【DEMOfall 09レポート】エンターテイメント関連編
デジタルコンテンツとソーシャルサービスの融合がますます加速

DEMOのステージ

会期:9月21日~23日(現地時間)
会場:Sheraton San Diego Hotel & Marina



 新興企業を中心に、これまでになかったような新機軸の製品、サービス、技術などを、その企業のトップ自らが壇上に立って初披露するイベントである「DEMOfall 09」が、米国カリフォルニア州Sheraton San Diego Hotel & Marinaにおいて、9月21日~23日の会期で開幕した。

 年2回開催されるこのイベントでは、各社が6分間の持ち時間で、PowerPointなどの資料を使わず、実際の製品デモだけで紹介を行なう。2009年3月の「DEMO 09」は、世界不況の煽りを受け、出展者数がかなり減少したが、今回は幾分回復した。なお、今回はHewlett-Packardという誰もが知る大企業も参加している。

 また、製品化にはまだ遠いながらも、良いアイディアを持っていると認められた企業が、90秒間の紹介と、自社ブースでの説明を行なうことができる「AlphaPitch」という枠が新たに設けられ、十数社がそこに参加している。

●Webニュースを携帯電話で再生する「MyVocal」
MyVocal Holdings CEO兼創業者のAlexey Patsko氏

 本稿では、コンシューマ向けエンターテイメント関連のセッションについて紹介する。MyVocal Holdingsは、テキストコンテンツを音声に変換し、携帯電話向けに発信するサービス「MyVocal」を発表した。

 これは、例えば、常日頃、客先を飛び回り、落ち着いて雑誌や新聞を読む暇すらないといったビジネスマンなどをターゲットにしたサービス。ユーザーは、会員登録を行ない、CNNの経済ニュースといった具合に、新聞社/出版社や、内容を選択して、自分が聞きたいコンテンツのプレイリストを作成する。コンテンツの音声化は自動化されているため、すでに多数のWebニュースなどがコンテンツとして存在している。

 コンテンツを聞くには、MyVocalの専用電話番号にダイヤルするというちょっと変わったシステムを採用している。ただし、専用のアプリケーションも用意されており、これを使うと、グラフィカルなメニューから、サービス内容をカスタマイズ、利用できる。また、PCでアクセスしてカスタマイズすることもできる。

 ニュースなどのコンテンツ以外に、メールの読み上げと返信機能も実装されている。これにより、メール内容を音声で確認し、必要に応じて、携帯電話に向かってしゃべることで、返信を打つことができる。

 なお、ニュースやメールを聞いている途中に、電波や電池が切れたり、再生を停止した場合、リダイヤルすると、停止した場所から再生が始まるようになっている。また、各種コンテンツはストリーミングで聞く以外に、MP3に変換してダウンロードすることもできる。このほか、自分の聞いているチャンネルの情報をFacebookやTwitterにアップする機能もある。

 現在、米国を中心に10カ国でオープンベータを実施している。日本は対象に含まれてないが、2009年中にも順次対象国は増えていく予定。ベータ期間中は利用料は無料(携帯電話の通話料は別途必要)。

ブラウザ上で聞きたいコンテンツのプレイリストを作成iPhone版アプリも提供
コンテンツはMP3にしてダウンロードも可能ブラウザ用アドオンを入れると、対応サイトのメニューから直接プレイリストへの追加が可能

□My Vocalのページ(英文)
http://www.myvocal.com/

●自分が見ているTV番組をFacebookで共有する「Twirl TV」
Twirl TV CEOのBarry James Jolsom氏

 Twirl TVは、自分が見ているTV番組の情報をリアルタイムでFacebookなどで共有できる同名のサービスを発表した。

 地上波のTV番組録画にすら制限のある日本では想像すらできないが、米国では最新のTVドラマがWeb上で再配信されることが珍しくない。しかも無償だ。例えば、日本でシーズン3のDVDレンタルが始まった「Heroes」は、現在、米NBCのサイトや一部の動画サイトでシーズン4のエピソードがストリーミング視聴できる。

