イベントレポート

TGSでVR HMD「FOVE」を体験。視線トラッキングはやっぱり凄かった

~VR系は規模拡大で、各社HMDなど目白押し

FOVE

 「東京ゲームショウ 2016」が開幕した。本日から明日(16日)まではビジネスデイで、17日~18日は一般向けのパブリックデイとなる。

 ここ最近の東京ゲームショウでは、VR系ブースの展開規模が拡大されつつあり、今回はホール9にVR専用のブース群を設置。規模が拡大されており、VRの盛り上がりを象徴するかのようだった。

 ここでは、東京ゲームショウで見てきたVR系デバイスについてお届けしたい。

FOVE

FOVEのブース

 現行のコンシューマ向けVR HMDと言えば、Oculus RiftやViveといったポジショントラッキング式が主流だが、次世代のトラッキング方式として注目を集めている、視線トラッキング式VR HMDの「FOVE」に興味を持っている方もいることだろう。今回、ようやく一般向けに体験できるようになったのは喜ばしい限りである。

 筆者は開幕からFOVEブースに直行し、早速FPSゲームの「Project Falcon」を10分ほど試遊させてもらった。Project Falconはロボットに乗り込み敵兵機を倒していく内容のゲームだが、敵機のロックオンを視線で行なえるのが特徴だ。なお、射撃に関してはXboxコントローラが利用されていた。

 FOVEは、レンズの回りに人間の黒目部分を赤外線で読み取るセンサーが備わっていることに加え、カメラによるポジショントラッキングにも対応している。視線だけでは画面端にいる敵をロックするのが難しいので、ただ目を動かすだけでなく、頭も動かしつつの操作になる。

 FOVEから見える映像はかなり鮮明なように思えた。コンテンツにもよるだろうが、Viveを何度も使っている筆者からしても遜色はない。Viveの解像度は1,080×1,200ドット(片目)であり、FOVEは1,280×1,440ドット(同)で、200ドットほど解像度が高くなっている。ただし、Viveのリフレッシュレートが90Hzであるのに対し、FOVEは70Hzなのでこの辺は多少心配していた。ゲームをプレイした限り、大きな遅延を感じることもなく、3D酔いせずにプレイできた。

 視線でのロックオンだが、照準位置は視線を動かすとカッカッカッと若干飛び飛びに、数ミリ秒くらい遅れる感じで追従する。遅いというわけではないが、スムーズではなかった。視線用トラッキングセンサーのフレームレートは120fpsとのことなので、これはゲーム側の問題なのかもしれない。

 それでも、視線ロックオンの感触はかなり良好だ。敵を目視するだけで照準が合い、後はトリガーを引くだけというのは想像以上に便利であり、こういった近未来ロボット系のゲームとの相性は抜群のように思える。マウスやアナログスティックをがつがつ動かすことなく、割とノンビリと遊べるので楽でもある。

 ただ、今回のゲームは視線を外すとロックが外れてしまうため、ゲーム中のUIを確認しつつ、的確に撃つといったことができなそうだった。これについてはゲーム自体の設計で解決できる問題だろう。

 視線トラッキングは、こうしたシューティングゲームだけでなく、メニューの操作といった点でも優秀だ。Viveの専用コントローラでメニュー操作をしたことがある方なら分かると思うが、非常に使いにくいし、腕を動かさないといけないので正直疲れてくる。FOVEの場合、見た位置にカーソルが合うのでかなり楽ちんである。机の前に座ったプレイスタイルだと、モーションコントローラでは目の前のコップなどを倒してしまうといった惨事も起こり得るが、その点は視線トラッキングは理想的と言えるだろう。

 説明員に話を聞いてみたところ、コンシューマ向けの販売はワールドワイドで今冬を予定しており、価格は6~7万円前後になるという。値段に関してはOculus RiftやViveと大きく変わらないようだ。ただし、Viveのようにコントローラは付属しない。

 FOVEはSteamVRに対応しているため、現在Viveで遊べるゲームも、ポジショントラッキングだけならプレイ可能とのことだった。発売までにFOVEに対応したタイトルがどの程度発表されるかは、現時点ではなんとも言えないようだった。

 視線トラッキングだけでかなり遊びの幅が広がると実感できるだけに、対応ソフトが増えて欲しいところだ。未体験の人は是非ともその新しい感触を味わって欲しい。

取り付け方はViveなどと変わらない
ポジショントラッキング用のカメラ
下面
レンズの回りにLEDが実装されている
Project Falconの画面。ロックオンは視線で行なうが、ショットはXboxコントローラを使った

【追記】販売価格など若干の修正を行ないました。

そのほかのVRデバイス

 会場では中国のVR HMDなど、まだ日本では知られていないものも散見した。薄型化や軽量化に注力している製品が見られ、コンシューマ向けではなく、ビジネス向けが多い印象だった。対応ソフトも独自のものが多く、ViveのようにSteamから遊べるといった類いのものではないのは残念なところだ。

台湾FUTURETOWNのVR用デバイスが活況だった。直感的なスキーを体験できる「STANDING MODULE」、乗馬の没入感を高める「RIDING MODULE」などアミューズメント向け製品を展示。試遊に長蛇の列ができていた
仏3DRudder SAが開発した、足による操作を可能にする「3DRudder」。日本の住居環境の問題もあり、基本的に現行のVR HMDは椅子などに座ってプレイするスタイルが普通だろう。そのため、仮想空間を歩き回るには、もっぱらコントローラかキーボード操作となる。3DRudderは、こうしたVRでの移動操作に有用なUSB接続の足用コントローラと言える
話を伺ったところ、3DRudderには特別なドライバは必要ないとのことで、コントローラのアナログスティックとして機能するという。円形部分に両足を載せて、前に傾くと前進といった具合だ。基本的に両足で操作を行なうことになる。傾けるだけでなく、片方の足のつま先を浮かせることで、別のアクションも可能。空間上を歩くデモでは、右のつま先を上げると上昇、左のつま先を上げると下降ができた。価格は200ドルくらいで、日本では11月の発売を予定しているそうだ。販売はオンラインストア経由になるとのこと
6月に国内発表された「IDEALENS」も展示されていた。バッテリを内蔵し、ケーブルレスで使用できるのが特徴。コンテンツは独自のものが用意される。中国では今月中に発売され、日本では今年(2016年)中に発売予定。価格は5~6万円ほど。コンシューマよりも、ビジネス寄りの展開になる
中国のShenzhen Dlodlo TechnologiesのVR HMDが展示。メガネ型の「dlodlo V1」は日本で2017年初頭に発売されるとのこと。価格は3万円ほど。Micro HDMIケーブルを接続して映像を表示する。軽量さが特徴で、ソフトは独自のものが用意される
スマートフォンを使用するタイプの低価格VR HMD「STEALH VR」。8月に発売されている。価格は9,800円。
簡易タイプもある
immerexの小型VR HMD
VIVEの体験ゾーン。ドスパラの機材が使われていた
AMDも参加協力