新IONネットブックやAtom内蔵液晶などを展示
Acerは今回、一般向けには出展を行なわなかった(販社専用エリアに出展)が、CeBIT会場で記者説明会を開催し、一部の新製品を公開するとともに、同社上級副社長のWalter Deppeler氏が2009年の業績について解説した。
AcerのWalter Deppeler氏 |
Deppeler氏が示した資料によると、2009年の世界PC出荷台数は約3億台で、ノートブックが55%、デスクトップが45%となる。地域別ではEMEAが9千万台超でトップだが、アジアパシフィックもほぼ同数で、2010年にはEMEAを抜くと見られている。
地域ごとの成長率は、昨今の金融不況の影響でラテンアメリカ、EMEA、日本は2008年に引き続きマイナス成長となったが、アジアパシフィックと北米はプラス成長に転じている。
液晶ディスプレイは、約1億7千万台が出荷された。2009年はプラス成長に転じており、不況は底を打った感が見受けられる。地域別では中国が成長著しく、北米を抜いてEMEAに次ぐ、2番目に巨大な市場になっている。
2010年のPC市場は2桁成長に転じると見られている。ただし、PCのコモディティ化により、コンシューマ市場における力学は変化しており、新興市場が成長を牽引するほか、若年層、女性層、教育市場などこれまでとは違う市場が育つと予想される。ただし、Deppeler氏は成熟市場は決して飽和しておらず、1人に1台という観点からすると、成長の余地が十分あるとした。
また、PCのコモディティ化は、買い手の購入理由も変化させつつあるという。具体的には、技術的改善はもはやセールスポイントとはならず、デザインや素材など外観が最も重要な要素になっているという。また、求められるフォームファクタもユーザーによって大きく異なってきている。
こういったことを踏まえ、今後、デスクトップPCは、液晶一体型、超小型、タッチ対応、ゲーミングなどへの興味から、大きな成長こそ望めないが、消滅することはない。ノートPCについては、ネットブックが牽引し、今後3年間20%台の成長が見込まれるとの見通しを示した。
続いて、Deppeler氏はメーカー別シェアに話題を転じた。全PC市場での2009年の同社のシェアはHPに次いで2位。ことノートPCについては、2009年第3四半期までに21%と1位のHPに並びかけている。ネットブックでは36%と2位のASUSTeKに2倍の差をつけている。
地域別では、EMEAの全体で2位、ノートPCでは3割超のシェアを確保し、すでにHPを抜いている。北米では全体、ノートPCとも3位。アジアではLenovoが強いため、全体で4位、ノートPCが3位とやや落ちる。
全世界PC市場の推移 | 全世界液晶ディスプレイ市場の推移 | PC全体およびノートPCの各社シェアの推移 |
EMEA地域のシェア | 北米地域のシェア | アジア地域のシェア |
今後の製品戦略としては、デザイン、ラインナップ、デバイスの種類の3つの要素を拡大していく必要があるとした。ここで言う、ラインナップとは同じPCでもAndroidやChrome OSを搭載したりすること、デバイスの種類とは、電子ブックリーダやスマートフォンといったことを差す。
同社単体の2009年の業績を見ると、競合のHPやDellが2桁のマイナスとなったのに対し、売上高は前年とほぼ同じ169億6,200万ドル、営業利益は前年比4%増の5億5,700万ドル、純利益は同14%増の4億7,600万ドルとなった。
出荷台数はデスクトップが800万台、ノートPCが2,300万台、ネットブックが1,000万台、ディスプレイが2,000万台、プロジェクターが30万台。
地域別売上高は、EMEAが52%、パンアメリカが27%、アジアパシフィックが14%、台湾が2%、中国が5%。これを成熟市場と新興市場という構図で見ると、2008年は四半期ごとに新興市場の割合が減ったが、2009年は一転、四半期ごとに新興市場の割合が増え、第4四半期は28%を占めるに至った。
同社特有のマルチブランド戦略は引き続き踏襲し、Packard BellとGatewayがトレンディ+ライフスタイル、eMachinesが廉価、Acerが一般およびアーリーアダプタ層を狙う。
そして2012年にはシェア世界一を目指すとの意気込みを語った。
Acerの2008年および2009年の業績 | 2009年の出荷台数 |
市場別の割合 | 各ブランドの対象セグメント |
会場には新製品として、Atom内蔵液晶ディスプレイ「D241H」や、次世代NVIDIA IONを採用したネットブック「Aspire one 532G」(こちらは正確には紹介はあったが、展示は別の場所だった)などが展示された。
Aspire one 532Gは、Atom N450(1.66GHz、ビデオ機能内蔵)、メモリ1~2GB、HDD 160~320GB、ION(512MB、Optimus対応)、Intel NM10 Expressチップセット、Windows 7 Home Premiumなどを搭載し、価格は379ユーロ(約46,000円)から。
D241Hは、液晶一体型PCではなく、組み込みOSを搭載し、多機能化した液晶ディスプレイ。具体的にはEthernet経由で、ニュースフィードや天気予報を取得/表示したり、GoogleやYahoo!のカレンダー、PicasaやFlickrの画像などをPCなしでも表示できる。
新NVIDIA ION搭載ネットブックの「Aspire one 532G」 | Atom内蔵多機能液晶ディスプレイ「H241H」。これはニュースや天気予報を単体で表示しているところ | このように各種クラウドに接続できる |
キーボード付きリモコンが付属 | フェラーリネットブック「Ferrari one 200」 |
(2010年 3月 5日)
[Reported by 若杉 紀彦]