【MIX10 基調講演レポート】
Silverlight 4 RCや無償のWindows Phone 7開発環境の提供を発表
~Windows Phone 7向けサードパーティアプリのデモも

Microsoft Corporate Vice President Developer DivisionのScott Guthrie氏

会期:3月15日~17日(現地時間)
会場:米国ネバダ州ラスベガスMandalay Bay Convention Center



 Microsoftは3月15~17日にかけて、米ラスベガスにおいてWebデザイナ、アプリケーション開発者向けのカンファレンス「MIX10」を開催。初日の基調講演では、2009年のPDC09で発表されたSilverlight 4、先月のMobile World Congressで発表されたWindows Phone 7が話題となった。

●Silverlight 4 RC版、Expression Blend 4 Beta版を提供開始

 MIX10初日の基調講演では、VP Developer DivisionのScott Guthrie氏が登壇し、昨年のPDC09で発表されたSilverlight 4の紹介が行なわれた。Guthrie氏は「2年前に最初のバージョンを提供してから、さまざまな興味深いシナリオで使われている」とし、最近3カ月だけを見ても、オリンピック、ファッションショー、デジタルマーケティング、ビジネスアプリケーションなどで使われていることを紹介した。

 また、PDC09で、世界中の全インターネットデバイスの45%でSilverlightが使われていることをアナウンスしたが、いまは60%に近づくほど勢いが加速しているとしている。

 すでに提供されているSilverlight 4のベータ版では、Webカメラやマイクのサポート、マルチキャストストリーミング、データ出力の保護、オフラインDRMといった機能が提供されている。そして、MIX10の期間中には、Silverlight 4の追加機能がいくつか紹介された。

 その1つが、マルチディスプレイ環境のサポートで、セカンダリディスプレイなどにSilverlightのストリーミング映像をフルスクリーン出力することができるようになる。この機能は最終バージョンでサポートされるとしている。

 Gathrie氏はSilverlightのビジネスアプリケーションへの適用も話題として取り上げた。Silverlight 4ではビジネスアプリケーションライクな印刷機能、ドラッグ&ドロップ、クリップボードアクセスなどを新たに提供。また、WCF RIA Serviceによりサーバーで大規模データ処理を扱いやすくなっているほか、Silverlight 3からサポートされたWebブラウザ外でSilverlightを実行するOut-Of-Browser機能は、サンドボックス内実行による信頼性の高さだけでなく、サンドボックスの範囲が拡張されたことで、より豊かな体験を実現できるという。

 こうしたなかでGuthrie氏はPivotコントロールにとくに興奮しているという。Pivotは、大量のデータから関係性を調査、集計し“コレクション”を作成するもの。それをDeep-Zoomフォーマットのイメージとして、ビジュアル的に表現するデモビデオが紹介されている。このPivotコントロールは2010年夏ごろに提供される予定だ。

PDC09でも表明されていたSilverlight 4で提供される機能マルチディスプレイ環境におけるセカンダリディスプレイへのストリーミング映像の表示をサポートSilverlightによるビジネスアプリケーション開発向けに提供される機能

データ分析した結果をDeep-Zoomで表現したPivotコントロールのデモビデオ

 このSilverlight 4の開発環境についても言及があった。Visual Studio 2010では、デザインサーフェス構築のWYSIWYG環境、XAMLの入力補完、サーバーとのデータバインド、WCF RIA Serviceを統合。そして、デザイナツールであるExpression Blend 4の投入も発表された。

 Gathrie氏は、このVisual Studio 2010とExpress Blend 4の組み合わせを、素晴らしいビジネスアプリケーション構築が可能なエンド・ツー・エンドの経験をもたらすものであるとしている。

 ここで、eBayのRaji Arasu氏と、CynergyのDave Wolf氏が登壇。両社がSilverlightで開発中のツールを紹介した。このツールは、Out-Of-Browserでの動作可能なeBayへの出品を行なうためのツールで、製品カテゴリ登録のための検索、Webカメラを用いたバーコードによる製品検索、登録する写真の簡単なレタッチ機能を備えている。Arasu氏は「ユーザーに追加インストールを要求することなく、クロスプラットフォームなデスクトップアプリケーションを提供できることが重要だ」と、Silverlight導入のメリットを述べた。

