レノボ、みなとみらいに移転した大和研究所を紹介

大和研究所が入居しているみなとみらいセンタービル

6月10日 開催



 レノボ・ジャパン株式会社は10日、みなとみらいに移転した大和研究所でプレス向けのツアーを開催し、研究開発用の施設や設備などを紹介した。

 大和研究所はIBM時代からのPC研究開発拠点。2005年にレノボ・ジャパンが誕生してからも日本IBM敷地内に置かれていたが、2011年1月4日にみなとみらいへ移転し、「大和事業所」から「大和研究所」に名前を変更した。1月4日より操業開始していたが、研究用の試験設備の導入などで時間がかかった。今回プレス向けのツアーではそのほぼ全貌を見ることができた。

みなとみらいセンタービル2階部分に研究施設が入っている

 大和研究所が入居しているのは、神奈川県横浜市のみなとみらい地区にある「みなとみらいセンタービル」。南に道路1本を挟んでクイーンズスクエア横浜が見え、みなとみらい駅に直結する好立地だ。東にパシフィコ横浜が見えるが、6月現在、東西に隣接する土地は現在建設中となっている。

 研究開発の試験設備はビルの2階部分、そのほかのオフィスや実験室は20階と21階部分に入居している。ただし、一部騒音が出る落下試験や振動試験などの研究施設については、同居しているテナント店舗に迷惑がかからないよう、本館と離れた場所に設置されている。今回のツアーでは試験設備が導入された2階が公開された。

 ツアーの冒頭でレノボ ジャパン 品質開発・製品保証 テスト技術 課長の小林康浩氏は、「大和研究所がみなとみらいへ移転したが、レノボグループにおける役目は従来通り、ThinkPadのハードウェアの研究/開発を行なう。大和研究所が持つ、“堅牢性”、“耐久性”、“信頼性”、“性能優位性”という4つの強みを維持し、今後ThinkPadの開発を続けていく」と述べた。

 この“4つの強み”を実現するために、「振動衝撃試験設計ラボ」、「耐久試験設計1ラボ」、「耐久試験設計2ラボ」、「無線性能試験設計ラボ」、「音響試験設計ラボ」、「EMC試験設計ラボ」、「信頼性試験設計ラボ」、「電磁波試験設計ラボ」の8つのエリアで、設計チームが設計したThinkPadがテストされる。

品質開発・製品保証 テスト技術 課長の小林康浩氏レノボの研究開発拠点レノボが入居しているフロア
大和研究所が持つ4つの強み主な試験項目主な研究施設

 なお、ツアーでは撮影のため既存のThinkPadを使用してデモが行なわれていたが、本来テストされるのはいずれも量産前段階の設計段階にあたるモデルである。生産ラインの抜き打ちテストは工場側で行なわれているため、普段大和研究所では見ることができない。

 試験工程を見る限り、かなり過酷なテストが行なわれているが、これは製品の生産過程において個体差のバラつきが出るので、最低限の品質のものでも堅牢性や信頼性を保つため行なわれているという。さらに“Think”と呼ばれている製品についてはすべての試験をクリアしているとのことだ(Edgeのみ一部テストの基準は異なるするが、すべてのテスト項目は行なわれる)。

 ツアーでは、約8,000Vの電圧をかける静電気試験、携帯電話の電波による誤動作の有無の試験、4日間に渡る連続ヒンジ開閉の試験、基板の歪み耐性試験、加圧試験、高温/多湿環境試験、EMCテスト、アンテナ送受信性能試験、騒音テスト、振動試験、落下試験などが紹介された。以下、動画と写真でご紹介する。

携帯電話の電磁波による影響のテスト。電磁波を擬似的に出す装置を利用する光っているのは簡易なLED回路。ご覧のように電磁波はLEDを点灯するだけのパワーを持つので、ノートPCに与える影響も決して少なくはない約8,000Vの電気をThinkPadに加えた、静電気を想定したテスト。これで電荷をThinkPadに貯めていく
電荷を溜め込んだ状態でドッキングステーションにいきなり嵌めても、静電気による誤動作がないよう対策したというパネルの開閉試験。左右のアームがあるのは左利きと右利きをそれぞれ想定しているタブレットではひねりテストも加わる
天板への一点加圧試験より広い範囲で連続した圧力が加わったことを想定した試験天板に重りを載せる試験。なお、数値は公開されなかったが、手に持ってみたところ相当重く、1個あたり10kg前後とみられる
ThinkPadの天板に人が載っても大丈夫だった基板にひねりを加えると数値に現れる装置。ケースに実際に組み込んだところを想定し、基板の歪みによるハンダへの影響などを分析する高温多湿環境を作り出せる装置。装置自体は一部屋分ほどある大きさだが、パネル状に分解可能なため、大和市からそのまま移転できたという
60℃に設定しているところ。実際は製品出荷時の空輸や船輸を想定したもので、航空機による輸送では0℃前後、一方船による輸送では60℃の環境になることがあるため瞬間的に温度を変化させられる装置EMCテスト。ThinkPadから出される電磁波を電波暗室でキャッチする
さまざまな角度からEMCをテストできるよう、ターンテーブルとなっており、リモートで操作できる無音室での騒音テスト。音圧レベルだけでなく、耳障りな音かどうかも分析しているという無音室の壁は厚さ約60cmの吸音材でできている。暗騒音は平均7~8dBで、最大でも10dB程度だという
無線機能のテスト。さまざまな角度に回転し、あらゆる方面からの電波受信性能を評価する無線機能テストをもとに開発されるThinkPadのアンテナ。モデルごとにフォームファクタが異なるため、1シリーズずつオーダーメイドとなっている無線LANだけでなく3GやWiMAXの電波の受信テストなども行なえる
耐衝撃試験。バッグに入れた後落としてしまったときのことを想定している耐振動試験。バッグに他のものと一緒に入れ、振動が加わったことを想定し、底面に自由に動く重りを置いている。この状態で丸1日のテストを行なうパネルの1点加圧試験。テストされていたのはThinkPad X1で、このような薄型パネルのモデルも容赦なくテストにかけられる
防塵試験の装置落下テスト。こちらも高さは非公開だが、目視で約1mの高さから落としていた
角落下試験。8つの角に対して落下テストを行なうHDDのアクセス中にノートPCの片方を引き上げて落とす試験。装置自体はハンドメイドとのことだ
【動画】パネルの開閉試験
【動画】天板の1点加圧試験
【動画】天板の連続加圧試験
【動画】パネルの歪み耐性テスト
【動画】HDDアクセス中の衝撃テスト

(2011年 6月 13日)

[Reported by 劉 尭]