 Twirl TVは、こういったサイトを束ね、1つのサイト上で統括的に視聴できるサービスだ。ただし、単に視聴するだけでなく、そのことを友人達と共有することを目的に作られているため、このサービスを利用するにはFacebookのアカウントが必要で、Facebookのログオンシステムを使ってログオンする。

 Twirl TVでは現在、340番組4,177エピソードが登録されており、無償で視聴できる。番組リストからお気に入りを作成したりするのは当然のこと、番組の再生を開始すると、Twirl TVを利用していることが、Facebook上にも自動的に更新される。また、お勧めの番組を「Share」すると、同じくFacebookとTwirl TVを使っている友人にその旨が通知される。

 なお、全てかどうかは確認していないが、一部の動画は接続元の確認をしており、米国外からの接続の場合、視聴ができない。

TwirlTVのトップ画面。右側にTV局とジャンルのリストが表示ここから見たい番組を選んだり、お気に入りに登録再生画面。内容はTVと同じ。気に入った番組のリストはFacebookで共有できる

□Twirl TVのページ(英文)
http://www.twirltv.com/

●今だからこそ紙媒体を使う「enthusem」
Prospect Smarter CEO兼創業者のSteve Tingiris氏

 これはどちらかというと法人向けだが、Prospect Smarterは、マーケティングなどの媒体として郵送のグリーティングカードを使うサービス「enthusem」を発表した。

 メールの9割がスパムメールで占められるという状況の今日、スパムでないメールも、スパムメールに埋もれたり、場合によっては迷惑メールと判断されて、読まれないまま消されることも少なくない。

 こういった状況を逆手に取り、紙媒体を活用して、相手の注意を引こうというのがenthusemの特徴だ。紙媒体を使うといってもアナログ的なのは、最終的に届けられるカードだけで、その作成や送信の手続きなどはすべてオンラインで完結する。

 その手順も簡単で、アカウントを作成したら、カードを送りたい相手と、カードの表面に印刷する画像を選択したら、本文を入力するだけ。おもしろいのは、紙のカードを送るのに、添付ファイルを指定できる点。これは、画像でも音楽でもビデオでもサイトのURLでもなんでもいい。

 こうしてカードを作成すると、相手には郵便物として届く。そして添付ファイルがある場合は、enthusemのサイトに行き、5桁のコードを入力すると、それが確認できるという仕組みだ。同時に、添付ファイルが開かれると、送信主はメールでその通知を受け取る。

 基本利用料は無料で、必要なのは郵送にかかる実費だけ。世界中に郵送できるが、米国内で利用した場合の費用は1通あたり2ドル程度。

カードの作成にあたってはWeb上で送り先と本文を入力続いて表に印刷する画像を選び添付ファイルかURLを指定
すると相手にはこのように紙のカードが届く添付ファイルがある場合、印刷されたコードをサイト上で入力すると、それを開けるiPhoneからも作成が可能

□enthusemのページ(英文)
http://www.enthusem.com/

●携帯電話に音楽の歌詞を提供する「TuneWiki」

 TuneWikiは、同名の携帯電話向けメディアプレーヤーを発表した。

 このソフトは、すでにiPhoneおよびBlackBerry向けに提供されているが、今回新たに、Nokiaの各種端末向けソフトが公開された。同社は世界最大の歌詞データベースを有しており、このソフトを使うことで、携帯電話で再生している音楽および音楽ビデオの歌詞を表示できるようになる。これは携帯電話に保存された曲だけでなく、ネットを通じてストリーミング再生している曲でもできる。また、歌詞は40カ国語に翻訳して表示させることもできる。

 Nokia向けのソフトでは、新たにソーシャル機能が追加され、今自分が聴いている音楽の曲名を、各種SNSに自動的に表示させられるようになった。また逆に、Googleマップを使い、世界のどの地域でどんな音楽が聴かれているのかをチェックしたりもできる。

TuneWiki CEOのRani Cohen氏携帯電話で楽曲再生中に歌詞を表示できる歌詞はオリジナル以外に40カ国語に翻訳可能

□TuneWikiのページ(英文)
http://www.tunewiki.com/

(2009年 9月 24日)

[Reported by 若杉 紀彦]