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NEC PCが語る“AI PCの未来”と、いとうまいこ氏の働き方。AI×PC DAY基調講演

最新モデルとして、2025年7月に発売したAI PC「VersaPro タイプVY」も紹介

 NECは4月24日、虎ノ門ヒルズフォーラムにおいて、同社製品とAIに関する取り組みなどについてのイベント「NECパーソナルコンピュータ AI×PC DAY 2026」を開催した。

 会場ではAIを活用した未来の働き方を変革する先進ユースケースやAI活用モデルなどを展示した「AIイノベーション」、同社パートナー企業が提供するAIアプリケーションなどを展示する「パートナーソリューション」、NEC PCの最新AI PCや同社独自のAI機能、管理運用ソリューションなどを紹介する「NEC PCソリューション」といった展示コーナーも設けられている。

 本稿では10時30分からの基調講演の模様についてレポートする。

オープニングでは、NECのPCに関する歩みがまとめられたムービーが流された。始まりは1979年の「PC-8001」から。ほかにも「PC-9801」や「PC-100」などの過去モデルが
開会の挨拶には、NECパーソナルコンピュータ 執行役員 コマーシャル営業推進本部長の飯田陽一郎氏が登壇
基調講演会場の反対側には展示コーナーがあり、12時の段階ではかなりの来場者の姿が確認できた

面倒なことはAIに任せて人間にしかできないことをする

 基調講演では、「創造性×AI×生産性 テクノロジーで再定義する未来の働き方」として、俳優や経営者、研究者、大学教授などの肩書を持つ、いとうまいこ氏が登壇。最初の10分くらいは自身の自己紹介として、1983年にアイドルとしてデビューし、「不良少女とよばれて」などのドラマで一世を風靡、その後は事務所とのトラブルで辞めてからは仕事が激減したなど不振の時期について紹介し、「芸能界は怖い所でした」と当時を振り返り、苦労の時代を語った。

 1995年のインターネット黎明期には、芸能界では一早く自身のドメイン「mai.co.jp」の取得やホームページを開設するなど、早い段階からPCに触れていたことを明かした。なお、現在も同氏のホームページは外注などに頼らず、自身の手で更新を続けているとしており「めちゃくちゃダサいと言われるがすべて自分で更新しているので、興味がある方は見てほしい」とした。

 その後、45歳で早稲田大学の通信教育を経て、予防医学からロボット工学、さらに生命科学(アンチエイジング)へと専門を広げ、現在は東京大学の大学院で研究を続ける一方、情報経営イノベーション専門職大学の教授として「ヒューニング学」を教えるなど多岐にわたって活動している経歴を披露。最後は気になる人がいたら講演に集中できないだろうとして、骨折してしまった自身の右手をアピール。プレゼンではレントゲン写真も披露して冒頭の掴みとした。

俳優や経営者、研究者など幅広く活動する、タレントのいとうまいこ氏
かわいいイラスト入りの1枚の資料で自身の経歴を披露。映画で脱ぐことになった時は役者の道なども検討していたため我慢したが、その後、脱ぐ必要のある写真集を提案された際には断ることとし、それが退所の原因になったとコメントしていた
骨折している右手を披露し、その原因について、4月1日に自宅で猫を追いかけてキッチンの方へ走っていた際に足がもつれ、キッチンのシンクの縁に手をついてしまったと明かす。4月1日ということでマネージャーからはエイプリルフールの嘘だと思われたというエピソードも語って笑いを見せていた
自身の骨折のレントゲン写真もプレゼンし、折れている個所を示して笑いを見せていた

 本題に入る際には、本日の登壇で使用するプレゼンテーションについてもAIを使って制作したと経緯を説明。AIによる効率化の現状として、いとう氏自身が大学の講義資料作成などでChatGPTの「チャッピー」を日常的に活用しており、作業時間が大幅に短縮されたことを実感しているという。

 しかし、資料作成や議事録作成が早くなることは仕事の価値そのものを高めるとは限らず、生産性と創造性は必ずしも一致しないと指摘。情報が増えることで逆に迷いが生じることもあるとし「何を問いにするか、何を選ぶかという人間側の資質が問われる」とした。

