楽天株式会社の子会社であるKoboは、電子ペーパー式電子書籍端末「kobo Touch」を7月19日より発売する。価格は7,980円。
Koboはカナダの企業で、同名のブランドを冠する電子書籍端末を欧米を中心に展開。コンテンツは240万冊、ユーザーは900万人に及ぶ。2011年11月に楽天が買収、完全子会社化しており、今回、日本でもkoboの販売と、電子書籍サービスが開始されることになった。
kobo Touchは、E Ink製16階調グレースケール表示対応の6型電子ペーパーを搭載。電子ペーパーのため、太陽光下でも見やすく、省電力で、バッテリは約1カ月間持続する。操作はタッチを前提としており、本体正面のホームボタンと、上部にある電源以外に、操作ボタンなどは搭載しない。IEEE 802.11b/g/n無線LANを内蔵しており、単体で書籍を購入/ダウンロードできる。
本体サイズは114×165×10mm(幅×奥行き×高さ)、重量は185gと、軽量小型。ストレージ容量は2GB(内利用可能領域は1GB)で、約1,000冊を保存可能。microSDカードスロットもあり、32GBカードで約3万冊を保存できる。
kobo Touch。下部にホームボタン | 背面 | 上面。左に電源ボタン |
右側面 | 左側面 | 下面。中央にmicroUSB |
背面は3色のカラーバリエーション | ブラックは筐体も黒い | |
書籍+メニューを表示させたところ | フォントサイズを変えたところ |
電子書籍の販売にあたっては、本体発売と同じ7月19日から「koboイーブックストア」をオープンする。提携出版社の具体名は明らかにされていないが、当初は日本語書籍3万冊を用意。さらに、英/仏/独/西/伊など既存の7カ国語240万冊の書籍も購入できる。購入に際しては、楽天IDを利用し、購入に応じたポイントの取得、あるいはポイントを利用した購入もできる。
対応フォーマットはEPUBおよびPDF。現時点で唯一という、Facebookと連携し、読書履歴を公開したり、お気に入りのフレーズをアップロードしたりする機能を搭載。また、購入した作品を、PCやスマートフォン、タブレットでも閲覧できるアプリを近日公開予定で、端末を変えても、最後に読んだ場所から読書を再開できる。日本語フォントはモリサワのゴシック系と明朝系2書体を内蔵する。
電子ペーパーを採用し、バッテリは1カ月持続 | 書籍はkoboイーブックストアで購入 | |
楽天のポイントも利用できる | 近日公開予定のアプリで、他の端末からも書籍を閲覧できる | ソーシャル機能も搭載 |
●kobo投入の背景と既存事業の今後
2日に行なわれた製品発表会では、楽天代表取締役会長兼社長兼Kobo Directorの三木谷浩史氏が、製品投入の経緯や特徴などを説明した。
まず、製品投入の経緯として三木谷氏は、「日本では読書離れが進んでいる。隣国の韓国では、官民一体でコンテンツを輸出し、産業を発展させている。一方、日本では、漫画やファッション雑誌など、幅広い分野で良質なコンテンツを持つにもかかわらず、さまざまな制約で海外に進出できずにいる。実は、アメリカでも読書離れが起きていたが、電子書籍の登場により、市場が活性化し、紙の書籍も売上が伸びた事例がある。日本が世界から取り残されないためにも、電子書籍で出版文化の衰退に歯止めをかけたい」と、書籍市場の活性化とそれによる“国家的危機”の回避という思いがあったことを説明した。
国家的危機というのはやや大げさな表現だが、三木谷氏は、読書による人格形成や知識の習得が、将来的な国家の盛衰にも関わると説く。また、koboではオープンフォーマットであるEPUBを採用することで、出版社が国内の作品を簡単に海外展開できる下地を有しており、このことが出版業界の活性化につながるだけでなく、過去の国内企業の電子書籍事業がうまく立ちゆかなかった原因であるとも述べた。
当面の目標は150万冊を取りそろえることで、人気作の獲得に留まらず、kobo限定の先行配信なども行なう予定があるという。
電子書籍の今後の市場規模について三木谷氏は、欧米で3~5年前にゼロだったものが、現在では新刊の50%近くが電子版になっていることを考えると、日本でも5年前後で20~30%、あるいは50%超が電子版になる可能性もあるとの見通しを示した。
なお、海外版koboでサポートされる、個人による自費出版サービスについては、将来的な課題としたが、楽天自身が出版事業を始める意思はないという。また、同じく海外では汎用的なタブレットも出ている。これについて三木谷氏は、具体的計画はまだ語れないとしながらも、「Koboの社長の事業欲は強い」と述べ、日本での投入の可能性があることを示唆した。
2011年8月に投入した電子書籍端末「Raboo」については、詳細は未定だが何らかの形で今後koboサービスに統合させる予定という。一方、同社が参加する、端末や書店の相互接続を実現するブックリスタとの連携については具体的な回答を控えた。
kobo Touch投入の背景には、日本の優れた文学・文化の輸出や、読書離れの歯止めの意図もあったという | 目標は150万冊を取りそろえること |
(2012年 7月 2日)
[Reported by 若杉 紀彦]