イベントレポート

撤退を決めた企業は10%以下、対面続行を決めたのは「スタートアップの未来を守りたかった」。CES主催者

CTA(Consumer Technology Association、全米民生技術協会) CEO ゲイリー・シャピロ氏

 世界最大のデジタル家電展示会「CES 2022」は、1月3日(現地時間、日本時間1月4日)から公式日程がスタートし、1月5日(現地時間、日本時間1月6日)からは展示会がスタートした。今回のCESは別の記事でも紹介したように、米国での新型コロナウイルス(COVID-19)の変異株であるオミクロン株の急速な感染拡大で大手企業が直前になって対面(現地にいっての参加)からリモートへと切り替えた。

 そうした対面とリモートの両方を使った「ハイブリッド」の展示会としては、今回のCES 2022がグローバル規模の展示会としては初めての展示会ではないだろうか。

 そうしたCESの主催者であるCTA(Consumer Technology Association、全米民生技術協会)のCEO ゲイリー・シャピロ氏、上級副社長 カレン・チュプカ氏が今年(2022年)のCESの見どころやそうした大企業の直前にリモートに切り替えた影響などについて説明した。

ワクチン2回接種の証明書の提示や屋内でのマスク着用など新しい感染症対策を行なうことで対面開催に漕ぎ着けたCES

CTA 上級副社長 カレン・チュプカ氏

 CTA 上級副社長 カレン・チュプカ氏は今年のCESで新しいトレンドになりそうな分野などに関して説明した。チュプカ氏は「多くの国からの報道関係者や企業の参加があり、それらの方々に対して、主催者を代表してお礼を言いたい。そしてこういう状況の中で対面のイベントを再び開催することができたことを喜んでいる。それは我々だけでなく、展示会場で展示行なっている出展社も同じ気持ちだと思う。今回のCESには2,200社以上が参加しており、その中には多くのスタートアップが含まれている」と述べ、これだけの規模で対面のイベントを行なうことができたのはおそらくグローバルには初めてのことではないかと説明した。

 そして、今年のCESで新しく注目されそうな分野としてはスペーステック(宇宙関連の新技術)やフードテックなどを挙げ、ヘルステック、オートモーティブ(自動車関連)、スマートホームなどが引き続き成長分野になりそうだと説明した。

CTAの感染症対策により、参加者は屋内ではマスク着用が義務づけられ、マスクを無くしたり忘れた参加者のため無償で配布されている

 そしてより安全な対面での展示会を開催するというCTAの方針に基づき参加者の安全を確保するために、さまざまな感染症対策を行なってきたことを強調した。チェプカ氏は「昨年(2021年)の夏に来場者全員に新型コロナウイルスに対するワクチン接種の証明書提示を求めるということを決めた。また、参加者にはセルフテストキット(抗原検査キット)2回分を配布し、迅速に行なえる体制を整えた。さらに、屋内にいるときにはマスクの適用が必要だと要請しており、仮にマスクを紛失しても、すぐに会場で新しいマスクを得ることができるようにしている。残念ながらさまざまな事情で参加することができなくなった参加者のために、デジタルプラットホームを用意しており、それを利用してメディアにインタビューを受け、商談をデジタルで行なえるようにしており、そちらはリアルなCESが終わった後も1月31日まで利用できるようにする予定だ」と述べ、コロナ禍という特殊な状況の中で開催される対面イベントを成功させたいと説明した。

シャピロCEOは中小企業やスタートアップが対面でのCES続行を望んだから対面開催を決断したと強調

CTA CEO ゲイリー・シャピロ氏

 CTA CEO ゲイリー・シャピロ氏は「ラスベガスに再び対面のイベントとして戻って来ることができたことを喜んでいる。ご存じの通り、2021年はバーチャルだけで開催し、こうした状況の中では最善を尽くせたと思っている。2022年に向けて対面でやろうと考えたのは世界的にワクチンの接種が進んだことが大きかった。対面の参加者にはワクチン2回接種証明書をお持ちいただき、屋内ではマスクをしていただくことも要件に加えた。それが対面でやれると考えた理由だ。

 展示会場を今朝歩いてきたが、これまでとは違うような展示があったりして、我々もワクワクしている。例えばデジタルヘルスの分野ではCOVID-19へのテストソリューション、スマートホームのソリューションも多い」と述べ、シャピロ氏が2022年に対面で開催しようと考えたのは、ワクチンの接種が世界的に進み、それによりワクチン普及前に比べて対面で開催できる可能性が高まったからだと述べた。

 そしてシャピロ氏は、イベント直前になってオミクロン株の感染拡大によりリモートへの移行を選択した大手企業が増え、その結果として中小企業やスタートアップへの注目が集まっているのではないかという質問に対しては「そうした企業とお話をしていると、彼らはラスベガスに来て、製品を披露できることをとても喜んでいる。その反面、大企業が彼らのポリシーに従って出展をやめたことは残念だと思っているし、一部のメディアの報道がそうした決断を後押し側面があると考えている。

 ではなぜ我々がそうした中でもイベントを続けると決断したのかと言えば、中小企業やスタートアップから未来を奪ってはならないと考え方からだ。またバイデン政権も、感染拡大の中でもビジネスを止めないという方針を貫いており、それも後押しした」と説明した。

1月5日(現地時間)からは展示が始まっている、当初は1月8日までの予定だったが、感染症対策もあり1日短縮されて1月7日までに会期が短縮された。予想されていたことだが例年よりも参加者は少なく、混雑度も明らかに下がっている

 シャピロ氏は「CESはもちろん我々CTAにとって重要なイベントだが、それと同時に業界にとっても重要なイベントだ。このイベントに参加したから、新しい顧客が見つかったり、新しい投資家が見つかったり、そういうことがそこかしこで起きている。もちろん我々は大企業の皆さまが快適に参加できるように努力し続けているが、同時にそうした中小企業やスタートアップの皆さまのご意見も常に伺ってショーを運営していることを強調しておきたい。そうした企業にとってCESが存在することが重要であり、だからこそ昨年はデジタルで開催した」と述べ、デジタル業界にとってCESが重要なイベントになっており、特に中小企業やスタートアップにとっては死活的だと考えて、対面での開催を続行することにしたのだと説明した。

 なお、シャピロ氏によれば、直前に出展の取りやめを決めた企業は全体の10%以下だということだった。つまり残りの90%は対面での形での続行を希望し、結果的にその希望が通って開催された、そういうことだったと考えることができるだろう。

ベネチアン・エキスポのCESロゴ