 また、このツールの開発でeBayのパートナーとなったWolf氏は、このツールがコンセプトから完成まで8週間で済んだことを明らかにし、その制作過程を紹介。

 手書きのスケッチをPhotoshopからすべてのレイヤを保持した状態でExpression Blend 4にインポート。手書きのイメージのまま、スライダコントロールなどを割り当てていけることをデモで示した。またトーストの制作では、リストを円形のアニメーションとして表現する過程を紹介している。

eBay VP of Product DevelopmentのRaji Arasu氏(右)と、Cynergy VP of StrategyのDave Wolf氏(左)Out-Of-Browser環境で実行されているeBayの出品ツール。本のタイトルを検索することで登録カテゴリの候補が示されるWebカメラでバーコードを読み取らせることで製品情報を取得
紹介写真はトリミングなどの簡易的なフォトレタッチを、このツール上で行なえるeBayのツールを制作する過程。手書きスケッチに直接コントロールを配置して動作させるデモトースタの制作。リスト要素を円形に配置してアニメーション表示させる制作過程を紹介

Silverlight 4 RC、SL Tools For VS 2010 RC、Expression Blend 4 Betaがダウンロード可能になっている

 最後にGathrie氏は、Silverlight 4 RC版、Silverlight Tools For Visual Studio 2010 RC版、Expression Blend 4 Beta版の提供開始を発表。Expression Blend 4は同3からの無償アップグレードを予定しているとのこと。また、Silverlight 4の正式リリースは来月になる見込みとしている。

●Windows Phone 7の開発環境とアプリストア開設を発表

 基調講演の後半は、先月スペインで行なわれたMobile World Congressにおいて発表されたWindows Phone 7の話題となった。ここでは、はじめにVP Windows PhoneのJoe Belfiore氏が登壇。プロトタイプのハードウェアを用いて、Silverlightで開発されたRIAや、XNA Frameworkで開発された3Dゲームのデモを行なった。

 ライブタイルと呼ばれるスタートアップ画面の紹介、Windows Phone 7に対応するすべてのハードウェアがスタート・サーチ・バックのボタンを持つことの紹介などの概要説明のあと、サードパーティ製アプリケーションの紹介を行なった。

Microsoft Corporate Vice President Windows PhoneのJoe Belfiore氏

 ここでは、Silverlightで動作するAPのニュースリーダ、「Hush Hush」と名付けられた日記アプリ、Windows Phone 7の特徴である「ハブ」を使用した例としてピクチャーハブからレタッチソフトを呼び出すデモ。そして、Xbox Liveと連携可能な3Dゲームの紹介も行なわれた。このあと、Gathrie氏が登壇するが、その後もこうしたサードパーティ製アプリケーションが多数紹介された。これらは最後にまとめて写真で紹介したい。

 Gathrie氏は、このWindows Phone 7のアプリケーション開発環境についても紹介。RIAの開発にはSilverlightが使われる。「Silverlight Light(軽量版の意)ではなく同じもの」(Gathrie氏)と述べるとおり、PC向けに提供されているものと同じSilverlightが使用でき、ハードウェアアクセラレーションも可能。同じコードを実行でき、Visual Studio、Expression Blend 4といったツールも同じものが使えるので、これまでの資産、スキルをすぐに活用できるとした。

 また、Silverlightの特徴ともいえる、DRMサポート、IIS Smooth Streaming、Deep-Zoomも提供されるほか、携帯電話のカメラ、マイク、加速度センサ、プッシュ通知、GPSを用いたMicrosoft Location Seviceも利用可能で、紹介されたサードパーティ製アプリケーションでも活用されている。

 実際にVisual Studio 2010やExpression Blend 4を用いたアプリケーション開発の過程も紹介されたが、ここではWindows Phone 7デバイスをエミュレートしてPC上でデバッグする様子も示された。ちなみにデバッグ作業においては、エミュレータだけでなく、USB接続した実際のデバイス上で実行することも可能だ。

