イベントレポート

Intel第10世代Coreは、Thunderbolt 3をオンダイ統合

第10世代CoreのCPUに内蔵されたThunderbolt 3コントローラを利用した外付ディスプレイのデモ

 Intelは「Ice Lake」(アイスレイク)の開発コードネームで開発を続けてきた10nmプロセスルールで製造される新アーキテクチャのCPUを「第10世代Coreプロセッサ」(以下第10世代Core)として発表した。

 そのなかでIntelはCPUのダイにThunderbolt 3のコントローラをオンダイ統合したことを明らかにした。4ポート相当のThunderbolt 3コントローラが統合され、CPUだけで4ポートのThunderbolt 3/USB Type-Cを実装できる。

IntelからUSB4としてUSB Promoter Groupに寄贈されたThunderbolt 3

Thunderbolt 3の仕組み(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 Intelがこれまでプロプライエタリ(独自)な規格として提供してきたThunderbolt 3は、仕様を満たした銅線のケーブル(形状はUSB Type-C)でコントローラ間の通信を最大で40Gbpsで行なえる規格だ。

 ユニークなのはデータを送る物理的な仕様と、ソフトウェアのプロトコルが分離していることで、Thunderbolt 3の通信に、ディスプレイ出力に利用するDisplayPort、周辺機器の接続に利用するUSB 3.x、PCI Expressといった異なるプロトコルを流すことが可能になっている。そのためドッキングステーションとPCをつなぐインターフェイスとしても利用することが可能。ここ数年で従来型の専用ドッキングステーションは姿を消しつつあり、汎用のThunderbolt 3を利用したドッキングステーションが主流になりつつある。

 IntelはこのThunderbolt 3の仕様を、USBの標準規格を策定しプロモーションしているUSB Promoter Group(USBプロモーター・グループ)に寄贈し、その仕様がそのままUSB4とされることが提案されていることがすでに明らかにされており、それが正式に決定すれば、今後はIntelに限らず、ほかのベンダーも含めてThunderbolt 3のコントローラを製造、自社のSoCなどに統合が可能になる。

 ただし、そのためにはThunderbolt 3のコントローラを自社で設計、製造しなければならないため、すでに数年前から自社で設計、製造してきたIntelにとってはアドバンテージがある状態になる。

 なお、今回の第10世代Coreにオンダイ統合されたThunderbolt 3コントローラはUSB4とは呼ばれない。現状ではUSB4の仕様は保留中(Pending)とされており、正式な規格になっていないためUSB4の互換性検証プログラムなどもはじまっておらず、なによりUSB4に対応している周辺機器は1つもないからだ。少なくとも現行世代ではThunderbolt 3と呼ばれることになる。ただし、電気的にも、ソフトウェアプロトコル的にもThunderbolt 3とUSB4は同等であるので、実質的にはUSB4内蔵と言っても過言ではない。

 また、現状では外付けドライブなどデバイス側のThunderbolt 3コントローラはIntelからしか提供されておらず、それがThunderbolt 3対応デバイスが高コストな要因となっている。しかし、Thunderbolt 3がUSB4となり仕様が公開され誰でも作れるようになったことで、今後はIntel以外の半導体メーカーがより安価なUSB4コントローラ(≓Thunderbolt 3コントローラ)をリリースする可能性が出てくるので、USB4の仕様として正式に決定されればデバイス側のコストも大きく下がり、普及進む可能性がある。

最大4ポートまで実装可能なIce LakeのThunderbolt 3コントローラ

Ice Lakeに内蔵されているThunderbolt 3コントローラの構造、4ポートをサポートする(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 そうしたThunderbolt 3のコントローラを内蔵している第10世代Coreだが、最大で4ポートのThunderbolt 3/USB Type-Cを実装できる。ただし、「Retimer」とIntelが呼んでいる複数の信号を1つに束ねる役割を果たすコントローラは外付けになっており、こちらはIntelからOEMメーカーに別途供給される。OEMメーカーは、このRetimerとUSB PD(Power Delivery)のコントローラを別途用意して基板上に実装するだけで、Thunderbolt 3の機能をマザーボードに実装できるので、従来よりも圧倒的低コストで実装可能だ。

従来の外部Thunderbolt 3コントローラを実装する場合のデザイン(出典:Blueprint、Intel Corporation)
Ice LakeのThunderbolt 3コントローラを実装する場合のデザイン(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 なお、第10世代CoreのPCHになるIce Lake PCHにはUSB 3.1 Gen2(10Gbps)のコントローラが6つ搭載されており、別途USB 3.1 Gen 2に対応したUSBポートを6つ実装できる。薄型ノートPCではそこまで必要ないかもしれないが、液晶一体型PCや、NUCのような小型PCに利用するときには追加コストなくそれが実装できることは、大きな意味があるだろう。