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「米政府主導でAI開発に減速を」 中国モデル台頭のさなかに出た共同声明

共同声明「Pacing the Frontier」では、AI開発の速度を意図的に調整する手段の整備を米政府に求めている

 AIを止める手立てを、作っている当人たちが求めた。OpenAIやAnthropicなどフロンティアAI企業の従業員1,224人が7月28日(米国時間)、共同声明「Pacing the Frontier」を公開し、AI開発の速度を調整する手段を国際協調で整備するよう米政府に要請した。

共同声明が求めたのはAI開発の禁止ではなく速度を調整する手段

 求めているのは開発の禁止ではない。AI研究自体をAIが担う「自動化されたAI開発」が近づいているとの認識のもと、能力の向上が人間の理解や制御を超えて加速するリスクに備える時間が必要だ、という主張だ。企業も国家も単独では減速できず、フロンティア全体の速度を調整する道具が世界に存在しない、と声明は認める。

OpenAIとAnthropicは公式Xアカウントで賛同を表明

 賛意は企業の側からも出た。OpenAIは7月28日(米国時間)、公式Xアカウントで、フロンティアモデル開発におけるAIの加速がいずれ非常に大きくなり、世界がAIの進歩の速度を調整する必要が生じうると述べた。その実現に必要な手段の開発で、米政府主導の取り組みに貢献したいという。

 Anthropicは同日、自社の研究を根拠に挙げて支持を表明した。CEOと複数の共同創業者、幹部が署名しているという。6月4日公開の自社研究が速度調整の手段の必要性を示している、との説明だ。

 その研究「When AI builds itself(AIが自らを作るとき)」は、AIが自身の後継を設計・開発する「再帰的自己改善」の現状報告だ。2026年5月時点で、自社コードベースに統合されるコードの8割超をClaudeが書いていると明かし、フロンティアAI開発を減速または一時停止する「選択肢」を世界が持つことが望ましいとした。

共同声明は国も企業も名指ししていないが、要請の宛先は米政府

 もっとも、要請の宛先は米政府であり、声明は特定の国も企業も名指ししていない。ただ、この数日の米国側の動きは、別の方向を向いている。米科学技術政策局のMichael Kratsios(マイケル・クラツィオス)局長は7月22日、中国Moonshot AIがAIモデル「Kimi K3」の開発でAnthropicの「Fable」を蒸留したとの情報があるとXに投稿した。財務長官のScott Bessent(スコット・ベッセント)氏も、制裁やエンティティリスト指定に言及している。Kimi K3は、一部のベンチマークでClaude Fable 5やGPT-5.6 Solを上回ったモデルである。

 Kimi K3のように性能で肩を並べる中国製モデルが登場するなかで、米国発の枠組みづくりが加速している――そう筆者は見ている。速度調整が米国だけで完結しないことは、Anthropic側も認めている。同社のDario Amodei(ダリオ・アモデイ)CEOは7月27日の公式ブログで、公開前の安全性テストを義務化するなら世界規模での実施が必要で、中国の参加も欠かせないと書いていた。

 どの水準で、誰が速度を落とす判断を下すのか。その仕組みの設計は共同声明「Pacing the Frontier」に示されておらず、米政府が応じるかどうかも明らかになっていない。