【CeBIT 2010レポート】【Acer編】
新IONネットブックやAtom内蔵液晶などを展示

Aspire Predator G775

会期:3月2日~3月6日(現地時間)
会場:ドイツ共和国 ハノーバー市 ハノーバーメッセ



 Acerは今回、一般向けには出展を行なわなかった(販社専用エリアに出展)が、CeBIT会場で記者説明会を開催し、一部の新製品を公開するとともに、同社上級副社長のWalter Deppeler氏が2009年の業績について解説した。

AcerのWalter Deppeler氏

 Deppeler氏が示した資料によると、2009年の世界PC出荷台数は約3億台で、ノートブックが55%、デスクトップが45%となる。地域別ではEMEAが9千万台超でトップだが、アジアパシフィックもほぼ同数で、2010年にはEMEAを抜くと見られている。

 地域ごとの成長率は、昨今の金融不況の影響でラテンアメリカ、EMEA、日本は2008年に引き続きマイナス成長となったが、アジアパシフィックと北米はプラス成長に転じている。

 液晶ディスプレイは、約1億7千万台が出荷された。2009年はプラス成長に転じており、不況は底を打った感が見受けられる。地域別では中国が成長著しく、北米を抜いてEMEAに次ぐ、2番目に巨大な市場になっている。

 2010年のPC市場は2桁成長に転じると見られている。ただし、PCのコモディティ化により、コンシューマ市場における力学は変化しており、新興市場が成長を牽引するほか、若年層、女性層、教育市場などこれまでとは違う市場が育つと予想される。ただし、Deppeler氏は成熟市場は決して飽和しておらず、1人に1台という観点からすると、成長の余地が十分あるとした。

 また、PCのコモディティ化は、買い手の購入理由も変化させつつあるという。具体的には、技術的改善はもはやセールスポイントとはならず、デザインや素材など外観が最も重要な要素になっているという。また、求められるフォームファクタもユーザーによって大きく異なってきている。

 こういったことを踏まえ、今後、デスクトップPCは、液晶一体型、超小型、タッチ対応、ゲーミングなどへの興味から、大きな成長こそ望めないが、消滅することはない。ノートPCについては、ネットブックが牽引し、今後3年間20%台の成長が見込まれるとの見通しを示した。

 続いて、Deppeler氏はメーカー別シェアに話題を転じた。全PC市場での2009年の同社のシェアはHPに次いで2位。ことノートPCについては、2009年第3四半期までに21%と1位のHPに並びかけている。ネットブックでは36%と2位のASUSTeKに2倍の差をつけている。

 地域別では、EMEAの全体で2位、ノートPCでは3割超のシェアを確保し、すでにHPを抜いている。北米では全体、ノートPCとも3位。アジアではLenovoが強いため、全体で4位、ノートPCが3位とやや落ちる。

全世界PC市場の推移全世界液晶ディスプレイ市場の推移PC全体およびノートPCの各社シェアの推移
EMEA地域のシェア北米地域のシェアアジア地域のシェア

 今後の製品戦略としては、デザイン、ラインナップ、デバイスの種類の3つの要素を拡大していく必要があるとした。ここで言う、ラインナップとは同じPCでもAndroidやChrome OSを搭載したりすること、デバイスの種類とは、電子ブックリーダやスマートフォンといったことを差す。

 同社単体の2009年の業績を見ると、競合のHPやDellが2桁のマイナスとなったのに対し、売上高は前年とほぼ同じ169億6,200万ドル、営業利益は前年比4%増の5億5,700万ドル、純利益は同14%増の4億7,600万ドルとなった。

 出荷台数はデスクトップが800万台、ノートPCが2,300万台、ネットブックが1,000万台、ディスプレイが2,000万台、プロジェクターが30万台。

 地域別売上高は、EMEAが52%、パンアメリカが27%、アジアパシフィックが14%、台湾が2%、中国が5%。これを成熟市場と新興市場という構図で見ると、2008年は四半期ごとに新興市場の割合が減ったが、2009年は一転、四半期ごとに新興市場の割合が増え、第4四半期は28%を占めるに至った。

 同社特有のマルチブランド戦略は引き続き踏襲し、Packard BellとGatewayがトレンディ+ライフスタイル、eMachinesが廉価、Acerが一般およびアーリーアダプタ層を狙う。

 そして2012年にはシェア世界一を目指すとの意気込みを語った。

Acerの2008年および2009年の業績2009年の出荷台数
市場別の割合各ブランドの対象セグメント

 会場には新製品として、Atom内蔵液晶ディスプレイ「D241H」や、次世代NVIDIA IONを採用したネットブック「Aspire one 532G」(こちらは正確には紹介はあったが、展示は別の場所だった)などが展示された。

 Aspire one 532Gは、Atom N450(1.66GHz、ビデオ機能内蔵)、メモリ1~2GB、HDD 160~320GB、ION(512MB、Optimus対応)、Intel NM10 Expressチップセット、Windows 7 Home Premiumなどを搭載し、価格は379ユーロ(約46,000円)から。

 D241Hは、液晶一体型PCではなく、組み込みOSを搭載し、多機能化した液晶ディスプレイ。具体的にはEthernet経由で、ニュースフィードや天気予報を取得/表示したり、GoogleやYahoo!のカレンダー、PicasaやFlickrの画像などをPCなしでも表示できる。

新NVIDIA ION搭載ネットブックの「Aspire one 532G」Atom内蔵多機能液晶ディスプレイ「H241H」。これはニュースや天気予報を単体で表示しているところこのように各種クラウドに接続できる
キーボード付きリモコンが付属フェラーリネットブック「Ferrari one 200」

(2010年 3月 5日)

[Reported by 若杉 紀彦]