 AIの登場により、PCは単に作業をするための道具、いわば「作業の場」から、AIとやり取りしながら思考を深める場所となる「思考の場」へと劇的に進化していると説いた。PCは単に人が考えたことを入力するだけの装置から、壁打ちなどAIとの対話を通じて視点を広げ、構造を整えながら共に叩き台を作り上げるいわば「思考支援端末」に役割を変え、これまで頭の中だけで行なっていた考えるというプロセスそのものが、PC上で行なわれるようになっていると述べた。

 次に、PCの位置付けとデータの意味が変化し、PCは個人の作業場という枠を超え、論点の整理やリスクの洗い出しを行ない、最終的な判断を下すための判断準備のハブとなり、データは単に保存・蓄積される対象から、情報をどう組み替えて新しい価値を生み出すかという創造の起点へとその意味を変え、人間の解釈によって新たな命が吹き込まれる場となるとした。

 このようにPCの本質的価値は、効率を追求する生産装置から、その人の問いの立て方や違和感の持ち方を映し出す人材価値を映す鏡へと移行しているとし、AIがあらゆる処理を代替できるようになったからこそ、どの方向に意味があるかを選び、責任を持って決断するという人間ならではの資質がPCを通じて顕著に現れるようになるという未来の働き方についての持論を語った。

AIの進化により生産性は向上したが、その価値が高まることとはイコールではない点を指摘
PCはAIの導入で「作業端末」から「思考支援端末」に進化した
単なるデータの保存場所から創造の起点に
PCが単なる生産性の装置ではなく、処理を依頼した人の考えなどが如実に現れる「人材価値を映す鏡」と表現

 AIは圧倒的な速さで情報を処理し、リスクを抽出するのは得意だが、最終的にどの方向に意味があるかを選び、責任を持って決断するのは人間であるとし、人間の役割がシフトしている点を改めて強調。創造性は特別な才能ではなく、日常の些細なことに疑問や違和感を持つ「好奇心」から始まるため、たとえAIがすべての情報を網羅していたとしても、相手が表には出していない不満や違和感などに気が付けるのは人間の観察力であり、そういった面倒なことや困ったことを面白がり、問い続ける力が、AI時代において、人間が持つべき最も重要な能力であると強調した。

 AI普及が拡大する中で、AIに仕事を奪われるという不安を持つ人もいるが、そんな必要はなく、資料作成など面倒なことはすべてAIに任せ、人間は好奇心を持って学び続けることや、相手の言葉にされない課題を見抜くことなど、人間にしかできない価値を追求すべきであるとして、講演を締めくくった。

AI時代に重要になるのは「創造性」であり、それは「日常の視点」と同じ
これから鍛えるべきは「好奇心」
「好奇心」が「問い」を育て、「問い」が「創造性」を育てるサイクルが生まれる
登壇後は飯田氏が再度壇上に上がって講演を絶賛。いとう氏は来場者たちを「私なんかよりはるかに優秀な方たち」とし、「世の中のほとんどは自分のような普通の人間だが、そうした優秀なリーダーたちが一言メッセージを発信することで「厳しい、あるいは少し怖い未来も、みんなが希望を持って、怖がらずに過ごせるようになるのではないか」と語った

AIによるさらなるデータ活用が日本産業再考のカギ

 続いては、「PC to Computing ~AIとデバイスの未来~」をテーマに、NECパーソナルコンピュータ 代表取締役 執行役員社長の檜山太郎氏が登壇し、デバイスを提供する立場としての今後のノートPCなどのデバイスの進む方向性などについて語った。

 冒頭、檜山氏は2025年4月以降、NEC本体から法人向けの営業部隊が合流し、生産、販売、技術、サポートが一体化した新体制になった点をアピール。この統合で、技術情報の迅速な共有や顧客課題への早期対応が可能となり、単なる「PCの販売」ではなく、顧客に「コンピューティング」をどのように届けるかが大きなテーマになっていると述べた。

 また、営業手法において、従来の「製品機能の説明」から「顧客の困りごとを聞く」姿勢、さらには「顧客自身が気づいていない課題を提案する」段階へと進化させる必要性を強調した。