 こうしたツールが無償で提供されることも大きなトピックとなった。今回アプリケーションの紹介を行なったような一部パートナーには約3週間前にツールを提供したという。

 もう1つサポートされるXNA Frameworkではカジュアルなソーシャルネットワークやハイパフォーマンスなゲームに利用できるとし、2D/3DのグラフィックAPIをサポートしたVisual Studio向けのプラグインが、やはり無償で提供される。

 XNA Frameworkでは、ほかのプラットフォームとの連携、開発の容易さがさらに強くアピールされた。

 最初に紹介されたGoo Splatは、Zune HDで提供されたゲームをWindows Phone 7向けに移植したもの。これはMS内のチームによって作業されたが、きわめて短期間で移植ができたという。Battle Punksではソーシャルネットワークとの連携が可能であることを示した。

 そして、Belfiore氏がXbox Liveとの連携ができることを紹介した「Harvest」という3Dゲームは、PCやXbox 360上で同じコードを実行できることを紹介した。

 このほか、Windows Phone向けのアプリケーションを提供するアプリマーケット「Windows Phone Marketplace」の開設も発表した。アプリケーションへの配布、課金、試用機能などがあることを紹介。クレジットカード以外の課金方法も提供されるとのことだ。

ライブタイルと呼ばれるWindows Phone 7のメイン画面Windows Phone 7上で動作するRIAはSilverlightで制作。PC版と同じコード、ツールが利用できる携帯電話固有の機能もSilverlight上から利用可能
グラフィカルなアプリケーションを開発するためにXNA Frameworkも提供されるWindows Phoneの開発ツールは、いずれも無償で提供される壇上でGathrie氏がVisual Studioを使ってフルスクラッチで作り上げたTwitterアプリ。テキストボックスにアカウント名を入力すると、その人のフィードが一覧表示される
こちらはExpression Blend 4を用いてフォトギャラリーをフルスクラッチで制作。サムネイル表示や写真のディスクリプション表示機能、月別、週別表示などのコントロールを簡単に設定できることを示したWindows Phone Marketplaceの画面。アプリケーションのカテゴリ表示、ピックアップ表示などのポータル画面が用意されるアプリケーションの購入画面。試用ボタンも用意される

●Windows Phone 7のサードパーティ製アプリケーション

APのニュースリーダ。トップのカテゴリ画面からスライドさせていくことで、カテゴリに該当するニュースの一覧や写真などを表示できる作りになっているHush Hushと呼ばれる日記アプリケーションは、テキストだけでなく写真の埋め込みも可能ピクチャーハブとなるフォトギャラリーツールからフォトレタッチソフトへデータを受け渡して利用したデモ
Netflixがデモを行なった動画配信ツール。DRMによるコンテンツ保護はもちろん、Deep-Zoomも活用しているGRAPHIC.LYがデモを行なった漫画閲覧ツール。Deep-Zoomを用いてページの一覧から各ページの拡大画面まで自在に表示できることを示したFoursquareのWindows Phone 7用クライアント。Location Searchを活用している。地図はBingマップを使用
音楽のマッチングソフトであるShazam。携帯電話のマイクから音楽を入力して解析。何の曲かを検索するMLS(Major League Soccor)の応援するチームに関する特定のイベントが発生した際にプッシュ通知を行ない、試合経過・結果を参照できるツールTwitterクライアントであるSessmicのWindows Phone 7版
ネットワークを介してロボットを操作するツール。キャノン砲からTシャツを発射して来場者にプレゼントしたZone HDで提供されていたゲームをWindows Phone 7へ移植した例として示されたGoo Splat
ソーシャルネットワークとの連携機能を持つBattle Punks3Dゲームの例として示されたHarvestXNA Frameworkを用いて制作することで、PCやXbox 360上でも同じコードを走らせられる

Marionetteは顔写真などを取り込みアバターを作成。録音済みの音声を発させたり、加速度センサーによって体を揺らすなどの機能を持つ

(2010年 3月 17日)

[Reported by 多和田 新也]