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千葉工大、完全防水で大型アーム付きの原発ロボット「櫻弐號」を開発

~三菱重工から生産販売

原発対応ロボット「櫻弐號(さくらにごう)」
9月25日 発表

 学校法人千葉工業大学は9月26日、新規開発された原発対応ロボット「櫻弐號(さくらにごう)」を報道陣に公開した。

 櫻弐號は、2011年6月から東京電力福島第一原発に投入され、建屋最上階まで調査した原発対応版「Quince」の後継機。千葉工大と原子力分野向けロボットの開発・生産に関する技術協力協定を8月1日付けで締結している三菱重工業株式会社から今後、生産販売される予定だ。

 サイズは幅510mm、高さ180mm、全長720~1,040mm、重量48kgの全面クローラ型の移動ロボット。移動速度は50cm/secで、傾斜45度の階段の昇降を行なうことができる。50kg程度の積載能力があり、今回のモデルでは180cmまで伸びる重さ20kgの高剛性大型アームを搭載している。操作は遠隔操縦で行なう。

「櫻弐號」側面
瓦礫上でも作業可能
IP67相当の防塵/防水性能を持つ

 アームトップには広角カメラとLED照明、先端にはハンドグリッパを搭載しており、重さ4.5kg程度の物体を把持できる。電磁ブレーキとウォームギアを使って電力をあまり消費せずに姿勢保持ができるほか、トルクリミッターによって外力を加えられても、いなすことで壊れにくくなっている。カメラとハンドグリッパ部分にはスリップリングが使われており無限回転する。このアームを使うことで、サンプル採取やドア開けなど、iRobotのロボット「PackBot」ができる作業はだいたいこなせるという。

 バッテリはリチウムイオン。容量は700Whで、連続稼働時間は8時間程度。大きな特徴はIP67相当(耐塵、水中への浸漬)の防塵/防水性能があり、水中での活動が可能なこと。これらは現場からの要望に答えたものだという。実績を積んだ「Quince」を元に、ソフトウェア群を継承しつつ、モータードライバーなどは新規に開発した。

180cmまで伸びるアームを搭載。材質はカーボンファイバー
アーム中央のハンドグリッパでは4.5kgのものを把持できるという
アーム先端の広角カメラとLED照明
サンプル採取やドア開け作業ができる
開発中の操作画面。Quinceのものを継承する
【動画】階段を上り下りする「櫻弐號」
【動画】アームで木片を拾う
【動画】防水性能のデモ。水中でも活動可能
【動画】ドア開け作業の様子(fuRo提供)

 千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)開発のロボットは、これまでに延べ3台が福島第一原発で情報収集などを行なってきたが、櫻弐號の福島第一原発への投入時期は未定。fuRoの古田貴之所長は櫻弐號について「放射線を計測するガンマカメラなど重い計測機器も搭載できるし、大型のアームで物体を把持して作業ができる」と違いをアピールし、「レスキューロボットであった『Quince』の単なる改良ではない」と強調した。また、技術協力する三菱重工業の品質管理等によって「また一段高いところに災害対応ロボットをもっていくことができるのではないか」と述べた。

 今回の技術協力協定を通して、今後、原子力関連に限らず、広く「CBRNE災害(Chemical=化学、Biological=生物、Radiological=放射性物質、Nuclear=原子力、Explosive=爆発物)」の収束支援に貢献するロボットを開発・生産していくとしている三菱重工業からは、市場ニーズに合わせた形でカスタマイズに応じながら生産して販売していくことになるという。

 なお三菱重工業単独でもロボット開発は行なっているが、同社原子力事業本部 原子力製造総括部 原子力機器設計部の宮口仁一部長によれば、同社の他の原発用ロボットとは用途や大きさが異なっているため使い分けができ、また千葉工大による移動ロボットには運用を通したマニアックなノウハウが蓄積されており、互いに刺激を受けつつ、技術を吸収したいとのことだった。

 囲み取材では福島第一原発にも投入されているiRobotの「PackBot」や「Warrior」などがライバル製品として考えられることから海外での販売の可能性や、2015年度中に電気事業連合会による設置が予定されている「原子力緊急事態支援機関(仮称:原子力レスキュー)」など具体的な想定ユーザーに関する質問も飛んだが、まずは国内からの販売を想定しているが詳細は未定とのこと。価格なども未定とのことだ。

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長 古田貴之氏
三菱重工業株式会社 原子力事業本部 原子力製造総括部 原子力機器設計部部長 宮口仁一氏
多くの報道陣がつめかけた

(森山 和道)