 市場環境については、Windowsの更新や「GIGAスクール構想」による特需を経て、現在は年間1,200万台規模の「BAU(Business As Usual、通常事業)」の市場に戻っていると分析。2024年から2030年にかけてAI投資が2~3倍に増えていく予想の中で、ハードウェアメーカーの役割が重要になると指摘しており、AIは「データセンターでの学習とエッジデバイスによる推論の2つに大別されるが、2030年までに投資の75%が推論にシフトすると予測されているが、実はもっと早くなってきているようにも見える」とし、一方で、世界的なCPU、メモリ、ストレージなどの部品不足と価格高騰については、数年続く可能性があるとの見通しを改めて示した。

 日本におけるAI活用の現状と課題については、グローバルではAI導入企業の約8割が投資対効果を実感しているのに対して、日本はやや遅れていると指摘。特に、日本は保有データ量では世界3位以内に入るものの、その活用度では60位以下に低迷している点を挙げ、「ここを改善すれば、すぐに追い越していける」とし、日本産業界の再興に対する期待と、活用度の向上が不可欠であることを改めて説いた。

NECパーソナルコンピュータ 代表取締役 執行役員社長の檜山太郎氏
現在の市場動向実績と今後の予測。AIシステムへの支出が飛躍的に伸びると予測
データセンターなどの「学習」とローカル端末などの「推論」というAIにおけるデバイスの役割
2026年のAIビジネスにおいて、グローバルでは投資対効果がかなり高いのに対して、日本はまだ低迷しているという

 ここで過去からのコンピューティングの歴史的なサイクルを解説。コンピューティングの歴史をメインフレームなどによる「集中」の時期が続き、そこからデータが溢れるようになったことで、「受け皿」としてのPCが盛り上がるようになるなど、「分散」の時代に移行していったと説明。この時、受け皿の1つとして、携帯電話はまだアナログで使えなかったので、PDAが登場してその役割の1部を担ったとした。

 現在はクラウドによる「集中」から、AIの普及に伴い再びデータが溢れており「エッジ(推論)」での処理が重要になっているため、すべてをクラウドに置くのではなく、オンプレミス環境などローカルに置く「分散」へと再び向かっているという分析について語った。

 具体例として、檜山氏自身がカメラとマイクを装着して3週間過ごした体験を通じて、持ち運べるAIエージェントや社内のAIエージェントたちがメールの要約、資料作成、会議のブリーフィングなどを自動で行なう未来の働き方として紹介し、「朝起きたら新着メールの数だけでなく、チェックが必要なメールなども判断して教えてくれる。また、上司からのメールで、データをまとめて資料を作成する必要があるものについては、AIエージェントがExcelの資料作成まで行ない、こちらはチェックしてOKを出せば、そのメール送信までAIエージェントがやってくれる」と近未来感溢れるエピソードを披露。

 一方で、こうした機能を実現するためには、複数のAIエージェント同士が連携されることが必須である点に加えて、データが整理されていること(データ・レディネス)が重要であると述べた。なお、AIエージェント同士の会話については、Anthropicの「MCP(Model Context Protocol)」が使われている点も強調した。

 NEC PCとしてAIをインフラとして広めるための戦略として、檜山氏はユーザーに合わせた多様なAI PCを提供する製品ラインナップの拡充や、40時間利用できる世界最長クラスのバッテリ駆動時間を実現するなどのモビリティの追求、さらには高性能GPU搭載製品を拡充したり、日本語に特化した汎用モデル(SLM/LLM)の活用や、AIによる自己診断・サポート機能「AI Biz」の提供などローカル活用のための機能拡充、ほかにも前述のようなデータのやり取りに際してのプライバシー保護機能の強化として、デバイス内での個人情報の匿名化技術の実装など、同社が今後AI PCを展開する上での戦略について示した。

 最後に檜山氏は、NEC PCが単なる製品売りではなく、顧客に寄り添い、安心・安全な環境でAIを使いこなせるよう伴走していくことが、メーカーとしての責任であるとして講演を締めくくった。

エンタープライズAI市場のトレンドは今後、オンプレミスがさらに伸びると予測
NEC PCとしてもさらにAIインフラの拡大のため、多様なAI PCの提供や、バッテリ駆動時間を向上したデバイスの開発、GPU搭載モデルの投入検討などの戦略を語った