イベントレポート

Yes!最大VRAM 24GB。LLMに効くプロ向けGPU「Intel Arc Pro B」

Arc Pro Bシリーズ、奥の大きなカードがB60、手前の小さなカードがB50

 IntelはCOMPUTEX TAIPEI 2025に出展し、会場のブースや台北市内のホテルなどで同社の顧客などを対象にしたさまざまなイベントを行なっている。

 そうした中で、最新GPUアーキテクチャ「Xe2」を採用したワークステーション向けGPU「インテルArc Pro B」シリーズ(以下Arc Pro B)を発表した。一般消費者向けのArc Bシリーズにも採用されている開発コードネーム「Battlemage」を採用した製品で、上位版のB60とB50の製品が用意されている。特に上位版のB60は、VRAMが24GBでAI推論の需要に応えた仕様となっている。

 現在OEMメーカーなどにサンプル出荷が開始されており、第3四半期に市場に出回る見通しだとIntelは説明している。

Xe2「Battlemage」のワークステーション版となるArc Pro Bシリーズ

BattlemageのBMG-G21のダイとパッケージ

 IntelのGPUは、以前は内蔵GPU専用になっていたが、2020年に投入したインテル第11世代Core(開発コードネーム:Tiger Lake)の統合GPUとなるXe-LPに、統合型CPUから単体GPUまで伸縮可能なアーキテクチャを採用した「Xeアーキテクチャ」を導入した。

 その後Xeアーキテクチャは、「インテルArc A」シリーズ(以下Arc A)として単体GPUに採用され、一般消費者向けに販売。その後プロフェッショナルワークステーション向けに「インテルArc Pro A」シリーズ(以下Arc Pro A)として発表され投入され、単体GPUへと広がりを見せた。

一般消費者向けの「Battlemage」ことArc Bシリーズ

 そして、昨年(2024年)の9月に発表された「Core Ultra 200V」(開発コードネーム:Lunar Lake)では、Xeアーキテクチャの第2世代となるXe2アーキテクチャの統合GPUが内蔵され、CPUと合わせて大きな性能向上を実現した。

 Xe2は、その後開発コードネーム「Battlemage」として開発された単体GPUにも採用され、昨年の12月に「インテルArc B」シリーズ(以下Arc B)として発表され、製品が市場に投入されている。

今回発表された「Arc Pro Bシリーズ」、一般消費者向けとは異なりプロフェッショナルグラフィックス、AI推論そして将来的にはエッジなども対象にするとIntelは説明した
将来的にはLinux認証やAI最適化などの機能が提供される予定
B50とB60という2つのSKU

 今回発表されたArc Pro Bシリーズは、Arc Bシリーズと同じBattlemageベースで、ダイは「BMG-G21」が採用されており、2つのSKU(B50、B60)はBMG-G21から派生する形で実現されている。

【表1】Arc Pro Bシリーズのスペック(Intelの資料などから筆者作成)
Xe2コアXMXVRAMメモリ帯域幅ピーク時TOPSTBPPCI Express
B602016024GB(GDDR6)456GB/s197TOPS120~200WGen5
B501612816GB(GDDR6)224GB/s170TOPS70WGen5
B60

 B60はBMG-G21のフルスペックのダイになり、一般消費者向けのB580に相当する製品となる。B580との最大の差別化ポイントはVRAMで、B580が12GBであるのに対して、B60は24GBと2倍の容量が搭載されている。

B50

 B50はBMG-G21のフルスペックからXe2コアが4つ減らされており、それに合わせてXMXのエンジン数も減っている。一般消費者向けの下位モデルとなるB560は、フルスペックから2つ減らされているので、B50は一般消費者向けモデルには該当する製品がないことになる。B560と比べると演算器は少ないが、メモリは16GBと、B560の10GBより多くなっている。

 提供されるドライバは2種類で、ゲームタイトルのDay0対応(新しいAAAタイトルがリリースされると行なわれるアップデートのこと)が行なわれる一般消費者向けのドライバは随時アップデートが行なわれ、ISV認証(プロ用のアプリケーションで必要となるソフトウェアベンダーが認証すること)に対応したプロ用のドライバは四半期に1度アップデートが行なわれる。Arc Pro Bシリーズは、どちらかのドライバから1つを選んで使うことが可能だ。

世代間の性能向上幅は最大3倍、メモリが増えていることがアドバンテージ

 Intelが公開したデータによれば、前世代のIntel Arc Pro A50(6GB)と、今回発表されたIntel Arc Pro B50(16GB)を比較した場合、性能では最大3倍の向上が見込め、平均すると性能では2.3倍、電力効率では2.4倍の改善が期待できるという。

A50とB50の比較。世代間の性能向上は最大3倍、平均して2.3倍、電力効率は2.4倍になる
B50のワークステーションでの性能
B50の価格は299ドルに

 競合他社との比較では、「NVIDIA RTX A1000」(8GB、Intelの調査では市場価格が409ドル)との比較では性能では上回っており、かつ価格はB50が299ドルと、むしろ安くなっており、価格性能比が高いとIntelはアピールしている。

B60ではメモリが24GBに増やされていることが性能向上に効果を発揮する

 B60と、競合他社製品となるNVIDIA RTX 2000 Ada 16GB、NVIDIA GeForce RTX 5060 Ti 16GBとで比較すると、メモリ16GBを使い切れないLLMでは、NVIDIA側の性能が高くなるものの、負荷が高いパラメータ数が多いLLMではメモリの制限がくることで、24GBメモリを搭載しているB60が上回ると説明している。なお、IntelはB60の価格に関しては現時点では何も言及していない。

展示されたB50とB60のカード、B60のカードは長めのカード、小さいものがB50
B50
B60

 B60はASRock、GUNNIR、MAXSUN、SPARKLE、ONIX、senao、LannerなどのOEMメーカーから販売される計画。B50に関してはOEMメーカーに関しての言及はなかったが、COMPUTEXではIntelブランドとみられるボードが展示されていた。

B60を出荷する予定のOEMメーカー
出荷は第3四半期に、AI最適化などのフル機能のサポートは第4四半期に

 Arc Pro Bは現在顧客向けにサンプル出荷が行なわれており、第3四半期に提供開始される予定。ただし、出荷時点ではすべての機能がサポートされるわけではなく、第4四半期に予定されているドライバアップデートなどでフル機能が使えるようになる形で提供されるとIntelは説明した。