イベントレポート
混沌から復活の4年後、CESはコロナ禍前よりも成長
2025年1月6日 16:33
世界最大のテクノロジー関連イベントであるCESは1月7日~1月10日(現地時間、日本時間1月8日~1月11日)の4日間、米国ネバダ州ラスベガス市のLVCC(Las Vegas Convention Center)などの会場で開催される。それに先立ち1月5日~6日(現地時間、日本時間1月6日~1月7日)には、メディアデーと呼ばれる報道関係者やテックメディアなどを対象にした記者会見などが多数行なわれ、CESは事実上既に日程がスタートしている状況だ。
1月5日にはCESの主催者であるCTA(Consumer Technology Association)の記者会見や業界トレンドを説明する記者説明会が行なわれ、イベントの現状などに関しての説明が行なわれた。この中でCTA CEO ゲアリー・シャピーロ氏は「完全デジタルになった2021年、オミクロン株の大きな影響を受けた2022年、徐々に通常に戻っていった2023年と2024年の後、今年(2025年)は完全に通常に戻っただけでなく、一部の数字ではコロナ禍の前よりもCESは成長している」と説明した。
Sphereで行なうデルタ航空の基調講演など、新しい形の基調講演にもチャレンジする
1月5日(現地時間)の午後に行なわれたCTAの記者会見では、CTA CEO ゲアリー・シャピーロ氏、CTA プレジデント キンゼー・ファブリツィオ氏のツートップが登壇し、今年CESの見所などの説明を行なった。
シャピーロ氏は「これからの2日間はメディアデーとして、数千人になる登録記者を対象とした記者会見を行なう。1月6日には19の記者会見が予定されているほか、この後に行なわれるTech Trend Watchでは市場予測などを発表する。さまざまなイベントが用意されており、テクノロジーの今が理解できるイベントになると考えている」と述べ、今年も内容が盛りだくさんになると強調した。
ファブリツィオ氏は「今年のCESにも、Amazon、BMW、Bosch、Honda、John Deere、LG、Nikon、Panasonic、Qualcomm、Samsung、Sonyなどの世界のメジャーなブランドのメーカーがブースを出している。私がブースを訪問した時にはまだブースは建設中だったが、いずれも素晴らしいブースになりつつあった。
新しい目玉は量子コンピュータに関する話題で、セミナーなどが開催される予定だ。既に量子コンピュータは現実にビジネスになりつつあるというのが我々の認識だ。
また、美容、パーソナルケア、ファッション、テクノロジー、産業機器などの新しい分野でのCES Innovation Awardのカテゴリを追加した。そうしたこともあり、CES Innovation Awardの応募数は過去最高を記録し、たとえばAI分野では50%も増加した。
ほかにも、セントラルホールのロビーに新しいクリエイタースペースを用意した。そこではクリエイター同士が交流したりできるし、メディアの関係者も参加できる。また、明日の夕方にはNVIDIAのジェンスン・フアンCEOの基調講演が、そして会期初日の朝にはパナソニックグループのグループCEO 楠見雄規氏の基調講演が行なわれる。初日夕方にはデルタ航空が、Sphereを利用してインタラクティブで新しい体験の基調講演を行なう予定など、これまでとは違った基調講演をお見せすることができると考えている」と説明し、今年のCESの展示会場での見どころや基調講演のラインアップなどに関して説明した。
出展社数で同規模、アワードへの応募などでは2020年を上回る規模に
シャピーロ氏は、今年は完全にコロナ禍前の2020年以前の通常の状態に戻ったと思うかと聞かれると、「実に興味深い5年間だった。さまざまな学びがあり挑戦だった。我々は2023年、2024年と成長を続け、今年はさらに成長するイベントになると考えている。数字の取り方にもよるが、既にコロナ禍前(2020年以前)の規模を上回っていると考えている」とした。
「今年は4,500社を超える出展社があり、特に生成AIに関連した製品を展示する展示社が非常に多くなっている。CESは世界最大のマーケティングショーであり、世界最大の自動車ショーであり、世界最大のヘルスケアショーである。また、米国外から5万人を超える参加者が参加するグローバルなイベントでもある」とした。
CTAやCTAが公開した過去の資料によれば、過去3年間とコロナ前の2020年の来場者数や出展社数は次のようになっていたという。
参加者数
2020年:17万5,000人
2022年:約4万人
2023年:11万7,841人
2024年:13万8,789人
出展社数
2020年:約4,500社
2022年:約2,300社
2023年:約3,200社
2024年:約4,300社
2025年:約4,500社
以上の数字から、オミクロン株の影響があって、対面で開催したが規模が大きく縮小することになった2022年から毎年参加者数と出展社数が伸びていることが分かる。
余談だが、2023年と2024年の参加者数が1桁まで細かい数字が出ているのは、CESの参加者数というのはいわゆる延べ人数(1日の来場者が1万人であれば3日で3万人と計算する数え方)ではなく、イベントに登録して実際に来場した参加者数を数えているからだ。この点が、延べ人数で来場者数を数えるほかの展示会との大きな違いと言える。2025年の数字については、イベントが終わってから数カ月後に外部の監査を受けてから発表される。
展示社に関しても、2022年の約2,300社から、徐々に増えており、今年はさらに増えて4,500社になっている。2020年の参加企業数の公式な数字が約4,500社だったので、出展社数に関しては確かにコロナ前の水準に戻った。
また、ファブリツィオ氏が述べた通り、分野別に注目製品を表彰する仕組みである「CES Innovation Award」の応募数は過去最高を記録しており、この点では既にコロナ前を上回っていると言える。参加企業数が2020年と同等の水準になり、CES Innovation Awardの応募数は過去最高という2つの点から見ると、確かに数字の取り方ではあるが既に2020年を上回っているといえ、もはや新しい時代に突入したといえる。
2025年の米国テック市場の市場規模は5,370億ドルと2020年代では過去最高に
CTA会見後には「Tech Trend Watch」と呼ばれるCTAのアナリストなどが市場トレンドを説明するセッションが行なわれた。この中でCTA イノベーション&トレンド担当 上席部長 ブライアン・コミンスキー氏は「今年の米国のテック市場は、3.2%成長して5,370億ドルの市場規模になると予測している」と述べ、CTAの今年の市場予測を明らかにした。この5,370億ドルという数字は、コロナ禍でテック市場にとって成長期だった2021年の5,300億ドルをも上回っており、昨年(2024年)に続いて2年連続のプラス成長になる可能性が高いという。
コミンスキー氏によれば、いわゆるZ世代(Gen Z)世代がそうした市場をリードするというのがCTAの分析で、Z世代の心をつかむことが市場で成功する上で重要になると強調した。