で入場可能な1階フロアには、特に黒い幕で覆い隠された垂れ幕は見あたらないようだ。
5日間にわたるWWDCの中心となる数々のセッションは、参加者と同社の間でNDA(Non Disclosure Agreement:機密保持契約)が結ばれている。セッションに参加する場合はメディア関係者であっても開発者として正規の参加申し込みを行なった上で参加しているため、個々のセッションの内容を記事として公開することができない。会期中は唯一、基調講演で話された内容と、WWDCで正式発表された製品情報のみを記事として紹介することになる。
PC Watchでは基調講演のレポートを中心に、関連のニュースを随時お届けする予定である。
(2010年 6月 7日)
[Reported by 矢作 晃]