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ARM、6日開催の「ARM Technology Symposium 2013 Japan」を概説

ARMのアントニオ・J・ヴィアナ氏
12月5日 開催

 英ARMの日本法人であるアーム株式会社は5日、6日に開催する同社主催の技術カンファレンス「ARM Technology Symposium 2013 Japan」に先立ち、その概要や、直近の動向などについて説明を行なった。

 まず、ARMグローバル&コマーシャルデベロップメント担当エグゼクティブバイスプレジデントのアントニオ・J・ヴィアナ氏が、ARM自身および同社を取り巻く環境に関する基調講演のハイライトを紹介した。

モビリティと接続性は増加の一途

 今IT業界で重視されているのは、インターネットの接続性とモビリティの2つだ。これらは、単にスピードが速くなったり、より軽くなったりしただけではなく、それまで音声通話とテキストメールしかできなかった携帯電話が、顔認識や動画編集までこなせるほどに高度化するとともに、爆発的に普及。2013年のスマートフォンの出荷台数は10億台に達するとも言われ、モバイル端末のネットアクセス量は、今後5年間で12倍に膨らむと予想されている。これは、同社やそのパートナーにとって新たな機会であるが、同時に課題でもある。また、これまで接続性やモビリティと無関係だった企業も、これらの市場とは無縁ではなくなりつつあると同氏は説明する。

 モビリティは、いわゆるコンピューティング端末だけではなく、現在では車載機器を始め、さまざまなものにまで組み込まれつつある。いわゆる「Internet of Things (IoT):モノのインターネット」である。IoTは、今この業界で流行りの用語だが、その真の重要性はあまり理解されていないと同氏。

同社とエコノミスト誌の共同調査のまとめ

 同社が、20カ国の800名のビジネスリーダーを対象にエコノミスト誌と共同で行なった調査によると、「IoTはみなが思っている以上に、社会へ影響をもたらす。単に機械同士が繋がるだけじゃなく、生活の仕方やビジネスの仕方そのものまで変える。また、その実現には各社の協力が不可欠で、IoTから流れてくるビッグデータを管理/活用するには、新たな標準化と相互運用性が必要となる。そのために新たなソリューションが求められており、そこに新たなビジネスの機会がある」との結論に達したという。その機会を捕まえるためには、今その波に乗る必要がある。

 ただし、機会だけではなく、IoTには課題もある。その1つがエネルギーで、IoTによって増加する電力需要を新たなダム建造でまかなうのは賢くない。よりエネルギー効率の高いデバイスが求められる。それを提供するのがARMの技術だとヴィアナ氏は説明する。

 また、機会獲得と問題解決をARM 1社で実現することはできず、協力こそが重要で、協業を最大化することで、新たな革新を推進できるとした。

アームの内海弦氏

 続いてアーム日本法人代表取締役社長の内海弦氏が日本アームの戦略について説明した。同社の役割は一言で言うと「日本企業のビジネスを支援」ということになるという。デジカメやスマートフォンのカメラセンサーなどは、日本で生まれた先端技術だ。しかし、その製品化は日本だけでなく、世界中で行なわれている。内海氏としては、日本発の技術を、日本で製品化に繋げていくことで、スマートフォンの次なるものが生まれるのではと期待しているという。

 また、自動車についても日本は世界3大製造拠点の1つであり、今後、自動車にセンサー技術が有機的に統合され、これまでそれ単体で動いていたものが、他のデバイスと密にリンクするようになり、ひいては社会の一部となる。その後押しをするのがアームの役割だという。

 内海氏は、6日のカンファレンスのテーマについても紹介した。主なものとしては、パートナーのセッション/展示、big.LITTLE、IoT向けのCortex-Mなどのプロセッサ、新しいインターコネクト、Mali GPU、フィジカルIP、開発ツールとなっている。

日本は世界のR&Dである
アームの役割は日本企業の支援
ARM Technology Symposium 2013 Japanの概要
ARMのイアン・ファーガソン氏

 最後にARMセグメントマーケティング担当バイスプレジデントのイアン・ファーガソン氏がIoTと同社の関わりについてまとめた。

 IoTは広範なものに組み込まれていく。組み込む対象が異なると、そこに使うべきチップも異なってくる。ARMとしては、腕時計に入るセンサーから、サーバー向けプロセッサまで全ての範囲でソリューションを提供していく。

 また同社では、IoTの先端にあるデバイスと、そのデータが蓄積されるクラウドの間において、スマートフォンがハブデバイスとして利用されると考えるが、スマートフォンのリッチなSoCをセンサー用に使っていたのでは電力効率が悪いので、センサーとアプリケーションSoCとを仲介するセンサーハブを実装していくという。

 もう1つ同氏が強調したのが、今後命令セットへの依存性は低くなっていくということ。これまでサーバーというとx86プロセッサが寡占していたが、組み込み向けから出発し採用が進むARMにおいても、オープンソースが使われ、データセンターにおいても命令セットは重要ではなくなっている。実際、x86プロセッサを開発するAMDも、64bit ARMv8アーキテクチャを採用したサーバー向けプロセッサの採用を表明し、ハイエンド業界でもARMのプレゼンスは強まっている。同氏は、ARM技術を採用することで、新しい企業もこの市場にも参入できるようになっていると締めくくった。

 なお、ARM Technology Symposium 2013 JapanについてもPC Watchではレポートをお届けする。

ARMはサーバー向けからセンサー向けまでIoTに関わる広範な製品群を提供
スマートフォンでは、アプリケーションプロセッサとセンサーを仲介するハブを実装し、省電力化を図る
データセンター市場にもARMを採用した新たなプレーヤーが参入
2014年以降はARMv8の64bitアーキテクチャ採用製品も投入される

(若杉 紀彦)